オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

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  3. 【銀梅花】幸せ鮮やかに

【銀梅花】幸せ鮮やかに 秋雨

形態
ショート
難易度
易しい
価格
1500(EX)
ジャンル
恋愛 日常 
参加人数
63~8人
予約人数
10010100
基本報酬
0G
160SP
1600EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
3
締切
2020/06/24 20:00
完成予定
2020/07/14 20:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●幸せを残す

「モデルのお仕事、ですか」
「はい」
 何か仕事はあるだろうかと訪れたライセンサーは、受付嬢の言葉を復唱する。頷いた相手はこちらですと詳細の記された紙をライセンサーへ渡した。
 エオニア王国。最近よく見る名前が視界に入る。現在復興中の国で、確か年端もいかぬ少女がトップにいるのだったか。
「国として『ジューンブライド』を推しているみたいですよ」
 受付嬢の言葉にああ、とライセンサーは納得した。最近よく見かけるのはジューンブライドのためだったか。

 ジューンブライド──6月の花嫁は幸せになれる、そんな話がある。日本でもこの季節に挙式をしたいというカップルは少なくないのだ。
 その由来はと言えば様々で、どれが本当なのかもわからない。神話が由来だと説く者もいれば、ヨーロッパのこの季節は天気が良いのだと説く者もおり。はたまた農作業の落ち着く時期が6月だと説く者もいる。
 けれど共通なのは『6月に結婚すると幸せに過ごせる』ことなのであった。

「ウェディングドレスやタキシードなどを着ての撮影だそうです。報酬は出ませんが、写真を受け取ることは可能です」
 もちろん受けると承諾すれば写真はどこか、不特定多数の目につくよう掲載されることとなる。モデルとはそういうことだ。
 復興中のエオニアにおいて、報酬は『出ない』というより『出せない』に近いかもしれない。金銭が出ぬのなら、代わりになるのは物品だ。
 ライセンサーへ報酬として渡される写真は、国でも評判の良い写真店で現像されるらしい。画質も紙も良いものなのだそうだ。

 まあ、つまるところは記念写真。そんなつもりで撮って貰えば良い。

 結婚式をテーマに写真を撮るのだから当然2人1組。中には知り合いと、恋人と、仲良くなりたいあの子と共に写真へ写りたい者もいるだろうが──そこは運に身を任せるしかない。
「撮影後は好きに過ごして良いですよ。ドレスやタキシードのままデートしてみたりとか」
 想像したのか受付嬢の瞳が憧れに細まる。彼女も恐らくは『結婚を夢見る乙女』というやつなのだろう。
 モデルの仕事ではあるが、写真ばかりではと思う者もいるだろう。そんなライセンサーたちには『本物の挙式』という提案もある。
 ライセンサーの知人を呼ぶことはできないが、スタッフが神父に、あるいは客となって祝福してくれる。撮影後の些細な時間ではあるが、それでもと言う者はスタッフへ声をかけると良いだろう。
 ライセンサーは紙へ視線を落として──脳裏に誘いたい相手を浮かべたのだった。


●シンプルモダン

 白い床に、同じ色の椅子。濃紺のカーペットはまるで夜空のようだ。
 しかし上を見上げれば本物の夜空──満点の星空が2人を見下ろしている。キラキラ輝くそれはまるで宝石箱のよう。
 辺りを見ると鮮やかな花々が2人を取り囲んでおり、自然の甘い香りが鼻をくすぐる。
 本当にここで挙式を挙げるなら、沢山の人を招待して。
 いいや、2人きりでこっそりでも良いかもしれない。この時間は2人だけの秘密、とでも言うように。


●オーシャンテラス

 潮風が頬を掠める。視線を巡らせれば外から見るエオニア王国が映った。
 人の営みが、その光が美しく輝いている。そして空を見上げればやはり──満点の星空も、そこに。
 夜風はほんの少し冷たい気もするけれど、傍らにいる人の温もりが感じられて思わず笑みを浮かべてしまう。隣で怪訝そうな顔をされて、なんでもないよと微笑んで。

 さあ、どこをバックに写真を撮ろうか?


●神前

 3つの盃に注がれる御神酒。ふわりと畳のい草が香り立っている。
 御神酒は夫婦となる2人に加護がありますように、と。
 3つの盃は『子孫繁栄』『2人の誓い』『先祖への感謝』を込めて。
 この儀式を、日本では三々九度と言う。
 同じ盃から御神酒を頂く──その一瞬を、写真へ。

●内容
 ナイトウェディングのモデルとして撮影される

※このシナリオは『夕方〜夜』限定の撮影となります。日中ご希望の方は雪芽MSのシナリオへどうぞ!

●詳細
 参加した時点で『撮影された』ことになります。リプレイではその前準備や撮影直前、直後、その後のデートなどの描写が可能です。
 ただし描写箇所は分散させるほど、内容が薄くなります。なるべく絞ることをお勧めします。

 あくまでモデルではありますが、ちゃんと挙式をしたい場合はスタッフがモブ神父やモブ客として入ります。(撮影は2人のみでOKです)

 OPに出てきた3つの式場から場所をお選び頂けます。
・シンプルモダン(略称:現式)
 宗派を問わない人前式や、照明を駆使した現代的な演出が可能。
・オーシャンテラス(略称:船式)
 船上で、エオニア王国全景をバックにして撮ることができます。星空も綺麗ですし、お顔や衣装が暗くなってしまわないようなライトアップも可能です。
・神前
 神前式です。白無垢とか着たい人はこちら。それらしいセットが用意されています。夜の庭園もセットされており、巡ることもできます。

 今月比較的書いてます。全部エオニア。秋雨です。
 モデルのお仕事ですって。可愛く、格好良く撮ってもらいましょう。
 2人1組が絶対ですので、お気をつけを。もし決めていた方と入れなかった場合は相談卓で相手を見つけて下さい。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

@心情
さてはて~…モデルのお仕事は初めてですね~…上手に出来るかどうか~…
@目的
モデル撮影、その後の思い出作り
@同行
フェリシテさん
@行動
撮影後に夜の庭園の散策、服装は撮影したときのものをそのまま使わせて頂きましょうか~…
この時期なら夜に冷えるということもないでしょうが~…大丈夫ですか~…?
私は普段から和装ですし、あまり変化はないと思いますが~…?フェリシテさんは~…ふふ、普段とはまた雰囲気が違いますね~…?それも素敵だと思いますよ~…?
おやおや、ふふ、ありがとうございますね~…♪

あぁ、えぇ、えぇ、盃にはそれぞれで意味があるようで~…
ふふ、私も似たようなものですから~…ふふ、本当の結婚式ですか~…
そうですね~…もう少し色々と世界を見てからでも遅くはないでしょう
時間はあるのですから、のんびりと過ごしましょう~…

庭園のわびさびと言うのは私にも詳しくは分かりませんが~…
この庭を造った人や、この庭を依頼した人の好みや心象が出ているのかもしれませんね~…
それを良いもの、素敵だと思う気持ちがあるのなら、それがわびさびなのかもしれませんね~…
私もこういう静かな雰囲気は好きですよ~…?ぼーっと見てられますからね~…♪

  • 深まる由縁
    フェリシテla3287
    ヴァルキュリア17才|スナイパー×セイント

■同行
ニムさん:最愛の恋人
■形式
神前
■心情
モデルとはいえ、ニムさんと結婚式……夢みたいです(照れ照れ)
■準備
白無垢を着て、薄化粧も
■行動
撮影後、夜の庭園を二人きりで散策します
慣れない服装ですからニムさんに手を繋いでもらって
撮影は緊張しちゃいましたが、ニムさんと二人きりでしたらゆったりと楽しめます
ニムさんはいつもかっこいいですが、今日は特に素敵に見えます。惚れ直しました(赤面)
ニムさんは、その手のようにいつも温かいです。フェリシテと共にいてくださりありがとうございます。愛しています。ずっとずっと一緒にいたいです

ところで、神前式の3つの盃はそれぞれ意味があるのですね
フェリシテはヴァルキュリアですから子供を産む能力はありませんし先祖もおりません
今日はモデルとしての撮影でしたから構いませんが、本当に結婚式を挙げるのでしたら洋式の方がいいかもしれませんね
本当にニムさんと結婚できるのでしたらどのような形式でもいいですけど。ふふふ

この庭園、綺麗ですね
フェリシテは日本庭園を拝見するのは初めてです
話によると、ワビサビという概念に基づいていて、置かれている物にもその配置にも意味があるとか……?
静かで落ち着いたお庭ですね
ニムさんと美しいものを一緒に見られて幸せです

  • 気付いてないでしょう?
    天野 一羽la3440
    人間20才|ネメシスフォース×セイント

【式場・衣装】
現式。衣装は白のタキシード。

【撮影後】
どうしよう。まだなんか、すごくドキドキする……。
えっと、すみれちゃん?
その、撮影終わったけど……。
(うう、なんか気まずい……。ていうか、スタッフさん帰っちゃって二人きり??)

……そんな!?
すみれちゃん、その、全然変とかじゃないし。
えっと、すごく、き、綺麗で……。

ううん、本当に綺麗。うん、すごく綺麗だよ、すみれちゃん。
すみれちゃんのドレス姿見れて、本当に良かった。
すみれちゃんこそ良かったの?
その、ボク相手だし。

……う。ボクもすみれちゃんが他の人とドレス着てなんて……。
全然想像つかないっていうか、ヤだ……。
うん。すみれちゃんが誰かのとこにお嫁に行くなんて、嫌かも。
ずっとこれまで一緒にいて、何となくそれが続くんだろうなって思ってたけど。
何となくじゃなくて、これからも、ずっと一緒がいい。
すみれちゃん、とっても綺麗で可愛いんだもん。ボクが、その、ひとり占めしたいんだ。
今日、初めて気づいた。ねえ、ボクのためだけに、ドレス、また着てくれる……??
※ぎゅっと抱きしめて、近づいて……。

  • これからも隣で
    珠興 凪la3804
    人間20才|スピリットウォーリア×ゼルクナイト

若葉la3805と一緒に神前式の会場で撮影に参加

衣装は五つ紋付袴
紺色の羽織に、腰元が白で足元が濃い色の袴
若葉の衣装と柄は一緒の色違い

▼着替え終わって対面
思わず見惚れる
「ありがとう。若葉も似合ってるよ」
普段は可愛いのに、こういう時はすごくかっこいいなんてずるい
顔が熱いのはきっと夕日のせいだ

▼写真撮影
三々九度のシーンを撮影
床の間を背に座ると正面のカメラマンさん達スタッフが目に入り緊張が増す
「ん?」
呼ばれ振り向くと同時に頬を指で突かれる
「ふふ、急に何、びっくりした」
一気に気が緩む
「あの時もこうやって緊張を解してくれたよね」
まだ友人同士だった頃のことを思い出す
「お返し♪」
若葉の頬を軽くむにっとつまむ
緊張はすっかり解けている

撮り終わり画像を確認
縁側に並んで座り顔を寄せ合う
「わぁ…こんなにたくさん撮ったんだ。…全部欲しいな」
「この若葉も、すごく綺麗だ」
写真眺め和気藹々

▼庭園散策
撮影後、衣装のまま夜の庭園へ
「暗いから足元に気をつけて」
手を差し伸べてエスコート
「お酒だったら没収してたよ。酔った可愛い若葉を撮らせるわけにいかないからね」
「うん、次の誕生日は特別楽しみだ」
「若葉」
愛しい人に呼び掛ける
婚約を受け入れてくれたあの時から、生涯大切にする気持ちは変わらない
「今日も大好きだよ」
若葉と一緒、それだけで幸せいっぱい

凪la3804と神前の会場で撮影

衣装は五つ紋付袴
白い羽織に、腰元が白で足元が濃い色の袴
凪の衣装と柄は一緒の色違い

▼着替え終わり対面
「うわぁ…」
普段と異なる雰囲気の凪に思わず息を飲む
嬉しそうに笑い
「よく似合ってるよ、格好いい!」
凪にはやっぱり青が良く似合う
「ほんと?ありがと」
どや!っとポーズを決めてみる
着慣れぬ衣装も凪が言ってくれるなら自信が持てる

▼写真撮影
三々九度のシーンを撮影
床の間を背に正座し並び、目の前には盃
スタッフの多さにやや緊張
隣に座る凪をちらっと見れば、自身以上に緊張した様子
「凪」
緊張する凪に声を掛け、振り向きざまに人差し指でほっぺぷに
「ふふふ、驚いた?」
いたずらっぽく笑い
「なんか、凪のアルバイト初日を思い出すね」
頬をつままれ楽しそうに笑い、緊張はすっかり解けている

縁側に寄添い座りカメラを覗きこみ画像確認
「どれもよく撮れてるね」
「この凪の表情、すごくいいな」
写真を眺め和気藹々

▼庭園散策
凪の手を取り繋いで、のんびり淡い灯りに照らされた庭園を散策
「三々九度で酔わないか心配だったけど、お酒じゃなくてよかったよ」
「あと少しで一緒にお酒飲めるね、楽しみだな」
「ん?」
想いは同じ、いつも大切に思っているし幸せでいて欲しい
愛しい人に満面の笑顔を向け
「ありがと、俺も大好きだよ」
凪と一緒、それだけで幸せいっぱい

  • 薔薇花園のツンデレラ
    矢花 すみれla3882
    ヴァルキュリア20才|セイント×グラップラー

同行:
天野一羽(la3440)
衣装:
ウェディングドレス。そりゃ、だって花嫁さんだもん。
純白のプリンセスライン、背中のおっきなリボンが可愛くて、チュールたっぷり。
甘々の正統派だもん。ヴェールはシンプルなショートヴェールとかの方がいいかな?
ドレスのほうは頑張ったし。

素直じゃないすみれ:
(……なんでこんな気持ちになってるんだろ。)
ドレスが着れるからって、エオニア行けるからって気軽に応募したはずなのに……。
一羽だって、別に恋人とか、そういうアレじゃないし……。
知らない男の子相手にウェディングドレスで撮影とか、嫌だから誘っただけのはずなのに……。
なのに、途中からなんか、ヘンな気持ちになってきて……。なんで一羽の顔が見れないのよ……。

……撮影終わったわよ。なによ、終わって良かった??
……。
ねえ。別に結婚するわけでもないのに、幼なじみ同士なのに、こんな衣装で写真撮っても、別にアレよね。

(綺麗だって言われると)
……!?
何よ、そんな。無理に言わなくたっていいんだから。
そんなの似合わないし……。
……う。何よ、本気だっていうの……。
私だって、ドレス着れたの嬉しかったし……。でも、あんた以外に見せるなんて考えられなくて……。
何よ何よ、遅いわよ、気づくの……。
ていうか、それ、もうプロポーズじゃん……。
……うん。いいよ。着てあげる。
(↑目を閉じ唇を……)



 パシャリ、パシャリ。

 角度を変えて、瞬間を変えて。ニム・ロココ(la1985)とフェリシテ(la3287)の姿が写真に収められていく。
(上手に出来ているでしょうか~……)
 モデルなんて初めてだから、というニムの小さな緊張も結婚式というものに対するそれと取られたか。その傍らでフェリシテが恥ずかしそうに、しかし嬉しそうにはにかんでいる様子も幸せそうな姿の一助となったのだろう。
 明かりが灯り、神の前であるという厳かさを現した結婚式──そのモデル仕事が終わると、2人は静かに庭園へと出た。

「フェリシテさん、気を付けて~」
 ニムが手を差し伸べ、白無垢を纏ったフェリシテが自らのそれを預ける。普段から和装を纏っているニムと違って、フェリシテは裾捌きもなれないことだろう。
「きゃっ」
「おっと」
 案の定、よろけたフェリシテをニムが抱き留める。その感触にどきりとするこの想いは、ニム以外の誰にだって抱かない。
「大丈夫ですか~……?」
「は、はい。ありがとうございます」
 それはよかった、と笑うニムは夜の冷え込みを心配する。ニムは言わずもがな問題ないが、聞慣れぬ服を着たフェリシテはどうだろう。ヴァルキュリアだから心配しなくていい、なんてことではない。
「ええ、大丈夫です」
「そうですか。それにしても~……ふふ、普段とはまた雰囲気が違いますね~……?」
 小さく笑ってニムが告げたのは、フェリシテの白無垢。常に着られないような真白の和服はともすれば見惚れてしまいそうで。ニムからのそんな惨事に、フェリシテはぽんっと頬を赤くする。
「さあ、ゆっくり行きましょうか~……」
 急かさない程度に、小さく手を引く。彼女を引っ張ってしまわないように、歩調を合わせて歩く。
 撮影では照れ笑いしつつも緊張していたフェリシテだが、こうして大好きなニムと共にいれば緊張も何もなくゆったりと楽しめる──いや。
(今日は特に素敵に見えます)
 いつも格好良いのだけれど、今日は尚更。
 ぽう、とニムを見つめる視線に気づいたのだろう。小首を傾げられ、フェリシテが「惚れ直していました」と言えばニムも小さく照れ笑い。
「おやおや、ふふ。ありがとうございますね~♪」
 好きな人に褒められたら、誰だって嬉しいもの。思わず握り合う手にぎゅっと力がこもって、そんなニムの手はフェリシテにとってとても暖かい。けれど手だけではなくて、心も。
「ニムさん」
 フェリシテが呼べば振り向いて、にこりと笑ってくれて。ほんのちょっぴり間延びした声で「何ですか~?」と聞いてくれる。こんな些細なことが嬉しいのは、この人だから。
 その瞳に、手に、声に宿る思いは愛情、親愛、好意。そんなものが入り混じっている。
「フェリシテと共にいてくださりありがとうございます。愛してます。ずっとずっと、一緒にいたいです」
 対してフェリシテが紡ぐのは熱い愛の言葉。世界一、唯一。そんな表現が正しいのかもしれない。
 暫く歩けば裾捌きにも慣れて、周りを見る余裕も出て来る。同時に先ほどの式も振り返られて、フェリシテは三々九度の盃について思い出した。
「そういえば、神前式の3つの盃はそれぞれ意味があるのですね」
「あぁ、えぇ、えぇ。それぞれで意味があるようで~……」
 小さな盃は過去を表し、先祖への感謝を。
 中ほどの盃は現在を表し、此れから力を合わせて生きていくという2人の誓いを。
 大きな盃は未来を表し、一族安泰と子息繁栄を。
 けれどそれらを誓い祈るのは、フェリシテの経歴上不可能だ。ヴァルキュリアに生殖能力はなく、ニムとの子供は産めない。そして当然先祖たる存在もいないため感謝を告げることもできやしない。
 本日はモデルだったから神前式でも良かった。本当に結婚するわけではないのだから。けれど。
「本当に結婚式を挙げるのでしたら、洋式の方がいいかもしれませんね」
「本当の結婚式ですか~……」
 ニムはフェリシテとの未来に想いを馳せ、目を細める。
 ニムとてフェリシテと似たようなもので、三々九度で感謝し誓うことは難しい。けれど2人ともできないのならばその手順を外してしまっても良いと思うし、神前式が駄目だから洋式にするしかない、というわけでもないのだ。
「もう少し色々と、世界を見てからでも遅くはないでしょう」
「はい。本当の結婚式を挙げるまでに色々見ましょうね」
 時間はまだ沢山ある。世界では争いが絶えなくとも、まだ急がなければどうこうといったわけでもないだろう。少なくとも、明日世界が滅びますなどと言われるようなことはあるまい。
「あ、フェリシテさん。そこを歩く時はお気をつけて下さい~」
「え? あ、」
 ニムに示されたそこは丁度段差で、小さな池に橋が渡っているところだった。橋の上へと誘われたフェリシテはぼんやりと明かりの灯る庭園を見渡す。
 薄暗さがありながらも、明かりのついた場所は上品にその場の雰囲気を作っている。日本庭園と言うのだろう。
「日本庭園は話によると、ワビサビという概念に基づいているそうですね」
 置かれている物、その配置。明かりの光やその影まで意味があるのかもしれない。
 その意味、そして具体的にどのようなものであるのかはニムにもよく分からない。
「この庭を造った人や、この庭を依頼した人の好みや心象が出ているのでしょうか~……」
「好みや心象……それがワビサビですか?」
「かもしれませんね~」
 池の水、映る橋。灯篭の明かりに生垣。影を作る植物から光に寄せられる虫まで、もしかしたら好みが全て計算されて反映されているのかもしれない。そうしてできたものを良いもの、素敵だと思う気持ちがあれば、その気持ちこそがわびさびというものなのかもしれなかった。
 ニムにもフェリシテにも、細部までをはかり知ることは難しい。生粋の日本人ですら全員が全員出来るかと問われれば首を横へ振るだろう。けれど、感じることは確かにある。
「静かで落ち着いていて、綺麗ですね」
「こういう静かな雰囲気は好きですね~……」
 橋の上。2人は手を繋いだままぼぅっとその景色を眺める。2人でならいつまでだって見ていられそう。
「ニムさん」
 フェリシテがそう呼びかければ、やっぱり振り向いて笑ってくれるから。フェリシテの胸は不思議と跳ねる。
 だから、今の率直な想いをいつだってこの人に伝えたい。

「ニムさんと美しいものを一緒に見られて、フェリシテはとても幸せです」




 白い床に濃紺のカーペットがまるで夜空のように引かれている。空を見上げれば本物の夜空があるけれど、天野 一羽(la3440)はそれを眺めるどころではなかった。
(どうしよう。まだなんか、すごくドキドキする……)
 この胸の高鳴りは何なのか。いや、緊張だ。緊張のはずだろう?
「えっと、すみれちゃん?」
 声をかけても今宵のパートナーである矢花 すみれ(la3882)は振り向いてくれない。先ほどまではぎこちなくも寄り添って、一緒に写真撮影もしていたはずだ。
 それこそ入場から始まり。
 指輪の交換をして。
 2人寄り添っているところを見せて。
 モデルの仕事だし幼馴染であるすみれとキスなどしようもないが、それ以外の2人でできる儀式はやったと思う。
 ちなみにスタッフはすでに引き上げて2人きり。これも本来は撮影後の時間を好きに過ごせるようにという配慮なのだが、現状のギクシャクした状態では何かするのも無理というものだった。
 一方のすみれはと言えば。
(……なんでこんな気持ちになってるんだろ)
 非常にモヤモヤして、ソワソワして、落ち着かなかった。
 最初はドレスが着れるから、エオニア王国に行けるからと応募したのだ。だがしかしこのモデル仕事は2人1組の応募形式。パートナーを決めて応募しなければ、どこの誰とも知らぬライセンサーとくっついて撮影することとなる。
 すみれもうら若き乙女、例えモデルだとしてもパートナーは選びたかった。せめて知っている男性が良い。そうして白羽の矢がたったのが赤子の頃からの幼馴染、一羽である。つまり恋人とかそういうアレソレではない。
(なのに、途中から何か、ヘンな気持ちになってきて……)
 撮影までは仕事だからと我慢できていた。だというのに終わった途端それが崩壊して──一羽のことを見られなくなってしまったのである。
「すみれちゃん。その、撮影終わったけど……」
「……終わったわよ。なによ、終わって良かった?」
 つっけんどんな言葉がすみれの口から飛び出す。ああ、こんなこと言いたいはずじゃないのに。せめて付き合ってくれたことに最低限の感謝とか。はあ、素直じゃない。
 そんなすみれの言葉に目を丸くした一羽は首を振る。
「そんな!? すみれちゃん、その、全然変とかじゃないし。えっと、すごく、き、綺麗で……」
 本心だ。すみれのドレス姿は美しい。
 純白のプリンセスラインを描くウェディングドレスはすみれだけでない、女の子の憧れだろう。背中に大きなリボンが飾られて、チュールがたっぷりのまさにお姫様。だって花嫁は花婿のお姫様なのだから。
 ドレスが甘々の正統派になったため、代わりにヴェールはシンプルなデザインだ。長さも短いショートヴェールとなっている。
 けれど──気合を入れたけれど、別に結婚するわけではないのだ。その思いが、すみれの心をどうしてだか萎ませた。
「……ねえ。幼馴染同士なのに、こんな衣装で写真撮っても、別にアレよね」
 どうせ何とも思ってないんだもの。
 その綺麗だって幼い頃からの隙の延長線でしょう。
 だったらドレスを着て世辞を言われたって、仕方ない。そう目を伏せたすみれの耳に「本当に綺麗だよ」と一羽の声が入ってきた。
「うん、すごく綺麗だよ、すみれちゃん。ドレス姿見れて、本当に良かった。
 ……すみれちゃんこそ良かったの? その、ボク相手だし」
 ようやく見た瞳はとても真剣で、すみれが逆に狼狽える。
 本当に? 本当の本当にそう思っているの? 無理して言っているんじゃないの?
 けれどそんな問いかけは必要ないのだと、一羽の瞳が告げていた。
 だから──つい、本心が零れ落ちる。
「……私だって、ドレス着れたの嬉しかったし……でも、あんた以外に見せるなんて考えられなくて……」
 その言葉に一羽が顔を歪める。目を瞬かせてすみれが見れば、彼は眉根を寄せていた。どうしたのかと様子を見ていると、彷徨っていた視線がのろのろと、ようやくすみれの方へ戻ってきて。
「……う。ボクもすみれちゃんが他の人とドレス着てなんて……全然想像つかないっていうか、ヤだ……」
 今はこうして隣に自分がいる。すみれのパートナーとして立っている。もしここに自分以外が立っていたとしたら?
 そんな状況、全く想像つかない。いいや、想像したくないが正しいのだろう。無理に想像しようとすれば気分が悪くなりそうなくらいに嫌だった。
 すみれがドレスで、誰かが白のタキシードを着て。それはつまり、彼女が花嫁になるということで──。
「……すみれちゃんが誰かのところにお嫁に行くなんて、嫌かも」
 その言葉にすみれは目を見開く。けれど一羽の言葉は留まらず。まるで感情が奔流になったかのようにとめどなく滑り出してくる。
 一羽にとってはずっと、それこそ赤子の頃から一緒で。物心ついた時には傍らにいた存在でもある。小さい頃のあんなことやこんなことまで知っていて、小学校、中学校、高校、そして大学と思い返せば決して短くない時間だ。当然良い所も悪い所も互いに知っていて、良き友人なのだと──自身だってそう思っているのだと思っていた。
 ヴァルキュリアの彼女であるけれど、その姿は人間と遜色ない。一羽も1人の人間、幼馴染としてすみれと相対してきた。それがこの先もずっと続くのだろうと思っていたのに、他の誰でもないすみれに気づかされてしまったのだ。
「すみれちゃん、とっても綺麗で可愛んだもん。ボクが、その、ひとり占めしたいんだ」
「何よ何よ、遅いわよ、気づくの……」
 震えるすみれの声に一羽は苦笑する。今日この日、初めて気づいてしまったのだから良いわけも何も出来たものではない。
 けれど気づいてしまったからもう元には戻れないし、戻りたくないというのが一羽の気持ちだった。
「ねえ、ボクのためだけに、ドレス、また着てくれる……?」
「それ、もうプロポーズじゃん……」
 温もりが腕に触れ、抱き寄せられる。温もりに包まれる。顔を上げれば夜空を背景に一羽の瞳が真っすぐ見つめていて。
「……うん。いいよ。着てあげる」
 だから、いつか着せてね。
 小さくうんと声がして、一羽の顔が近づいてくる。そっと瞳を閉じたすみれの唇に、熱くて柔らかなものが押しあてられた。

 植物と星空に囲まれた、シンプルモダンなチャペル。この夜、密やかに1組のカップルが誕生したのだった。




 着替える姿は互いに内緒。見せあうのは着終わってからだ。例え着るものが分かっていたとしても、その姿を見るのと見ないのとでは天と地ほども差がある。
 五つ紋付袴を纏った皆月 若葉(la3805)と珠興 凪(la3804)は顔を合わせざま、揃ってぽかんと目を瞬かせる。若葉はまだ「うわぁ」と声が漏れるものの、凪など言葉も出ないほどだ。
 若葉は白の羽織、凪は紺色の羽織。腰元は白で、足元は濃い色の袴。色違いの衣装をまとった相手は、普段と全然違って見えた。
「良く似合ってるよ、格好いい!」
 やっぱり凪は青が似合うと予想的中した若葉は嬉しそうに笑う。そんな表情は可愛いのに、若葉の姿は和装のせいかきりっと格好良く見えて──ずるい。
「ありがとう。若葉も似合ってるよ」
「ほんと? そう言ってもらえると自信出るね」
 どや顔でポーズを決める若葉はやはり若葉だ。けれどいつだって凪は若葉に惚れていて、また新たな一面を見られてしまったことに顔が熱くて仕方がない。
(夕日のせいだ。きっと、そう)
 だってそうだと思っていなくちゃ、この後が耐えられないよ。

 そう、これから2人で──結婚式のモデルをするのだから。

 正座で並んだ2人の前へ、少ないながらも撮影スタッフが入る。カメラや照明の調整をする間もじっとしている必要はないのだが、2人は動かない。動けない、と言った方が正しいかもしれない。
 なぜならば2人とも至って普通の学生である。モデルなど初めての事で、身の置き所がわからない。どんなことを指示されるのかもわからず、未知がより緊張感を増していく。
 けれど。
「凪」
「ん?」
 隣から呼ばれた凪は振り向いて──ふに。柔らかく刺さったのは若葉の指だ。目を丸くした凪は、次いでくすくすと笑い始める。
「ふふ、急に何? びっくりした」
 そんな彼に若葉もまたくすりと笑う。自分以上に緊張しているようだった凪を和ませるつもりだったのだが、彼の笑顔に自身も和まされてしまったようだ。
「なんか、凪のアルバイト初日を思い出すね」
「うん。あの時もこうやって緊張を解してくれた」
 あれはもっと前の事、まだ凪と若葉の思いが通じる前。関係性の名が未だ『友人』だった時の事だ。
 見て分かるほどに顔を強張らせた凪に、今のような不意打ちを食らわせたこと。凪は狐に摘ままれたような顔をして、思わずと言ったように笑みを見せたこと。その時の微笑みは、今でも不思議としっかり思い出せるものだった。
「お返し♪」
「んむっ」
 今度は凪が若葉の頬をむにりと摘まむ。柔らかな頬が伸びて、まるで変顔をしているかのよう。
 そんな風にくすくすと笑い合っていると、気づけばスタッフたちも準備を終えていたらしい。キリの良い所で声をかけられ、そのまま和やかに写真撮影へと突入したのだった。
 目の前に置かれた大・中・小の盃。それぞれに込められた願いを想いながら、2人は御神酒へ口を付ける。
 ──そんな写真の1枚1枚を確認し、2人はわぁと感嘆の声を上げた。
「どれも良く撮れてるね」
「こんなにたくさん撮ったとは思わなかったけれど」
 縁側に座った凪はデータの量に目を瞬かせるしかない。若葉とモデルになった時間は2人でいるからか、それとも緊張からか分からないがとても長い体感時間だった。けれど長いと感じたからこそ、実際はもっと短くて写真も少ないだろうと思っていたのだ。
 それがどうだろうか。さあ選んで下さいと言われても中々選べない量である。
「あ、この凪の表情。すごくいいな」
 隣に座る若葉は凪の手元を見てデータを指し示す。どれも良い表情だけれど、この写真は一際好きだ。
「この写真、若葉もすごく綺麗だ」
 若葉が目を留めた写真に凪も視線を向け、映る恋人に笑みを浮かべる。
 欲を包み隠さず言えば、どれだってよく映っている。全部欲しいくらいに生き生きとした、格好良く美しい恋人が映っているのだ。ここから選ぶなど困難の極みでしかない。沢山の選択肢をくれたスタッフたちも、まさかこんなことは思わなかっただろう。
 けれど全て報酬に、というわけにもいかないのだ。
 2人はたったの1枚を選ぶと、夜の庭園へと繰り出した。もちろん衣装はそのままの庭園デートである。
「暗いから足元に気を付けて」
 凪にエスコートされ、若葉は淡く照らされた道を歩く。御神酒で酔ってしまわないかと心配だったが、実際に使われたのはそれらしい液体──つまり、ただの水。
 酔わなくて良かったと笑う若葉に凪は小さく口を尖らせた。
「お酒だったら没収してた」
「それじゃあ撮れなかったかもしれないよ?」
「それでも。酔った可愛い若葉を撮らせるわけにはいかないからね」
 至極真面目な表情で告げる凪。彼の方が年下で、若葉は飲める年齢である。つまり凪がジュースや水を飲んでいる傍らでも、飲もうと思えば若葉は飲酒ができるわけで──見たことがあるのだろう。酔ってしまった、それはそれは可愛らしい若葉の姿を。
 ふと自分は酒に強いのだろうか? と疑問に思う。若葉と同じくらいにべろんべろんに酔ってしまうかもしれないし、あるいはザルと言われるくらいに酒豪かもしれない。実際の事は次の誕生日を迎えてから。残り半年を切ったが、まだ半年くらいあるのかと待ち遠しくもなる。
「次の誕生日、特別楽しみだ」
「俺も楽しみ。あ、凪が好きそうなお酒とか探しておこうかな」
 彼の誕生日には飲みやすくて美味しそうな酒と、好きそうなつまみやデザートなんかを用意して。2人で楽しく酒盛りするのも悪くない。
 いいね、と顔を綻ばせた凪は若葉の方を振り向いた。庭園の淡く優しい光がその横顔を照らす。
「若葉」
「ん?」
 視線を向けた先には、熱を秘めた瞳があって。そこには隠しようもないほどの愛おしさが溢れているから、若葉も自然と顔がほころぶ。
 生涯大切な人。
 一生をかけて幸せにしたい人。
 2人が互いに想うことは同じだ。気持ちを通じ合わせて、婚約をして──結婚したその先も、いつまでだって変わらない。
「今日も大好きだよ」
「ありがと、俺も大好きだよ」
 隣に大好きな人がいて、大好きだと言える幸せ。それがどうかこの先も、永遠に続きますように。
 2人はその未来を確かとするように、繋ぎ合っていた手を殊更しっかり握りしめた。

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成功
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参加者一覧

  • 深まる由縁
    ニム・ロココla1985
    放浪者21才|
    ネメシスフォース×スナイパー
  • 深まる由縁
    フェリシテla3287
    ヴァルキュリア17才|
    スナイパー×セイント
  • 気付いてないでしょう?
    天野 一羽la3440
    人間20才|
    ネメシスフォース×セイント
  • これからも隣で
    珠興 凪la3804
    人間20才|
    スピリットウォーリア×ゼルクナイト
  • これからも隣で
    珠興 若葉la3805
    人間20才|
    スナイパー×セイント
  • 薔薇花園のツンデレラ
    矢花 すみれla3882
    ヴァルキュリア20才|
    セイント×グラップラー

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