オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 【堕天】灰泥む嵐

連動 【堕天】灰泥む嵐 ガンマ

形態
ショート
難易度
普通
価格
1500(EX)
ジャンル
堕天 バトル  
参加人数
83~8人
予約人数
10010100
基本報酬
200000G
200SP
2000EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
4
締切
2019/05/15 20:00
完成予定
2019/05/29 20:00
機体使用
関連シナリオ
-

●テスト
 ロシア某所、廃墟の町。
 君達はアサルトコアに搭乗し、ノヴァ社最新作アサルトコア『ダンテ』の起動実験を行っていた。
 廃墟の町を実際の町に見立て、ナイトメアを模した的に攻撃を行うという、実戦に近い形の実験だった。
 ダンテは未だ試作機である。ゆえに不安定であり、調整もその都度行われている。今回もそうだ。休憩の合間にノヴァ社の技術者達がああでもないこうでもないとあれやこれやダンテの調整を行っていた。

 午前から始まった実験は、小休止を挟みつつ、現在は昼休み。
 君達はノヴァ社の面々が用意したお弁当を食べながら、アサルトコアの操縦で疲労した心身を休めていたことだろう。

 ダンテに乗るのはなかなか、いやかなり疲労する。
 感情を刺激し一点に偏らせることでIMD出力を増すというその構造は、搭乗者の心身に『憤怒』『憎悪』『恐怖』もしくは『幻痛』をもたらすのだ。
 搭乗者の負荷はかなり激しい。君達の中にもグッタリしている者がいることだろう。

 ――お弁当はカラッポになった。なかなかにおいしかった。
 技術者達は引き続きダンテの調整をしている。まだ時間はかかるとのことで、パイロットの休憩は延長された。仮眠する時間もあるだろう。

 君達は銘々の時間を過ごし……

「ナイトメアがこの近辺で目撃されたとのことです!」

 そんな声が、唐突に穏やかな時間を終わらせたのである。


●迎撃せよ!
 ――ダンテの調整は急ピッチで進められた。
 しっかりした休憩によってパイロットの心身も回復している。
 君達はアサルトコアに乗って、迫りくるナイトメアを迎撃することだろう。
 敵は飛行型。プレーンブースターを用いて白兵戦闘を狙うか、地上から射撃を行うか。建物の影に隠れればある程度は敵の目から身を隠すこともできるだろう。
 非戦闘員については既に戦域から撤退し、安全圏にて待機している。彼らの考慮は不要だ。

「正直――ダンテについては、否定的な意見もあります」

 コックピットの中、君達はノヴァ社の技術者から言われた言葉を思い出すことだろう。
「パイロットの精神に負荷をかける、ナイトメアの技術が用いられている――外道の兵器だと。しかし、そんな意見を捻り潰せるものがある。そう……『結果』です」
 試作機ながらも、ナイトメアを見事に撃破してみせた――そのような『結果』を知らしめることができれば、ダンテの評価はグッと高まる。世論の支持も得られる。それだけ開発もスムーズに進められる。
「なので……どうかよろしくお願いします、パイロットの皆さん。どうか勝利を!」

 ――君達の背には、ノヴァ社の威信と期待が、そしてダンテの未来がかかっている。

 勝たねばならない。足掻かねばならない者達の為にも。

●目標
ナイトメアの殲滅

●登場
ナイトメア『テンペスト』*6
 戦闘機のような外見。
 三体ずつの二チームで戦闘行動を行う。
 機動力に非常に優れる。
 白兵戦闘手段は持たない。物理・知覚射撃攻撃を行う。
 使い分けはまちまちだが、相手の防御の弱い方を学習して行使する傾向にある。
・ドッグファイト
 アクティブ。命中判定の際、対象の回避を大きくマイナスした状態で対決を行う。
・フルファイア
 アクティブ。対象の防御値を大きくカットした状態でダメージを算出する。
 このスキルを使用したナイトメアは、次のターン通常攻撃とスキル攻撃を行えない。
・リフレッシュ
 パッシブ。不利な状態異常やバッドステータスが付与された際、生命力を1d6点消費することで、直ちにそれを解除する。

▼アサルトコア:ダンテ
試作品故にデータとしての数値は不安定。毎ターン数値が変動すると認識して欲しい。
装備については搭乗者のACの装備品を用いるものとして扱う。
攻撃力超高、命中回避低。防御並。
毎ターン終了時、搭乗者の生命に2d6の実ダメージ。精神負荷による摩滅。
安全装置として、搭乗者の生命力が1になった時点で機能停止。

▽機体スキル「コード666」
アクティブスキル。行動ステップの直前に宣言でき、手番を消費しない。1シナリオ一回のみ宣言できる。
1T継続。毎ターン終了時に減少する生命が、2d6から5d6に変更される。
攻撃力と命中が大きく上昇。そのかわり、暴走状態(あらゆるリアクション=「回避、対抗スキル使用、射線妨害、防御」が行えない)になる。

▽機体スキル「過負荷暴走」
パッシブスキル。
生命が三分の一以下になると更に攻撃力が倍増する。「コード666」と倍率効果累積。
その代わり、常に暴走状態となる。

●状況
ロシア某所、廃墟の町。日中。
ダンテに搭乗する人数に制限はない。全員乗ってもOK。最低一人はダンテに乗ること。
ダンテ搭乗者はプレイングに明記すること。

●MSより
 こんにちはガンマです。
 実戦データ集め。前のシナリオと性能が違うのは、OP通り色々調整中だからとのことです。ノヴァ社の人達寝てるのかな……寝てなさそう……
 よろしくお願い申し上げます。

ダンテで出撃するわ。

メガコーポレーションもフィッシャー一強なのはあんま良くないのよね。
もっともっと各社がゴリゴリ鎬を削って、★7級のアサルトコアが出てもらわないと。
ってなワケでダンテね。まずはこいつのアピールから始めましょう。

ぶっちゃけ乗ってるだけで疲れる上に、火力が高い機体だから、早めの決着をつけたくなっちゃうのは仕方ない。
ただそこを焦燥感に駆られた行動にするんじゃなくて、良い意味での熱狂状態へと自身をコントロールできれば良し。

基本の戦闘スタイルは、建造物に身を隠した状態からの狙撃。
やっぱり生身で慣れたスナイパー的な立ち回りが一番しっくりくるしね。今回はコレで。
敵ナイトメアは複数機での運用が想定された個体っぽいので、まずはその連携を乱したいところ。
見かけ通りの機動力もあって、チーム三機でケッテを組まれると面倒極まりない。
身を隠した状態からの狙撃で、テンペストの編成を僅かにでも乱して、続く仲間の攻撃を当てやすくするわ。
ダンテはそもそも火力が鬼高いから、全員が当てにいくよりも、666使用者が当てやすいように、
相互フォローし合うのも良いかな、ってね。
一度数的有利さえ作り出せれば、後は押し切れる戦力差だとは思うので、肝心の序盤は支援役に徹する感じで。

ロシアもこのところロクでもないニュースばっかりだし、たまには景気の良い話でも提供してあげなくちゃね。

  • メシのメシア
    モーリーla0149
    放浪者18才|セイント×ネメシスフォース

ダンテに搭乗する

■心情
ダンテのテストも兼ねての実戦だね
長期戦はこちらに不利
なるべく短期決戦でカタを付けたいね!

■行動
ライセンサーの強さは、イメージする力の強さ!
午前中のテストで、ボクとダンテはすっかり打ち解けて、分かり合えた
いまではもうマブダチってやつだよ!
ボクとダンテはマブダチ!
そうイメージすることで、ボクのダンテは真の力を発揮できるんだよ!
「この戦闘にはマブダチの未来がかかってる!ボクに任せておいてね、ダンテ!」

作戦は、囮になる人がいるから
敵が囮の人を狙ってきたところを集中攻撃して各個撃破していく!
って感じだね

ボクは建物の影に機体を隠しつつ、敵編隊が射程に現れるのをじっと待つよ
できるだけ、味方と十字砲火になるような位置を取りたいな
敵編隊が現れたら、敵に向かって対空射撃!
「目標を確認!ノコノコ☆バルカン、射撃開始だよ!」

射程が届かないようなら建物の屋上に飛び乗って、距離を稼ぐよ
敵に狙われたらピョン!と飛び降りて建物の影に隠れてやり過ごす
ノコノコ族は臨機応変に対応できるよ!

継続ダメージで「もうダメだ!」な状況になったら
スキル【コード666】発動
アサルトソードに換装して敵に向かってジャンプ!飛行!
プレーンブースター点火!
近接戦闘で斬撃をお見舞いするよ!
力尽きる前に、一機叩き落としてやるんだよ

テストの間、私はずっとダンテのコクピットに居た。
自分の中で燻っていた憎しみや怒りが、再び燃え上がる感覚に浸っていたのだ。
敵が来る、その知らせを聞いて。私の笑みは歪んだ愉悦を表した。

「汝ら、一切の望みを捨てよ」

「今、門は開け放たれた」

『機体』
ダンテ

『戦術』
地上にて廃墟を遮蔽として利用し、敵の動きをよく観察し現実の戦闘機の軌道を念頭に入れながらバルカンによる偏差射撃対空砲火を行う。
目標は攻撃態勢に入った敵を優先し、一箇所に留まること無く常に有利なポジションを意識して戦う。
好機と見れば跳躍し、体術による踵落としや装備している槍を投擲し敵を叩き落とす。
リミットが近い場合可能なら、自分にハイヒールを使用する。

『心情』
一見冷静だが、著しい興奮状態にある。
戦闘データを取るというよりは、まるでダンテと融合したかのように振る舞い、望むのは敵の破滅のみ。
戦いの最中はとても幸せだ、鼻歌を口ずさみながら敵に風穴を開け、踊るように死を撒き散らす。
仲間が倒れても気にも止めずに戦い続けるが、合理的だと思えば協力するし、支援も惜しまない。

@心情
…ふふ、さぁ猿夢、参りましょうか~…♪
ノヴァ社の機体はダンテだけではないということ、ちゃんと見せないといけませんね~…♪
@目的
敵の殲滅、及びそのサポート
@準備
全員の位置を把握し全体に情報共有、その後も適宜位置確認
@行動
囮・誘導としてギラガースを起用、初手囮役としてテンペストを引きつけます。
ギリギリまでテンペストを引きつけます、この際敵の射程をある程度測れそうなら測りそれを全体に情報共有します

バルカンで弾幕をばら撒きながら敵の逃げ道を塞ぎつつ、味方の攻撃射程内へと追い込みます
この際敵の動きをよくよく観察します、明確にダンテを狙って行動している場合庇う行動を主体とし背後を取れるようなら不意打ちで狙撃します
自身もしっかり狙っているようであればフルファイアは回避行動、それ以外は防御を行います
フルファイアの識別が難しい場合は全て防御行動をとります

中盤以降、仲間と意思の疎通が難しくなった場合その仲間の補助を行います
具体的には敵の攻撃集中時、庇ったり物陰に押し込み被弾を回避させることを試みます

行動不能者が出た場合敵に狙われないよう物陰に移動させます

アドリブ絡み歓迎
ダンテに搭乗

技術自体に罪はない、使えるものは何でも使ってしまえと思ってるし
殺る気を増幅してくれる素晴らしいマシンとして気に入っている
頑丈な方なので生命減少も然程気にならない
不満があるとすれば生命力が減った『程度』で勝手に止まる事か
なお下記の言動は普段の戦闘時とほぼ同様
「丁度いい、ナイトメアを殺したいなあと思ってたところさ
「進め、ダンテ。ナイトメアを討ち滅ぼすために…!
「ナイトメアは死ね!
「あっははははっ!いい気味だ!ざまあ見ろ!

搭乗者の高い生命力を活かしてギリギリまで粘り
最後により確実に最大火力を叩きつける目論見
「折角の機会だ。どこまで火力が出せるか、お前達で試してやる…

中盤までは敵の数を減らすべく援護射撃に徹する
こまめに位置を移動しながら廃墟の陰に身を隠し
囮を攻撃すべく背を向けた敵をバルカンで撃つ

過負荷暴走が発動したらナイトメアの真正面に立つ
「さあ殺しに来いナイトメア!僕はここにいるぞ!
ソードに持ち替えコード666を起動
通常の戦闘機なら攻撃中は直進しがち、その隙を狙いブースターで飛ぶ
正面めがけて突進しながらすれ違いざまを狙って斬る

「ああ、疲れた…だけど、ナイトメアを殺した代償と思えば心地いいか

  • オールラウンダー
    坂本 雨龍la3077
    放浪者15才|グラップラー×セイント

 仰向けの伏射姿勢で廃墟に身を隠す。

 ――死ぬかも知れないのに。戦うの、怖くないんですか?

 故郷の師はかつて、その問いを鼻で笑った。怖いに決まっていると。だがそれでいいと。戦場を怖れ、死を怖れ、それでもなお戦える奴が最後まで立っている。
 怒りは五体を漲らせ、怖れは五感を研ぎ澄ます。憎しみの炎に、己の魂を投げ入れろ。それは、野生が賜った武器に他ならない。

 ――戦場では笑え。逆境でこそ笑え。獣のように。


 コード666、起動。


 奇襲での一斉射撃で、敵編隊を撃ち崩す。
 その後は各自の残弾数、装填/換装タイミングを通信で共有、弾幕を維持。行動順の前後により副兵装で制圧射撃、あるいは主兵装で回避直後の敵へ狙撃を。移動は遮蔽間を縫うように行い、撃墜した敵は盾に。支援射撃以外では伏射で命中を補正。
 空へ上がる者は援護しつつ囮にも利用。敵の攻撃前後の隙に、認識外から狙撃を。

 被弾を免れない状況ではシールドを一時解除し、「脚部で攻撃を受け」生命損耗を回避。脚部損壊後は地表を飛行。元々時間との戦いだ、飛行の回数制限は問題にならない。ならば脚など、なくていい。
 壊されるのもデータ収集の内。それに形振り構わない戦い方こそダンテの本質と、整備士も分かってくれるだろう。多分。


 殲滅後、精神負荷の反動で吐く。
「……改良案として、まずエチケット袋の完備を要求しておきます」

  • 深まる由縁
    フェリシテla3287
    ヴァルキュリア17才|スナイパー×セイント

ダンテ搭乗

■心情
喚起されるのは『自分が役に立てず、大切な人を失ってしまう恐怖』
「いや、いやです、フェリシテを置いていかないでください……!」
■目的
敵を逃さず殲滅
ダンテの実戦データをノヴァ社へ提供
■関係
ニムさん:恋人
チェスターさん:友人
両者とも大切な人
■行動
基本方針:味方と攻撃対象を一致させ、1体ずつ確実に撃破

初手は囮役を囲むように建物陰に隠れる
囮に接近した敵を射撃

ブースターで高く飛行し「コード666」使用、敵へ剣で急降下攻撃
敵被弾で機動低下時や、敵が攻撃する瞬間を狙う
敵を墜落させ味方が集中攻撃できるよう
「墜ちて! もうニムさんを傷付けないでください!」

自分が敵の攻撃対象時は建物陰に隠れ、敵射線切り優先
その時以外も建物を背にして背後からの攻撃阻止

優先標的は損傷の大きい味方へ攻撃する敵
敵が離脱図れば即座にブースターで追撃

もしも恋人や友人に危機が迫れば、恐怖が『大切な人を殺そうとする敵への憎悪』に反転
猛攻し敵の注意を自分に引きつける

ダンテ搭乗
「ちょっとしたハーレム気分だね」
ニム君と背中合わせにスタンバイ。片手に盾代わりの瓦礫を持ち開幕コード666、ファングブースト起動。敵ナイトメアを引き付けるようにしながら攻撃。これで1体でも落ちてくれると助かるんだけどなぁ。あ、ニム君じゃなくて僕の方に集中してくれてもいいんだよ?

「っつ…これが幻痛かぁ、なかなか味わえない感じだね。あ、新しいアイディア浮かんじゃった…ふふっ」
ダメージを与える事よりも、敵のを惹きつけたり、動きを阻害したりする方を重点的にやろうかな。あ、ステータス不安定って聞いたけど、引き出す感情で動くパラメータが違うとかなら面白いなぁ。そこら辺もデータ取ってもらおうっと。
敵の注目を集められたなら、味方の攻撃が当たりやすい位置へ移動しつつ攻撃。
早めに倒さないとこっちが危ないからね。連絡は密にとって連携はしっかりと。必要ならサブ武器に切り替えたりしてリロードタイミングが他の人と重ならないように注意するよ。

「テンション上がってきちゃった!さ、もっと壊し合おうか!」
暴走状態の時になるともう、痛みとこみ上げるマイナスの感情で破壊衝動を抑えられない。
「アハハッ!!みんな壊してアートにしてあげるよ!」

戦闘終了後は、データ提出後、敵死骸の破片を拾いに。このタイプのナイトメアはあんまり見ないからレアだよ、きっと。いっぱい持って帰って…ふふっ何作ろうかな

●嵐を超えて 01

 無謀とも言えた。
 まだ試作品、調整も不安定、そんな機体でいきなり実戦で「勝て」だなんて。

 だが「試作品だから」とおめおめ帰ることなんて――心が許せるハズもなく。

「丁度いい、ナイトメアを殺したいなあと思ってたところさ」
 ヨハネス・リントヴルム(la3074)は残酷に笑む。彼はナイトメアに復讐する為にここに来たのだ。ナイトメアを生かして返す理由などなく。
 その手段の増加が、この一戦に懸かっているのだ。何かと話題な機体ではあるが、ヨハネスは「技術自体に罪はない、使えるものは何でも使ってしまえ」と思っている。
 何より。彼の復讐を肯定し、その殺意を増幅してくれるダンテは――素晴らしいマシンだ。

「メガコーポレーションもフィッシャー一強なのはあんま良くないのよね。もっともっと各社がゴリゴリ鎬を削って、★7級のアサルトコアが出てもらわないと」
 アンヌ・鐚・ルビス(la0030)はニマリと笑う。このダンテはダイヤの原石。磨き、価値を見出すのは搭乗者に他ならない。
「さあダンテ。まずはあなたのアピールから始めましょう」

 その想いにはモーリー(la0149)も同感だ。
「ボクとダンテはマブダチ!」
 ライセンサーの強さは、イメージする力の強さ。ゆえにモーリーは自分を信じる。「午前中のテストで、自分はとダンテはすっかり打ち解けて、分かり合えた」「もうすっかりマブダチだ」と。
 そのイメージあってこそ、ダンテは真の力を発揮できるのだ――モーリーはしっかりと操縦桿を握り、自信たっぷりに笑んでみせた。
「この戦闘にはマブダチの未来がかかってる! ボクに任せておいてね、ダンテ!」

 アサルトコア、ダンテ。
 それは実に奇異な機体だ。

 迫るナイトメアの気配――フェリシテ(la3287)はダンテのコックピットの中、震える両腕を抱きしめた。
「いや、いやです、フェリシテを置いていかないでください……!」
 喚起されるは恐怖、『自分が役に立てず、大切な人を失ってしまう恐怖』。成す術もなく奪われるやもという恐怖に顔を蒼くしながら、それでも「失いたくない、役に立ちたい」という一心で操縦桿を握り締める。

「っつ……これが幻痛かぁ、なかなか味わえない感じだね。あ、新しいアイディア浮かんじゃった……ふふっ」
 ダンテの中、ルーク・H・スミス(la3305)が感じるのは幻痛だ。丁寧に皮を削がれるような、そんな苦痛に顔をしかめつつも、深呼吸で理性を保つ。
「ちょっとしたハーレム気分だね」
 ルークのダンテと背中合わせになっているのは、ニム・ロココ(la1985)が操るHN-01『猿夢』だ。
「ノヴァ社の機体はダンテだけではないということ、ちゃんと見せないといけませんね~……♪」
 同じノヴァ社、ダンテ兄弟機の『お兄ちゃん』として、ニムはふふんと鼻歌を歌う。
「……ふふ、さぁ猿夢、参りましょうか~……♪」

 ――空より嵐の名を冠した悪夢が来る。

 チェスター・ブラックバーン(la1910)の唇は、歪んだ愉悦を示していた。
「汝ら、一切の望みを捨てよ」
 彼女はテストの間、ずっとダンテのコックピットにいた。
 ダンテと繋がれば――心の中で燻っていた憎しみや怒りが、再び燃え上がる。その熱い感覚に、心臓が強く命を刻んでいるのだ。
 武器を構え、チェスターは毅然として告げる。

「今、門は開け放たれた」



●嵐を超えて 02

 ――死ぬかも知れないのに。戦うの、怖くないんですか?

 坂本 雨龍(la3077)の故郷の師はかつて、その問いを鼻で笑った。
「怖いに決まっている。だがそれでいい」――戦場を怖れ、死を怖れ、それでもなお戦える者が、最後まで経っていられるのだと。
 怒りは五体を漲らせ、怖れは五感を研ぎ澄ませる。
 憎しみの炎に、己の魂を投げ入れろ。
 それは、野生が賜った武器に他ならない。

 ――戦場では笑え。逆境でこそ笑え。獣のように。

「コード666、起動」
 雨龍は教わった言葉を胸に、獣の数字を起動する。
 途端、その心に激しく燃え上がるのは憤怒である、憎悪である、一切の敵を赦さぬという究極の自己防衛本能である。
 体に火が這うような――そんな熱さを感じながら、雨龍のダンテは仰向けの伏射姿勢のまま、路地の隙間から見える細い空にB02アサルトライフルを向けた。

 瞬間である。

 ニムの操る猿夢の重い大きな足音――そして、それを狙うナイトメア『テンペスト』が、空を過ぎった。
 その時にはもう、雨龍は引き金を引いていて。
 想像を絶する思念の力を込められた弾丸は一発一発がミサイル級だ。
 テンペストの体が脅威的に抉られ、火花を噴き出す。着弾地点から草花の芽吹く幻影が神秘的に揺らぐ。

「おぉ~すごいですね~! ……っと、」
 ダンテの凄まじい火力に目を丸くしつつ、ニムは攻撃態勢に入っていたテンペストへの警戒は忘れない。雨龍が攻撃を行ったと同時、テンペストらは既に攻撃姿勢に入っていたのだ。

 ライセンサーの作戦はこうだ。
 ニムのHN-01『猿夢』が囮役としてその装甲を以てテンペストを引き寄せ、潜伏していたダンテ達の超火力を以て一気に奇襲、早期決戦を目指すというもの。

 編隊を組んだテンペスト共が、銘々に猿夢へ斉射を行う。
「イマジナリーシールド……展開!」
 しっかりと地面を踏みしめ、重厚な機体は防御姿勢を取った。
 ニムの思念の盾に、立て続けに弾丸が着弾しては火柱が上がる。流石に六機からの猛攻は厳しいか。鈍器で容赦なく殴られたような衝撃が、ニムの体に伝わった。
「っッ……くわ~~、流石に効きました~……でも、まだ負けませんよ~」
 ニムは人畜無害に笑むのだ。
「HN-01だって、優秀な機体であることを思い出して頂けると嬉しいですね~……。猿夢、まだまだ戦えますね?」
 この重装甲はダテではないのだ。同じノヴァ社の機体、HN-01が盾ならば、ダンテは剣だ。
 ニムは空のテンペストを見上げる――悪夢の背後から、一斉に仲間達が飛びかかる!

「墜ちて! もうニムさんを傷付けないでください!」

 悲痛な声で叫びながら、フェリシテのダンテは鋼の翼で空を飛ぶ。
 増幅された恐怖は、目の前で恋人であるニムの被弾を目の当たりにして、いっそうフェリシテを追い立てた。ありもしない心臓が、ありもしない痛覚に軋むかのような感覚だ。
「あああああァああアッッ!!」
 機械の喉で恐怖の絶唱を奏でながら、フェリシテは落下の勢いを乗せてアサルトソード「リーネア」をテンペストへと突き立てた。獣の数字を起動したその一撃は、狂獣の牙のごとく。
「墜ちて! 墜ちて! 墜ちて! 墜ちて! 墜ちてぇえ!」
 地面へ押し倒すようにブースターは噴かせたまま、先程雨龍によって損傷していたテンペストに何度も何度も剣を突き立てる。やがて地面に激突したテンペストは、粉々になって地面にぶちまけられた。

「あっははははっ! いい気味だ! ざまあ見ろ!」
 砕けたテンペストの無残な姿に、ヨハネスはコックピット内で喉を逸らせて哄笑した。
 さあ、戦闘だ。ヨハネスはナイトメアへの憎悪を瞳に、C-203アサルトバルカンをテンペストへ向ける。
「進め、ダンテ。ナイトメアを討ち滅ぼすために……!」
 ヨハネスにとって、ナイトメアへの憎悪は最も心に馴染む感情だ。ゆえにその行為は普段通り。容赦なく、敵を、捻り潰す。

 バルカンの音が五月のロシアの空に響く――

「目標を確認! ノコノコ☆バルカン、射撃開始だよ!」
 モーリーもまた、建物の影からダンテの身を乗り出させ、バルカンを放つ。十字砲火だ。
「う~~っ……! ムガーッて気分になるけど、冷静に冷静にっ……!」
 湧き上がる破壊衝動に歯を食い縛りつつ、モーリーは射撃を続ける。
「飽和させる……!」
 確実に仕留める。仲間と同様に廃墟に隠れていたチェスターのダンテは、そこへ更にバルカンの射撃を繰り出した。
 響き渡る銃声。戦闘の音――それはチェスターの闘争本能を煽り焙る。コックピットの中の乙女は一見して冷静たる色を湛えているが、その心は烈火のような昂揚状態にあった。
「……ふ、」
 弾丸を放つ度に、衝動の解放に清々しい気持ちになる。もっと。もっとだ。もっと壊したい。
「――……♪」
 チェスターはバルカンの銃声を伴奏に鼻歌を口ずさむ。その瞳は爛々と幸福を湛えていた。破壊衝動が高まるほどにチェスターはダンテと深く繋がり、交じり合う。溶け合う感情は弾丸となり、テンペストの体に穴を開けて、地面に墜落させるのだ。
 壊してやった――その結果がまた、チェスターの心に麻薬のような快楽をもたらす。狂気めいているが、その感情はどこまでも冷たく、合理の装置と化していた。

「――はい、そこっ!」
 銃声の雨が降る戦場に、またひとつ兵器の音。アンヌのダンテが構えるG37アサルトライフルが火を噴き、テンペストの機体に次々と弾丸を着弾させた。
「ニム君じゃなくて僕の方に集中してくれてもいいんだよ?」
 そのテンペストを狙うのは、B02アサルトライフルを構えたルークのダンテだ。
 片手に瓦礫塊でも持って盾代わりに、と彼は考えていたが、彼の得物はアサルトライフル。しっかり両手で構えなければ、射撃の反動で銃身が跳ね上がり狙いは滅茶苦茶になってしまうだろう。ダンテは不安定なので猶更だ。どのみち、ただの石ころでナイトメアの攻撃を防ぐことなどできまい。彼自身が張るイマジナリーシールドの方がよほど高性能で信頼できる。
 なので、銃を両手でしっかりと構え――後は引き金を引くだけ、だが、その前に。
「コード666、起動する!」
 その瞬間、ルークの身に襲いかかるのは膨大な幻痛だ。先ほどの比にならない。全身の皮膚をすり下ろされるかのような激痛に。
「く……あッ……! こ、れで一体でも落ちてくれると助かるんだけどなぁ!」
 痛みによって刺激される精神の波、それを弾丸に込めて。
 彼の感じる痛みを味わわせるような猛射が、アンヌが撃ち抜いたばかりのテンペストに痛烈なダメージを与えた。
「ふーっ、いいねぇ!」
 ダンテの景気の良い攻撃力に、アンヌはニッと口角を吊った。昂揚感。心臓がドクドクと暴れ回り、血が沸騰したかのように熱い。叫んで暴れて頭を掻き毟りながら駆け出したいような、そんなケダモノの衝動が心の中で雄叫びを上げている。
「ふふ、ダンテ……ステイステイ」
 律さねば飲み込まれてしまうだろう。だがダンテのマスターはアンヌだ。乗り手が操られてしまってはお笑い種だ。「イイ子」と操縦桿をひと撫で、握り直す。
 本当は暴れまわりたい。だが今回のアンヌは支援役。仲間をフォローし、戦局を回す為の歯車だ。

 ――激しい感情は過負荷だ。
 ダンテに乗る全ての者が、じわりと精神を焼かれていく心地を感じることだろう。

 ダンテは短期決戦を前提とした機体だ。早急にカタを付けねばならない。
 そしてダンテは不安定だ。初撃こそ、不意打ちという形で全ての命中をクリーンヒットさせることができたが――ここからはそうはいかない。
 ひらりと上昇する四機のテンペストは、アサルトコア達の存在を空から把握したようだ。そのまま地上の鉄の巨人らへと攻撃姿勢に入る。

 生身の時のようにはいかない――アサルトコアの状態では、敵の攻撃に割り込むような技術は未だ確立されていない。アリーガード、ロードリーオーラといったターゲット集中やダメージコントロールを今はできない。スキルに頼らぬダメコンを行使したいのであれば、具体的な工夫案が必要だろう。
 どうにか邪魔をできれば……そんな人類の心を砕くかのように、テンペストらが名前通り嵐のような――フルファイアの攻撃を行う。
 立て続けに四つの場所で爆発が起きる。テンペスト共は、アサルトコアが遮蔽物にしている廃墟ごと、その飽和攻撃で強引に攻撃を行ってきた。爆煙と土煙、砕けた瓦礫の欠片が飛び散る。

「……っ!」
 伏射姿勢だっただけに、雨龍は回避をしきれない。
 シールドを解除して脚で被弾し、シールドの損傷を抑えようかと一瞬、思考に過ぎるも――テンペストの攻撃はピンポイントのものではない、フルファイアの文字通り面的な猛射撃だ。やむを得ずシールドで受ける他にない。シールドがなければ、足どころか全身がバラバラになってしまう。
 壊されるのもデータ収集の内ではあるが、動けなくなるのは困る。波打つ思念の盾に力を削られつつも、雨龍は崩れる瓦礫を飛び越え移動する。最中、倒されたナイトメアを盾にしようかとも思考するが、残念ながらテンペストはものの見事に砕けてしまっている。また、先ほどのルーク同様、銃器を使うのであれば両手で持つ方が安定するのだ。

「皆さん、無事ですか~?」
 ニムは通信機で仲間達の安否を確認する。幸いにしてまだ脱落者はいない。だが不安定故に回避性能が安定しないダンテは、今の攻撃をかわしきれなかった。膨大な火力を浴びれば、被害は小さくはない。
 最中にもニムは戦況から思考を巡らせる。テンペストはダンテを狙い撃ちしている訳ではない、のだろうか? 猿夢をまるきり無視している様子もない。そもそもこのメンバーが、猿夢を除けば全てダンテである為、ダンテを優先的に狙っているかどうかの判別はイマイチ付け難い。
 が、一つ確かなのは、捕獲の為のユニットなどをテンペストには見つけられなかったこと。ダンテを持ち逃げするつもり……ではないらしい。多分だが。

「折角の機会だ。どこまで火力が出せるか、お前達で試してやる……」
 猛射の残滓、土煙の中から踏み出しつつ、ヨハネスは空を飛び回る忌々しきナイトメアを睨み付けた。
 まだ戦える。頑丈が取り得なのだ。鬱陶しい小蠅共に、ヨハネスは銃口を向ける。

 ――銃声は止まず。

 ライセンサー達はバルカンやアサルトライフルで空のテンペストを狙うが、奴らはヒラリと空を泳いで掻い潜る。
 その間にも、パイロットの精神は削られていく。

 アンヌは深呼吸をして、しっかりとテンペストを狙い定めた。
「クールに、スマートに……だけど激しく」
 焦燥でも恐慌でもなく、熱狂を。アンヌは自らの心を律し、士気を高く保つ。
「これでもスナイパーなんだぞ、っと!」
 生身で慣れ切った遠距離からの狙撃。得意なことだからこそイメージも強くできる。アンヌの思いに応えるように、空を裂く弾丸が一機のテンペストを撃墜してみせた。

 残るは三体――ライセンサーは連絡を密に取り合いながら、集中を維持する。
 ダンテによって感情を揺さぶられはすれど、意思疎通が不可能になるようなことは起きていない。

「消えて……!」
 プレーンブースターで飛行するフェリシテは、推進力に任せてテンペストに吶喊する。
 彼女の瞳に浮かぶ恐怖は、『大切な人を殺そうとする敵への憎悪』に反転していた。ニムもチェスターも、フェリシテにとっては大切な存在。……これ以上、傷付けさせはしない。
 一閃される刃――なれど、飛行すれば精度は保証できないか。ダンテは命中力が高くはない。ごうと剣が空を裂き、フェリシテは忌々し気に唇を噛む。
 が、テンペストが回避したそこへ。
「しばらくはっ――攻撃できないでしょ!」
 モーリーを始め、ニム、雨龍が射撃を放つ。一気に火線を集中させる。
(どうだ……!)
 雨龍はコックピット内で歯列を剥いていた。それは唸るケダモノのようにも、凶悪な笑顔のようにも見えた。だがその目には激しい感情とは対照的な、驚異的な集中力が宿っている。

 数多の弾丸に撃ち抜かれ、テンペストが機械めいた体から血のようなモノと煙とを噴き出した。

 ――が、ここで悪夢の嵐のクールダウン、あるいは武器再装填が終わる。
 三つの機体がひらりひらりと分かれると、今一度フルファイアの急降下爆撃をしかけてくる!

「う わーーーっ!?」
 モーリーは廃墟の屋上から射撃を行っていた。テンペストが真っ直ぐこっちに突っ込んでくるのを見て、建物から急いで飛び降りるも――空中で大爆発に巻き込まれる。アクション映画めいてぶっとばされる。
「あいた! あいたたた!」
 モーリーのダンテが地面に転がる。コックピットに振動が伝わる。乙女は「やったな!」と跳ね起きると、未だ近くにいるテンペストをキッと睨んだ。同時に、武装をアサルトソード「リーネア」に持ち替える。
「プレーンブースター、点火!」
 ダンテの機械の翼に火が灯る。流星のような科学の光尾をひいて――モーリーはテンペスト目がけて跳びあがった。

「コード666、起動――ノコノコ族の誇りにかけて! ありったけを、お見舞いしてあげるんだからっ!」

 満ち漲る破壊の意志。なれどモーリーは自己を失うことはなく、真っ直ぐと倒すべき敵を見澄ましていた。なぜなら彼女は誇り高きノコノコ族の戦士だからだ。
 激しく、そして気高い一撃が、テンペストをぐしゃりと潰す。大地に叩き落す。

 チェスターはそれを見逃さなかった。

 再び飛び立とうとするテンペストを、機械の脚で強く踏みつける。
「……これで、」
 その手にくるりと回して高く掲げたのはアサルトランス「マフルート」だ。
「お終い」
 残酷に、冷徹に、そして無慈悲に。
 がきょ、と槍をナイトメアに突き立てる。
 報復と破壊を望むダンテそのものと化したかのように、チェスターは槍を引き抜き――また突き刺す。この戦闘機のようなナイトメアにコックピットや弱点なんてものは存在しない。だから動かなくなるまでバラバラにするしかないのだ。
 突き詰められた残酷性は、いっそ優雅で美しくすらあった。死を刻み付ける、それは奏でるように。
「残り二体――任せますわ」
 悪夢を完全解体しながら、チェスターは仲間達へそう告げた。
「ああ!」
 ルークは弾切れしたライフルを投げ捨て、C-203アサルトバルカンに武装を持ち替える。
 テンペストのフルファイアを浴び、精神にフィードバックされる損傷。それに加えてダンテによる摩滅。
 刻まれる痛みは、ルークの中の獣性を解放する――
「テンション上がってきちゃった! さ、もっと壊し合おうか!」
 負の感情が波濤のように押し寄せる。ルークはケタケタと哄笑を上げた。

「アハハッ!! みんな壊してアートにしてあげるよ!」

 抑えられぬ破壊衝動。過負荷暴走状態になったルークのダンテが、破壊的な弾丸を乱射する。破壊、ただその一点にのみ感情を極めた思念の力は生々しいほどに強烈だ。
 次々と、テンペストの装甲が抉られていく。
 ライフル系の武装は軒並みリロード時間だ。ならばとフェリシテが、崩れかけのテンペストへと間合いを詰める。もしここで空ぶったとしても、リロードを済ませた者達がきっと仕留めてくれる――そう信じて。
「――はァッ!」
 今度こそ剣が届く。
 嵐は両断され、砕け散る。

 残る一体。
 それは先ほどの急降下爆撃から、まだ上空へ飛び上がっていない状態で――

「さあ殺しに来いナイトメア! 僕はここにいるぞ!」
 飛び上がろうとするテンペストへ、ヨハネスのダンテは飛べぬ翼にブースターによって飛行力を生み出し、肉迫する。その手に構えていたのはリーネアだ。
 二発ものフルファイアを浴びて、その思念の盾はボロボロで――流石のヨハネスにもその反動が刻まれていた。
「止まるな、進め、ダンテ。悪夢共を殺し尽くすまで!」
 憎悪。憤怒。復讐。報復。ヨハネスほどダンテに適合している存在はいないだろう。彼は『復讐は何も生まない』、そんなことが観測者主義の綺麗事だと知っている。そしてダンテは、彼の感情を肯定するのだ。

「コード666起動――」

 奪われた。壊された。傷つけられた。もう戻らない、大事にしていた何もかもは。
 ならば今度は、こちらが壊し尽くすのだ! 奪い尽くし、殺し尽くし、思い知らせてやるのだ!

 痛みを知れ、それはダンテの魂の叫びである。

「――ナイトメアは死ね!」

 獣の数字に、過負荷暴走。
 深き接合に、ダンテが握る剣の感触がヨハネスの手に伝わって来る。
 ヨハネスの心に渦巻く復讐を糧に、あまりに破壊力を突き詰めすぎたその斬撃は、斬るというより最早『壊す』だった。

「……ふう、状況終了?」
 リロードを終えたアンヌは、パラパラと砕けて落ちていくナイトメアの残滓に目を細めながら呟いた。
「そのようですね~。ふう……お疲れ様でした~」
 ニムのへらりとした声が通信機から聞こえて、雨龍は長い息を吐きながら銃を下ろした。



●嵐を超えて 03

 静寂が戻る。
 砕かれたナイトメアの残骸が散らばる廃墟の町、八機のアサルトコアは無事だ。
 パイロットについても、程なく合流するノヴァ社の者らが補給や治癒を行ってくれるだろう。

「ああ、疲れた……だけど、ナイトメアを殺した代償と思えば心地いいか」
 停止状態のダンテの中、ヨハネスはどっと重い疲労感に眉間を揉んだ。
 ダンテは精神に負荷をかける機体、それに乗った後は途方もない疲労感がパイロットを襲う。
「うあ~~おなかすいたー……」
 モーリーは酷い空腹にぐったりしている。あとでノヴァ社ブランドのレーションやおやつを、技術者た達にねだるとしよう。いっぱい動いていっぱい食べるのがノコノコ族なのだ。
「……眠い……」
 チェスターは眠気として疲労が発露していた。ダンテ搭乗中にハイヒールで自分をもたせようとしたが、ヒール関連はシールドの損傷を修復する術。シールドの損傷ではないものは修復できなかった。
 雨龍も同様、彼の場合はあまりの精神負荷に頭痛がして、頭痛が吐き気も連れて来て――
「う゛っ」
 吐瀉音を仲間に聞かせるのは流石にマズイ。稲妻の判断で雨龍は通信を一瞬だけオフにした。
 ほどなくして通信がオンラインになった彼は、ゲッソリとした声音でノヴァ社の技術者にこう告げる。
「……改良案として、まずエチケット袋の完備を要求しておきます」
 確かに……と技術者は神妙に頷くのであった。

「なんとか勝ててよかった。あとはデータ提出と……」
 ルークは戦場に散らばるテンペストの断片を見渡した。
 アレを拾って持って帰りたい……けど、今はとにかくダンテ操縦後の疲労感で体が鉛のようだ。
「このタイプのナイトメアはあんまり見ないからレアだよ、きっと。いっぱい持って帰って……ふふっ。何作ろうかな」
 だが悲しいかな、あの残骸はノヴァ社の人達に「ナイトメア研究の為」と回収されてしまうのだった。ヤムナシ。
 さておき、ルークが気になっていたことに「引き出す感情でパラメータは変動するか」ということがあった。結果として、刺激される感情によって数値のブレはないことが分かった。

 一方で、フェリシテとニムは周辺探索を行っていた。
「んー、見当たりませんね~」
「こちらも不審な気配は察知できません」
 ニムは猿夢、フェリシテはダンテから降りた状態(ダンテは活動状態だとどんどんパイロットの生命が削れてしまう、極めて探索に不向きな機体である)、一通り周辺を見て回った。
 結果として、テンペスト以外のナイトメアは見つからず、何者かが潜伏していたような不審な痕跡も見つからなかった。
「ニムさん……やはり今回の戦闘は、」
「ダンテ開発進捗の視察でしょうね~……エヌイーがいなくてよかったです~」
 懸念は杞憂に終わった。とはいえ、テンペストを介して見ていた可能性は無きにしも非ずだが。
「それじゃあ撤収しましょうか~」
「はい、ニムさん」
 フェリシテは穏やかな笑みと共に頷き、猿夢を見上げた。
 そして思い返すのは、ニムから聞いた仮説だ――エヌイーはインソムニア『ネザー』から、わざとソラリスを逃がしたのだろう。ナイトギアを人類に改良させる為に……。
(試作されたからには――ダンテを導くベアトリーチェになるしか、ない)
 何より、ダンテの攻撃性は先ほどの戦闘で証明されている。よりダンテがチューンアップされ、パイロット側もダンテ操縦のノウハウが蓄積されれば、ダンテは頼もしい決戦兵器へと化けるだろう。
 なお、既にダンテに関しては機密文書並のセキュリティを敷かれている。警備面については心配は不要だろう。此度の実験も、参加したライセンサーが優秀であるがゆえにと実働したのだから。

 この場での事件は解決したが、【堕天】事件のナイトメアとの戦いはまだまだ続く。
 灰色の町の上。平穏な空は、いずれ来る嵐の前兆のようですらあった。

 なれど――
 だからこそ、アンヌはダンテのコックピットの中で、快活にこう言った。

「ロシアもこのところロクでもないニュースばっかりだし、たまには景気の良い話でも提供してあげなくちゃね」



 ――ダンテがナイトメアを倒したというニュースは、ノヴァ社とロシアを大いに沸かせた。
 ダンテには課題は未だ多くあるものの、いっそうロールアウトに向けて開発が進んでいくことだろう。
 参加した八人のライセンサーは、ノヴァ社の社長アルビナ・ルーシーから直々に「よくやってくれました」と一人一人に握手と共に感謝を伝えられたことだろう。

 インソムニアを堕とすのは、ロシアが先か、ニュージーランドが先か。
 ……そう。その時、人類は確かにそう思っていたのだ。
 このままナイトメアに勝利できるのではないか、と。



 ――五月下旬、この時点ではまだ未来の話であるが。
 悪夢の惨劇が起きることを、人々はまだ、知らない。



『了』

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