オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
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【未来】あれから幾年、花の日に 和倉眞吹

形態
ショート
難易度
易しい
価格
1500(EX)
ジャンル
夢 日常 
参加人数
53~12人
予約人数
10010100
基本報酬
180000G
180SP
1800EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
5
締切
2021/03/07 12:00
完成予定
2021/03/27 12:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

 インソムニアが完全破壊されてから、何年かが経った。

 新たなナイトメアが地球へ来られなくなったとは言え、残党との戦いは続いている。
 残党と一口に言っても、知性がなく(あっても)暴れるもの、『ホーム』への帰還を希望するものなど様々で、それぞれに合わせてSALFは対応を迫られており、今でもナイトメア絡みの事件解決に精を出す日々だ。
 ライセンサーたちの仕事も、当分はなくならないだろう。
 だからきっと、息抜きは必要で。

「……花祭り?」
 いつものように掲示板前を通りかかったそのライセンサーは、小首を傾げた。
「花のお祭りなの?」
 元々放浪者だったそのライセンサーは、まだこの世界に疎いところもある。疑問に思ったことを、すぐ傍にいた女性に尋ねた。
「ええ、一言で言えば」
 答えたのは、ポスター貼りの作業をしていた女性事務員だ。
「お花見イベントとは違うんですか?」
 重ねて問うと、事務員はポスター貼りを続けながら応じる。
「そうですねぇ。お花見って言えば大抵は桜ですが、今の時期は梅か桃ですね。これはいつも桃が満開になってる神社が主催してるんですよ。ここの近所の。梅も何本かあるらしいですし、エリアによっては早咲きの桜もあるみたいで」
 ポスターを貼り終えると、事務員はエージェントたちに向き直る。
「最後の戦いから数年もして落ち着いたから、神社でも久々に開催することになったらしいんです。花祭り。もしよければって宣伝がてら、神社の方が持ってきてくださって……手が空いてたらお誘い合わせの上、行ってみてください」
 それでは、と会釈して事務員はその場をあとにした。

▼目的
花祭り、及び花見を楽しむ。

▼花祭り会場
・お祭りは、午前九時頃から午後四時まで。
・とあるSALF支部近所の大きな神社の境内から、門前町の通り。
・桃や梅、早咲きの桜が満開の下、縁日のような出店が並んでいます。門前町に並ぶお店をそぞろ歩くのもよし、どこかに腰を下ろして花を愛でるのもよし。
・公園のような広場もあるので、自家製弁当を持ち込むのも可。勿論、出店で買ってもよし。お花見ピクニックを楽しむもよし。

▼その他
・舞台はインソムニアの破壊から数年後(未来if)です。事件らしい事件は起きない想定です。数年後の平和な休日のひとときをご自由にお書き下さい。
・複数人で行動を共にされる場合、お互いのプレイングを合わせてください。

こんにちは。お久し振りです。和倉眞吹です。

グロリアスドライヴに於ける私個人のMS活動は、諸事情ありまして、非常にのんびりしたものとなりましたが、大変お世話になりました。
PLの皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

それでは、今回も皆様のご参加を、心よりお待ちしております。

【白椿】
▼散策
「色んなお店が出てるの♪
「ラシェル、あとで買おう!あれとあれと、あっちのも!
指し皆を振り返りながら先頭を行く
集合写真も喜び賛成

▼参拝
幼い頃から毎年両親と叔父達とでお参りしており手順は慣れたもの
御手水で清め二礼二拍手、祈願し一礼
(若葉と凪のお店が繁盛しますように)
(また二人と会えますように)

若葉の提案に顔を綻ばせる
「とても良い案だ。揃いで買おう
同じように椿の社で両親が白椿を、叔父達が赤椿の御守りを買った話を思い出す
(桃の御守りか。私は私で、新しい絆を結べているのだの)
白椿の御守りと共にスマホに付ける

▼ピクニック
シートを広げ準備
「買い込むのも祭りの醍醐味よ♪
嬉しげに茶を注ぐ
「花の香を楽しむなら緑茶が合う
「皆の新たな門出を祝して…乾杯!
わくわくと弁当箱を開ける
「春と言えば!手毬寿司!
アヴィシニア家の春恒例のもの
若葉と凪には一年前に教えたきりだが遥かに上手くなっている
「さすが上達が早いの
次はどれを食べようかとあれこれ選ぶのも楽しい

「また必ず戻ってくるからの。ラシェルと一緒にお店に行くからの
気持ちは兄と同じ
暫く会えなくなるのは寂しいけれど悲しくはない
再会を笑顔で約束する

【白椿】
▼散策
「桃や梅も悪くないな
咲き誇る花を見て目を細め
「あぁ、参拝が終わったら寄ってみるとしよう
楽し気な妹に笑顔で応える
はしゃぐ面々を微笑ましく思いつつ皆で和気藹々と神社に向かう

▼参拝
御手水で清め
「二拝二拍手一礼、だな
二礼二拍手一礼
姿勢を正して鈴を鳴らし、二拝二拍手、両手を合わせ祈願
(二人の店が軌道に乗って周りが笑顔で溢れるように)
(無事、故郷に帰り再びこの地を訪れる事ができるように)
最後に一礼

「揃いの御守りか…いいんじゃないか?
皆で選びお揃いの御守りを購入
白椿の御守りと共にスマホに付ける
この世界で得た絆も家族との絆と同じくらい掛けがえないもので
これからもずっと大切にしていきたい

▼ピクニック
シート広げ準備
「…随分と買い込んでしまったな
ずらりと並ぶ食べ物に軽く苦笑
「確かにこれは外せないな
ルシエラの言葉に微笑み頷く
「二人もさすがだな、彩り豊かで見ているだけで楽しい気分になる
凪と若葉の手毬寿司も食べるのが楽しみだ

ルシエラが注いだ緑茶を配るのを手伝い
「乾杯

「二人の店も順調そうで何よりだ
「必ずまた…戻ったら、真っ先に寄らせてもらうよ
「家族も一緒にか…是非そうさせてもらおう
家族と二人はどんな反応をするだろう?想像し思わず笑みが零れる
再会が叶ったら今度は俺達の世界にも来てもらおう
二人に見せたいものが沢山あるからな

  • これからも隣で
    珠興 凪la3804
    人間20才|スピリットウォーリア×ゼルクナイト

【白椿】
▼散策
「本当に…綺麗だね
青空と花の色、並ぶ出店や行き交う人々、楽しそうな皆
どれもが眩しくて目を細める
「後で皆で写真撮らない?
賑やかに和気藹々と皆で神社に向かう

▼参拝
御手水で清め
若葉達に倣い鈴を鳴らして二礼二拍手
手を合わせ祈願
(二人が無事に家に帰れますように)
(若葉と二人で沢山の人を笑顔にできますように)
最後に一礼

「いいね、そうしよう
皆で選びお揃いの御守りを購入
これまでももちろんかけがえのない関係だったけど、特別が形になったみたいで嬉しい

▼ピクニック
「いい場所があったね
準備し広げたシートに次々と料理が並ぶ
「ほんとだ、料理も賑やかだね!
なかなか見ない量がなんだか面白くなって声を上げ笑う
ルシエラからカップを受け取り
「乾杯!
皆の前途を祝し乾杯

「わぁ…!さすが、綺麗だし可愛らしいね
若葉と目配せし自分達が作った手毬寿司を披露
二人の自信作だ

若葉の言葉を継ぎ再会を約束
「もちろん。いつでも来てくれるのを楽しみにしてるよ
愛猫もきっと喜ぶと思う
「家族で来てくれたら嬉しいな
その時は笑顔が溢れるお店でお迎えするよ
二人でもっともっと素敵なお店にしていこうね

【白椿】
3~4年後
白椿の4人で花祭りを楽しむ
花を眺めながら神社へ向かい参拝
元の世界に帰還直前の兄妹の安全とオープンしたての喫茶店の繁盛・良縁を祈願
参拝後は広場でシートを広げピクニック

▼散策
「うわぁ…綺麗に咲いてるね
賑わう祭りの様子にルシエラと共にきょろきょろ
わくわく楽しく皆で神社に向かう
「あのお店はなんだろう?
「いいね、どこで撮ろうか♪

▼参拝
御手水で清め
「えーっと…お辞儀って何回だっけ?
姿勢を正し、二礼二拍手一礼
(二人が無事に故郷に帰れますように)
(凪と二人で沢山の人達を笑顔にできますように)
最後に一礼

「…そうだ!皆でお揃いの御守り買わない?
「例えば…これとか!
桃の花の形をした縁結びの御守りを皆に見せる
二人とまた笑顔で再会できるようにと願いを込めて

▼ピクニック
「…ここでいい、かな?
桃も梅も桜も楽しめる場所で花見の準備
屋台で買った物やお弁当を広げ和気藹々と楽しく過ごす
「二人の手毬寿司はやっぱ綺麗だね、さすが!
「でも、今回は俺達も負けてないよ♪
凪と目配せし笑顔でじゃーん!と自分達が作った手毬寿司を披露

ルシエラからカップを受取り
「乾杯!
皆の前途を祝し乾杯

二人との再会を約束
「二人がまた来てくれるのを楽しみにしてるよ、ね、凪?
ルシエラとラシェルが「あっ」と驚くくらい
二人でもっともっと素敵なお店にしていこう!

  • Homme Fatale
    柞原 典la3876
    人間29才|セイント×ネメシスフォース

▼状況
SALFに登録は残しているがライセンサーの第一線からは退き、本業はモノクロ風景専門写真家
顔を出すと色々面倒なので覆面写真家として活動(師匠が窓口をしてくれている)
カメラはフィルムを好むがデジタルも撮る
本業を兼ねられるような任務のみ、極稀に受けている

▼行動
花や空、神社をのんびり撮影しながら、一人ぶらりとしようか
本業やりつつ報酬貰えるんは美味しいもん
ま、偶にはなぁ…自分がライセンサーやったのを思い出してもええんやないかなぁと
ライセンサーやったからこその出会いも、ぎょうさんあったし
ミイラ取りがミイラになった恋とかな(笑

まずは参拝から
お仕事さしてもらうのに、神さんにちゃんとご挨拶しとかんとね
鳥居くぐるに礼して、御手水で清めて、ほんで作法に則って「一日お邪魔さしてもらいます」と
別に神頼みすることもあらへんし

桃、梅、桜、一通り撮影
社と合わせたり、花単独やったり、空メインに花少しとか色々な構図で
人は撮らへんけど焦点ずらして風景としての人混みはありかなぁ

モノクロフィルターかけてスマホでも撮って、写真家用SNSアカウントにアップ
花祭りの宣伝もした方がええのかなぁて
桃は神酒草とも言うし、出店に酒と肴あったら肖って飲もか

アドリブ可

 柞原 典(la3876)は、門前町の入り口に一人立ち、手で作った庇の下から眇めた視線を向けた。
 その先には、門前町に元々ある店や今日の祭りのための出店、そのまた遙か先には満開の花が咲く並木道が遠めに見て取れる。
 典は今日催される花祭りのポスターを、たまたまSALFの支部に所用で出掛けた際に見かけた。せっかく得た情報なのだからと、花や空、神社をのんびり撮影しながらブラリとしようかと足を運んだのだ。
(……あれから三……四年くらいかねぇ)
 典は、胸の内でポツリと呟く。
 インソムニアの破壊完了後、典はライセンサーとしての第一線からは退いていた。SALFに籍はあるものの、今の本業はモノクロ風景専門の写真家だ。
 カメラはフィルムが好みだが、デジタルも撮らないことはない。SALFの仕事は、本業を兼ねられるような任務だけを極稀に受けている状態だった。
(本業やりつつ報酬貰えるんは美味しいもん)
 もっとも、顔出しすると色々と面倒な為、覆面写真家として活動し、窓口は師匠が受け持ってくれている。
 SALFの任務を今でも受けるのは、偶には自分がライセンサーだったことを思い出してもいいのではないかと思うからだ。
(ライセンサーやったからこその出会いも、ぎょうさんあったし)
 ミイラ取りがミイラになった恋とかな、と脳裏で付け足して、典は小さく笑った。

「うわぁ……綺麗に咲いてるね」
 この日、白椿の四人で花祭りにやって来た珠興 若葉(la3805)は感慨深げに呟く。賑わう祭りの様子に、ルシエラ・ル・アヴィシニア(la3427)と共にきょろきょろと周囲を見回した。
「色んなお店が出てるの♪」
 ルシエラは、どちらかと言えば花より出店のほうに興味を惹かれたらしい。
 主には食べ物を扱った店があちこちに出ている。
「ラシェル、あとで買おう! あれとあれと、あっちのも!」
 兄のラシェル・ル・アヴィシニア(la3428)の腕を引っ張りながら、複数の店を指さし、皆を振り返る。
 先頭を行く楽しげな妹に、ラシェルも「あぁ、参拝が終わったら寄ってみるとしよう」と笑顔で応えた。
 視線を前へ向けると、門前町の通りに花が咲き誇っているのが視界に入り、ラシェルはまた表情を緩める。
「花見と言えば桜を思い浮かべるが……桃や梅も悪くないな」
「うん。本当に……綺麗だね」
 答えるように呟いた珠興 凪(la3804)も、目を細めた。
 青空と花の色、並ぶ出店や行き交う人々、楽しそうな皆――どれもが、凪の目には眩しく映る。
「あのお店は何だろう?」
 ふと口を開いた若葉も、花の次にはやはり出店に目を奪われたようだ。
「何かのお土産屋さんとか?」
「そこも神社のあとで行こう!」
 とにかくまずは参拝だ、とばかりにルシエラが何度目かでほかの三人を振り返る。
「あとで皆で写真も撮らない?」
 神社へ向かいながら凪が言うと「賛成!」とルシエラが応え、若葉も「いいね、どこで撮ろうか♪」と相槌を打つ。
 わくわくと楽しくはしゃいで、皆が和気藹々と賑やかに歩を進める様に、ラシェルも微笑ましく思いながら続いた。

(やっぱり、まずは参拝からやろ)
 典は鳥居をくぐって礼をした。次に御手水で清め、作法に則って「一日お邪魔さしてもらいます」と挨拶する。
(仕事さしてもらうのに、神さんにちゃんとご挨拶しとかんとね)
 脳裏で呟いたが、神頼みすることは今日のところは別にない。
 挨拶が済んで、きびすを返した典と、賑やかな一団がすれ違った。

「えーっと……お辞儀って何回だっけ?」
 御手水で清めたあと、若葉は思わず呟いた。
 参拝はきちんと、と思いつつも、正式なお作法となると自信がない。同じく御手水で清めた凪もどこか不安げである。
 任せろ、とばかりに進み出たのはアヴィシニア兄妹だ。
「二拝二拍手一礼、だな」
 答えたラシェルが実際に言葉通りにやって見せる。ルシエラも同様だ。
 幼い頃から毎年両親と叔父たちとでお参りしており、手順は慣れたものである。
 やはり御手水で清めたあと、二礼二拍手して祈願をする。
(若葉と凪のお店が繁盛しますように)
(また二人と会えますように)
 神妙に脳内で祈り、一礼してきびすを返した。
 ラシェルも姿勢を正して鈴を鳴らしたあと、二拝二拍手して両手を合わせる。
(二人の店が軌道に乗って、周りが笑顔で溢れるように)
(無事、故郷に帰り、再びこの地を訪れることができるように)
 と祈願し、一礼する。
 若葉と凪も兄妹に倣った。
 若葉はラシェルと同じように背筋を伸ばして二礼二拍手する。
(二人が無事に故郷に帰れますように)
(凪と二人でたくさんの人たちを笑顔にできますように)
 そして最後にもう一礼する時には、オープンしたての喫茶店の繁盛・良縁も祈願した。
 凪も同様に鈴を鳴らして二礼二拍手し、
(二人が無事に家に帰れますように)
(若葉と二人でたくさんの人を笑顔にできますように)
 と手を合わせて祈願したあと、最後に一礼する。
 一通り皆が参拝を終え、ふと視線を泳がせた先に、若葉は御守りを販売している窓口を見つけた。
「……そうだ! 皆でお揃いの御守り、買わない?」
 思い付きを口にすると、凪が「いいね、そうしよう」と頷いた。ラシェルも「揃いの御守りか……いいんじゃないか?」と相槌を打つ。
 ルシエラも若葉の提案に顔を綻ばせた。
「とても良い案だ。揃いで買おう」
「どれがいいかな」
 窓口に駆け寄って、皆で並んでいる見本を眺めた。
「うーん、そうだな、例えば……これ、とかどうかな」
 桃の形をした縁結びの御守りを手に取った若葉は、皆に見せた。二人とまた笑顔で再会できるように、という願いを込めたのがポイントだが、神社での祈願と同じで口には出さない。
 ルシエラは、同じように椿の社で両親が白椿を、叔父たちが赤椿の御守りを買った話を思い出していた。
(桃の御守りか……私は私で、新しい絆を結べているのだの)
 微笑して、皆で購入した新しい御守りを、白椿の御守りと共にスマホへ付ける。
 ラシェルのスマホにも、白椿と桃の御守りが仲良く並んだ。
 この世界で得た絆も、家族とのそれと同じくらい掛け替えのないもので、これからもずっと大切にしていきたいと思う。
 凪も、買った御守りを大切そうに胸元に抱いて若葉と微笑み合った。そして、スマホに揃いの御守りを下げた兄妹に目を向ける。
 皆、これまでももちろん掛け替えのない関係だったが、特別が形になったようで嬉しかった。

「……ここでいい、かな?」
 参拝後の散策の果て、若葉はほかの三人と共に桃も梅も早咲きの桜も楽しめる場所を広場の一角に見つけ、花見の準備を始めた。
「いい場所があったね」
 凪が、アヴィシニア兄妹と共にシートを広げながら周囲を見回す。そこへ屋台で買ったものや手作りの弁当を並べていくと、結構な量のそれであることに気付いた。
「……随分と買い込んでしまったな」
 ずらりと並べられた食料に苦笑し、やや反省する物言いのラシェルに、凪が覚えずといった様子で笑い声を上げた。
「ホントだ、料理も賑やかだね!」
 自分たちで作ってきたお手製の弁当が詰まった弁当箱を先頭に、出店で買い込んだタコ焼き、焼きそばほかの主食類、デザート類のチョコバナナや各種クレープ、花見には付き物(?)の幾種類かのお団子、などなど――なかなか見ない量が並んでいる様が、なんだか面白く思えた。
 ここだけで店が一つ開けそうだ。
 しかし、ルシエラも笑って「買い込むのも祭りの醍醐味よ♪」などともっともらしいことを言いながら、テキパキと準備を進めている。
「花の香を楽しむなら緑茶が合う」
 ルシエラは更に嬉しげに茶を注ぎ、シートに座った三人に配った。
「確かにこれは外せないな」
 彼女の言葉に頷いて、ラシェルも茶を配るのを手伝う。
 若葉と凪にもカップを渡し、全員に茶が行き渡ったのを確認すると、ルシエラは自分もカップを手に取った。
「では、皆の新たな門出を祝して……」
「「前途も祝して!」」
 若葉と凪の付け足しに笑みを深くしたルシエラが、
「乾杯!」
 の声と共にカップを掲げる。
「「「かんぱーい!」」」
 カップを打ち付け合って一口茶を含むと、ルシエラは早速わくわくしながら弁当箱の一つを開ける。
「春と言えば! 手鞠寿司!」
 彼女が開けた箱には、兄と二人で作ったそれが詰まっている。アヴィシニア家には春恒例のものだ。
「わぁ……! さすが、綺麗だし可愛らしいね」
「ホント。二人の手鞠寿司はやっぱ綺麗だね、さすが!」
 若葉と凪は口々に兄妹の手鞠寿司を誉めつつも、「でも、今回は俺たちも負けてないよ♪」と若葉は、凪と持って来た弁当箱に手を伸ばす。
 二人は目配せし合い、「じゃーん!」と箱を開けた。そこには二人で作った手鞠寿司が詰まっている。自信作だ。
「二人もさすがだな。彩り豊かで見ているだけで楽しい気分になる」
 ラシェルが誉めると、ルシエラも「うん、上達が早いの」と兄に同意する。若葉と凪には一年前に教えたきりだったが、遙かに上手くなっているのが分かる。
「どれから食べようかの♪」
 あれこれ選ぶのを楽しんでいる妹に、ラシェルも同意見だ。
 凪と若葉の手鞠寿司も楽しみに、開かれた弁当箱へ箸を伸ばす。
「……うん、美味い」
 咀嚼し、お茶に口を付けると、「二人の店も順調そうで何よりだ」と水を向ける。
「ありがと」
 笑顔で言った若葉が続けた。
「二人がまた来てくれるのを楽しみにしてるよ。ね、凪?」
「うん、もちろん。いつでも来てくれるのを楽しみにしてるよ。愛猫もきっと喜ぶと思う」
 頷いた凪が、手元に取ってあったアヴィシニア兄妹作の手鞠寿司を頬張った。
「ああ。必ずまた……戻ったら、真っ先に寄らせてもらうよ」
 ラシェルが答えるのに、ルシエラも首肯する。
「また必ず戻ってくるからの。ラシェルと一緒にお店に行くからの」
 思いは兄と同じだ。若葉と凪の二人としばらく会えなくなるのは、寂しいけれど悲しくはない。
 再会できるに決まっているからだ。
 笑顔でそれを約束すると、ルシエラは若葉と凪作の手鞠寿司を口へ放り込む。
「うむ、美味い」
「ありがと。今度は家族で来てくれたら嬉しいな」
 凪が言うと、ラシェルが「家族も一緒にか」と反芻する。
「いいな。是非そうさせてもらおう」
 家族と二人はどんな反応をするだろう。その時を想像すると、思わず笑みが零れる。
「絶対だよ。その時は笑顔が溢れるお店でお迎えするから。ね、若葉」
「うん。ルシエラとラシェルが『あっ』と驚くくらい、二人でもっともっと素敵なお店にしていこう!」
「もちろん。二人でもっともっと素敵なお店にしていこうね」
 なごやかに楽しく過ごす面々を見ながら、ラシェルは静かに緑茶のコップを傾けていた。
 再会が叶ったら、今度は自分たちの世界にも招待したい。そう思いながら。
(二人に見せたいものが沢山あるからな)
 これもきっと、妹も同じ思いだろう。ふと見上げると、早咲きの桜の花びらが、穏やかな風に吹かれて、ヒラヒラと舞っていた。

 その瞬間を切り取るように、典はシャッターを切る。
 参拝が済んでから、彼は桃・梅・桜と一通り撮影して回っていた。
 社と合わせたり、花単独だったり、空メインに花を少し覗かせたりと様々な構図でだ。
 人は撮らない。個人のプライバシーの問題もあるからだ。ただ、焦点をずらして風景としての人混みはありかなぁ、と考えていた。
 その時だ。
「あのっ、すみません」
 不意に声を掛けられ、典は振り向いた。

 写真を撮っていた白銀の髪の青年が振り返る。どこかですれ違った記憶があるようなないような、と思ったが、若葉は記憶を辿るのをひとまず後回しにして口を開いた。
「あの……もし差し支えなければこれ、シャッター切ってくれませんか?」
 彼は彼で、自分の時間を過ごしているのだろう。その時間を邪魔するのは何だか気が引けるが、四人で写真を撮る機会は当分訪れないだろうから、できれば綺麗に撮りたいという思いが少しだけ罪悪感を上回った。
 手にしたスマホをすまなそうに差し出すと、若葉の気持ちを知ってか知らずか、青年は「ええよ」と気軽に答えて若葉からスマホを受け取った。
「どこで撮ろか。好きなトコに並び」
 言われて、場所はまだ決めていなかったことに気付く。何しろ、昼食もまだ途中だったのだ。
「えーっと……どこがいいかな」
 仲間を振り返ると、真っ先に答えたのはルシエラだ。
「綺麗に咲いているところがいいの!」
 すると凪が困ったように、
「うーん、そう言われるとどこも綺麗だよねぇ……」
 と言いつつ周囲を見回す。
「それぞれ違うところで撮って、あとで皆でシェアしたらどうだろう」
 最終的に、そう言ったラシェルの提案に従い、四人のスマホ分、青年にも付き合ってもらうことになった。
「……ほい、撮れたで」
 若葉、凪、ルシエラ、ラシェルのスマホの順で、桃・梅・桜の木の下でそれぞれ撮ってもらい、最後のスマホの持ち主であるラシェルに、それが返される。
「どうも、ありがとうございました」
 皆を代表して青年に頭を下げている後ろで、ほかの三人は撮ってもらった写真を前にはしゃいでいる。
「うわー、何かプロが撮った写真みたいだ」
「上手いし、綺麗だの!」
「本当にありがとうございました」
 口々に感想と礼を言われ、青年――典はまんざらでもない気分になったが、「こう見えて俺、これで食うてるもん」とは言わずに置いた。
 顔出しすると色々面倒だからこそ、窓口は師匠に任せて覆面写真家をやっているのだから。
「あのっ、もしよかったら、一緒に少し食べませんか?」
 きびすを返そうとした典に、そう声を掛けたのは若葉だ。
 正直、四人で食べるには多すぎる量を買ってしまった気が、今はしてきているし、写真を撮ってくれた青年に何かお礼もしたい。
「いや、でも」
「いいのいいの! 袖振り合うも多生の縁、とも言うの♪」
 ルシエラが、おいでおいでをするように、手を上下にパタパタと振る。
「それに、こういう時は皆で食べたほうが美味しいの!」
「そうですよ。こんな綺麗な写真撮ってもらったし、お礼に是非」
 にこにこと笑って、シートを示した凪は、まともにそこを見た途端、困ったようにその笑顔を曇らせた。
「……と言っても、見ての通りほとんど食べ物で埋まっちゃってるので、どっか……空いてる場所に適当に座っていただければ」
 典は思わず吹き出した。同時に、これほど誘ってもらって固辞するのもどうかと思い始めていた。
「……ほな、ご相伴に与ろか」
 クックッ、と笑いの残滓を引きずりながら、言われた通り食べ物と四人が陣取っている以外の場所を見繕って腰を落とす。
 ざっと見渡すと、この場所だけで出店の一つではないかと思えるほど食べ物が並んでいた。
「これっ、よかったらどうぞ」
 若葉が差し出したのは、凪と一緒に作った手鞠寿司だ。
「へえ。美味そやな。手作り?」
「はい! 自信作ですよ」
「教えたのは私たちだ。味は保証するの!」
 口々に言われて、典は微笑すると、「じゃあ」と遠慮なく渡された割り箸を使って手鞠寿司を摘んだ。
「……ん、美味い」
 お世辞抜きに美味である。
「よかった。あっ、ほかのもよかったらどうぞ。遠慮しないで」
 弁当箱二つに詰まった手鞠寿司以外は、見たところすべて、この祭りの出店で購入したものらしい。
「美味いし、食事代が浮いて助かったわ」
「いいえ! こちらこそ、綺麗に写真撮ってもらって嬉しかったです」
 こういうことも、写真の報酬と言えなくもない。
 ここへ腰を落としてから自然笑みっ放しの典は、手近にあったフランクフルトを示して、「これ、もろてええ?」と断りを入れる。
 若葉と凪、ルシエラの三人は「どうぞどうぞ」と口を揃えて言い、ラシェルも承諾の代わりに持っていたコップを掲げて見せた。
「……あ、そう言えばお茶がまだでしたね」
 気付いたように言ったラシェルに、若葉が「あっ、いけない!」と慌てて周囲を見回す。
「ああ、ええよそんな。それこそお気遣いなく、や」
「いえいえっ、えっと」
「はい、これ」
 ルシエラが素早くお茶を渡し、凪がコップを用意する。
 何だか見事な連係プレイに、典の顔にまた一つ笑みが浮かんだ。
「どうぞ」
 満面の笑みで典にコップを差し出したのは凪だ。
「ほな、もろとくわ。おおきに」
 肩を竦めて受け取り、コップを一つ持ち上げると、「では、もう一度乾杯しようかの」とルシエラもコップを掲げる。
「何に?」
 若葉が尋ねると、ルシエラが「新たな出会いに!」と笑顔で答えた。

 しばらく和気藹々とした集まりに巻き込まれ、楽しいひとときを過ごしたあと、「ほな、そろそろお暇するわ」と典は腰を上げた。
「あっ、よかったらどうぞ、これ!」
 弁当箱の一つに残った手鞠寿司を素早く詰めると、若葉はお裾分けとばかり、立ち上がった典に手渡す。
「ああ、ええよ、そんなん。もう充分ご馳走になったし。それに弁当箱はあんたのやろ?」
 ここで初めて会ったばかりの人間が相手では、返すこともできない。その含みを感じたのか、凪が「じゃあ、これも一緒に」と店のチラシ代わりの名刺を弁当箱の上へ付け足す。
「もし気になるようでしたら、お店のほうに持って来てくれれば」
「あっ、もちろん面倒なようでしたら無理にとは言いませんけど!」
 若葉が大慌てで言い添える様が何だかおかしくて、典は何度目かで吹き出した。
「……あははっ……ああ、すまんすまん。分かった。ほな、ありがたくいただいとくわ。店も、機会があったら寄らしてもらうさかい」
 弁当箱と名刺を受け取ると、若葉と凪はパッと顔を輝かせる。
「はい、是非!」
「お待ちしてます!」
 まるでこの場が店の中であるかのように頭を下げる二人と、ラシェル、ルシエラ兄妹に見送られ、典はその場をあとにした。
 祭りのあとの寂しさのような、虚無感に似たものを感じながら、抱えた弁当箱の上に載せられた名刺を取り上げる。
 それによると、店はどうやら喫茶店のようだった。
(まあ、機会があったらね)
 脳裏でそう繰り返したのち、ふと後ろを振り返る。すると、そのタイミングで、四人もこちらを向いた。
 理由の分からない名残惜しさを感じたのは、お互い様だったようだ。互いにもう一度手を振り合い、典は今度こそきびすを返す。
「……さーてと」
 物寂しい気分を振り払うように吐息を漏らし、一人の散策に戻った典は、少し歩いた歩道脇にあったベンチへ腰を落とした。そして、改めて自身のカメラやスマホを確認する。
(んー……モノクロフィルターかけてスマホでも撮って、写真家用SNSアカウントにアップするか……花祭りの宣伝もしたほうがええのかなぁ)
 そう言えば、桃は神酒草とも言ったっけ、とふと思い出す。
 出店に酒と肴があったら肖って飲もうか。
(……いや、肴はええか。もろた手鞠寿司で充分……)
 考えるともなしに考えながら、また目線を上げる。
 スカイブルーを背景に、早咲きの桜の花弁が、視界を横切るようにクルクルと踊った。

成功度
成功
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