オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. Eclosion

Eclosion ことね桃

形態
ショート
難易度
難しい
価格
1500(EX)
ジャンル
冒険 バトル 続編予定  
参加人数
83~8人
予約人数
10010100
基本報酬
230000G
230SP
2300EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
5
締切
2020/02/20 12:00
完成予定
2020/03/09 12:00
機体使用
関連シナリオ
ゆめなきけだもの

●Constraint

「……前回の試験は失敗だった。まさか夜間にあれほどのライセンサーが迅速に対応に出るとは思わなんだ。とはいえ、このまま奴らの観察を続けるのも業腹だな……」
 ここは宮城県南部にある廃ホテル。
 異様な佇まいの男は苛立った顏で湿気た煙草に火を点けると、然程深く吸い込まずに紫煙を吐いた。
 ――不味い。
 何しろ2年前に廃された銘柄だ。
 工場の隅で満足な梱包もされぬまま放置されていた代物は今となっては酷い臭気を放つ。
 だが男はその味に郷愁を覚え、苛立ちが収まっていくのをたしかに感じた。
(この身体となってから2年か……奴の残滓など全て消え去ったと思っていたのだがな。こればかりはどうにもならん)
 かつての自分は何も持たない存在だった。名も声も色も形もなく、ただそこにある空間を切り取っただけの存在。
 それがどういうわけか国連軍の医療部隊と遭遇し、応戦している間に――惹かれた。
 銃弾を撃ち尽くし、刃が折れ、抵抗する力を失っても戦い続けるニンゲンに。
 ――ナゼ、存在ガ消エルト知ッテイテモ戦ウ?
 ――オ前ニハモウ手足ナドナイ。声ヲ発スル喉モ潰レテイルジャナイカ。ナノニナゼ諦メナイ?
 戦の愉悦の中で感じた疑問――もしニンゲンになれば、
 命を代償にしてでも戦う理由がわかるようになるんじゃないか。
 それがわかればきっと自分の戦いにも意味が生まれ、自分が何なのかわかるかもしれない。
 自分はそれを期待して最も激しく抵抗したニンゲンを食べ――その姿と記憶の一部を取り込んだ。
 しかし今も死した男の想いを継ぐことができないままでいる。
 断片的に生活の真似事をしてみても、その感情を引き出すことはできなかったのだ。
 結局、死者の残り香はこの煙草への愛着と、熟した果実のごとき甘やかな女の肌の匂い――。
 男にとって全く価値のないものだった。
「そういえばあの男の傍で泣き崩れていた女がいたな。あれを喰えば理解を今よりも深められただろうか……。いや、過ぎたことを考えても仕方あるまい。もうそろそろ新しい『依り代』を探すべきなのだろうな」
 男はため息を吐くと、ぎこちなく動く時計を見た。午後9時――街の灯りが徐々に消え始める頃だ。
「……そろそろ訓練の時間か。今度こそは誰にも邪魔はさせんよ」
 彼はくたびれたミリタリージャケットを羽織るといつもの煙草を胸ポケットに押し込み、ホテルを後にした。


●Cocoon of the fear

 宮城県某市、旧工業地区。
 ――ここは10年前まで大手企業のプラントのひとつとして地域産業に大きく寄与してきた地域だった。
 海が目の前にあり、当時はバイパスにも面した好立地。
 周囲の山を切り拓き、ニュータウン構想も進められていたという。
 しかしナイトメア出現による社会的緊張と不安から企業は徐々に規模を縮小し、ついにはこの工業地帯を閉鎖。
 今はこの地域を管理会社のスタッフが夜間のみ警備するというほぼ無人の状況が続いていた。
(この仕事、給料は悪くはないけど回らなくちゃいけないところが多いし不気味なんだよなァ……)
 今日も彼は腰に警棒、胸には無線機、右手にマグライトというお決まりのスタイルで誰もいない区画を確認する。
(電気っつっても警備カメラと照明以外は通電してないんだし、水もガスもとっくに止まってる。おまけに建物はボロボロで解体を待つばかり……こんなとこにヒトなんて住みつきゃしないって)
 彼は錆びついたシャッターを押し上げ、ライトで内部を照らし出す。案の定、ネズミ一匹いやしない。
(あと6か所、か。ぶっちゃけこんなことやる意味あんのかね……)
 愚痴っぽい警備スタッフが退屈そうに両腕を伸ばしたその時。
 ――ばさっ。
 宙から叩きつけるように風が吹きつけてきた。
 制帽が飛ばされたスタッフは慌ててそれを拾うも、見上げた先に息を呑む。
「な、なんだ……あれ……」
 空を覆うように広げられた翼は黄金色に虹をまぶしたような煌びやかな光。
 それと同時に先ほどまで見回っていたはずの倉庫がぐしゃりと土ぼこりを立てて潰される。
「……嘘だろ、怪獣映画か何かかよ……!」
 2体の蚕が首をもたげて彼を見下ろした。奴らは煙突に糸を吐きつけ、繭の形成を始めている。
 このままでは危ない――彼は無線機を掴むと救援を求めてひたすらに叫んだ。


●She is……

 SALF宮城県支部にナイトメア出現の報が入ったのは海沿いでの異変からほんの数分も経たぬうちのことだった。
「今のところ大型ナイトメア3体は周囲の建造物の破壊に集中し、移動の様相は見せておりません。しかし周辺都市までにさほどの距離はありませんので大至急対応をお願いします!!」
 職員がマイクに向けて張り詰めた声を放つとロビーで任務を求めていたライセンサーが次々と名乗りをあげた。
彼らがアサルトコアに搭乗するべく駆け出す中、共に出撃する菫青(lz0106)は愛機であるMS-01Jをじっと見あげる。
(あなたは破壊するために造られた。あの日、心を壊されてもこの世界に残った私と同じ……似たもの同士、壊れるまで戦うのね)
 ふふっと同族に対する笑みを向け、彼女は冷たいコクピットシートに身を預けた。


●Premonition

 男は巨大な蛾が悠然と空を舞う姿を鉄塔の上から眺めると満足そうに微笑んだ。
(夜景が見える位置にありながら我欲を抑え、周囲を警戒する自制心を持つ……悪くない。後はこの身体をどう進化させるかが課題だな)
 できることなら繭を紡ぐ蚕達にもその知性を継いでほしいものだ。
 男は不味い煙草を指先で弾き、鉄骨に背を預ける。
 だがその時――遠方から異質な音が聞こえてきた。羽音と異なる無粋な、鋼鉄の。
「……逃亡する時間すら与えちゃくれねえ、強制実戦訓練か。気に喰わねえな。今回は少しばかり捻ってやるか」
 男はまだ見えぬ敵を睨みつけると鉄塔から宙へと身を躍らせた。

目的
 蚕型ならびに蛾型ナイトメアの討伐

戦場
 海岸沿いに広がる工場地帯跡地。
 現在はほとんどの機材が撤収され、空となった建造物のみ残されている無人の地域。
 来年度には大型商業施設を建設する予定があり、全ての解体が決定されているので被害を受けても全く問題はない。
 なお、オープニングに登場した警備員は辛うじて避難に成功している。

敵について
●蚕型ナイトメア×2
 蚕に酷似した巨大ナイトメア。地面を這いずりまわり、長い体を鞭のように振り回したり体当たりを敢行する。
 海に沈んでも問題なく行動可能。
 稀に吐き出した糸を盾のように展開し、身を守る小器用な面もある。
 なお毎ラウンドごとに身体を硬化させ、5ラウンド経過すると蛾型ナイトメアに変貌するため注意すること。

●蛾型ナイトメア×1
 蛾に酷似した巨大ナイトメア。飛行能力を有する。
 針のような形状の脚で突くほか、アサルトコアを抱きかかえて地表に叩きつけるなど力任せの攻撃も仕掛けてくる。
 攻撃性のある鱗粉をまき散らし周囲のイマジナリーシールドを削ることがあるが、こちらは3ラウンドに1度しか使えない模様。

●謎の男×1
 人間ではないらしい正体不明の男。
 何らかの力で大気中の水分を集め、武器や盾に変えることが可能。
 水を板状にすれば足場にもできるため短距離であれば空中を移動することも可能。
 特殊能力は敵にはりついた水に指向性を与え、相手の意思と関係なく行動を操作すること。
 ただし3スクエア内まで接近しないと使用できない。
 男は生命が7割を切った時点で体を霧状に変え、撤退する。


NPCについて
菫青…至近距離戦を好む破滅的性質のスピリットウォーリア。
 今回はMS-01Jに搭乗し、機動力を活かした近接戦闘を展開しようとしている。
 本人はFF-02への乗り換えを希望しているが、資金面の問題からしばらく先になりそうだ。

いつも大変お世話になっております、ことね桃です!

今回は何やら怪しいオジサマがハッスルしております。
そして菫青も殺る気満々……いや、それは前回と同じなんですが!
もし何か確認したいことがございましたら質問卓を立て、菫青にお尋ねください。

今回も色々な事情が重なるためEXシナリオとなっております。
また、納品予定日にも少しお時間をいただければと……誠に申し訳ありませんがご了承いただけましたら幸いです。

「成虫と幼虫……ああ、なんか見覚えある組み合わせと思ったら…」
昔、ママに見せてもらった怪獣映画そっくりだと。

蛾型の対処に向かう。
作戦開始と同時に飛んで接近。
バルカンで牽制、本命は斬艦刀による攻撃。
格闘戦に対しては斬艦刀での防御に合わせて後手必撃を使用してカウンターを叩き込む。

可能な限り蛾よりも上を位置取り、プレッシャーをかけて高度を下げさせる。
高度を十分下げさせたら、須佐之男(もしくは自機での体当たり)で地上に叩き落とす。

鱗粉で多少シールドを削られても怯まず接近。

抱きつき攻撃には逃がすまいと掴み返す。
掴んだままスラスター全開で加速し、自機ごと地面に落ちる。
「こっちだけ叩きつけようなんて甘い甘い……」
先に起きあがれたら、踏みつけた上で須佐之男使用。至近距離から打ち込む。
こちらが掴み返したのを振りほどいて逃げるなら、追撃。

紅迅機の位置は常に確認。
標的になった場合、割り込んでカバーリング(八咫鏡使用)。


蛾型を潰したら状況確認。
加勢が必要な方に向かう。

男の方なら八咫鏡を使ったカバーリングと支援メイン。
こちらを狙うなら後手必撃でカウンター。

蚕型は、接近しつつ敵味方の位置を確認。
射線上に味方がいないなら須佐之男打ち込んで削る。

  • 雛鳥の紅緒
    ツギハギla0529
    ヴァルキュリア18才|セイント×ゼルクナイト

男出現後菫青と共に男に向かう
「どう見ても人間じゃないわね。エルゴマンサーかしら
「私が抑えるから皆は他の化物をお願い。菫青も手伝って!

男に
「何故直ぐ近くに街があるのに襲わないの?目的は何?

菫青が男に反応時
様子と前回の態度から何となく察し菫青へ
「一つ聞かせて。奪われたのは命だけ?それとも姿も?
聞いたら協力する
「そういう事なら協力するわ。守備は私に任せて存分にやって。ただし私の周りから離れないで

菫青をガードポジションの範囲に入れるよう位置取りしつつ援護射撃
ダメージを与えるより菫青への攻撃の妨害や菫青が攻撃を当てやすいよう援護
菫青、紅迅、気絶した味方が狙われたらガードポジション

男は必ず範囲内に入れ他の敵は出来るだけ範囲に入れ拡散波動
以降男に注視が効くなら男の注視が切れた時、効かないなら注視がついていない敵が2匹以上範囲内にいる時に再使用
但し敵が紅迅や気絶した味方を狙った際は使用
「私から壊しなさい、化物!

自分が男に狙われている際は防御に徹する
「そう簡単に私は壊れないわよ!

男撤退時菫青を制止
「深追いしちゃ駄目よ。一人で倒せる相手じゃないわ!次も協力するから今回は耐えて!

男撤退後は蚕→蛾の順に援護に向かう

アドリブ大歓迎



「さて……」
いつも通りの装備のダブルチェック……は、今回は無理。出撃前のそれを最終確認に
整備はそれなりにしているとはいえ、めったに乗らないアサルトコア。それでも調子はよさそうでまずは一安心

「折角ナイトメアを狩れるのに、故障なんてつまらないわ」
復讐鬼にそんなお預けは、いくらなんでもあんまりだ


一歩引いたところからジャコビニを用いて火力支援
蚕達に向かってひたすら銃撃、銃撃、銃撃
銃身が過熱しようとフルオート、一つ目の警告は無視、二つ目が出て初めて一旦射撃中止
その際、必要ならばサーチ、またはノーマークの敵を探し、本当にいるならば味方に注意を促す

蚕を倒した後は(または火力支援の必要がなくなれば)蛾の対応に
やはり対空フルオートで支援射撃。なるべく羽を狙い叩き落す
万が一接近されようものなら後退、または天孤星の拳で迎撃。君が死んでも殴るのをやめない、というかやめるわけないだろ復讐鬼的に考えて。なんてったって殺意120%

  • 我が脚は昏き氷を砕く光刃
    柳生 響la0630
    人間16才|グラップラー×セイント

※アドリブ大歓迎!

【目的】
敵の討伐

【行動】
搭乗機体はXN-01
蚕の撃破に向かう
蚕を倒せば、蛾→男の順に向かう

「柳生響、夜煌で吶喊する!!」
コード「666」を使用し、杭打機「ベアトリーチェの指先」でアンブッシュリーパー
「まずは殴ってぇ・・・」
次手で杭打機を射出
「次で撃ち抜く!!」

リロードは蚕の撃破まで行わず、武器を斬艦刀「破軍」に持ち替える
目指すは速攻、絶え間なく攻撃し続ける

蚕を撃破すれば、もう一方の蚕へ向かう
蚕を全滅させれば、蛾へ向かう

蛾は射程の長い、斬艦刀「破軍」で攻撃
羽を攻撃し、墜落を狙う

蛾を撃破すれば、男の方へ
攻撃は攻撃力重視で杭打機で行う

戦闘終了後は菫青ちゃんの様子を伺い、話しかける
「大丈夫かい、菫青ちゃん」

【心情】
怪獣映画だと防衛軍はやられ役ですが、そうならないように頑張りましょう。
【目的】
敵の殲滅及び撃退
【行動】
コールサインはアルゴ
射撃や通信を行う際はコールサインを使用する
友軍との通信を密に行い、情報を共有する
常に使用武器のギリギリの射程を維持し、敵の射程内に入らないように留意して敵の射程外を常に維持する


作戦開始時、蚕型の早期撃破を狙う
近い方の蚕型に接近し、バズーカの射程内に入り次第ウィークネスショットを使用して射撃
ファイヤバグの射程内に入ったらファイヤバグも使用する
スキルを使いきる勢いで使用していく
1体目を倒したら2体目に移動して同じように撃破を狙う

蚕型殲滅後、蛾型の対応へ向かう
残っていればスキルを使用しつつ、バズーカで射撃
羽の部分を集中的に狙い飛行能力を削ぐ

蚕型と蛾型の両方殲滅後、謎の男への対応の掩護に向かう
友軍とリロードするタイミングをずらすようにバズーカ又はライフルで射撃
弾幕を途切れないようにする



バズーカを使用する際は"ライフル"、ファイヤバグを使用する際は"FOX3"、ライフルを使用する際は"Guns,Guns,Guns."とコールする





  • 首があるなら刈ってみせる
    紅迅 斬華la2548
    人間25才|セイント×ネメシスフォース

ぐぬぬ!こんな状態で出撃しなければならないなんて…失態です!

目的
敵の殲滅

行動
「とにかく皆の足を引っ張らずに自分に出来ることを…!」
最優先は味方の足を引っ張らないことと、自身の安全
いつでも脱出装置を使用できる状況にしておく
安全な状況なら味方にアクティブ・シールドを使用
アクイレギアに優先使用
使用タイミングには気を付ける

戦況的にGS付与が難しければ早めに見切りをつけ、白鳥の飛行スキルとストリェラーの全力移動を使い、敵射程外かつ戦況を把握できるギリギリの上空へ

上空で安全に気を付けつつ、全員に戦況を報告
敵の不審な動き、特に男の動きに注目し何か仕掛けてきそうなら仲間に注意喚起
各担当を跨いでの奇襲や不意打ちをされないように、仲間と敵との位置関係や敵からの攻撃対象も逐一報告
「未知の敵です…。データは取れるだけ取りたいですね…!」

最悪撤退も視野に入れる

逃げられず狙われてどうにもならない時は迷わず脱出装置で脱出する

  • 比翼となりし黒鴉
    アクイレギアla3245
    放浪者17才|ゼルクナイト×スピリットウォーリア

「俺知ってんだ!蚕ってのは、育ててくれるヤツがいねーと生きていけねぇの!シゼンにはいねぇんだってな!」
「あのおっさんはホゴシャさんってトコかねぇ…って菫青のねーちゃん、どした?」

蚕対応
最初の間合い詰めの際KAMIKAZE使用
その後はダイブ・モードで攻撃力を底上げし殴る
ダイブは攻撃ステップのみと割り切って使用し短期決戦狙い
ダメージの大きい1匹を集中的に攻撃し、まず敵を減らす
糸で盾を作るなら回り込んで攻撃。通常の攻撃時から、側面もしくは後方からを試みる
目の前で蛾に変化する場合、即座に羽を狙って攻撃、飛ばせないよう破壊したい

蚕対応終了後残っていればKAMIKAZEで男対応及び菫青に合流
「ねーちゃん!手伝うことある!?てか無事!?」
男の対応が終わっていない場合そのまま攻撃
「アンタ、アレな!エルゴマンサーてやつな!いろんな奴がいるもんだな!俺アンタの事はスキじゃねーけど!」
理由に関しては「知らねーよバーカ!」とぎゃあぎゃあ。
頭で考えるタイプではありません。

終了後
菫青に懐く(
「菫青のねーちゃん、アイツとなンかあったの」
「ふーーん…ダイジナヒトってヤツ?あれだ、シュゾクを超えたアイってやつ…じゃなさそ。ゴメンって」軽くマセガキ感。
「あ、そーいえば今んとこACオソロイな!イイよな、俺も近ぇ敵殴る方がスキ」露骨に話題転換(

  • 竜殺し
    杉 小虎la3711
    人間18才|グラップラー×ゼルクナイト

「蚕に蚕蛾ですか、敵様は絹織物工場でも始める気なのでしょうか。さぞかしたんまりと絹糸が取れることでしょう」
などと呑気な感想を述べているのは武闘派お嬢様の杉 小虎である。
羨望の視線で小虎のFF-02ににらみつけてくる菫青様に優越感を感じつつも、彼女の危うさにも危機感を抱かずにはいられない年ごろである。

蛾退治を担当。同僚となるティアナ様とはきちんと連携を取っていきたいと思います。
敵は飛行型なので、まずは地面に引きずりおろしていく方向で戦闘プランをたてていく。

鱗粉攻撃はステップワークによる足さばきで華麗に回避して見せる。
捕まえに来るために降下してくるならよし、なければティアナ様に協力を仰いで上空から叩き落してもらいたい。
地面まで降りてきてくれれば御の字でガトリング砲で羽をぼろ布のように穴だらけにして
足を奪う。
捕まえに来るようならあえて捕まったうえで、ゼロ距離からのダブルアタックで、蛾の腹を裂き破って痛打を与える。
相手がひるんだところで翼をつかんで一気に引きちぎる。逃げられ亡くなったところで胴体をつかんでブレーンバスターの要領で反り返りナイトメアを脳天から地面にたたきつける。

男が乱入してくるか蛾を退治し終えたら謎の男対応に廻る。
矢継ぎ早にラッシュラッシュラッシュで攻撃を行い防戦一方に廻らせることで水の能力を封じる。
「さあ、第2回戦の始まりですわ」

●深夜の憧憬

「先ほど現場の監視カメラから撮影されたデータを送信します。確認できますか?」
 オペレーターの声が出撃したアサルトコアの各コクピットに響く。
 モニターの隅に小さく映し出されたものは極彩色の飛翔体とくすんだ色の芋虫2体。
 ティアナ・L・ベイリー(la0015)は何やら奴らの姿に思い当たる節があったようだ。細い顎に指を添えて逡巡すると「ああ」と得心したように吐息を漏らす。
「成虫と幼虫……なんか見覚えある組み合わせと思ったのよね。今、わかったわ。昔、ママに見せてもらった怪獣映画にそっくりだってね」
 たしか環境破壊を繰り返す現生人類を粛清するべく古代生物が襲い掛かるストーリーだったっけ……そう独り言ちるティアナにレイヴ リンクス(la2313)が頷いた。
「たしかあの映画では地球防衛軍はやられ役でしたね。僕らは二の轍を踏まないよう頑張りましょう。彼らを倒せるのはここにいる僕らだけなのですから」
 レイヴは茶目っ気たっぷりに告げると、勇壮な主題歌を一節口ずさんだ。

 ルチア・ミラーリア(la0624)はナイトメアの画像を鋭く睨むも、冷静さを取り戻してすぐさま乗機HN-01の状態を確認した。
「システムオールグリーン、バルカンの装填数もフル状態か。一応整備は相応にしているといっても、アサルトコアは滅多に使わないものだからね……安心したわ」
 普段は自ら装備のダブルチェックを行うものの、今回はアサルトコアを教本通りの仕上がりにするのが精一杯だった。
 それが彼女にとっては些か面白くない。
「……折角ナイトメアを狩れるのに、故障なんてつまらないわ。だから今はこれでいいのよ。奴らを殲滅できるなら、それで十分」
 まるで自分に言い聞かせるように……口を噤んでナイトメアの画像をオフにする。
 じきに本物を目にすることになるのだから。
(私は復讐鬼……仇を前にしながら故障なんてお預けは、いくらなんでもあんまりよ。それにたとえ戦場でこの子が故障しようとも……戦い抜くわ。あの子達の未来を奪った輩に明日なんて与えない。絶対に)

 紅迅 斬華(la2548)は愛機であるSJ-01千手首刈観音をブースターで飛翔させるも、その可憐な唇を大きく「へ」の字に曲げた。
(ぐぬぬ! こんな状態で出撃しなければならないなんて……失態です!)
 何しろ斬華は先の戦で大きな傷を負っているのだ。
 数多のナイトメアの首を刎ねてきた名機とて操者の力があってこそ……その逆も然り、というわけだ。
「本日は無念のかぎりですが首刈道はお休みです! とにかく皆の足を引っ張らずに自分に出来ることを頑張らなくちゃ!」
 そこで斬華は上空から戦場を俯瞰し、仲間の支援に徹そうと決めた。
 万が一ここで自分が堕ちれば全体に破滅的な影響を与えることになるからだ。
(……いつだって戦場に絶対なんてない。だから覚悟だけはしておきますよ)
 いつでもベイルアウトできるよう、脱出装置を確認する。もちろんこれは最後の手段だ。
 まずは同胞を守るため、斬華は守護の壁に変ずる意志の力を高めていった。

 一方で杉 小虎(la3711)はモニターから資料画像を消すと呑気そうに両腕を上に伸ばした。
「蚕に蚕蛾ですか、敵様は絹織物工場でも始める気なのでしょうか。さぞかしたんまりと絹糸が取れることでしょう」
「それはどうでしょうね。あれらの場合、おそらくあの糸は敵の捕縛や守備を目的としたものだと思うわ」
 インカムから伝わってくる声は菫青のものだ。
 彼女が小虎の愛機FF-02アレキサンドラを興味深そうに眺めたことを思い出し、小虎は「なるほど」と言葉を漏らす。
(菫青様は至近距離戦を得手とされる方……ならばアレクサンドラを羨望し、態度を硬化させるのも已むを得ないのでしょうね。もっとも現状は冷静であることが救いですけれど……戦場ではどうなることか)
 自身を追う菫青のMS-01Jをカメラで視認すると、少女めいた可愛らしい優越感と武人らしい懸念が脳裏を過ぎる。小虎はこの部隊の武運を密やかに願った。

 小虎がまっすぐに戦場に向かう中、アクイレギア(la3245)のMS-01Jは菫青機に明るいトーンで通信を開始した。
「なぁ、菫青のねーちゃん。俺知ってんだ! 蚕ってのは、育ててくれるヤツがいねーと生きていけねぇの! シゼンにはいねぇんだってな!」
「そうね。でも相手がナイトメアである以上、その範疇に収まっているとは限らないわ。実際、本物の蚕蛾は飛翔能力が退化しているはずなのにあの成体は悠々と飛翔している。油断しないで……アクイレギア」
「へへっ、そうだな。油断大敵ッと。……たださ、気になンだよ。そんな生き物がベースなら、ホゴシャみてーな奴も傍にいるんじゃないかってさ……そんな予感がすンだ」
 先ほどまでへらりと笑っていたアクイレギア。しかしその瞳が前方を鋭く睨むと、操縦桿にかけた手に力を篭めた。
「ねーちゃん、俺さ……敵、全力でぶっ殺すよ。だからねーちゃんは……」
 だがそれ以上、彼が言葉を紡ぐことはなかった。
 目の前には白く輝く糸が巻き付かれた2つの塔が聳え立ち、一対の輝く翼が宙を舞っていたのだから。


●応酬の意図

「あの悪趣味な蛾に制空権があるとは不愉快にもほどがありますわ。まずは奴を仕留めるべきかと……ティアナ様、よろしくて?」
「わかった。あたしが上空からプレッシャーをかけ、小虎君は地上から牽制。落下したらあたしと君のラッシュで潰す。それでいい?」
「上等ですわ。もし地上戦ともなればそこはわたくし達……虎の支配圏。この拳で瞬時に粉砕してみせましょう」
「頼もしいわね、それではよろしく頼むわよ」
 ティアナのTS-Xアルクスが神々しい閃光を背負う。
 それを目にした小虎は蛾を挑発するように前進すると、装甲を最低限にしぼった愛機にステップワークを施した。
 そして――武家の娘らしい好戦的な瞳で小虎は蛾にしたたかにも笑みを剥ける、
「随分と鋭い腕をお持ちのようですけれど、それでわたくしのアレクサンドラを貫くことができますかしら?」
 蛾は眼下で俊敏なステップを踏む機体に気づいたのだろう、警戒しているのか上空から煌めく鱗粉を振りまき始めた。
 ――シュワワッ!
 攻撃性を持つその粉は小虎機と、ティアナ機のイマジナリーシールドを確実に融かしていく。
 だがふたりともここで退くほど怯弱な戦士ではない。むしろその敵の知性に戦の価値を見出し、にやりと笑った。
 これは倒す価値のある敵だと。

 その頃、アクイレギアのMS-01Jは蚕が糸で絡みついた煙突を目にするや、特殊兵装『神風—KAMIKAZE―』で瞬時に移動を重ね、ヨウダイブレードで煙突ごとその身を深く斬りつけた。
 硬質な糸が千切れ、醜悪な顔がアクイレギア機を睨みつける。
 そのカメラ越しからも理解できる巨大さに彼は無意識に呻いた。
「……俺ってば今回がアサルトコア初陣なんだよなっ。でもこんな不細工相手にはぜってー退がんねー! 俺にはまだやらなきゃいけねーことがあるんだからさァ!!」
 ここには守らねばならない人がいる――彼は己の力を高めるべく、想像の翼を広げた。

「……2年ぶりか、妖」
 菫青は異常なEXISの反応に導かれるまま、鉄塔傍の宙――本来なら何もないはずの空間に銃を向けると眉間に皺を寄せた。
 彼女の目の前にいるものはサイドシールドで目を覆った筋骨隆々とした軍人風の男。彼は煙草を咥えたまま「いいや」と応じる。
「俺の名は『劉 俊傑』。2年前にあの男から受け継いだ名だ。俺の愛しい『淑華』、そう呼んでもらわねば面白くないな」
「お前はただの妖さ。それに……あの人から全てを奪いながら……その名で私を呼ぶな!!」
 菫青機のマシンガンが幾重にも弾丸が放たれ、劉を名乗る男の「周囲」を抉る。
 だがそれは一向に奴の身を削ることなく「空間」を削り、そして砕いた。
 薄い硝子が割れたような涼やかな音。鏡のような透明な板――氷が宙に広がり、劉の姿を無数に映し出す。
「無為な攻撃はつまらない結果に繋がる。俺は『昔の俺』の起源になり得るお前を無意味に殺したくはないんだがな」
 無数の鏡の中で反響する声――菫青は奥歯を噛みしめると、眼鏡の奥の青い目をにわかに血走らせた。

 レイヴのSJ-01はアクイレギアにより守りの薄くなった蚕に接近し、YOKOZUNA-189を構えた。
(今の奴はアクイレギアさんに意識を奪われている。狙うは今……一昔前のハリウッド映画なら元軍人の米国大統領が最新鋭機で怪獣の頭にでも一撃くれて『USA!  USA!』なんて盛り上がる展開なんでしょうけれど……まぁ、僕は僕らしく堅実にやるだけです)
 敵の動きを着実に読み、どこがその身体の核であるのかを判断し、確実にそこを破壊する――ウィークネスショット。
 レイヴは蚕の首の付け根にそれを見出すと「ライフル」と落ち着いてコールする。
 弾丸は首の付け根から頬にかけての皮膚をぶつりと抉った。
 蚕は突然の強烈な長距離射撃に悲鳴をあげてのたうち回る。
(これで糸の放出はしにくくなったはず……後は短期決戦を目指すだけ!)
 何しろ空中戦に対応できる機体は数が限られている。
 数は有利なれど我々に余裕などない……米国情報軍時代に鍛え上げられた情報能力が彼の脳裏に警鐘を鳴らしていた。

 一方、ティアナはシールドの消耗に顔を顰めながらも黒銀の愛機を高空へ飛翔させた。
(蛾に対応できるのはあたしと小虎君だけ。それなら恐れている暇なんてないんだよっ!)
 じりじりと削られていくシールド。それでも虹彩の嵐に飛び込み、脇に抱えたバルカンで蛾の翼を守るリジェクション・フィールドを着実に削っていく。
 上空からの攻撃的な圧力に蛾は翼を竦めた――高度がじりじりと下がっていく。
(次の手番なら小虎君とあたしで挟み撃ちできる可能性がある! それなら!)
 ティアナはバルカンを背に戻すと斬艦刀「破軍」の柄を掴んだ。

「柳生響、夜煌で吶喊する!!」
 黒い装甲が荘厳な印象のXN-01夜煌に搭乗した柳生 響(la0630)はまだ健在である蚕に向けて前進しつつ、コード「666」を発動させた。
 獣の数字を冠する危険極まりないプログラム――アドレナリンを極限まで放出された響の鼻孔からつう、と細く血液が滴り落ちていく。
 しかしその実行を躊躇する気など、響にはなかった。
「良い子だ、夜煌。……この破壊衝動はあのムシケラにぶつけてやるよ。誰もやらせはしない、ボクとお前がここにいるかぎりはだ」
 滾る戦意は狂おしくも愛おしい。愛機とリンクした殺意――響はパイロットスーツの袖口で血をぐっと拭うと口元を不敵に吊り上げ、周囲を見回した。
「ボクらは夜闇を裂く、黒光の流星になるためにここに来たんだからね……!」

 ルチアは傷ついた蚕に背後から迫るとジャコビニM872で豪雨の如き弾丸を見舞った。
(こいつらが街に出ることを許したら多くの無辜の市民が殺される……あの子達の悲劇を繰り返してはならないの。それが私の戦い、私なりの贖罪……!)
 銃弾が蚕の背を張り裂き、大きく仰け反らせる。
 その際、巨大な肉塊と化した尾がルチア機の腰を鞭のようなうねりで打ったが、そんなことは知ったものか。
「この程度で私の憎しみを抑え込めるとは思わないことね、ナイトメア風情が!」
 ぐらりと崩れた姿勢を瞬時に立て直し、銃を再度構える。
 カウンターできるほどの力があるのなら、それができないほどまでに叩き潰せばいいのだから。

 その頃、ツギハギ(la0529)のHN-01は一方的に通信を断絶している菫青機のもとに直進すると、奇妙な光景に息を呑んだ。
 空中に浮かぶ無数の男の姿。そのどれもが禍々しい水鏡に映し出されている。
「何があったのかと思ってみれば……どう見ても人間じゃないわね。お前、エルゴマンサーかしら」
 その音声を通信で耳にした仲間達が声を強張らせる。
 その状況にツギハギは奥歯を噛みしめ、覚悟を決めた。
 例え相手が強力なナイトメアであろうとも、他の敵を逃すわけにはいかないのだと。
「……私がこいつを抑えるから皆は他の化物をお願い。菫青、貴女も手伝って!」
 ティンベーADを構え、防戦の構えをとるツギハギ。
 緊急用の通信コードで菫青にメッセージを送りながら男を睨みつける。
「何故直ぐ近くに街があるのに襲わないの? 目的は何?」
 すると男はツギハギ機を無表情に見下ろした。
「俺達とお前達の違いは何だと思う?」
「身体構造と生活形態と……それに食人に対する禁忌意識の有無かしら。何もかも、ね」
「だから俺はその間を埋めようと考えた。ナイトメアは無為に生まれ、無為に死んでいく……しかしヒトはそうではない。何らかの目的のためならば笑んですら死を受け入れていく。それに必要なものは何だ、俺はそれを知りたい――そのための知性取得だ」
 そう言うとどこか得意気な顔で男は蛾を見下ろした。
 そしてミリタリージャケットの袖を叩き、自分を誇示するように胸を張る。
「そういや、この男もそうだった。苦しいのならば存分に血反吐を吐いて泣き叫べば良いのにな。この最期に必要なものは何だ?」
 その答えに――ツギハギは言葉を返さなかった。
 かつて自分が守ろうとし、失い、自分の中からも消えていったもの――その中に答えがありそうな気がしたが、それをひと紡ぎにできる自信がなかったのだ。
 だが菫青は記憶を呼び起こされたのだろう。唸りを上げ、重厚な意匠の斧を振りあげた。
 それをツギハギは手で制する。
「一つ聞かせて。奪われたのは命だけ? それとも姿も?」
「全てだ。姿も名も趣向さえも……奴が咥えている煙草さえも彼が愛していた銘柄だった。……おそらく奴は彼を真似ることで『満足する死』を知ろうとしたんだろうさ」
「……なるほどね。そういう事なら協力するわ。守備は私に任せて存分にやって。ただし私の周りから離れないで」
 斧を握る菫青機の隣で巨大な盾を構えるツギハギ。
 どこから攻撃が来ようとも耐えてみせる……全員が敵を倒し尽くすまで。
 ツギハギは今まで失っていった自分もきっとそう、仲間を信じて戦っていったのだろうと信じて幻影達に対峙した。

 上空では斬華が唇を真一文字に結び、インカムによる戦況報告を行いつつ適時SARF本部へ情報を転送していた。
「あの男は未知の敵です……。データは取れるだけ取りたいですね……!」
 本部によると2年前に台湾から「劉 俊傑」と名乗る元軍人が渡日し、数日後に姿を消したというが――まさかそれなのだろうか。
(人間に近い姿をしたナイトメア……特にエルゴマンサーは人類にとって危険極まりない敵です。もし私が健常でさえあれば……真っ先に首を刈りますのに!)
 真っ当に得物さえ握れぬ身が何とも口惜しい。
 その時、傷ついた蚕を援護しようとしているのだろうか。
 損傷のない蚕が奴を庇うべく前に出て、アクイレギア機へ重量をかけた体当たりを敢行しようとした。
「アクイレギアさんっ! 間に合って!!」
 斬華は咄嗟にアクティブ・シールドを発動させた。
 アクイレギア機のシールドがたちまち強度を増し、怯んだ蚕をアクイレギアが力いっぱい叩き払う。
(よかった、こんな私でも……前線は皆さんにお任せすることになってしまいましたけど私も頑張りますから……!)
 斬華は再び守りのイメージを広げながら、インカムに戦況報告を再開するのだった。


●羽化

 戦いが始まってから間もなく――突如蚕達の背中がめきめきと音を立て割れ始めた。
「繭なしでゴーインに羽化かよっ、やっぱナイトメアはジョーシキ通じねえな!」
 アクイレギアは背から現れたまだ柔らかな翅にダイブ・モードを発動させ、力いっぱいヨウダイブレードで斬りつける。
 ――斬ッ!
 翅は落ちることこそなけれど、あらぬ方向へ圧し折れて背中にへばりつく。これで宙を自在に舞うことはかなうまい。
 そこに好機とばかりにレイヴが「FOX3」と呟き、ファイヤバグを発動させた。
 それまで奴の身体を守っていた殻と糸ごと炎に包まれ焼き尽くされていく。
 残るは外気に触れたばかりのひ弱な肉体だ。
 続いてルチアのジャコビニが激しい熱を放ちながら銃弾をフルオートで乱射する。
 とうに砲身は熱く、警告音が彼女の耳に唸りを上げた――が、そんなことは構うものか。
「殺す、殲す、滅す……!! お前達を葬ることが私にできるあの子達へのたったひとつの手向けなのだから!」
 たちまち蚕から血肉が噴き出し、無残にも地表に転がる。後はその生命に終焉を突きつけるだけだ。
「夜闇ごと君を――斬り裂くッ!!!」
 響機がブースターからエネルギーを最大放出させ、杭打機「ベアトリーチェの指先」にイマジナリー・シールドを集中。
 鋭い切っ先となったシールドが蚕の頭を潰し、その身を黄色い肉塊へと変えた。
(……っ、相変わらずのテンション。たまらないよね)
 口もとに滴り落ちる血を拭い、響はもう一体の――今にも羽化しようとしている蚕を睨みつけた。

 空中ではティアナ機と蛾が幾度も攻防を交え、それを小虎機がガンシールド「荒武者」で支援するという戦況が続いていた。
(くっ、堕ちさえすれば後は虎牙の如くこの拳で咀嚼して差し上げますのに……っ!)
 蛾の腹を荒武者の銃弾が縦に裂く。
 しかし奴も墜落に危機感を抱いているのだろう、必要以上の高度を下げることはなかった。
「堕ちたくない……? それなら宙で散らせてあげるわよ!」
 ティアナのイマジナリー・シールドが突如破壊力に転化され、盾を纏う槍――心力突出杭「須佐之男」に収束されていく。
「その輝く翼……散ったら星屑のように舞い落ちるんでしょうね。堕ちなさい、輝きのナイトメア!」
 竜巻の如き猛烈なエネルギーが鱗粉を宙に散らし、その骨格のみを夜空に残す。
 だが相手もさるもの――ただ独りで堕ちるものかとティアナ機のシールドに鋭い爪を立てて抱き着いた。
「まさか刺し違えてもってわけ? 甘い甘い、あたしだって伊達に命をかけて戦ってんじゃないのよ!」
 ティアナはブースターの出力を最大に引き上げた。これは敵を振り払うためではない、むしろ――。
「ねぇ、君はどこに堕ちたい? これから君が堕ちるのは虎穴……最も恐ろしい巨獣がいるところよッ!」
 嬉々とした笑みさえ浮かべ、ティアナは地表に堕ちていく。姿勢を制御し、蛾を地面に叩きつける形で!
「上々ですわ、ティアナ様! 後はわたくしの戦場でございますっ!」
 ――ドォォォンッ!!
 小虎の叫びと同時に地表が揺れる。蛾が頭から地面に圧され、背中が2つに折れたのだ。
 勿論ティアナ機も墜落によりシールドの大部分を粉砕されたが、彼女はそれを気に留めず次の動きに備える。
 そこで俄然と気炎を発したのが小虎だ。あるカンフー映画俳優をモチーフとした機体が蛾の両翅を根元から掴んだ。
「もう貴方に空という逃げ場はございません。地をのたうつ小虫にお戻り遊ばせッ!!」
 小虎機は装甲を最小限にまで選別した極めてピーキーな機体だ。
 しかしそれゆえに通常のアサルトコアよりも俊敏にして自在なる動きを実現しているのも事実だった。
 ――轟ッ!!
 巨大な両の拳が左右に大きく開かれる。翅を支える骨格がべきりと折れ、それらは宙に粉となり掻き消えていった。
(これで鱗粉という脅威も飛翔という厄介な挙動もなくなった……後は全力で殴り潰すだけですわ!)
 小虎には油断というものがない。ただ次の手番で完全に敵を討つべく――鋼鉄の拳を備えんとしていた。

「……全く、今回も失敗か。無人のエリアなら多少はやりようがあると思ったんだがな」
 劉と名乗るエルゴマンサーは一体の蚕の死と蛾の墜落を見届けると、つまらなさそうに肩を竦めた。
「一体どうすりゃお前らに比肩する兵どもを育てられるのか……教えてほしいもんだな?」
 黒眼鏡の先にいるツギハギは咄嗟に思念式拡散波動を展開した。
 足元にいる羽化しかけの蚕も巻き込む形となるが、それならそれで戦術の効率化に繋がろう。
(こいつ……並みのナイトメアとは実力が桁違いだわ。例えこの機体が堕ちようとも、皆を壊させるわけにはいかない……!)
 その動きを空中から察知した斬華はツギハギへアクティブ・シールドを発動させた。
 元来頑強であるツギハギ機のシールドがより強固になっていく。
「エルゴマンサー相手では気休めにしかならないかもしれない……でも、あなたも死んではいけないんですよ! ツギハギさん!」
 その次の瞬間劉は幻影を消し、そこから透き通った大戦斧を形成した。
 それはアサルトコアにも損傷を与えかねない巨大な刃。
 ツギハギは菫青の前に駆け出ると盾を構えた。
「私から壊しなさい、化物! そう簡単に私は壊れないわよ!」
「そうかもしれんな? だが身体はともかく……内側はどうなる? お前らには心というものがあるのだろう!?」
 大斧が夜闇を狂々と回り、ツギハギのシールドを易々と削っていく。ツギハギ機内部で警告音がしきりに鳴り出した。
(くっ、あと1・2回で限界ね。この馬鹿力……!)
 そこでツギハギ機を弾くようにして飛び出したのが菫青機だ。
 彼女の機体は攻撃力と機動性に特化している反面、守りが薄い。
 しかし大斧が手を離れている間なら――その僅かな可能性に賭けて劉へ袈裟懸けに斧を振るう!
「お前を終わらせる、全ての悪夢を終わらせる……誰も死なせないっ!!」
 ――それは心からの叫びだった。
 劉はそれをすんでのところで躱したものの、ジャケットが斬り裂かれたことと彼女の心境の変化に驚いたのだろうか。
 後方へ数歩ステップし、面白そうに2体のアサルトコアを見据えた。
「己の死に価値を見出しながら他者の死を拒絶するか……奇妙な女どもだ」

 その頃――羽化を仕掛けていた蚕に執拗に射撃を繰り返していたレイヴは「Guns,Guns,Guns」とコールし、ウィークネスショットで身体の自由を奪った。
「今です、皆さん! 奴が完全に硬化する前にとどめを!!」
「よっしゃ! 無防備なら思いっきりブチ込んでやらぁ!!」
 アクイレギア機が抉れた首を大剣で斬り裂く。だらりと弛緩した蚕――そこに響のアンブッシュリーバーが見舞われ、 蚕は廃工場の壁に押しつぶされる姿のまま痙攣した。
 もはや死体も同然――その蚕に巨大な影が落ちる。ルチア機が天孤星の拳を装備し、奴の前に立ち塞がったのだ。
「最後の最後までお前達は赦さない……その罪、痛みと命を以て償えッ!!」
 重量のある手甲が幾度も幾度も蚕の身体に落とされる。
 ぐちゃ、ぐちゃり……それが単なる肉塊となり、風化し、ただのアスファルトだけの空間になってもルチアは殴り続けた。
 あの日の子供達に償う手段は――原因となったナイトメアとその信奉者らをこの世界から消し去るしかないのだから。

 翅を失った蛾は鋭い足をティアナと小虎へ我武者羅に振り回した。
 しかしその動きは宙に在った頃と比べれば緩慢で、特にステップワークを行使する小虎にとっては駄々をこねる赤子の手のようなものだ。
「どうやら鉄塔の方で異変が起きているみたいね……増援でも来たのかしら」
 ティアナはレーダーを確認すると声に焦りを滲ませる。
 そこで小虎は「ここはわたくしにお任せを。ティアナ様のブースターはまだ飛行可能なのでしょう?」とインカムに声を張った。
「わたくしは武門の娘。敵には決して臆することなく、見くびることなく……粛々と対峙する存在です。しかし鉄塔の者をここでお任せできるのはティアナ様だけです。ゆえに彼奴のとどめはわたくしに」
 小虎は武人だ。だからこそ命を張るべき場所というものを心得ている。
 小虎機が相槌を打つように顎を動かすのを見とめるや、ティアナ機は「任せたよ」と返答し――翔んだ。
 一方、逃げられなくなった蛾の胴体を小虎機は軽々と掴んだ。翅さえなければ重量は大したものではない。
 細い腕を確かに握り、ブレーンバスターの要領で反り返る。
 武芸百般を名乗るのならば西洋の体術体得も当然のこと。
「悪夢といえど苦しむことなく……夢見ることなく霧散なさって!」
 ――どおおっ!
 蛾を脳天から地面にたたきつける。
 頭から元から割れていた腹までが一気に裂け、大地に2つの遺骸となって転がった。
(これで杉家の面目も立とうというもの……さて、次のラウンドに参りましょうか)
 小虎の闘志は燃え尽きることがなかった。


●霧氷

 劉は次々と集まり始めたアサルトコアを見るなり、小さく鼻を鳴らした。
「俺を見逃す気はねえってわけか……面白え、ちょいと相手をしてやるか!」
 劉の周囲に無数の水滴が集まり、先端の尖った弾丸の形を成す。
「全方位型の射撃ってわけ? 冗談じゃないわ!」
 ティアナは咄嗟にブースターを全開にし、斬華機を上空へ押し上げた。
 この戦場で起きたことを全て知る斬華を、大切な仲間の命をここで失うわけにはいかない。
 それと同時にアクイレギアがダイブ・モードを発動させながら菫青機の前に立った。
「ねーちゃん! 手伝うことある!? てか無事!?」
「……何とかな。この機体では運がいいとしか言いようがないが」
 菫青機は動いているのが不思議なほど、深い傷を負っていた。
 アクイレギアが金の瞳を吊り上げ、劉に剣を向ける。
「アンタ、アレな!エルゴマンサーてやつな! いろんな奴がいるもんだな! 俺アンタの事はスキじゃねーけど!」
「ふむ……俺を嫌う理由というものが『ナイトメアであること』以外であるのなら教えてもらおうか。どことなくお前は『面白い』」
「知らねーよバーカ!」
 思いつくだけの罵詈雑言を用いて劉に対峙するアクイレギア。
 それを興味深そうに聞く劉の姿に斬華が「今が機です」と囁いた。
「落ちろ、堕ちろ、墜ちろおおおお!」
 ルチアがジャコビニの弾丸を激しく撃つと同時にレイヴがアサルトライフルからウィークネスショット。
 劉の片足がもげ落ち、宙でバランスを崩した。
「……っ!?」
「逃がさないんだから!」
 続けて響機の杭打機が劉の脇腹を抉る。しかし――奇妙なことに禍々しい力が衰える気配はなかった。
「面白い……面白いな、ヒトというものは。不利であろうとも闘志衰えず、力を増していく。その理由、ますます知りたくなったぞ!」
 劉の身体は徐々に崩壊し、うっすらと宙に舞う霧と化した。これが本来の姿なのか。
「逃げる気かよ、このヘタレ野郎!」
 アクイレギアが叫び、菫青も仲間達もそれを追おうとした。
 だが大きく損傷した腕を左右に目一杯広げてツギハギがそれを止める。
「深追いしちゃ駄目よ。今の私達だけで倒せる相手じゃないわ! 菫青、次も協力するから今回は耐えて!」
 それは悔しさの籠った声だった。奴を逃がせば何らかの形で悲劇が続く。
 ……しかし今はそれを止める手段がないのだと。


●落涙

 劉が姿を消した後――蛾を宣言通り粉砕した小虎は空を見上げてため息を吐いた。
「日本は比較的安全な国のはずなのに……新たなネクロマンサーの出現とは穏やかではありませんわね」
 それに対しティアナは煙草を咥え、煙を深く吸う。
「奴らは知恵も力もあるからね……やる気になればどこにでも行けるってことなんでしょう。気に入らない話だけれど」
 一方、レイヴは機体に籠ったままの菫青に「大丈夫ですか」と柔らかな声を掛けたが、「……ん」と返答を受けたっきりその後の言葉が続かなかった。
 劉と菫青の間には並々ならぬ因縁があるのを察したが、尖った感情を和らげるワードをつけられなかったからだ。
 そこで響が逡巡した後、言葉を繋げる。
「菫青ちゃん……キミはまだ、正気を保ってるかい? 復讐心ってのは正しい感情だ。あいつはキミにその感情を抱かせるほどの罪を犯したのだからね。でも……狂気に落ちちゃいけないよ。キミが狂気に落ちたら……死者を演ずるつもりはないけれどね、その人はきっと悲しむよ……」
 響の声は哀しいほどに優しかった。インカムからしゃくり上げるような菫青の吐息が聞こえてくる。
 ツギハギは己の疑問を発するべきか否か考えた後、疎まれるのも覚悟で問うた。
「聞いていい? あの化物に奪われたのは恋人?」
「……婚約者、だった。軍の上官で……ずっと医療部隊を守ってくれた、強いヒトだった」
「そうなの……それは辛いことだったわね。でも仇をとった後の事も考えてみて。私は私より先に戦友を壊させる気はないわ。貴女だって……医師を志したのは多くの戦友を守りたかったからでしょう? 彼が命を張ったのは貴女の想いも守ろうとしたから……じゃないかしら」
 ツギハギの声に返ってくる言葉はなかった。
 そこでそれまで黙っていたアクイレギアが口を開く。
 菫青が今どんな顔をしているのか、何を考えているのかはわからない。
 だがいわゆるマセガキである彼は両腕を頭の後ろで組むと「むぅ」と唸った。
(つまりねーちゃんはカレシをあいつに殺られた上に、あいつにカレシをパクられたのか……ひでー話だな。だからといって、何もしないわけにもいかねーし……)
 だからアクイレギアはにっと笑ってメッセージを送る。
「あ、そーいえば今んとこアサルトコアオソロイな! イイよな、俺も近ぇ敵殴る方がスキ。あ、あと俺んことはレギアって呼んでいーよ。アクイレギアって名前なげーだろ」
 モニターの下に流れる呑気なメッセージにようやく菫青は笑うと「わかったわ、レギア」と呟いた。
 ――ありがとう、皆。
 菫青はそうパネルに打ち込むと、手の甲に2年ぶりに涙が零れ落ちるのを確かに感じ取った。

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