オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 【DG】過去の罪科は此処にあり

連動 【DG】過去の罪科は此処にあり 雪芽泉琉

形態
ショート
難易度
普通
価格
1500(EX)
ジャンル
DG 特務 
参加人数
106~10人
予約人数
10010100
基本報酬
200000G
200SP
2000EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
4
締切
2019/11/05 20:00
完成予定
2019/11/17 20:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●贖うべき罪科
 クレタ島の北部にレティムノという街がある。
 16世紀にヴェネツィア人によって作られた旧市街が有名だ。小さな港に小舟が浮かぶ。透き通った海と青い空に挟まれ、美しい町並みは観光客に人気だ。

 しかし、どのような場所にも、表の顔と裏の顔がある。
 旧市街から遠く離れた路地裏には、今にも朽ちそうな石造りの建物が並んでいた。
 ここにアフリカからの避難民が肩を寄せ合って住んでいる。彼らの生活水準は恵まれていると言えず、生きるのに最低限必要な補修をしただけの粗末な住居が乱立していた。
 アフリカへの帰還を願ってこの地に残り続けているが、まるで希望が見いだせない。
 クレタ島の闇を全て集めたかのように薄暗く、雲が空を覆って、月も星も見えない。

 その路地裏でアイザックは老人・ハムディから煙草の箱を差し出された。
 もうずいぶん前に辞めたのだがと思いつつ、受け取って気がついた。箱の中に煙草と一緒に小さな紙があり、時間と場所が書かれている。紙を懐にしまい煙草を咥え火をつけた。

「あんたには世話になったからな。これで借りはなしだ」
「そう思うなら、人類救済政府について、もう少し教えてもらえないでしょうか?」
「『同志』は売らない」

 ハムディが人類救済政府に所属しているレヴェルであるとアイザックは知っていた。それをSALFに報告せず見逃し、時には逃亡補助もした。その見返りに情報提供を求める。
 二人はそういう関係である。

「あんたはともかく、わしはSALFの連中を信用していない。アフリカを取り戻す気が無い。ヨーロッパを守れればそれでいいんだろう」

 その言葉をアイザックは否定できない。
 2028年、カイロ防衛戦での致命的な敗戦で人類はアフリカを失った。アフリカに住んでいた多くの人々はヨーロッパへ逃げ、難民として生活している。
 それから30年。上手く環境に適応し幸せに暮らす人もいるが、新天地に居場所がなく今も苦労し続けている人もいる。
 ハムディの褐色の肌に刻まれた深い皺は、その苦労の証なのだろう。

 アイザックの祖父は、カイロ防衛戦に参加して戦死した。あの敗戦の責任の一端は祖父にある。
 父も兄もアイザック自身も、祖父の敗戦の罪を贖う為に、ヨーロッパ戦線で戦ってきたが、未だにアフリカを取り戻すどころか、偵察でめぼしい情報を得ることもできていない。
 アイザックがライセンサーになって10年。カイロ防衛戦から数えて30年でこれでは、取り戻す気が無いと言われても、仕方が無いと思う。

「故郷であるアフリカが恋しい同胞はたくさんいる。人類救済政府の『同志』になれば、アフリカに帰れる」
「アフリカに渡った人類救済政府の人間は、その後どうなるのですか?」
「知らん」

 ハムディは言葉と共に煙草を吐き捨てて、力強く踏みにじり去って行った。
 煙草の煙が空へ登るのを見つめながら、アイザックは思考を巡らせる。

 アフリカに戻った所で、幸せになれる保証など何処にもない。それでも今よりマシだ。そんな藁にも縋る思いなのだ。
 同胞をアフリカに誘おうとしておきながら、同時に不安も抱えている。それならまだ説得の芽はあるかもしれない。
 だがアフリカ難民の人々の心にアイザックの言葉では届かない。10年かけて成果をだせなかった人間なのだから。今回は仲間に助力を請うべきだ。
 その結果アイザックが処分され、人類救済政府へのパイプを失うとしても。今彼を止めなければ、多くの人がアフリカに渡り、命が失われるかもしれない。

 レヴェルに便宜を図る事は、SALFへの、人類への背任で、罪である。
 罪を犯してでも情報という対価を得られるなら、取引するべきだと思った。露見した時に相応の処分を受ける事も覚悟の上だ。
 反省はするが後悔はしない。情が混じれば判断に迷いがでて思考が鈍る。冷静にリスクとリターンを秤にかけ、よりよい手段を選ぶ。
 それがアイザックの信じる正義への道だ。
 祖父の敗北も、レヴェルとの裏取引も、生きている限り贖うべき罪科である。


●告白
「僕は罪を告白する」

 アイザックの求めに応じて集まったライセンサー達は、唐突な罪の告白に戸惑った。
 今までレヴェルと裏取引をしてきた、そのおかげで重要な情報を得られたとも。

「明日、彼はアフリカ難民の人々を集め、集会を開く。人類救済政府の仲間になってアフリカに帰ろうと呼びかけるそうだ。集団心理は怖い物だ。信用できない夢物語でも、希望が提示されれば飛びつくだろう。噂は拡散し、多くの人が人類救済政府に流れるかもしれない。それは避けたい」

 長年の借りを返す為、老人は場所も・時間もアイザックに教えた。しかし辞める気はないようだ。

「今までヨーロッパ戦線で戦ってきて、アフリカを取り戻せない僕の言葉では説得力がない。でも君達なら違う。時代は変わった。ニュージーランド、ロシアとイムソムニアを攻略してきた君達の言葉なら、彼らも耳を傾けるかもしれない」

 イムソムニア攻略について彼らも噂程度には聞いている。しかしヨーロッパから遠く離れた土地の話は実感に乏しく、詳細を知らないからこそ半信半疑だ。
 直接この目でイムソムニアを撃破したライセンサーの言葉の重さ。そこにアイザックは希望を見いだした。

「君達が頼みの綱なんだ。難しい仕事だと思うけれど、できれば引き受けてほしい」

 そう言ってアイザックは深く頭を下げた。
 今回の一件が終わった後、裏取引についてSALFに報告し、処分を受ける覚悟だとも述べる。
 頭をあげたアイザックの瞳は落ち着いていて、そこに一点の迷いもない。

「一つだけ、念を押しておきたいことがある。レヴェルも、集まる人々も、武器を持たない無力な人々だ。武力鎮圧と見なされる行為をすれば、火に油を注ぐ事になる。対話だけで彼らを説得して欲しい」

 ここにいるライセンサー達は、SALFに登録して長くて1年半。SALFにいた期間はアイザックより短い。
 しかし場数であれば負けはしない。だからアイザックは信じていた。彼らを説得できると。



●偽りの希望
「みな、テルミナス様の言葉を聞いたと思う。ナイトメアに認められれば、人類救済政府に協力すれば、もう脅威に怯える必要はない。生活の心配もない。アフリカに帰る事もできる」

 木箱で作られた簡易な壇上で、人類救済政府への希望をハムディは語る。その言葉に耳を傾けつつ、人々はちらちらとライセンサーを見ていた。
 ライセンサーの身分を明かし、演説の邪魔はしないと誓った為、この集会への同席を許可をしたとハムディに説明された。
 しかし、なぜここにいるのか、人々は疑問を持っているのだ。
 ハムディの演説が終わり、大きな拍手の後一人の男がライセンサーに声をかけた。

「なあ、あんた達は何のためにここにいるんだ? レヴェルにさせたくないから、殴ってでも言う事を聞かせるとか、そんなつもりじゃないだろうな。お偉いライセンサー様だからなぁ」

 皮肉の効いた男の言葉に人々は冷笑で持って同意した。
 ここに集まった人間はSALFを信用しない者ばかりだ。
 アフリカは必要な犠牲だった。ヨーロッパを守るだけで精一杯だ。取り戻す努力はしている。長年そう言われ続けたのだ。

 彼らに必要なのは、哀れみでも同情でもなく、現状を打開する為の希望なのだ。
 偽りの希望に飛びつこうとしてる人々へ、真実の希望を伝えよう。

●目的
 人類救済政府への勧誘阻止

●NPC
・アイザック・ケイン
 後方支援が得意で知性派のライセンサー。
 ニュージーランドでは主に後方支援で活動し、イムソムニア攻略の現場にいなかった。ロシアは伝聞のみで現地に行ってない。報告書で知識はある。
 集会に立ち会い、可能な範囲でPCの手助けをする。プレで指示がなければ、全てをPCに任せ、見守るに留める。

・ハムディ
 人類救済政府のレヴェル。アフリカ出身の老人。人々を扇動し仲間に引き入れようとしている。戦闘訓練も受けておらず、言葉以外に力を持たない。
 義理は通したので、これ以上アイザックに譲歩する気は無い。

・集まった人々
 老人から若者まで男女併せて50人程。小さな子供はいない。全員アフリカ難民か、その子孫。故郷であるアフリカに憧れがある。全員自分の意思でここにいる。
 今の住処に居場所がないと不満を感じて、絶望している。アイザックを含め、ライセンサーをあまり信用していない。
 ライセンサーに逆らっても勝てないと悟っている為、暴力には訴えないようにしているが、PCに挑発されれば怒りで手をあげる可能性はある。


●状況
 場所はレティムノのとある酒場の中。他に客はいない。人が来ないよう外に見張りがいる。椅子やテーブルは壁の隅に追いやられ、がらんとしている。
 OPは全てアイザックが話したのでPC情報。
 現状SALF内部でこの集会について知っているのは、アイザックとPC達だけ。全て報告書にして後日SALFに提出する。
 リプレイ開始はOP直後から始まるが、1日でできる事なら事前準備は可能。
 ハムディの演説が終わってもすぐには人々は帰りません。30分程、話をする時間あり。壇上にあがっても、人々の間に入っていって話しても自由。
 説得に失敗した場合、人々は帰った後に他のアフリカ難民達に、人類救済政府の仲間になるよう呼びかけ、騒動が大きくなる。

※質問卓設置可

 こんにちわ雪芽泉琉です
 自分に説得力がないと判断しPCに頼んだので、アイザックに頼りきった説得だと、失敗する可能性があります
 今までの任務で見てきた物、感じた物を、皆さんの言葉でしっかり語って、人々の目を覚まさせてください

 アイザックは復讐より、敗戦の責任の方を重く受け止め、勝つ為に手段を問わない奴です。色々言いたい方もいると思いますので、それもご自由にどうぞ
 プレイングをお待ちしています

  • 凪の果てへと歩むもの
    常陸 祭莉la0023
    人間19才|ネメシスフォース×セイント

●心情
アイザックのやり方は合理的と思う
ここにいる人たちがアフリカに向かっても他人事なのは事実だが周りがそう思うとは限らない
(シルヴァの受け売りだけど…うまく話すやり方で、踏み止まる方に…
●行動
前日はこれまでの大規模作戦の戦闘記録映像を準備
アフリカ奪還の日も遠くはないと裏付ける物証にする
必然的にライセンサーにとっていいシーンをチョイスすることになるが映像は加工無しの真実

当日は非武装
最初は相手の言い分から語ってもらいこちらの話を聞き入れやすくする土壌作り
話したがらないなら言葉をかけ反応を引き出す
「…どうして、そこまで信用してない…ですか?
「子供が、いないのは…?
「…人類救済政府を、頼るのは…つまりは、消去法。今まで、待たされた分…疑いが、あっても…縋る。…そうでしょう?
“SALFよりは信じられるから”という部分を引き出し突っつく
反論から今のSALFは違う、今のライセンサーは多大な犠牲も払わずインソムニアを破壊しエルゴマンサーを撤退・撃破した、何れアフリカも奪還するという当事者からの言に繋げる
30年待たせた上でまた待ってもらうのは酷だがこちらが確実に将来の安全が確保される
「数年待って、絶対生きるか…死ぬかもしれない、不確実に頼るか…考えて欲しい。…信じて
誘導は入れても、個人に難民問題を解決できる力はないからこそ選択してもらうことを重視

  • 戦場のピアニスト
    化野 鳥太郎la0108
    人間39才|ネメシスフォース×スピリットウォーリア

◆事前準備
ネザー陥落やナディエージダ起動の映像、画像資料を収集
サンドウィッチなど軽食を作る(酒は×

◆最初に
・丸腰なのを伝える
・きちんと話がしたい、暴力沙汰は嫌だと伝える
・軽食を振る舞う(毒見が必要なら食べて見せる/落ち着いて話する為
・出来れば立食形式にし乱闘し難く
・視線を合わせ壇下で話をする
・攻撃されても反撃しない
・信じ続ける

◆伝えること
視覚的な資料でわかりやすくロシア戦を説明
質問があれば随時対応
どんな質問に対しても真摯に答える
対話は基本1人と1人で、圧をかけないようにする
一方、ネザーでどのような人間迫害が行われたか為に
それらから歯を食いしばり立ち上がってダンテやナディエージダを作ったノヴァ社
戦い続けた現地の人々、SALFの現地職員
勝利の影に決して諦めない人々の輝きがあったことを
「あんた達の力が必要なんだ。頼む」

「あんた達が長い間、どれだけの辛酸を舐め戦い続けたかは想像を絶する
同胞を守る為により強き者に縋りたい気持ちもわかる」
「だが、だがだ! 期は満ちた! 俺達はやれる! 勝ってアフリカを救うことができる!
漸くだ。いろんな奴の苦渋を以て漸く! ここまで来たんだよ!!」
「その時に肝心のあんた達がいねえのはよ、俺ぁ困っちまうよ……」

「全ての元凶たるナイトメアを許しちゃいけねえよ
未来に子供達が生きるのは、あんた達の愛したアフリカであるべきだ」
「命と土地だけじゃねえ。この世界を生きる人類の誇りを取り戻す!
俺は負けねえぞ。その為なら前線で剣になり盾になる。何だって掛けてやる!」
真摯に何度も何度も何度も頭を下げ訴え続ける
「俺達は全霊を以てアフリカを、ひいてはこの世界全てを取り戻すことをここに誓いにきた!
俺はあんた達の勇気を信じる! だから信じてほしい、俺達の力と人類の勝利を!!」

「今度こそ、共に倒そう。必ずだ」

相談には参加せず沈黙を貫く
ハムディを逃さぬよう監視し事が済んだ際、姿を暗ませる前にハムディの後を追う。


演説の邪魔はしねー約束でしたが、そのあとの保証は約束してねーですよ。
説得の成否がどうであれ任意同行レベルだが応じるよう簡潔に伝える。

各地でこんな事を続けたところでしわくちゃのその皺が増えるだけで
お前が望んでいるものなんて何一つ得られねーと思うです。

30年も耐えた末に、疲れたからって周りを巻き込んで死に場所を求めている
私にはそんな風にしか見えねーですね。

人類救済政府、ですか? 尤もらしー名前なんか付けちゃってまあ…(嘲笑う)
(一呼吸おき)
では、提示されたその僅かな希望に縋り
また裏切られてしまったら、どうするんです?
みんなで決起でもしやがるんですか?
そんな力など残されてもいない癖に、だめだったらもう破滅?
それは希望を掴もうとしている者の判断じゃねーです、ただの自殺です。
お前ひとりで死ぬってんならそれも構わねーですが、
精神も肉体も疲弊しきった同じ境遇の者たちをも巻き込むのはいただけねーですね。

30年も…そこまで耐えてきたんなら
あともう少しだけSALFを信用したって構わねーじゃねーですか

そっとしわくちゃの手を握り、同行を求める。

ハムディの演説はしっかりと聞いて心に刻む。
人が人である自由は、戦わなければ得られない。
なら戦えぬ者はどうすればいいのか。勝ちそうな相手につけばいい。非常に合理的だ。
だからこそ人類救済政府へ付くという選択肢は、決して非現実的なものではない。

それを踏まえた上で基本壇上には立たず、周囲の人の説得に従事。
武力やそれに類する行為は一切せず、振われてもあえて避けない。義手は手袋と長袖で完璧に隠す。
他仲間の説得とそれによる周囲の様子を見つつ、そもそもナイトメアの主食は人間の感情であり、インソムニア2ヶ所が落ちたことによる食糧確保率の低下を考えてもナイトメアを過剰に増やす利点が彼らにない事、
むしろ上記の理由から、食料や使徒化等良いように扱われる可能性もあることを示唆。
何より向こうに今動く理由があり、手札を切った以上遠からず派手な戦場になるだろう。戦火に身を投じに行くのも同義ではないのか?という警告も合わせて。

彼女の演説の通り、ニュージーランドでは確かに敵は此方を侮っていた。
だがロシアはその前提が違う。至高天はどんな理由であれその総力をもって人類を潰そうとし‥この世界はそれに打ち勝った。
漸くそれだけの力を付けたということだ。あんたらが耐えた数十年は決して無駄ではなかったと俺は思う。此処で諦めるのは勿体ない。
‥‥次は勝つよ。もう少しだけ信じてやってほしい。あんたらが人のままで帰れるようにしてみせよう

■行動
スキル適宜使用、武器は持たない
人の中に入って声掛け、苦しみには共感し否定はしない
言い分があればその都度聞いてから落ち着いて語る
様子を伺い先日のロシア戦線の映像を見て貰い、胡蝶で蝶を出してランプに纏わせる
荒れそうな時はそちらへ蝶を飛ばし気を逸らして落ち着かせる

■説得
この力はこんな使い方もあります…傷だけでなく心も癒し、護る力です
皆さんの選択が、どんな未来へ続くのか視る事は叶いません
だから私も後悔の無いように伝えます

人類救済政府に協力し「より高位な存在に生まれ変われる」とは…その後の詳細は現状不明です
どんな姿に変わるか、苦しみの中で自我を保ち生きる事になるかも解りません
この中にも、そうした不安を漠然と抱えている方もいらっしゃるのでは?
その懸念があるうちは、私は貴方達を全力で止めます

先日の防衛戦の様子を見て頂けませんか?
今私たちは、命を賭して目の前の問題をひとつずつ解決しています
勿論アフリカの事も向き合います
30年は…長く苦しい時間でしょう
誰もが己の意思で、望む場所で過ごしたい筈で、それが奪われる道理はない
必要な犠牲など、ありません

私ひとりでは、手の届くものしか護る事が出来ません
掴み切れずに零れ落ちる犠牲をひとつでも減らす為、ひとりでは届かぬものを護る為に、私はSALFに居ます
もう少しだけ、猶予を頂けませんか
誰かに導かれるのではなく、貴方達自身の意思と手で、憧れと夢を…望む未来を掴んで
その為に、道はひとつではない事を証明します
もしこの言葉を違えたその時は、この首でも命でもお好きにして頂いて結構ですよ

  • ちょっとだけ現実主義
    桐生 柊也la0503
    人間15才|セイント×スナイパー

NZの時とは違い知識や情報を持った上での不信という点は重視すべきだろう
一括りのカテゴリとして見るのでは無く向こうのプライドを尊重し
お互いにそれぞれの考えを持つ人間として接する姿勢で臨むべきだろうな
ナイトメア以前からアフリカとヨーロッパの間では民族的な差別や確執があったと聞くし
30年耐えて今偽りの希望に縋り付くのは戦況の変化も影響が在るのでは無いか

人の中で
30年希望を消さなかった…凄いですね
どうしてそんなに強くなれたんですか?

NZやロシアは取り返したのにどうしてアフリカは…そう思われても仕方がないかもですね
でも…ライセンサーもそんなにお偉い訳ではないんです

話すのはロシアで絶望した挙句使徒になろうとした人々の救出依頼のこと
12人のうち6人生存していれば成功と言われた依頼で救出出来たのは3人だけ
半年前、一体のエヌイー相手にそれが精一杯だった
そんな躓きを何度か経てやっとインソムニアに手が届くまでになった
守るだけで手一杯から世界を取り戻す戦いは今やっと糸口を掴んだ
だけどNZもロシアもライセンサーだけの力では進む事は出来なかった
支えてくれた人、不信をぶつけつつもそれで気付かなかった道を示してくれた人
沢山のそんな人がいたからここまで来れた
自分達は一歩一歩進むしかなくてもう待てないというかもしれない
それでも僕はあなた達に共に歩んで貰いたいと思います(礼)

【心情】
アフリカ戦はナイトメアだけじゃなく過去の、
敗北の記憶とも戦わなければいけないのね。

【目的】
人類救済政府への勧誘阻止

【行動】
「ここに来たのは、貴方たちの選択の手助けをするためよ」
「一方の話だけを聞いて選ぶのは、公平と言えないでしょう?」
強引な阻止は反発を招くと考え、まずイムソムニア攻略の話が
事実であることを伝え、自分たちが当事者であることを話す。

「人類救済政府が突然あんな声明を出したのは何故だと思う?」
「イムソムニアの撃破を受けて、彼らも行動する必要に迫られた」
「遠い異国での戦いがアフリカの情勢を動かしたのよ」
「今すぐアフリカに乗り込んで勝つとは、残念だけど言えない」
「けどこの30年、積み上げてきたモノが実を結び始めたの」
機を見て壇上にあがり現状が動く可能性、希望があることを話す。

「…私はアフリカが陥落した後に生まれたわ」
「ピラミッドもキリマンジャロも、映像でしか知らない」
「だから必ずアフリカを取り戻して、この目で見に行きたい」
「その時に貴方たちと再会するために、あと少し耐えて欲しい」
最後にライセンサーとしてではなく、自身の気持ちを伝える。

>アイザック
「報告は必要だと思うけど、処分で戦線離脱なんてさせないわ」
「アイザック・ケインは欧州に必要な人材、私はそう報告する」
「それと貴方とご家族に…欧州を守ってくれてありがとう」

  • アイスの女神
    桃簾la0911
    放浪者22才|グラップラー×スピリットウォーリア

故郷を想う気持ちは、わたくしも分かります…
ですが本当に思い描く通りの帰郷なのか、見定めて欲しいとも思います

■準備
アフリカの地図帳、写真集、図鑑等の書籍入手

■行動
武装は一切行わず丸腰で
先に人々の話を聞く仲間を待って後、皆に聞かせる形でハムディと対話
佇まいは凛と礼儀を尽くして
「わたくしは桃簾、放浪者です。幾つか聞かせて下さい、ハムディ

「アフリカへ渡った者達のその後は、何故分からないのでしょう
宗教でも商品でも体験談やレビューがあった方が後続を増やせる
実際に幸せならば示せば効果的なのに、何故それを明かさないのか
「人類救済政府は口約束以上のものを示しているのでしょうか

檀上にはあがらぬが全体へ向けて
「わたくしは異世界の者、はっきり言ってしまえば地球の為に戦う義理はありません
それでも命を懸けて戦うのは故郷へ帰る為です
信じられずとも利用したら良い、あなた方と同じく故郷を望むわたくしを
同じ目的の為これからも命を懸けましょう

ナイトメアを生み出す為のNZの冷凍睡眠
自我を失い使徒となった露のレヴェルも説明
インソムニアを複数討ちもう防衛一辺倒ではない
「これまでの10年30年と、これからの1年はきっと違うはずです
「けれど選ぶのはあなた方ですので…

「わたくし地球のアイスが大好きです
アフリカで美味しいアイスは何でしょう? 是非食べてみたいです
「アフリカのことを教えてくれませんか。わたくし達が戦う力の源は想像力ですから
書籍を持って人々の中へ
本を見ながら想い出や他愛のない話を聞かせて欲しい
自分も電気や地球レベルの技術がない故郷について懐かしく話したい

ハムディの演説後まずは人々の話を聞いて、その後に人類救済政府に同調する(フリをする)
話を聞いてもらいやすくするため否定ではなく賛同から入り、そっち側の視点から順序立ててナイトメア側に付く上での疑問点を洗い出して人々に周知させる。この後の皆の説得の足掛かりにするため。

自我を残したまま高位の存在であるナイトメアになれるなら案外悪いことじゃないかもな。
正直、命がけで戦うのも疲れてきたんだよね…それに俺は放浪者で色々と余所者扱いされるしさ…。
生き残るための選択肢としてはそれもアリか。

(ハムディに向かって)
なあ、俺も人類救済政府に入るのを検討してみたいんだが、ちょっと気になることがあるんで質問良いか?
今まで俺は結構ナイトメアと戦ってるんだけど、俺でもナイトメアに認めてもらえるのかな?
もし認められなかったら、その人らはどうなるんだ?

人類救済政府に協力って何をすれば良いんだ?
何も貢献せずに受け入れてもらえるわけないだろうし…
テルミナス様に賛同しない人類と戦うことになるのかな?

もしナイトメアになったら食事は知的生命体を捕食することになるわけか…あんまり美味そうじゃないなぁ。
そういやアフリカには餌となる人間はどれだけ居るんだろう?
もし捕食し尽くしたら、餌を得るために結局アフリカを離れないといけないんじゃないの?
→(もし「ナイトメアにならない選択肢もある」と返答きたら)
人間のままでもいいのか? あ~、でもその場合も、もし他に餌となる人類が居ない状態が続いたら…いつまでも捕食しないでくれんのかな?

ナイトメアの不審点をある程度周知出来たら、その先の説得は他の味方に任せる。
味方の説得を聞きながら、適当に相槌を打つ。
う~ん、そうか…それじゃあナイトメア側に付いた方が生き残れる可能性が高い、とは言い切れないか…
やっぱ人類救済政府に入るのは止めよっかなぁ

非武装の普段着で参加

人々の間に入って、同じ目線で
敬意を持って、丁寧な口調で話すよ

僕はまず、皆さんに親近感を持ってもらって、話を聞いてもらえる雰囲気作りをしたい
今は不信感で聞く耳を持たない状態だから

簡単な挨拶、自己紹介をしたあと

「僕は放浪者なので、皆さんから見たら、宇宙人みたいなものだと思います。
地球に無関係の存在などは信用できないとお感じでしょう」

皆の表情や反応を確認しながら話を進める

「生まれ育ちは違うけれど、僕も故郷に帰る手段を持たない身……。
故郷を切望する気持ちは同じだと思います。
だから僕は、同じ気持ちの人の力になりたい」

「待つのはもう限界。
けど、同胞と結束してアフリカに渡ったとしても……。
ナイトメアにどのように扱われるか分からない不安は消せない。

力ずくで妨害されるリスクもあるのに、ライセンサーをこの集会を参加させた理由。
ライセンサーとナイトメア、どちらが自分たちの幸せを取り戻してくれるのか。
やはり、可能ならナイトメアではなく、人と手を取り合って、故郷を奪還したい。
それを託せるかどうか、最終審判の機会を頂いたのだと思います」

「ロシアではエルゴマンサーを倒したり、少しずつ我々は力をつけています。
聞き飽きた言葉かもしれませんが、あと少しだけ……お時間をいただけませんか。
ライセンサーを利用する、くらいでも構いません」


 アフリカ奪還の日も遠くはない。それを裏付ける物証を用意する必要がある。
 常陸 祭莉(la0023)はサンクトペテルブルク防衛戦の映像の手配を、アイザックに頼んでいた。準備できた映像はライセンサーのかっこ良いシーンばかりだが、加工無しの真実だ。
「……チョータロー。機材の準備、終わった」
「こっちもサンドウィッチの用意できたよ。お疲れさん」
 化野 鳥太郎(la0108)が明るく笑うと、祭莉は小さく頷いた。
 ここにいる人たちがアフリカに向かっても、祭莉にとって他人事なのは事実だが、周りがそう思うとは限らない。少なくとも目の前にいる化野は、困っている人を放っておける人間ではない。
(シルヴァの受け売りだけど……うまく話すやり方で、踏み止まる方に……)
「こっちも資料の用意できたよ」
 ケヴィン(la0192)はロシアでの最終決戦の資料を纏め、ナディエージダ起動時のライブ音源を用意した。音楽で場の空気を和ませるのも悪くない。
 個人的に化野のピアノが好きだからという理由は心の中だけで。
 準備を終え、ハムディの演説をしっかり聞いて心に刻む。
(人が人である自由は、戦わなければ得られない。なら戦えぬ者はどうすればいいのか。勝ちそうな相手につけばいい。非常に合理的だ)
 難民達にとって、人類救済政府へ付くという選択肢は、決して非現実的なものではない。それを踏まえた上でなお、こちら側に残った方がメリットがあると示す必要がある。

 桃簾(la0911)もいそいそと鞄の中から書籍を取り出す。アフリカの地図帳、写真集、図鑑。
(故郷を想う気持ちは、わたくしも分かります……ですが本当に思い描く通りの帰郷なのか、見定めて欲しいとも思います)
 難民の気持ちを理解する事が説得への道筋だ。

 ジュリア・ガッティ(la0883)の青い瞳は、憂いを帯びていた。
(アフリカ戦はナイトメアだけじゃなく過去の、敗北の記憶とも戦わなければいけないのね)
 負け続け、自信を失った人々の顔をじっと見つめた。

 桐生 柊也(la0503)もまた考える。ニュージーランドで現地住民の不信を取り除いた事があるが、あの時とは違い、知識や情報を持った上での不信である。そこは重視すべきである。
 『アフリカ難民』とカテゴライズせずに、彼らのプライドを尊重し、それぞれの考えを持つ人間として接する姿勢で臨むべきだろうなと考える。
(30年耐えて今偽りの希望に縋り付くのは、戦況の変化も影響が在るのでは無いだろうか)
 過去30年間と、この一年は全くの別物だ。急速にSALFが力を付けるのと同時に、今まで手加減をしてきたナイトメアの攻勢も激化している。迷うのも当然なのかもしれない。



 何のためにここに来たのか問われ、ジュリアは堂々と答えた。
「ここに来たのは、貴方たちの選択の手助けをするためよ。一方の話だけを聞いて選ぶのは、公平と言えないでしょう?」
 強引な阻止は反発を招く。ここには対話の為にきたのだと示したい。
「私たちは武器を持ってきていません」
 来栖・望(la0468)は愛用の杖さえ置いてきた。
 攻撃ではなく癒やし手として、回復技を見せようかとも考えたが、その為には武器を持ち込む必要があり、警戒させてしまうと断念した。

 グザヴィエ・ユリエル(la3266)は普段着のスーツ姿でここに来た。頭を下げて挨拶をする。
「僕はグザヴィエと言います。よろしくお願いします」
 丁寧な口調と物腰の柔らかな雰囲気に、敵意を感じなかったのだろう。難民達は無言でじっとグザヴィエを見た。
 人々の間に入って、同じ目線でゆったりと語りかける。
 対話の始まりは、自分の事を知ってもらう事。まずは話しが通じる相手だという信頼を得たい。
「僕は放浪者なので、皆さんから見たら、宇宙人みたいなものだと思います。地球に無関係の存在などは信用できないとお感じでしょう」
 表情や反応を注意深く確認しながら、グザヴィエは話を進める。
「生まれ育ちは違うけれど、僕も故郷に帰る手段を持たない身……。故郷を切望する気持ちは同じだと思います。だから僕は、同じ気持ちの人の力になりたい」
 故郷を切望する気持ちと聞いて、人々の態度が微かに和らいだ。

 続けて祭莉は問いかける。
 対話の第二段階は相手の話を聞くことだ。言い分を語ってもらい、こちらの話を聞き入れやすくする土壌を作る。
「……どうして、そこまでライセンサーを、信用してない……ですか?」
 不満があれば先に吐き出させた方が、ガス抜きになるかもしれない。
 祭莉の言葉を呼び水に、次々と不満が湧き上がる。アフリカがどうなってるか知りたいと聞いても、何もわからないと言われるだけ。質問する度に段々邪険にされた。
 男の一人が苦々しく吐き捨てた。
「イエラペトラの時は、特に酷かった」
 エルゴマンサーが支部に入り込み、大量のナイトメアがクレタ島を襲う危機的状況。副支部長がアフリカ難民の居住地域を犠牲にする作戦を考えたと噂で聞いた。
 実行はされなかったが、捨て駒にされかけた。
「冗談じゃない! だからレティムノに移ってきたんだ」
 望は丁寧に頭をさげ、心から謝罪を見せる。
「その副支部長は問題があります。辛い思いをさせてしまって、申し訳ありませんでした」
 苦しみには共感し否定はしない。共に分かち合う所から始めたい。

 柊也は話を聞きながら思考を巡らす。ナイトメア以前から、アフリカとヨーロッパの間では、民族的な差別や確執があったと聞く。一部のライセンサーが偏見で動くかもしれない。
 だがそういうライセンサーばかりではないのだと示さなければ。

 不満を聞き終わった所で、祭莉は問いかける。
「……人類救済政府を、頼るのは…つまりは、消去法。今まで、待たされた分……疑いが、あっても……縋る。……そうでしょう?」
「SALFより人類救済政府の方がマシだ。俺達を人間扱いしてくれてるしな」
 『SALFよりはマシ』という言葉を引き出すこと、それは祭莉の狙いではあった。
「子供が、いないのは……? 人類救済政府が安心なら、連れてくれば、いいのに」
「それは……まずは代表が聞きにきて、皆に伝えれば良いと思ったからだ」
 言葉の勢いが弱まった。完全に人類救済政府を信頼したわけではなく、まだ半信半疑なのだろう。

 まだ迷いが残る人々を見て、詠代 静流(la2992)は考えた。人類救済政府に同調するフリをして、賛同から入り疑問点を洗い出す。
「自我を残したまま高位の存在であるナイトメアになれるなら、案外悪いことじゃないかもなあ、俺も人類救済政府に入るのを検討してみたいんだが、ちょっと気になることがあるんで質問良いか?」
 ハムディへの問いかけに会場がざわついた。まさかライセンサーが人類救済政府に入ってみたいと言うなんて思わない。

 人々を説得する仲間達の中で、ギャラルホルン(la0157)だけは沈黙を貫いた。
 その視線はハムディだけを見据え、逃さぬよう監視する。ただその一点に集中するのみ。



「自我を残したまま高位の存在であるナイトメアになれるなら、案外悪いことじゃないかもな」
 普段は気だるげな静流だったが、今は興味津々という雰囲気で質問を続ける。
「正直、命がけで戦うのも疲れてきたんだよね……それに俺は放浪者で色々と余所者扱いされるしさ……。生き残るための選択肢としてはそれもアリかなって」
 演技とは思えぬほどに、その言葉には共感が集まった。難民達もまた、ヨーロッパの中で『余所者』として阻害されていると感じてきたから。
「今まで俺はナイトメアと戦ってるんだけど、俺でもナイトメアに認めてもらえるのかな? もし認められなかったら、その人らはどうなるんだ?」
「ナイトメアに認めてもらえるか、認められなかったらどうなるか……それを決めるのはテルミナス様だ」
 痛い所を突かれたように、ハムディの表情は苦々しい。
「人類救済政府に協力って何をすれば良いんだ? 何も貢献せずに受け入れてもらえるわけないだろうし……テルミナス様に賛同しない人類と戦うことになるのかな?」
「テルミナス様の為になると考える事を、できる範囲でやっていく。人類がナイトメアの支配を認めれば、戦う必要は無い。少なくともわしに戦う能力などない」
 戦う必要はないという安心、同時に疑念もわき上がる。何をすれば認められるのか。貢献の具体性が乏しい。
「もしナイトメアになったら、食事は知的生命体を捕食することになるわけか……あんまり美味そうじゃないなぁ。そういやアフリカには餌となる人間はどれだけ居るんだろう? もし捕食し尽くしたら、餌を得るために結局アフリカを離れないといけないんじゃないの?」
「わしも人間を食べたいとは思わないが、ナイトメアになった後に、捕食が必要か知らん。アフリカに行けばわかる」
 先の事は考えていない。わざと考えないようにしている。そういう風にも見えた。

 すっと桃簾が手を上げた。その佇まいは凛としている。
「わたくしは桃簾、放浪者です。幾つか聞かせて下さい、ハムディ」
 美しい所作で謝辞を伝えると、可憐な唇を開いた。
「アフリカへ渡った者達のその後は、何故分からないのでしょう? アフリカ行きを勧めるなら、体験談があった方が説得力があると思うのですが」
「わしはまだアフリカに帰っていない。同志からも噂も聞いてない」
「噂も聞いていない? 実際にアフリカが幸せならば、それを示せば効果的なのに、何故同志はそれを明かさないのでしょうか。人類救済政府は口約束以上のものを示しているのでしょうか?」
「……」
 ハムディは沈黙した。その問いへの答えはない。テルミナスに会った事すらないのだから。
「何故、信用できるのです?」
「……わしは、人類救済政府の人間に助けられた事がある」
 食べるものに困る程の暮らしの中で、手を差し伸べたのは人類救済政府の人間だった。
 施しには裏があり、信用させ組織に引きずり込む。人を支配するテクニックだと桃簾は考えた。

 望は一歩踏み出して、微笑みながら語りかけた。
「人類救済政府に協力し『より高位な存在に生まれ変われる』とは……その後の詳細は現状不明です。どんな姿に変わるか、苦しみの中で自我を保ち生きる事になるかも解りません。この中にも、そうした不安を漠然と抱えている方もいらっしゃるのでは?」
 望の言葉に何人も頷いた。『生まれ変わる』と言われても、よくわからない。
「その懸念があるうちは、私は貴方達を全力で止めます」

 室内に重い沈黙が漂った。人類救済政府に不安はあるが、ライセンサーを信じ切れない。
 そんな迷いを吹き飛ばすように明るい声が響く。
「食事でもしながら、じっくり話をするのはどうだ?」
 化野はテーブルにのせたサンドウィッチに囓りつき、にししと邪気のない笑顔を浮かべた。食べ物に毒は入ってないと示し、場を和ませる。
 人々は軽食に手を伸ばそうとはしなかったが、ゆるっとした空気に、警戒心が緩んだのは確かだ。

 そこでジュリアの言葉が響く。
「人類救済政府が突然あんな声明を出したのは何故だと思う? ニュージーランドとロシアのイムソムニアの撃破を受けて、彼らも行動する必要に迫られたのよ」
「……本当にイムソムニアが撃破されたの?」
 噂に聞いていたが、信じがたい。女が質問すると、ジュリアは堂々と胸をはって答える。
「事実よ。私達がその当事者だから。遠い異国での戦いがアフリカの情勢を動かしたのよ」
 遠い国の話が、自分達にも関係する。そう言われて気にならないわけがない。ライセンサー達の話を聞いてみようかという空気になった。



 ライセンサー達は、イムソムニア攻略戦について、一人ずつ語り出す。
 桃簾はニュージーランドを思い出し、悲しげに目を伏せた。エネルギー源として人々が冷凍睡眠で生かされていた。
「決して健康でも幸せでもありませんでした」
 アフリカに行けば同じ事になるかもしれない。そう不安を滲ませて。

「ロシアはもっと酷かったな。この資料を見てくれないか。質問があれば何でも答えるから」
 化野が呼びかけ、ケヴィンが纏めた資料を人々に配る。
 ネザーでの人間迫害。自我を失い使徒となったレヴェル。人間を材料にした使徒の脅威。目を背けたくなる様な事実を突きつけ、ケヴィンは冷静に語りかける。
「そもそもナイトメアの主食は人間の感情だ。インソムニア2ヶ所が落ちて食糧確保率の低下しただろう。ナイトメアを過剰に増やす利点が彼らにない。アフリカに行ったら食料や使徒の材料として良いように扱われる可能性もある」
 資料を見て、話を聞いて人々は青ざめた。
 静流は相づちをうつように、言葉を重ねる。
「う~ん、そうか……それじゃあナイトメア側に付いた方が生き残れる可能性が高い、とは言い切れないか……やっぱ人類救済政府に入るのは止めよっかなぁ」
 アフリカに行くのは危ない。今ならまだ引き返せる。そう印象づけていく。静流に共感仕掛けていた者達は、それに引きずられ、ざわついた。

「テルミナスが手札を切った以上、遠からず派手な戦場になるだろう。アフリカに行く事は、戦火に身を投じに行くのも同義ではないのか?」
 ケヴィンの警告に男は問うた。
「……じゃあ、あんた達が代わりにナイトメアを、すぐ倒してくれるのか?」
 ジュリアは悲しげに小さく首を横に振った。
「今すぐアフリカに乗り込んで勝つとは、残念だけど言えない。けどこの30年、積み上げてきたモノが実を結び始めたの」
「何で他は良くて、アフリカはダメなんだ」
「ニュージーランドやロシアは取り返したのに、どうしてアフリカは……そう思われても仕方がないかもですね。でも……ライセンサーもそんなにお偉い訳ではないんです」
 柊也は冷静にイムソムニア攻略の困難さを説いていく。
 ロシアで絶望した挙句、使徒になろうとした人々の救出任務。
 12人のうち救出出来たのは3人だけ。半年前、エヌイー相手にそれが精一杯だった。
 圧倒的な力量差。直接この目で見た悲劇と絶望。それでもライセンサーは諦めず、希望に向けて歩みを止めなかった。
 躓きを来り返し、やっとインソムニアに手が届くまでになった。守るだけで手一杯から世界を取り戻す、やっと糸口を掴んだ。
 柊也の実感の籠もった語り口に、ロシアでの激戦の様子が伝わってくる。

 ケヴィンもその話に続いた。
「テルミナスの演説の通り、ニュージーランドでは確かに敵は此方を侮っていた。だがロシアはその前提が違う。至高天はどんな理由であれ、その総力をもって人類を潰そうとし……この世界はそれに打ち勝った」
 エンピレオ攻略は過酷だった。敵に侮りも躊躇いもなく、人類の前に確かに絶望があった。それでも諦めなかった。
 言葉で語るだけでなく、映像でロシアの様子を見せたいと、望は人々の間に割って入り、丁寧に頭を下げる。
「先日のサンクトペテルブルク防衛戦の様子を見て頂けませんか?」
 化野が祭莉を見やると、無言で小さく頷いて映像のスイッチを入れた。
 戦場に不釣り合いな程に、美しく響くピアノとキーボードの旋律が流れる。動画に後から編集で加えたのではない、この戦場で実際に演奏された曲だ。
 映像に映った、巨大なサンクトペテルブルクをすっぽりと覆う障壁に、人々は驚いた。
「防衛装置・ナディエージダ──ノヴァ社が希望と名付けた。これを開発するまでに、ロシアは大きな犠牲を払い続けてきた」
 30年前、ロシアにネザーという大穴を開けた破壊の光。そこから歯を食いしばり立ち上がって、ノヴァ社はダンテを作り、そして二度目の悲劇を防ぐために防衛装置を生み出した。
 大勢のライセンサーのIMDを統合し、都市一つを覆いつくすまでの巨大なシールドを展開する。
 見せられた映像は信じがたい物があった。

 天より来たる、眩くような一筋の光。都市を焼き焦がす敵の攻撃。それを前にしてライセンサー達は、一歩も引かなかった。
 仲間を信じて手を繋ぎ、心を通わせ微笑んだ望の美しい横顔。
 化野が音頭を取って、ライセンサー達は、勇気と共に軽やかに舞い、想いを込めて旋律を紡ぎ、希望を込めて高らかに唄った。
 生きる意思、守りたいという想い、心を一つにして。戦場に音楽をもたらした。
 その後ろの謎の人間ピラミッドに人々は首を傾げたが、不思議な団結力は感じられる。頂点でアイスを掲げる桃簾の表情も誇らしげだ。
 編集なしの記録だからカットしなかった。これもまたサンクトペテルブルク防衛戦の真実だ。

 そんなライセンサー達の結束の前に、ついに至高天とナディエージダが激しくぶつかり合った。
 衝撃に、痛みに、必死に耐える。仲間を信じて。そして見事シールドは耐えきった。
 恐ろしい戦場であっても、明るさを失わないライセンサー達の前向きさに、人々は驚くと共に感動を覚えた。

 祭莉はこの一年を振り返る。名古屋ではエルゴマンサーの圧倒的な力に、歯が立たなかった。ずいぶん前の事のように感じられる。
「……SALFに頼りにならない? 昔は、そう……だったかも、しれない。でも、今のSALFは違う、インソムニアを破壊しエルゴマンサーを撤退・撃破した」
 確かにこの足で戦場を駆け抜け、この手で強敵を討ち滅ぼした。それは紛れもない事実だ。
 その横でケヴィンも手を握りしめる。人々を恐れさせない為に、手袋と長袖で隠した義手。その手を振るって今まで戦い続けてきた。
「インソムニアを破壊する。漸くそれだけの力を付けたということだ。あんたらが耐えた数十年は決して無駄ではなかったと俺は思う。此処で諦めるのは勿体ない」
 人類救済政府より、SALFの方が勝ち筋がある。SALFを見限るにはまだ早い。

 望も過去を振り返る。悲劇に絶望し、何度挫けても、なお立ち上がって戦ってきた。
「私たちは、命を賭して目の前の問題をひとつずつ解決しています。勿論アフリカの事も向き合います」
 涙ぐんだ女性の手をとって、望は労るように微笑んだ。
「30年は……長く苦しい時間でしょう。誰もが己の意思で、望む場所で過ごしたい筈で、それが奪われる道理はない。必要な犠牲など、ありません」
 化野も人々を労るように、まっすぐに視線を合わせた。
「あんた達が長い間、どれだけの辛酸を舐め戦い続けたかは想像を絶する。同胞を守る為に、より強き者に縋りたい気持ちもわかる。だけど全ての元凶たるナイトメアを許しちゃいけねえよ。未来に子供達が生きるのは、あんた達の愛したアフリカであるべきだ。命と土地だけじゃねえ。この世界を生きる人類の誇りを取り戻す! 俺は負けねえぞ。その為なら前線で剣になり盾になる。何だって掛けてやる!」
 だから信じてくれと何度も頭を下げた。

 必死に言の葉を紡ぐライセンサー達を見て、女性は声を震わせた。
「どうして……何で? 戦うの?」
 ロシアの映像を見て、ライセンサーの過酷さを知ったからこそ疑問に思う。こんな危険な戦いをアフリカでもしてくれるのか?
 桃簾は背筋を伸ばし、まっすぐに毅然と答える。
「わたくしは異世界の者、はっきり言ってしまえば地球の為に戦う義理はありません。それでも命を懸けて戦うのは故郷へ帰る為です。信じられずとも利用したら良い、あなた方と同じく故郷を望むわたくしを。同じ目的の為これからも命を懸けましょう」
 高貴な生まれの矜持にかけて、誓うのだと。

 人々と同じ目線で、語り続ける者達がいる中で、ジュリアは壇上にたって堂々と語りかける。
「……私はアフリカが陥落した後に生まれたわ。ピラミッドもキリマンジャロも、映像でしか知らない」
 絵が好きなジュリアの願いは『まだ描いたことのない風景を守りたい』当然30年前から人が足を踏み入れていないアフリカも、またその風景の一つである。
「だから必ずアフリカを取り戻して、この目で見に行きたい」
 アフリカを取り戻すのは、自分の為でもあるのだと。

「私ひとりでは、手の届くものしか護る事が出来ません。掴み切れずに零れ落ちる犠牲をひとつでも減らす為、ひとりでは届かぬものを護る為に、私はSALFに居ます」
 そう語りながら、望は桃簾に視線を移す。信頼できるライセンサーの仲間達と、協力して戦う。決して一人ではない。
 桃簾も微笑み返し頷く。一年前、望と共に戦った頃より、確実に強くなった。これからさらに強くなるだろう。
「これまでの30年と、これからの1年はきっと違うはずです。けれど選ぶのはあなた方ですので……」
 押しつけずに突き放し、桃簾はやんわりと考えさせる。

 その反対に化野は熱く語りかける。ロシアの資料を握りしめ、多くの犠牲を払った戦いを思い浮かべて。
「だが、だがだ! 期は満ちた! 俺達はやれる! 勝ってアフリカを救うことができる! 漸くだ。いろんな奴の苦渋を以て漸く! ここまで来たんだよ!!」
 真摯に何度も、何度も頭を下げ、訴え続ける。
「ロシアで戦い続けたのはライセンサーだけじゃない。ロシアの人々、ノヴァ社、SALFの職員。勝利の影に決して諦めない人々の輝きがあった」
 協力を求める用に手を差し出す。ここに集いし難民達の力も借りて、アフリカを戦い抜く。そう決意を込めて。
「あんた達の力が必要なんだ。頼む」

 柊也もその言葉に同意するように頷く。
「ニュージーランドもロシアもライセンサーだけの力では進む事は出来なかった。支えてくれた人、不信をぶつけつつもそれで気付かなかった道を示してくれた人、沢山のそんな人がいたからここまで来れました。自分達は一歩一歩進むしかなくてもう待てないというかもしれない。それでも僕はあなた達に、共に歩んで貰いたいと思います」
 戦いはライセンサーだけのものじゃない。一緒に歩いて欲しいと願い、深々と一礼した。

 ──ライセンサーから頼られる事。それが一つの分岐点だった。

 この地に居場所がないと感じるのは、貧しいからだけじゃない。この地の人々にとって、自分達は邪魔者でしかない。そう感じるから居場所がないのだ。
 しかし今、自分達が必要とされている。それは難民となったアフリカの人々に誇りを取り戻してくれた。
 不信から信頼へと、空気が変化していく。

 ずっと人々の顔を観察し続けたグザヴィエは気がついた。人々の気持ちが揺らいだのを。後一押しだろう。
 ぽんっと手を叩いて、わかったというジェスチャーをしてみせる。
「待つのはもう限界。だけど、同胞と結束してアフリカに渡ったとしても……。ナイトメアにどのように扱われるか分からない不安は消せない。そういう事ですよね?」
 グザヴィエのウィットに富んだ語り口に、人々は素直に頷いた。
「ロシアではエルゴマンサーを倒したり、少しずつ我々は力をつけています。聞き飽きた言葉かもしれませんが、あと少しだけ……お時間をいただけませんか。ライセンサーを利用する、くらいでも構いません」
 穏やかで、優しそうな言葉が、人々に水のように染みこんでいった。

 先読みの力を失った望には、この選択がどんな未来へ続くのか視る事は叶わない。だから後悔の無いように伝える。
「もう少しだけ、猶予を頂けませんか。誰かに導かれるのではなく、貴方達自身の意思と手で、憧れと夢を……望む未来を掴んで。その為に、道はひとつではない事を証明します」
 その覚悟を示すように、そっと手を首に添えた。
「もしこの言葉を違えたその時は、この首でも命でもお好きにして頂いて結構ですよ」
 命にかけても、約束を守る。可憐に微笑みながら、静かに、しかし強い意志を示す。

 仲間達の説得で、人々の心が動き始めた。そう感じた祭莉は、寡黙な口を開いて、たどたどしく語った。
「数年待って、絶対生きるか……死ぬかもしれない、不確実に頼るか……考えて欲しい。……信じて」
 30年待たせた上で、また待ってもらうのは酷だけど、こちらが確実に将来の安全が確保される。その確信はある。

「俺達は全霊を以てアフリカを、ひいてはこの世界全てを取り戻すことをここに誓いにきた! 俺はあんた達の勇気を信じる! だから信じてほしい、俺達の力と人類の勝利を!!」
 アフリカを取り戻す。化野の力強い言葉に、人々は心を打たれた。かつてこれほど強く宣言したライセンサーがいただろうか? 
 力強く語りかけたかと想うと、一転項垂れた。
「アフリカを取り戻した時、肝心のあんた達がいねえのはよ、俺ぁ困っちまうよ……」
 ここにいて欲しい。そう願う化野の言葉は切実だからこそ、人々に訴えかけるものがあった。

 ジュリアもまた、アフリカの空を夢見て願う。
「私からも。アフリカで貴方たちと再会するために、あと少し耐えて欲しい」
 ライセンサーとしてではなく、自身の気持ちを。共にアフリカを見たいと夢を語る。


 ライセンサー達の真摯な言葉が、熱い想いが、長年の不信を解きほぐしていく。
 人々の視線から、疑う様子は消えた。
 不確かな人類救済政府の希望より、ライセンサー達が訴える希望に光を見いだして。

 桃簾は写真集を取り出した。すり切れているが、確かに存在したアフリカの景色だ。
「アフリカのことを教えてくれませんか。わたくし達が戦う力の源は想像力ですから。想い出や他愛のない話を聞かせて欲しいのです」
 知ることは助けになる。力を貸して欲しいと言うように。
 問われてぽつりぽつりと語り出す。昔アフリカに住んでいた者、親から聞いただけだが、自らのルーツに想いをはせる者。語り継がれたアフリカの記憶を。
「わたくし地球のアイスが大好きです。アフリカで美味しいアイスは何でしょう? 是非食べてみたいです」
「アフリカは暑いから、冷たい食い物は美味いだろうな」
 その話を聞いて桃簾は密かに決意した。いつかアフリカでアイスを食べると。

 人々の話を聞く事も、心を落ち着かせるのに必要だろうと、柊也も問いかける。
「慣れない土地の中で、30年故郷に帰る希望を消さなかった……凄いですね。どうしてそんなに強くなれたんですか?」
「強くはない。ただ、生きる希望がそれくらいしかなかっただけだ」
 いつかアフリカに帰れる。だから今辛い日々を耐え抜けばよいと。耐え続けて、我慢の限界が来た。
 今までライセンサーに期待して、失望して、それを繰り返してきたのだろう。そう想いながら、ケヴィンはしみじみと言葉を零す。
「……次は勝つよ。もう少しだけ信じてやってほしい。あんたらが人のままで帰れるようにしてみせよう」
「今度こそ、共に倒そう。必ずだ」
 化野はにかっと笑って、サンドイッチを差し出した。今度は人々も拒まない。皆で食べながら、アフリカへの希望を語りあう。
 一般人もライセンサーも、共に戦う、共に歩む。それが希望に向けた道だから。


 賑やかになった人々から離れ、背を向けたハムディを目ざとく見つけたグザヴィエは問いかける。
「ライセンサーとナイトメア、どちらが自分たちの幸せを取り戻してくれるのか。やはり、可能ならナイトメアではなく、人と手を取り合って、故郷を奪還したい。それを託せるかどうか、最終審判の機会を頂いたのでは?」
 力ずくで妨害されるリスクもあるのに、ライセンサーをこの集会を参加させた理由。それはハムディの善意だったのでは?
「……そんな綺麗なもんじゃない」
 ため息交じりに紡がれた言葉は、苦々しく響いた。



 酒場の裏口から、逃げだしたハムディの前に、ギャラルホルンは立ち塞がった。薄暗い路地裏を、月明かりが照らし出す。
「演説の邪魔はしねー約束でしたが、そのあとの保証は約束してねーですよ。一緒に来てもらいてーです」
「……SALFの人間なら、当然だな。だが断る」
「人類救済政府、ですか?  尤もらしー名前なんか付けちゃってまあ……」
 ギャラルホルンは嘲笑う用に笑みを浮かべつつ、一呼吸を置いて告げた。
「30年も耐えた末に、疲れたからって周りを巻き込んで死に場所を求めている。私にはそんな風にしか見えねーですね」
 ハムディは返す言葉が見つからず、じっとその言葉に耳を傾けた。
「提示されたその僅かな希望に縋り、また裏切られてしまったら、みんなで決起でもしやがるんですか? そんな力など残されてもいない癖に、だめだったらもう破滅? それは希望を掴もうとしている者の判断じゃねーです、ただの自殺です。お前ひとりで死ぬってんならそれも構わねーですが、精神も肉体も疲弊しきった同じ境遇の者たちをも、巻き込むのはいただけねーですね」
 ハムディは苦々しく嗤う。同胞を巻き込んで道連れにしようとしたのは事実だ。
「ガキに諭されるとは、わしも焼きが回ったな」
「ガキじゃねーですっ!」
 不満げに口を尖らせつつ、そっとしわくちゃの手を握った。
「各地でこんな事を続けたところで、しわくちゃのその皺が増えるだけで、お前が望んでいるものなんて何一つ得られねーと思うです」
 ギャラルホルン自身はレヴェルに敵意はないし、興味もある。本人は認めないが、世話を焼きの気質がハムディをほっとけない。

 優しく両手で包みこみ、笑みを浮かべる。
「30年も……そこまで耐えてきたんなら。あともう少しだけSALFを信用したって構わねーじゃねーですか」
 ずっと険しかったハムディの表情が、一瞬だけ緩んだ。
「もっと早くにお嬢ちゃんみたいなライセンサーに出会っていたら、わしも変わってたかもな」
 闇夜を歩く自分に、手を差し伸べたのは人類救済政府だった。例えその施しに裏があって、利用されるだけであっても飛びつくしかなかった。

 あの時手を差し伸べたのが、ライセンサーだったら……。
 それはかなわないIFだ。最早後戻りはできない。ハムディの表情が暗くなり、鋭い目つきに変わる。

「『同志』は裏切れない。アフリカの同胞は人類救済政府の中に沢山いる。見捨てられない」
 その時ギャラルホルンも気がついた。店の外で殺気を放つレヴェル達の存在を。
 ただの人間で本気を出せば蹴散らす事も可能だが、仲間達の説得をぶち壊しにしたくない。
 薄らと笑みを浮かべ、ハムディはギャラルホルンの手を振り払った。
「心配してくれてありがとな。嬢ちゃん」
「心配なんてしてねーーーですぅ!!」
 背を向けて去って行くハムディをしばらく見つめ、ぽつりと言葉を零す。
「……バーカ」
 完全な悪人なら諦めもついたのに。悔しそうに唇を噛みしめ、仲間達の元へと戻った。



 集会が終わり、人々が帰っていく。示された希望に、表情を明るくして。
 じっと見守っていたアイザックへ、ジュリアは話しかける。
「アイザック・ケインはヨーロッパに必要な人材、私はそう報告する。処分で戦線離脱なんてさせないわ」
「ありがとう。嬉しいよ。でも……」
 罪だと自覚してやった。確信犯がSALFに許されるだろうか? そんなアイザックの迷いを振り切るように、祭莉は袖を引く。間違ってないと肯定するように。
「……アイザックのやり方は、合理的と、思う」
 元軍人であったケヴィンもまた、過去を思い出し頷いた。
「敵対組織との裏取引や二重スパイなんてのは、珍しいことじゃない。あんたは確かに成果を出してきて、今まさに大量の民間人流出を防いだ。その判断は合理的であり、戦い続けた証であり、確かに正義ではあったのだ……と、そう言えるよう努力しよう」
 罪の中の正義。それを責める気はない。

 望はふんわり微笑んで、自分の胸に手をあてた。
「この依頼を己の意思で引き受けたからには、私も共犯ですよ」
「共犯って、それはダメだ……君の主が黙ってないよ」
 アイザックは慌てたように、ストップというように両手を掲げた。望が共犯になるなら、自分もと臣下全員引き連れてやってきそうだ。

 民を統べる立場なら清濁併せのむ器量も必要だ。自分も同じ事もしただろう。そう桃簾はできてしまった。
「貴方の行動が無ければ救われなかった者も数多くいるでしょう。貴方が罪だと自身を責めても、わたくしが貴方を許します」
 凜とした眼差しで、胸に手をあてて堂々と言い放つ。誰が許さなくても、わたくしは許しますと。

 皆の言葉を聞いて、アイザックは想わず両手で顔を覆った。こんなの想定外だ。
 怒って当然なのに、誰も怒らない。合理的だと認め、優しい言葉を重ねられ、許すと言われた……かえって申し訳なくなる。
 それだけ自分を心配し、信頼し、気にかけてくれる。その思いが嬉しすぎて、涙腺も緩みそうだ。

 アイザックが慌てて困っている様子が珍しくて、望はクスリと笑みを零す。
「……ひとりで全てを背負わないで。貴方が過去に何をしてきても、これから何を起こそうと、信頼しています。頼ってくれてありがとう、これからも良しなに」
 まっすぐな信頼の言葉。それから目を背ける。それは最低の罪だろう。指で目元を拭って、とびきりの笑みを浮かべた。
「みんな、ありがとう。これからもよろしくね」

 しんみりとした空気の中、ジュリアは声をかけた。
「私からも一つ言わせて」
 ジュリアが生まれ育ったイタリアも、ナイトメアの危機にさらされ続けた土地。平和に生きてこれたのは、ヨーロッパ戦線で戦うライセンサー達のおかげだ。
「貴方とご家族に……ヨーロッパを守ってくれてありがとう」
 アイザックも、その兄も、父も、戦った過去の努力を認める。それは長年の苦労への何よりの報酬だ。



 後日。SALFがアイザックに下した処分は……。
「エオニア支部に左遷!?」
 アイザックは納得がいかないと首を振る。エオニア支部はヨーロッパ戦線の重要拠点の一つで、左遷といえない。今まで通り、アフリカ戦に向けて戦えるだろう。
「罪状に対して、処分が軽すぎます」
「使える人材を遊ばせておくほど、SALFに余裕はない。エオニアの支部長は良い人らしいな。お前みたいな正直者は、あの人の下が丁度いいだろう」
 どのような場所にも、表の顔と裏の顔がある。SALFにも。もっと冷酷な感情の元にレヴェルに通じる者もいるだろう。それに比べたら、アイザックの自白なんて馬鹿正直で、可愛げがあるくらいだ。
「それに、こんな嘆願を貰って、許さない訳にはいかないだろ。色男」
 そう言って取り出したのは、アイザックは必要な人材だという、ライセンサー達からの嘆願書だった。
 それを見てアイザックらしくない動揺ぶりを見せる。
「それ、は……」
 自分の為にと仲間達が動いてくれたこと。それが嬉しく、照れくさく、申し訳なくて。せめて罪への購いは、仕事で返さなければ。
 エオニアからアフリカへ。来るべき戦いに向けて、いまから万全の準備を整え始めよう。
 そうアイザックは心に誓った。

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