オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 【HW】……出してくれ~!!

【HW】……出してくれ~!! 和倉眞吹

形態
ショート
難易度
易しい
価格
1500(EX)
ジャンル
コメディ 夢 日常 
参加人数
43~12人
予約人数
10010100
基本報酬
180000G
180SP
1800EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
4
締切
2020/10/27 12:00
完成予定
2020/11/16 12:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

 ライセンサーはぼんやりと目を上げた。

(……昨日寝たの何時だっけな……)
 身体の節々が痛くてまったく疲れが取れていない気がする。
 ここ最近ほとんど休みもなく任務を果たしていたから疲れているのかも――と無意識に思いながら身を起こす。
「痛て……」
 途端、節々がズキズキと悲鳴を上げ、ライセンサーは思わず顔をしかめた。
 本気で疲れが取れていないらしい。それにしたって、まるで床の上で眠ったようなこの痛みはいったい――

「……は?」

 目をしばたたいて、ようやく視界に入った景色に、ライセンサーは唖然とした。
 室内には何もない。昨日は確かに自室で眠りに就いたはずなのに、今この場には文字通り何もないのだ。
 自身が寝ていたのは正真正銘、床の上だ。
「……何で……」
 訳が分からない。
 そうするともなしに、周囲を見回す。
 室内の広さは、四メートル四方ほどだろうか。壁には窓も扉も付いていないという異様さだが、その壁に直接書かれた文字に目が止まった。

『ここは●●しないと出られない部屋です。
この文章を目にした瞬間から、――分以内に●●して下さい。
なすべきことをなせば扉が現れ、あなたは自由の身になれます。
但し、もし制限時間を過ぎた場合、あなたは永遠にここへ閉じ込められることになるのでご注意下さい。
それでは、ゲームスタート!』

 文面を読み終えた直後、その文章の横に『ピッ』という音と共にデジタル表示が現れ、数値が減っていく。

「……何だって――――!?」

 これは何の冗談だ。どういうことだ。それともナイトメアの仕業か。
 だとしても肝心のナイトメアは見える範囲にはおらず、しかも自分は丸腰だ。まずはどうあっても部屋を出なければ始まらない。

 刻一刻と無情に時が流れる中、ふざけているとしか思えない文面を前に、ライセンサーはしばし呆然とした。

▼目的
夢のif世界の中で、『●●しないと出られない部屋』からの脱出をはかる。

▼部屋のルール
指示文章を読み終えると同時に、文章の横にカウントダウンが表示されます。
制限時間以内に指示をこなせば扉が現れ、外へ出られます。
制限時間を過ぎると夢から覚めるまでそのままです。

▼留意点
※ifシナですので、特に戦闘はありません。
部屋でどう行動するかは自由です。
また、脱出できなかったとしても、ifシナなので、失敗にはなりません。

※『●●しなければ出られない部屋』ですが、『●●』の部分、制限時間共に各PLさんでご自由に設定して下さい。

例:『△△分以内にキスしないと出られない部屋』
『○○分以内に何か一つ秘密を暴露しないと出られない部屋』
『○△分以上シリトリしないと出られない部屋』……等々。

例に挙げたものを使ってもOKです。

※性的なネタ、グロテスクなネタは禁止とさせて頂きます。
性的なネタは軽いキスまで、グロテスクなネタについてはデスゲーム系の過激な暴力はアウトです。

※一緒に部屋に入る人がいれば、相手とプレイングを合わせて下さい。

こんにちは。和倉眞吹です。
ifシナの機会が巡ってきたので、今回は以前から温めていた、『●●しないと出られない部屋』ネタをやらせて頂きました。

解説に記した禁止ネタ以外でしたら、基本的には採用致します。マスター基本情報の雑記の注意事項もご一読の上、ご自由にはっちゃけて頂ければ嬉しいです。
皆様のご参加を、心よりお待ち申し上げております。

『卓球しながらしりとりしないと出られない部屋』
〇ルール
仮装して制限時間いっぱいまでしりとりしながら卓球をやるだけ。
失敗や途切れてしまうのはOK.サボってやらないのはNG.
☆ハロウィン仕様の為、起きた時から二人の頭にはうさみみorねこみみが。
仮装内容は各プレイング準拠

〇行動
同行:六波羅さんla3562
頭にはうさみみ。アリスの仮装

六波羅とは顔をベース内で見かけた事あるかな?程度
人見知りはあまりしない。夢だし。
卓球は知識として知っているけどプレイは初めて(だと思う
教えてもらうところから始まる
慣れてくると楽しくなってくる
子供みたいに楽しみながらしりとりで答える内容は主に花の名前
(スターチス、コスモス、ニチニチソウ、アルストロメリアなど


「あら。えぇと、こんにちは?
「卓球、教えてなの♪
「(スコーンッ!と空ぶって)………球が、ラケットを避けたのだわ……。(;゚д゚)ゴクリ…(
「花の名前が多い? うふふ、だって花の魔女だもの♪
「私、赤い目の友人多いのだけど。みんな色が違うのね。
「あなたのは……何て言ったかしら、さそり座の!ほら!赤い部分!あの星に似た色なのだわ♪

同行
凪la3804

部屋のルール
『30分以内にジャンケン10回連続あいこにならないと出られない部屋』

行動
目が覚め辺りを見渡すと見知った顔が一人
「凪か、ここは一体…ん?
ルール読み終え
「…そんな部屋があるのか?状況はよく分からんが…条件を満たせばいいのだな
「あぁ、さっさとクリアしよう

少し考え提案
「では、互いにグーを出し続けるか
それなら余裕でクリアだー…と、どこからかブブーと音が聞こえるとともに、先程のルールに『同じ手だけを出し続ける&打ち合わせ禁止』が追加される
「…は、ダメなようだ

真面目にクリア目指す
「ジャンケン、ポン
ラシェルはグーを出し負ける
「反射的に勝とうしてしまう事はあるよな(くすくす笑い
気を取り直し再開
「ポン(負け
「ポン!(負け
「ポン!!(負け
粘るが全敗
動き止め真剣な様子で凪と目を合わせ
「そんなに分かり易いだろうか…?
目逸らした意味を察し
「…そうか
真面目に悩む

残り10分、焦りの色が浮かぶ
「あいこは増えたが…(何か打開策を…
凪と目配せ、自然な動きでグーなら足閉じパーなら開き…足ジャンケンの要領で合図送る
「あいこでしょ!…9回目だ、次が最後っ!

10回目
「あいこでしょっ!
緊張の一瞬
ドアの出現を確認し同じく拳を強く握る
戦友と固い握手を交わし、視線で健闘を称え合う
もはや言葉はいらない
二人並んで部屋を去る

「ああん? なんだこのふざけた部屋は⋯⋯」

●同行
フィオーレ君(la0549)

●行動
衣装は猫耳+チェシャ猫っぽい

フィオーレ君とは初対面
会ったことあったっけ? あまりいちいち記憶もしてないものだから
それよりはなんかこのふざけた部屋の方が問題だ
家で寝ていたはずなのに、連れてこられるまで起きれなかったのか?
刀もないし、そもそも自室に入られたなら警備をもっと考えるべき⋯⋯

「はー、しかも卓球知らねえの。面倒くせえな」
とはいえ出る方法がそれならやらない理由はない
正直な感想を述べつつも最低限は教える
とはいえ一応同業者を手荒に扱うことはできない
教えるのは不思議と上手な方
「これだけ生きてれば人に教える機会くらいは多少あるんだよね」
「持ち方はこう。あまり力は入れすぎないように、当たれば飛ぶ」
「(球がラケットを避けたのなら)僕の打ち方が悪かったんだろうね」
「魔女⋯⋯ああ、放浪者なのかな」
卓球打つなら髪はきちんと結う
しりとりも基本的には卒なくこなす

「あー、まあアルビノもそう珍しいもんじゃないよね。
ああごめん、星はあんまり好きじゃあないんだ」

  • これからも隣で
    珠興 凪la3804
    人間20才|スピリットウォーリア×ゼルクナイト

同行
ラシェルla3428

部屋のルール
『30分以内にジャンケン10回連続あいこにならないと出られない部屋』

行動
目が覚め辺りを見渡すと知った顔が一人だけ
「あれ、ラシェル?
「ここは…
指示文章を読み終える
「これはまさか…噂に聞く『〇〇しないと出られない部屋』?!実在してたなんて…
「絶対にここから出よう。大丈夫、僕達ならやれる!

提案受け
「それがいいね
それならすぐに婚約者の元に帰れると思いきや
「本気でやるしかないのか

気合を入れ真剣にジャンケン開始
「ジャンケン…(ラシェルの次の手は…読めた!)…ポン
凪はパーを出し勝つ
「違ーう!今のはグーを出すって!分かったのに!!
(ラシェルの動きをよく見るんだ…)
「ポン(勝ち
「ポン!(勝ち
「ポン!!(勝ち
無言で目を逸らす
意外と分かりやす…本当に済まないと思っている

「あいこが続く気がしない!
目配せ受け何か合図があると察する
(踊ってる…わけじゃないよね)
手足の動きの関連にすぐ気付き合わせる
「あいこでしょ(8回目…あと9分か)あいこでしょ!(10回目!)…っこれ何回目だっけ?!
残り時間に気を取られ中断
焦り再開

ラスト10回目
「あいこでしょ!!!」
緊張の一瞬
ドアが出現したのを見て拳を強く握り喜ぶ
戦友と固い握手を交わし、視線で健闘を称え合う
もはや言葉はいらない
二人並んで部屋を去って行く

〈ここは、『卓球しながらしりとりしないと出られない部屋』です。
この文章を目にした瞬間から、制限時間いっぱいまで、しりとりしながら卓球をして下さい。
なすべきことをなせば扉が現れ、あなた方は自由の身になれます。
尚、失敗や途切れてしまうのはOK、サボってやらないのはNGです。
それでは、ゲームスタート!〉

 文面を読み終えた直後、その文章の横に『ピッ』という音と共にデジタル表示が現れ、数値が減っていく。
「……ああん? なんだこのふざけた部屋は……」
 起き上がってぼんやりしていた六波羅 愛未(la3562)は、壁に書かれた文章に悪態を吐いていた。
 彼の着ている衣装は、『不思議の国のアリス』に出てくるチェシャ猫を思わせる。頭にも猫耳が付いているのを見たアルバ・フィオーレ(la0549)は、思わず軽く吹き出した。
 おまけに無意識に「かわいい」などと付け足してしまったものだから、六波羅は露骨に嫌な顔になり、その声がしたほうへジロリと目を向ける。
「あら。えぇと、こんにちは?」
 何か気まずくなったのを誤魔化すように、アルバは挨拶しながら立ち上がる。
 彼はベース内で顔を見かけたことがあるかな、程度の認識だ。にも関わらず、人見知りせずに挨拶できたことに驚く。
(まあ、夢の中だし?)
 そう断定できたのは、確認した自身の格好にも拠る。
 ハロウィンが近いからなのか、アルバの衣装も仮装風だ。六波羅と同じく、『不思議の国のアリス』のアリス風で、頭を確認すると長い耳が付いているように思えた。多分、ウサギのそれだろう。
 何より、補助具がなくても立てている。夢か、さもなければ現実ではないどこかである以外には考えられなかった。
 一方、六波羅は、アリスの格好をしたアルバを半ば睨め付けながら考える。
(会ったことあったっけ?)
 自問し、記憶を探るが、ほとんど覚えがない。元来、基本的に他者に興味がないものだから、相手が誰であれ、いちいち記憶していないのだ。
 多分初対面だろう、と断ずる。見たところ温厚そうな人物であることは、やり易そうでよかったが。
 それより、何かふざけたこの部屋のほうが問題だ。
(家で寝てたはずなのに……まさか連れて来られるまで起きれなかったってことか? 刀もないし、そもそも自室に入られたなら警備をもっと考えるべき……)
「……あのー」
「あ?」
 思索を遮られ、ついどこか凄むような声が出てしまう。一瞬、『しまった』と思ったが、アルバはあまり気にした様子もない。
「早速なんだけど、卓球教えてなの♪」
 初手からフレンドリーに言われて、毒気を抜かれた気がした。
「……はー、しかも卓球知らねえの」
「うん。知識としては知ってるけど、プレイは初めてなの」
 だと思う、と脳裏で付け加える。
「面倒くせえな」
 ブツブツと正直にこぼしながら立ち上がる。相手は一応同僚らしいので、手荒には扱えない。
 それにどの道、部屋から出る方法は、どうやら壁に書かれた指示に従うよりほかにないようだ。ならば、やらない理由もない。
 まず最低限を教えるべく、六波羅は髪をきちんと結いながら、室内に設えてあった卓球台へ向かった。

 ラシェル・ル・アヴィシニア(la3428)と珠興 凪(la3804)は、同じ室内で目覚めた。起き上がって辺りを見回している内に、室内にいた自分以外の者と視線が合う。
 互いに知った顔だ。
「あれ、ラシェル?」
「凪か、ここは一体……ん?」
 ラシェルの視線に釣られるように、凪も顔を上げた。目に留まったのは、壁に書かれた文章だ。

〈ここは、『30分以内にジャンケン10回連続あいこにならないと出られない部屋』です。
なすべきことをなせば扉が現れ、あなた方は自由の身になれます。
但し、もし制限時間を過ぎた場合、あなた方は永遠にここへ閉じ込められることになるのでご注意下さい。
それでは、ゲームスタート!〉

 文面を読み終えると、その文章の横に『ピッ』という音と共にデジタル表示が現れた。そして、その数値は容赦なく減っていく。
「えっ……えぇ――っ、嘘っ! これはまさか……噂に聞く『○○しないと出られない部屋』!? 実在してたなんて……!」
 愕然としている凪の横で、ラシェルは困惑の表情だ。
「……そんな部屋があるのか? 状況はよく分からんが……」
 立ち上がって、カウントダウンの進む時計に目を向ける。
「要は、条件を満たせばいいのだな」
「うん、絶対にここから出よう!」
 凪も勢いよく腰を上げ、拳を握った。
「大丈夫、僕達ならやれる!」
「あぁ、さっさとクリアしよう」

「持ち方はこう。あまり力を入れすぎないように、当たれば飛ぶ」
「こんな感じかしら……」
「受ける時はワンバウンドしてからね」
 アルバは六波羅に教わった通りにラケットを握り、振ってみる。
 実際にやってみると、基本は案外簡単にできるようになった。
「六波羅さん、教え方お上手なのね」
 言われて、六波羅は少々面食らいながらも「まあ……これだけ生きれば人に教える機会くらいは多少あるんだよね」と答える。
「じゃあ、もう打ち合いやって平気かな?」
「うんっ、頑張るの!」
 ピョコン、と首を縦に振ると、ウサギ耳が可愛らしく揺れる。
 それを無感動に眺めた六波羅は、
「――で、しりとりしながら、だったよな……じゃあ、『しりとり』」
 と言いつつ早速、コン、とピンポン球を打った。
「あっ、えっ、えっと、……り、り、……『リンドウ』」
「う、か……じゃあ、『馬』」
「ま、ま……『マーガレット』!」
 スコン、という音と共に打ち返す。慣れると楽しくなってきた。
「と……『時計』」
「い、い……『イカリソウ』」
「何だよ、また『う』か……『牛』」
「し、し……『シジミバナ』!」
 子供のように楽しみながらしりとりで答える内容は、ことごとく花の名前だ。
「花が好きなのかな」
「え?」
「いや、全部花の名前みたいだから」
「うふふ、だって花の魔女だもの♪」
「魔女……ああ、放浪者なのかな」
「正解♪ それより六波羅さんの番なのよ、『な』!」
 スコーンッ! と打ったつもりだったが、そのスイングはしっかり空振ってしまった。実際の擬音は『スカーンッ!』だろうか。
 ラケットに当たらなかったピンポン球は、コン、コン、という音をフェードアウトさせながら遠退いていく。
「……球が……ラケットを避けたのだわ……!」
 アルバは、ゴクリと喉を鳴らしながら、小刻みに震え棒立ちになってしまった。六波羅は仕方なく、自分が彼女の陣地のほうへ、ピンポン球を拾いに行く。
「うん、まあ(球がラケットを避けたのなら)僕の打ち方が悪かったんだろうね」
 普通そんなことは起きないんだけどね、と脳内で付け加えつつ、ピンポン球を持って自分のコートへ戻る。
「『な』だったかな……じゃあ、『ナス』」
 コン、と小気味よい音を立てて、球が彼女のコートへ飛んだ。状況は相変わらず腑に落ちないが、それが指示であるなら、こなすことに抵抗はない。
 先刻と変わらず球が飛んで来る。我に返ったアルバは、「あっ、えと、すっ、『スターチス』!」と返しながら今度は慎重に球を狙ってラケットを振った。
「結局『す』からか……」
 ブツブツとやはり素直に感想を漏らしながら、しりとりも基本的には卒なくこなしている。
「じゃあ、『すいか』」
「『か』ね、か、か、……『カーネーション』!」
「……終了か?」
「へっ?」
 訊かれて、アルバは瞬時棒立ちになる。
「あっ、……あ――っ、ごめんなさい! 『ン』が付いてしまったわ!!」
 状況を理解するなり、ショックで反射的に頭を抱えた。当然、球はまたもアルバの脇をすり抜けてスキップするように弾んで行く。
「……今度も球がラケットを避けたのかな?」
「……いいえ……今のは、私が悪いのだわ……」
 コン、コン……という音の幅が、徐々に短くなっていく。アルバは、きびすを返すと、部屋の隅へ飛び跳ねていく球を小走りに追い掛けた。

「――て言っても、まともにやったらあいこが30分以内に10回も続くかなぁ」
 ふと、凪からもっともな意見が漏れる。ラシェルは少し考えた末に、
「……では、互いにグーを出し続けるか」
 と提案した。
「あっ、そっか! それがいいね」
「それなら時間も余裕でクリアーだ」
「うん」
 そうすればすぐに婚約者の元へ帰れる! と、凪が思った直後。
 どこからか『ブブー』という音が鳴った。
 揃って音がした方向へ顔を向けてみると、ルールに何やら追記がされている。

〈同じ手を出し続ける、及び打ち合わせは禁止とします〉

 ガーン、という効果音が聞こえた気がした。無情な禁止事項の付け足しに、凪は一瞬あんぐりと口を開け、ラシェルも顔を強張らせる。
「……は、ダメなようだ」
「本気でやるしかないのか~……」
 頭を抱えていても始まらない。
 互いに気合いを入れ直し、真面目に真剣にゲームクリアを目指すべく向き合った。
「じゃあ、始めるか」
「うん、行くよっ」
「「ジャーンケーン……」」
(ラシェルの次の手は……読めた!)
 これで彼と同じ手を出せば1回目はクリアだ。
「「ポン!」」
 しかし、条件反射的に凪はラシェルの手より強い――つまりパーを出し、勝ってしまった。
「あ……って、違ーう! 今のはグーを出すって! 分かってたのにぃい!!」
 露骨に悔しがる凪に、ラシェルは思わず吹き出した。
「反射的に勝とうとしてしまうことはあるよな」
 くすくすとしばらく笑いの残滓を引きずっていたが、早々にそれを呑み込む。二人は気を取り直してジャンケンを再開した。
「「ジャーンケーン……」」
(ラシェルの動きをよく見るんだ……)
 次こそ彼と同じ手を出すのだ、と堅く誓う。
 ラシェルは意外に分かり易く、次の手を読むのは容易だった。あとは、凪が同じ手を出しさえすれば、10回あいこが続くのも簡単だったはずなのだが。
「「ポン」」
 ――凪の勝ち。
「「ポン!」」
 ――また凪の勝ち。
「「ポン!!」」
 またまた凪の勝ち――気持ちいいくらいに凪の圧勝である。どうしても反射で勝ちに行ってしまうのだ。
「あぁあああ、ごっめーん!!」
 分かっているのにあいこの手が出せず、凪は頭を抱えた。
 他方、懸命に粘って今のところ全敗中のラシェルは、動きを止めて真剣に凪を見る。
「……そんなに分かり易いだろうか……?」
 目が合ってポソリとこぼした途端、顔を上げた凪は、これまた分かり易く無言で目を逸らす。
「そうか……」
 真面目に悩むラシェルに、凪は心底すまない気持ちになった。しかし、うなだれている間も悩む時間もあまりない。
「……続けない?」
 怖ず怖ずと彼の顔を覗き込むと、ラシェルもどこか力なく「そうだな」と頷いた。
「「ジャーンケーン、ポンッ!」」
「……もうっ、ホント、ごめん……」
 また勝ってしまった凪が、半泣きになりながらしゃがみ込んだのは言うまでもなく、それに対して今度はラシェルがなぜか申し訳ない気分になる。
「……とにかく続けてみよう。その内、何か突破口が見つかるかも知れない」
「……そだね。僕、頑張るよ」
 何を頑張るのだろう。
 しかし、その脳裏のツッコミは互いの口から出ることはない。
 座り込んでいた凪は、ノロノロと立ち上がってラシェルと改めて向き直った。
「「ジャーンケーン、ポンッ!」」
 ――今度もまた、凪の勝ちだった。

「じゃあ、『か』からやり直しなのね。か、か、……『カサブランカ』!」
「おおい、またそのパターンか……『か』だな。……『蚕』」
「こ、こ……『コスモス』!」
「『す』二周目か……うーん……じゃあ、『スコア』」
「あ、あー……『アルストロメリア』!」
「結局最終文字が変わらないパターン・アゲインだな……じゃあ……『赤鬼』」
「に、に……『ニチニチソウ』!」
「う……『ウサギ』」
「あっ、ウサギと言えば!」
 コン、と軽い音を立ててラケットを振りながら、アルバはしりとりではない言葉を発した。
「私、赤い目の友人多いのだけど、みんな色が違うのね」
 自分たち二人はいつの間に友人になったのだろう、と思いながら、六波羅は球を打ち返す。
「あー、まあアルビノもそう珍しいもんじゃないよね」
「あなたのは……何て言ったかしら、さそり座の! ほら! 赤い部分! あの星に似た色なのだわ♪」
「ああごめん、星はあんまり好きじゃあないんだ」
 よって天体に興味のない六波羅も、ど忘れしたらしいアルバも、その星が『アンタレス』という名を持つことを、ついにこの場で思い出すことはできなかった。
「それよりほら、続き」
「へっ? あ、ああ、えっと……何だったかしら」
「『ぎ』だよ」
「ありがとうなの。えっと、ぎ……ぎ……『ギプソフィラ・レペンス』!」
 濁点の付く頭文字の花は疎か、普通の言葉さえとっさには思い付けないのに、よく出てくる。だてに『花の魔女』を名乗っていないということだろう。
 それにしても『す』の付く言葉のターンが多いなと思いつつ、六波羅は「『水槽』」と口にした。
「う、うー……『ウエストリンギア』」
「あ、か……『握手』」
「『ゆ』でいいのかしら」
「そうだね」
「じゃあ、ゆ……『ユキヤナギ』!」
「ぎ、か……『ギター』」
「『あ』でいいのね」
「そうだね」
「うーん……じゃあ……『アイスランドポピー』!」
「『い』でいいかな、じゃあ……『イカ』」
「か、か……『カスミソウ』!」
 何だか『う』の付く言葉が回ってくることも多いな、と思ったが、それは口に出すことなく『う』で始まる単語を考える。
「牛も馬もウサギも言ったから……うーん……『ウズラ』」
「ら、ら……『ラナンキュラス』!」
 『す』も多い。とまた反射で考えてしまい、それも考えるだけ無意味だと思い直す。とにかく続けなくては、この部屋から出られないのだから。
 チラリと時計を見るが、まだ折り返し地点くらいだ。
「す……『スイーツ』」
「つ、つー……『椿』!」
「『き』か……『機関車』」
「んー……じゃあ、や、や……『山桜』!」
「ら……『ラジオ』」
「お……お……『オーニソガラム』!」
「む……『昔話』」
「し、し……『紫苑』……は『ん』が付くからダメなのね……うーん、じゃあー……『シジミバナ』!」
「それ、さっきも言ったよね」
「えっ、えーっ……よく覚えてるのね。うーん、うーん、じゃあ、待ってなのね、し、しー、……『枝垂れ桜』!」
 同じ『桜』に『山』だの『枝垂れ』だのと冠に付く文字を変えるのもどうかと思ったが、この時の六波羅は敢えて突っ込まなかった。
 冠が違う以上、『山桜』と『枝垂れ桜』は恐らく別物なのだろう。多分。
「『ら』ね……じゃあ、……『ライセンサー』」
 六波羅の回答に、思わず吹き出したアルバは、ひとしきり笑ってから思索に戻る。
 カコン、カコン、とピンポン球がリズムよく跳ねる音をBGMに、二人のしりとりは指示通り、制限時間いっぱいまで続いていた。

「「――ジャーンケーン、ポン!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「うわ、ごめん!」
「大丈夫だ、もう一度」
 落ち込んでいる暇はない。ラシェルは勝つ度謝罪する凪を、宥めているのかその謝罪を止めているのか分からない体で促す。
「「ジャーンケーン、ポン!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「しょ! しょ! しょっ! しょ!」」
「うわぁああ、ホンットごめーん!!」
 反射でまた勝ってしまった凪は盛大に悲鳴を上げて、何度目かでまた頭を抱えた。
(今の、あともうちょっとで10回だったのに――――!!)
 申し分けなさすぎて口にも出せずに、凪は盛大に悔しがる。
 室内には弾む呼吸音が充満していた。
 激しい運動をしたわけでもないのに、ラシェルも膝に手を突き、肩で息をしている。
 すでに20分が経過していた。
 残り時間は10分となり、互いに焦りの色が浮かんでいる。
「……あいこは増えたが……」
「続く気がしない! 何でこうなるの――――っっ!?」
 凪がガバリと上体を起こして、またせわしく頭を抱えた。
 普段の習慣から、どうしても反射で勝ちに行ってしまう行動も、大分制御できるようにはなっていた。
 しかし、数回あいこが続くと油断するのか、ふっと忘れてしまう瞬間がある。
(……何か打開策を……)
 相談などは禁止というルール上、こんな一言さえ口に出すのは憚られる。
「……とにかく急ごう。もう一度だ」
「うん、了解」
「「ジャーン、ケーン、ポン!」」
 またも勝ってしまった直後、ほとんど反射で「ごめん」と言いそうになった凪は、ラシェルが何やら目配せしているのに気付いた。
 提案があるのは察せられたが、一度声に出して相談した結果、部屋からダメ出しを食っている以上、問い返すわけにもいかない。けれど、何もないのにする目配せではないのは分かる。
 ラシェルの動きに注意してみていると、ごく自然な動きに見せながら、足も動いていた。
(踊ってる……わけじゃないよね)
 自分でも間が抜けていると思える自問をしながら、手でのジャンケンの動きは続けつつ観察する。
 すると程なく、ラシェルの手と足が連動していると理解できた。彼の出す手が『グー』なら足が閉じ、『パー』なら開き――といった具合だ。足ジャンケンの要領で合図が送られている。
 凪もまた視線が不自然に見えないように、ラシェルの足の動きのみを注視した。勝ちに行こうとするのではなく、彼の足と同じ手を出すことに集中する。
「「あいこでしょ! あいこでしょ! しょ! しょ! しょっ!」」
 1回目、2回目、3回目――とカウントしながら、チラリと残り時間に目を向ける。
(あと9分か)
 8回目を数えたあとにそんなことを思ったものだから、凪の中では次が10回目になってしまった。
「「あいこで、しょっ!」」
 それでも出口が現れないので、軽く混乱する。
「えっ、あっ、あれっ……これ何回目だっけ?!」
「9回目だ、次が最後っ!」
 言われて、焦りながらもラシェルのほうに向き直り、再開した。
「「あーいこーで、しょっっ!!!」」
 今度こそ、ラスト10回目だ。二人は同時に勢いよく指示文章のほうを見やり、固唾を呑んだ。緊張の一瞬ののち、見事そこにドアが出現する。
「やったぁ!!」
 それを見た凪は、万歳して飛び跳ね、拳を強く握って喜んだ。ラシェルも同様に胸元で拳を握っている。
 二人は長い戦いを経た戦友と、ガシッと固い握手を交わし、視線で健闘を称え合った。
 しかし、もはや言葉はいらない。そして、この部屋にももう用はない。
 二人は並んで部屋を出るべく、出現したドアに颯爽と足を向けた。

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