オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 【銀梅花】六月は君の夢

【銀梅花】六月は君の夢 雪芽泉琉

形態
ショート
難易度
易しい
価格
1500(EX)
ジャンル
日常 
参加人数
103~10人
予約人数
10010100
基本報酬
160000G
160SP
1600EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
3
締切
2020/06/07 20:00
完成予定
2020/06/20 20:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●嘘つきワーカーホリックの事情
 エオニア王国支部司令・ヨルゴス・アンドレースはアイザック・ケインを見下ろし、盛大な溜息をついた。
「ケイン君。いい加減休みを取りたまえ。君が最後に休みをとったのはいつだと思ってるんだね」
「えっと……いつでしたっけ?」
「2月だよ。ランテルナで一泊した時の」
「ああ、そんな前でしたか」
 アイザックは素で驚いた。東地中海沿岸の襲撃事件から今まで、やるべきことが山積みすぎて、あっという間だった。
「君がアフリカにかける想いは聞いている。だから見守っていたが、限度というものがあるのだよ」
 アフリカへの侵攻作戦の前線基地となったエオニア支部は、猫の手も借りたいほどに忙しいし、その中でアイザックの働きぶりは特筆している。
 とはいえ3ヶ月も支部に寝泊まりし続けるのは、流石に問題だ。
「アフリカの全てを奪還するまで、まだまだ時間はかかる。どこかで休んでおかなければ、体がもたんだろう」
「そう……ですね」
 以前クリスマス休暇を取ったときも、仲間達に心配された。だけど危険な戦いをしている仲間がいるのに、休みを取るのは申し訳ない気がした。
「……そう言うかと思ってね。一つ仕事を持ってきた」
 ジューンブライドの季節。ランテルナで結婚式をあげる人達の為に、花飾りを作る人が不足している。
「のんびり作業をしたら、一泊して休んでいくと良い。あそこはリゾート施設だから、体を休めるには最適だろう」
 なるほどと頷いて、アイザックはその好意を素直に受け取ることにした。


●想いにふける花飾り
 エオニアでは「6月の結婚式」と呼ばれる催しがあった。
 復興中の貧しい生活では、単独で豪華な結婚式をあげるのは難しい。そこで国が支援して盛大に合同結婚式をするのだ。
「エオニアの若い人々の為の合同結婚式を行うのですが、それには大量の花飾りが必要で」
 花嫁のためにブーケや花冠、花婿の為にブートニア、ゲストの客たちも、祝いの席を彩るように、花飾りを身につける。
 それを作る為に、ランテルナにライセンサー達が集まった。

 ランテルナの管理棟にあるセントラルキッチン。2月にアロマキャンドル作りもした、そこを作業スペースに花飾り制作を行うことになった。
 作り方は職員が教えてくれるので、不器用でも時間をかければ作れるらしい。
「花はマートル以外好きなものを選んでください」
 英国王室の結婚式で使われるというマートルを、花嫁達に祝福をと願う王女がたくさん取り寄せた。だが可憐な白い花だが、それだけだと、やや寂しい。他にも何か加えたい。
 アイザックが材料選びに、花を見渡してふと、青い薔薇が目についた。
「青い薔薇……これ本物ですか?」
「はい。品種改良で生まれた本物の青い薔薇です。嘘みたいな本当です」
 遙か昔から、人々は青い薔薇を求め、しかしなかなか生み出すことができず、青い薔薇には『不可能』という花言葉がついた。
「でも、こうして新たに生まれたことで、花言葉が『夢叶う』になったらしいです」
「不可能から夢叶う……それはとても素敵ですね」
 アイザックは目を細めて青い薔薇を手に取った。
 ふと思いついたことをアイザックは口にする。
「結婚式だったら、サムシング・フォーで青いものを入れるのはどうですか?」
 サムシング・フォー。それは欧米の結婚式の慣習だ。古いもの、新しいもの、借りたもの、青いもの。4つを身につけた花嫁は幸せになれるという。
「それは良いですね! 青い花は少ないので、青いリボンやビーズも用意します。それと……こんなのもあるのですよ」
 そういって職員が見せたカタログは、小ぶりの林檎の果実を使ったブーケ。
「可愛くてユニークですね」
「はい。食用には不向きな、小ぶりで固い果物を、ころんとブーケにあしらうのも可愛いですよね。青いミーベルも用意してます」
 アイザックは、マートルと青い薔薇、ミーベルをリボンで結んで花飾りを作ることにした。
「これ、たくさん作ったら、一つ貰ってもよいですか?」
「もちろん、どうぞ。何に使うんですか」
「お供えにしようかなって思って。たしか……この近くに遺跡があるって聞いたのですが」

 前にランテルナに来た時、近隣にノルトブローゼ遺跡があると聞いた。考古学に興味があったアイザックは、忙しい仕事の合間をぬって、調べたりもした。
 ハーデースの地下神殿は洞窟の中にある神殿で、最近王女が訪れたと、エオニアで話題になっている。
 『死んだ人は皆、ハーデースの治める死者の国に迎え入れられ、洞窟に祀られた神の前で祈りを捧げればその声をあの世にいる大切な人に届けてもらえる』
 そういう伝説があるらしい。

 青い薔薇を手に取って、ブーケを作りながらアイザックは想う。
 アフリカ奪還はケイン家の悲願。そう思っていたけれど、10年前だったら「不可能」と言われただろう。
 その夢が叶うかもしれない所まできた。
 それを家族に報告したい。
 しばらく英国に帰って無くて、空き家のまま人に頼んで手入れだけしてもらってるだけ。墓も家の近くにある。
 今英国まで帰るのは難しくても、ハーデースの地下神殿に花を捧げたなら、死んだ家族へ届くだろうか。
 久しぶりに仕事を忘れ、家族との想い出に浸りながら、黙々と作業を続けた。

「作業が終わった後は、自由行動だよ」

 そうアイザックは言う。
 ハーデス神殿にお参りに行くこともできる。
 ランテルナ内にある温室カフェLunariaで、花を眺めながら、珈琲、紅茶やローズティーと一緒に、ミーベルクッキーを食べてのんびり話すのも良いだろう。

 ランテルナの庭は、初夏の薔薇が美しく咲き誇り、花嫁達が訪れるのを待っている。

 過去の死者と向き合うか、未来を夢見る花嫁や花婿を祝福するか。
 六月の君は何を想う?

●目的
 想いを込めて花飾りを作る

●NPC
アイザック・ケイン
 エオニア支部所属のワーカーホリックなライセンサー
 PC達と一緒に花束を作り、その後ハーデース地下神殿に行く予定
 プレで指定があれば、作業後のお茶会に参加して聞き役になる事も、地下神殿への付き添いも可

●行動
 ランテルナの管理棟にあるセントラルキッチン。施設内に花屋があり、専用道具も全て用意されている。職員が作り方を教えてくれる
 PCとアイザックは全員同じ部屋で作っている。基本1人で黙々作る。話たい人がいればプレで指定を
 花飾り作りは必須。お茶会やお参りは任意。プレは絞って書いた方が描写も濃くなるのでお勧め

・花飾り作り
 ブーケ、ブートニア、花冠など、ブライダル用の花飾りを作って貰います。
 マートルと青いものを一つ入れれば後は自由
 花の種類は指定しても良いし、イメージを伝えてお任せでも可。リボン、ビーズ、観賞用の小型の林檎やミーベルもあり

・お茶
 作業後にランテルナのカフェLunaria(ルナリア)でお茶できます。
 硝子張りの温室に作られたカフェで、外のローズガーデンの薔薇も観賞できる。

・ハーデース地下神殿へのお参り
 ランテルナから近いノルトブローゼ遺跡にある神殿。
 洞窟内にあり、最近発掘された。死者の国ハーデースを奉る場所の為、死んだ人へのお参りに向いている
 依頼参加者以外の人物は名前がぼかされます。(父、母、友人等)

●状況
 作業時間は午前中から午後3時までの間で自分のペースでのんびり作る
 作業時間内に花飾りは複数作って、その1つは自由に使ってよい
 花飾り作りが終わった後は自由。地下神殿へのお参りは同行指定がない場合基本1人で行く

 久しぶりに心情系依頼を出す、雪芽泉琉です。
 心情を込めるシナリオは好きなのですが、なかなか機会がなかったので、連動で乗っからせて頂きました。
 花飾りを作りながら想いを込めることが大切です。作った花を備える所に比重を置いても構いません。
 お茶しながら何か語ったり、死んでしまった大切なへ、花飾りを捧げて想いをはせたりできます。
 心情がたっぷりこもった、素敵なプレイングをお待ちしております。

○心情
「大切な日のための花飾りって、なんだか特別よね。
未来へ踏み出す方々に、どうか祝福のありますよう」

○やること
花飾り制作
お茶会

○行動
まずは、アイクの隣で花飾りを作るわ。
マートルの他に青いものが必要みたいだし、私の家の紋章の青薔薇を使ってみるわ。
「神の祝福」の祈りが、二人にも届きますようにって。
せっかくだからミーベルも加えるけど、あんまり派手になりすぎないようにね。
新婦さんを彩って惹きたてる、そんな風に作れればいいわね。
…もし、私にもその時が来たら。その時は、どんな風になるのかしら…
「青い薔薇ってね。私の家の紋章でもあるの。祝福のもとに、いつまでも続きますようにって…」
できるなら、ここでアイクのことをお茶会に誘いたいわ。
神殿に行くみたいだから、無理は言わないけれど…その後にでも、ね。

神殿でお師匠様に報告も考えたけれど、アイクのお休みの日でもあるし…
ゆったりと、お茶会はいかがかしら。
外のローズガーデンを眺めて、羽を伸ばして…
アイクとふたりきりに、もしなれたなら。
その時は、いろいろお話したいわね。
他愛もない話もだし、アイクのお話も聞きたいし…
お仕事にかける思いは知っているから、日々の忙しさを忘れてとまではいかないけれど。
ちょっとでも、癒しになれるなら。
…私は、こうしてられるだけで幸せだもの。
あとで、やっぱりお師匠様に報告しようかしら…

6月の結婚式かぁ・・・
日本でもジューンブライドって言いますもんね
俺、男だし、そんなに花に詳しい訳じゃあないんですけど
幸せの為のお手伝いは好きだから、頑張りますね

選ぶ花、マートルは決まっていますし、サムシングブルーに合わせるなら
やっぱり青とか青に近い紫とかでまとめると綺麗、かなぁ
6月は雨の季節でもあるから、青っぽいイメージだし
薄い紫の胡蝶蘭と、アイビーで緑を入れて、青のリボンでまとめてみたらどうかな・・・?
花嫁さん達に気に入って貰えるといいんですけど
胡蝶蘭の花言葉は、幸福が飛んでくるって言うそうなので、そうなってくれたらいいなぁって
あんまり手先も器用じゃない分、時間が掛かってもいいからとにかく丁寧に、綺麗に作る様に気をつけますね

お手伝いが終わった後は、俺も神殿のお参りに行こうかな
お供えに少しお花を分けてもらって、向日葵があればそれを
アイザックさんも行かれるなら、途中まで?御一緒にできるでしょうか
ちょっと学業とか色々で、随分お久しぶりになってしまったけれど、お元気そうで良かったです
アイザックさんもどなたかにお参りなんでしょうか
プライベートな事だし、言われなければ聞きませんが
俺は従兄の兄さんに挨拶です
まだまだ兄さんみたいには全然できないし、未だに戦う事は怖いし、弱いけど
それでも今は俺しかいないんだから、兄さんの分まで頑張るよ
・・・頑張るから、ね

アイザックさんは…いつもの、ですね
ちゃんと休まないといけませんよ?今日はゆっくりと過ごして下さい

■花飾り作り
黙々とブートニア作成
マートルに白のアストロメリア、ミーベルを青いリボンで纏めて
手に取るひとの笑顔を願い、想いを籠めて一つずつ
どうでしょう…?我ながら良く出来たと思います
複数作ったうちのひとつは、私の大切なひとに差し上げます
アストロメリアの花言葉は「凛々しさ」マートルは「愛のささやき」
合わせれば、きっとあのひとに良く似合う
姿を思い浮かべて笑顔が零れる

■お参り
花飾りを作り終えたら地下神殿へ
宜しければ、アイザックさんにご同行のお誘いを掛けましょう
こうした場所に赴くのは、ひとりは今も少し心細くて、と笑って

この日私が想うのは、幾多の戦いの中で救えなかったひと達
間に合わなかった小さな命、人として殺めてしまった命、届かなかった多くの命へ
これまで、弔いが出来なかったから
小さく、小さく口遊む、鎮魂歌
―助けられなくて、ごめんなさい
―せめて眠りの中は、安らかであるように
声は聞こえずとも、届くことを願って
きっとこれからも…私は何度も手が届かずに、その度にこうして祈りと歌を捧げる
それでも、零れ落ちてしまった命を決して無にしない為に
決して失いたくない大切なひとを護る為に、私は戦い続けます

外に出たら、カフェでお茶でもしていきましょう
※アドリブ歓迎

  • ちょっとだけ現実主義
    桐生 柊也la0503
    人間15才|セイント×スナイパー

「同じ桜でも染井吉野より山桜が好きですから」
実の成る花が好きなので作る花冠は主にマートルと小型の果実を使っていて
花冠というより可愛い月桂冠に近いイメージ

その後ハーデス神殿へ
お参りでは無いが考えたいことがあるので

ロシアでエヌイーと対した時に比べてライセンサーの力もACを始めとする技術力も格段の進歩を遂げている
だが、知性というヒトそのものの力はどうなのか?
力を付けた事実に溺れた結果の傲慢や視野狭窄も又広がっている
少し前に中国に行ったがその時に見たのは現場の状況を無視して戦場をお遊びか実習程度に考え
現地の支援よりも同行した特権階級のご令嬢の経験値稼ぎという名のご機嫌取りに勤しむ本部のライセンサーだ
新兵の内はおんぶに抱っこでいい?それが通らないのが最前線というものだろう
そんなお遊びにかまけている時間に何が起こるかわからないのに
一体かつての都市や駐屯地の何を見ていたのか?
酒池肉林後の司令の言葉に何も考え無かったか
知性の制御を失った力と欲は何れ自壊を起こす
神殿でケインさんに会うことがあれば一言
「人はこの先ナイトメアに『勝った』としても『負ける』かもしれませんね」
ケインさんは嫌いではないが望むか否かに関わらず特別扱いされる特権階級の一人
出来れば他を見ず自画自賛に溺れないでほしいものだ
でなければヒトが築いてきたものも死者の存在も全ては無になるのだから

【目的】
想いを込めて花飾りを作る

【行動】
「花飾りで祝福される夫婦の、その子供が育つ頃には戦争が
 過去の話として語られるようになっていると良いわね」
花飾り作りの後、アイザックの地下神殿へのお参りに付き添う。

「そうね…確かにマートルだけだと寂しいし、そうなると…」
マートルとカサブランカ、デルフィニウムの花をリボンで結ぶ。
「ユリの女王」カサブランカの白い大輪を主役に、マートルと
青いデルフィニウムを周りに飾る。花言葉に倣って『高貴』や
『清明』をイメージした美しさを意識して作る。

「私も花を供えさせてもらって良いかしら」
地下神殿へのお参りは白ユリのカサブランカを花束にして供え、
ケイン家の故人に欧州を守ってくれたお礼と、アフリカ奪還の
決意を伝え、アイザックと今の心情を話す。

【心情】
家族を戦争の時代に残して先立つのは辛かったでしょうね…。

正直、私がSALFに所属した時は上の世代から引き継いだ
戦争を次に繋ぐだけの、それだけの役割だと思っていたわ。
それがまさか、こんな転換点の当事者になるだなんて。

今あるのは希望と、少しの不安。何かひとつを間違えたら
引き継いできた全てを駄目にしてしまうんじゃないかって…。
…なんてね。聞いてくれてありがとう。
早く戦争を終わらせて、私も花飾りを贈ってくれそうな
素敵な相手を探したいわ(笑)花の盛りは短いんだから。

  • 転生のタンザナイト
    都築 聖史la2730
    人間22才|セイント×グラップラー

結婚式場には多少のご縁と出入りがあるので見たことあります。大丈夫です(取引先様的な

■花飾り作り
ブートニア
白いバラの周りにマートルを飾り、青いリボンを幾重に重ねる様に垂らして勲章風に

デザインOK貰えれば量産開始
「目利き」「探索・追跡」で使う材料の大きさや見栄えはできる限り揃える

貰う花飾りは花冠(の材料
ナチュラルカラーで細めのボリューム抑えめで制作(マートルとグリーン、ビーズは金・黄色
「私なりに王女のイメージにしてみました

ケインは見守る程度(休んでる?作業夢中になってない?楽しんでる?
自分は「しっかり休んでますよ(帰ったら実家の手伝い待ってますけど
「でも、大事な日を祝う皆さんがつけるのに、私が作った物で大丈夫でしょうか?なんだか申し訳ないです(ものづくりの矜持

作成が終わったら一足先に王都に戻る予定(花冠を飾りたい場所に早めに届けたい
「今は祖母にも特別に報告する事も無いですし

父様は母様からの依頼で友人達とドレスやブーケを作ったって言ってたなぁ
その日に告白したとか…詳しく聞いておけば良かった
アイザックに挨拶。「会うのは久しぶりだけど相変わらずみたいだね」と苦笑
心を込めて花飾りを作る。エオニア王国の薔薇を使う
一つの花冠は貰って不知火邸に飾ろう(お任せ。イメージは信頼・希望)

終了後ルナリアでお茶。ザッハトルテを頂こうかな
薔薇を眺めながら結婚する恋人達とアウィン達の幸せを願う
幼馴染とランテルナに宿泊した日の事を思い出す
あの日の出来事で何が変わったという事は無かったけど
幼馴染と桜の親友が本気で手合わせをした日に僕達は変わった
過去を打ち明けお互いの胸襟を明かし合った
幼馴染は僕を守りたいと、その為に強くなりたいと言ってくれた

幼馴染はあの子との手合わせに夢中だし恋愛より飯と酒と剣だし
子供の頃に戻ったみたいと言えば聞こえは良いけどさ。楽しそうだから良いけど
今度エオニア王国に来る機会があったら僕から仕掛けてやろうか、なんて
楽しく想いを馳せて紅茶を飲む

私達はまだ結婚は先になるが、エオニアの花嫁、花婿を心から祝福したいと思う

同行:ふゆ(la3621)

■行動
細々したものは自信がないので主にブーケ作り
マートル
青にブルースター
淡いグリーンのトルコキキョウ
パープルホワイトのアストランティア
エケベリアを1つアクセントに
「エケベリアは『穏やか、逞しい』という花言葉があるそうで、そんな家庭を築いて欲しいものだな…まあこれは花ではなく葉だが

ブルースターとアストランティアは星繋がりで選択、未来が煌くものであるよう
冬呼の手元を見ながら、分からない点は尋ねつつ作業進める
エオニアへの想いも呟いて
「初めてふゆと二人で受けた任務が果冠祭だったな。それから何度も訪れて、ランテルナは今回で三度目…特別な場所になった
「エオニアは不思議で…確かギリシャ語が公用語の一つだったか? 文法は異なるのだが故郷の言葉と単語が同じで、初めて訪れた時に内心驚いた。だから、どこか懐かしさもある…
文化の話に途端にわくわく顔の冬呼を微笑ましく見つめ

ブーケは数個作成
1つだけブルースターをデルフィニウムに変える

作業後、二人で地下神殿へ
青をデルフィニウムに変えたブーケ持参
トルコキキョウを冬呼の色、デルフィニウムを自分の色として作っていた
花飾りを捧げ、冬呼の亡き双子の弟へ語りかける

「姉君と結婚を約束しているアウィンと申します(礼」
「俺は放浪者で、不意の転移だったゆえにこの世界に留まり続けられる確約はありません。それでもふゆと二人で幸せになりたい…なると誓います」
「貴方が没した中国も奪還作戦が始まっています。…あと少し、待っていて下さい」
緑のトルコキキョウの花言葉は『良い語らい』
彼へ想いが届くように

  • 比翼の鳥・連理の枝
    神取 冬呼la3621
    人間16才|ネメシスフォース×グラップラー

同行:アウィンさん(la3388)

行動
「色のバランスはっと」
マートルをメインに紫色と黄緑色の小さい薔薇を差し色に
幅広の青に細い黒のリボンを重ねて使い、花飾り作り
「こうして、くぐらせて…結び目が綺麗に出来るよ」
作業手元を見せながらアウィンへ教えつつ進める

「師匠が若い頃研究でエオニアに訪れていて
論文を通しての間接的な親しみがあったけど
本当に思い出深い場所になったなぁ」
これまでを振り返ったアウィンさんの言葉に感慨深げに頷く
「…今までも色々伺ったけど、またお話聞かせてね…!」
文化の類似性の話にソワソワわくわくとした顔で見つめ
はっとして作業に戻る

数個仕上げ、その内一つを携えて地下神殿へ
亡くなっている双子の弟へ近況報告を
「大変だ、人妻になる予定が立ちました。
あ、研究も抜かりなくやってるし弟子は癖が強いけど優秀です。
ライセンサー業も何とかやって、当分そちらにはいかないよう
努力もできてるし!…今、幸せだよ。大丈夫。」
アウィンから弟への呼びかけに涙腺が緩み
そっぽを向いてずびっと鼻をすすったりする

皆さん席を立ったりそうでなかったりするなか黙々
夢中で花飾り作り

「ねえ、そちらの方、少し手伝っていただけますか?」
そう笑って、アイザックさんを手招き

花冠は小さい頃よく編んでいたので懐かしくって
たくさん作ってしまったのです
リボンとレースで留めて可愛らしいもの
深い色合いで纏めて大人びたもの
華やかなもの。アンティーク調
森をイメージするものに、水辺を彷彿とさせるもの
様々あれど総じてシックなデザインにしがち
その内ベリー類とリーフ、小ぶりのブルーローズを加えたものを手に取って
すっとアイザックさんの頭に乗せようとする。心地はどうかしら なんて

手伝ってくれてありがとうございました
――あ!そうです、少し止まってくださいな

ブバルディアとトゥイーディアを基調としたブートニアを襟に……は難しそうだから、胸ポケットに挿して
「ふふ」「さいわいがありますように!」
お返事聞く前にスカート翻し軽やかに去る。多分散歩に出た

●色とりどりの花選び
 ランテルナの一角に小さな花屋があった。ライセンサー達は、思い思いに花を選ぶ。
 店員は助言が必要か確認していく。
「花選びのお手伝いは必要ですか?」
「いえ、結婚式場には多少のご縁と出入りがあるので見たことあります。大丈夫です」
 都築 聖史(la2730)の両親は宝石商だ。当然結婚式には取引先様的な意味で縁が深い。じっくり花を見て回る。
 一方、ジュリア・ガッティ(la0883)は花屋の前で、何を使うか悩み中。
「そうね……確かにマートルだけだと寂しいし、そうなると……」
 花言葉を店員に聞きながら、ゆっくり花を選んだ。
 実の成る花が好きな桐生 柊也(la0503)は小型の果実を材料に選んでいく。
「同じ桜でも染井吉野より山桜が好きですから」
 儚く散って何も残さないより、実りをもたらす花の方が祝いの門出に相応しい気もした。
「ねえ、シックな花飾りを作りたくって、花選び手伝ってくださいな」
 薄桜の髪が日の光の下でさゆらぐ。アウレリア(la4281)は微笑んで店員と話す。
(合同結婚式だなんて素敵だわ)
 純粋に心から門出を言祝ぐために花を選ぶ時間も楽しい。

 日下部 一馬(la0365)は久しぶりの任務で、親しい顔を見かけて思わず頭を下げた。
「アイザックさん、お久しぶりです」
「久しぶりだね。一馬君」
 変わらぬ笑顔に一馬の緊張が緩んで笑みが零れる。
「6月の結婚式かぁ……日本でもジューンブライドって言いますもんね」
「日本でもジューンブライドは特別なのかな?」
「はい。俺、男だし、そんなに花に詳しい訳じゃあないんですけど、幸せの為のお手伝いは好きだから、頑張りますね」
「幸せの為のお手伝いって素敵だよね。一緒に頑張ろう」
 一馬は並んだ花を眺めて悩み出す。店員と相談しつつ、想いをこめて一生懸命選んでいく。
「マートルは決まっていますし、サムシングブルーに合わせるならやっぱり青とか青に近い紫とかでまとめると綺麗、かなぁ」
 一方、不知火 楓(la2790)がアイザックへ軽く手をあげて挨拶。
「会うのは久しぶりだけど相変わらずみたいだね」
 苦笑を浮かべる楓に、あははと誤魔化すように笑った。
「……休むの忘れてて」
「皆が心配するよ」
 ぽんと肩を叩いて、ちらりと後ろを見る。来栖・望(la0468)が微笑んで、宥めるように言の葉を紡ぐ。
「アイザックさんは……いつもの、ですね。ちゃんと休まないといけませんよ? 今日はゆっくりと過ごして下さい」
 責めるのではなく、やんわりと労るように思いやるからアイザックも素直に頷いた。
「うん。心配してくれてありがとう。今日はのんびり過ごすよ」
 ミラ・ケートス(la0103)はそっと顔を出す。
「アイクの隣で作業しても良いかしら?」
「もちろん」
「大切な日のための花飾りって、なんだか特別よね。未来へ踏み出す方々に、どうか祝福がありますよう」
 恋人達を祝福する花飾りを作りたい。

 アウィン・ノルデン(la3388)は涼しい顔で真剣に花選び。
「私達はまだ結婚は先になるが、エオニアの花嫁、花婿を心から祝福したいと思う」
「そうだねぇ。私達は、まあそのうちに、かな?」
 神取 冬呼(la3621)はちらりと薔薇園を見て俯く。2月の告白を思い出すだけで溶けそうだ。思わずアウィンの背中に突撃。
「……ふゆ?」
「ちょっとだけ充電させて」
「たくさん吸うといい」
 冬呼は安心して、背中にぴとっとくっついて吸う。
(ふゆの顔が見られないのが残念だが……これで喜ぶなら)
 アウィンの顔が甘く優しい微笑みが浮かぶ。

 こうして様々な思いを込めた飾り作りが始まった。


●想いを込めた花作り
 一馬は6月と聞いて、雨の季節を思い浮かべる。
(青っぽいイメージだし、薄い紫の胡蝶蘭と、アイビーで緑を入れて、青のリボンでまとめてみたらどうかな……?)
 綺麗なバランスを考え、慎重にリボンを結ぶ。あんまり手先は器用じゃない。時間が掛かってもいいからとにかく丁寧に、気をつけて。
 そこへアイザックがやってきて、一馬の作った物を見る。
「とっても綺麗だね」
「アイザックさん。花嫁さん達に気に入って貰えるといいんですけど。胡蝶蘭の花言葉は、幸福が飛んでくるって言うそうなので、そうなってくれたらいいなぁって」
「とても丁寧に作ってるよね。きっとその想いは届くよ」
 一馬ははにかむような微笑みを浮かべ頷いた。

 柊也は黙々と作業を続けていた。これは仕事だからきっちり作りたい。
 作るのは花冠。土台は月桂樹で形づくり、マートルや赤い実をあしらって、可愛い月桂冠を目指して。
 結婚式のゲストは子供もいるだろう。小ぶりな物もあった方が良いかと考えながら。
 無心の境地で、きっちり作る花冠が、どんどん積み上がっていった。

 ジュリアは白い大輪を手に取って、優しく微笑む。
「ユリの女王・カサブランカを主役に、マートルも白だから、青のデルフィニウム周りに飾ってアクセントにして……」
 絵画や彫刻、芸術的センスはジュリアの特技だ。全体の調和を意識し、微調整をしながらリボンで結ぶ。
 デルフィニウムの花言葉は『高貴』と『清明』。その言葉に相応しい美しさを意識してブーケを作り上げる。
 自分用に1つだけ、カサブランカの花束を作った。
 ブーケが未来への祝福なら、花束は過去への弔いだ。

 望は黙々とブートニアを作る。マートルと白のアストロメリアで全体は清楚に、小さなミーベルをワンポイントにして、青いリボンで纏める。
 胸に飾った新郎と、隣に立つ新婦が笑顔になりますように。そう想いを籠めて一つずつ、丁寧に作る。
 作業を見にきたアイザックへ感想を問いかけた。
「どうでしょう……? 我ながら良く出来たと思います」
「上品で凜々しくて綺麗だ」
「1つは私の大切なひとに差し上げます。きっとあのひとに良く似合います」
 それが誰か聞くまでもない。花言葉はアストロメリアの「凛々しさ」とマートルの「愛のささやき」合わせれば、愛しい我が君。
 その姿を思い浮かべるだけで、自然と笑顔が零れ、ほんのり頬が染まる。
「うん、とても彼に似合いそうだね」
 望は小さく頷き作業を続けた。

 楓はうーんと腕を組んで悩む。結婚式にはまだ縁遠い。
「父様は母様からの依頼で友人達とドレスやブーケを作ったって言ってたなぁ。その日に告白したとか……詳しく聞いておけば良かった」
 仲睦まじい両親から聞いていたら、もっとイメージが膨らんだかもしれない。
 とりあえずエオニア王国の薔薇は使いたい。でもそれ以外が思い浮かばない。店員に相談して決めたのがマーガレットとガーベラだ。
 花言葉は真実の愛、信頼、希望、常に前進。花嫁の門出を祝うのに相応しい花言葉ばかりだ。
 できあがった花飾りも、とても可愛らしい。
「綺麗より、可愛い人に似合いそうだね。……僕には似合わないなぁ」
 ──きっと、あの子の方が似合う。
 そう思って、ふっと笑みを浮かべる。2月に此処に来た時は、あの子への嫉妬に苛まれていたな。
 でも今はあの時に比べると、ずっと心が軽やかで余裕がある。
 いくつも花冠を作って、1つは不知火邸に飾ろう。今は三人が信頼で結ばれているのだから。その証に。

 聖史は白バラの周りにマートルを飾り、青いリボンを幾重に重ねる様に垂らして勲章風のブートニアを作った。量産前にスタッフに見せて確認する。
「これでどうでしょうか?」
「とても素敵です! きっと喜ばれますよ」
 職人からの提案はスタッフ達に好評だった。ならば量産開始。
 花は1つ1つ大きさも形も違う。できあがりの大きさや見栄えをできる限り揃えるため、細かな調整を施しながら、きっちり同じ形で、次々と生み出す。それはまさに職人技。
 オーダーメイドではないけれど、花婿の理想に近づくお手伝いができれば幸いだ。
 ミス無く集中するためには、作業の合間に適度な休憩も重要である。ちらっと遠目にアイザックの姿を見守った。
 ちゃんと休んでいるか、作業夢中になってないか、楽しんでるか。働き過ぎな事を知っているからこそ、つい気になってしまう。
 皆の様子を見回った後、自分の作業を始めたようだ。気配りを欠かさないのは、仕事気分が抜けてないのでは? とも思う。
 後で一言話してみよう。そう思いつつ作業に戻った。

 戻ってきたアイザックの隣でミラも作業する。
「マートルの他に青いもの……私の家の紋章の青薔薇を使ってみるわ」
「紋章が青薔薇なんだ」
 ミラは微笑み頷きつつ、青薔薇を手に取った。主役は薔薇とマートルで、エオニアだから小ぶりのミーベルを添えて。
「神の祝福の祈りが届きますように。新婦さんを彩って惹きたられればいいわね」
「それは素敵だね」
 結婚式に夢見る純情乙女なミラはつい考えてしまう。
(……アイクと一緒に作るのって、やっぱり幸せね。意識してしまうけれど……もし、私にもその時が来たら……その時は、どんな風になるのかしら……)
 アイザックが気になるが、それを悟られないよう作業に集中。
「ねえ、アイク。作業の後に一緒にお茶をしたいわ。無理は言わないけれど……」
「良いよ。作業に集中すると疲れるし一休みしよう」
「ありがとう」
 ミラは零れる花のような笑顔を浮かべた。

 アウレリアはマイペースに黙々と作り続ける。
 この世界に転移したばかりで、エオニアも初めてで、知らない人ばかりだ。それが気にならないくらい、花飾り作りが楽しくて、つい夢中になってしまう。
 花もリボンも、深い色合いで纏めて大人びたものを選んで、レースをあしらい華やかでアンティークな雰囲気に仕上げる。
 いくつも作った所で、やっと周囲を見渡した。遠目にブーケを作るアイザックを見て、なんとなく元気がないような、そんな気がした。
 ほわほわと天使のような愛らしい見た目のアウレリアだが、思慮深く洞察力も鋭い。ぱっと立ち上がって、ひらひらと手を振る。
「ねえ、そちらの方、少し手伝っていただけますか?」
「良いよ」
 アウレリアがふんわり笑顔で手招くと、アイザックは向かいに座った。
「花冠は小さい頃よく編んでいたので懐かしくって、たくさん作ってしまったのです」
「小さい頃の想いでか……素敵だね」
「森や水辺を彷彿とさせる、そんな花飾りを作りたいのです。これはどうかしら?」
 白と深い緑、透き通った青で彩られた花飾りを手に取って見せる。
「とてもシックでおしゃれだね。僕は英国生まれでね。湖水地方を思い出すな」
「湖水地方? どんな所かしら? 聞かせてくださいな」
 この世界に来たばかりだから、知る事が楽しい。お喋りしつつ作ると、あっという間にたくさんできあがた。
 ふいに思いついた。
「──あ! そうです、少し止まってくださいな」
 ベリーとリーフ、小ぶりの青薔薇を加えた花冠を手に取って立ち上がる。ほわほわ微笑み、すっとアイザックの頭に乗せた。
「手伝ってくれてありがとうございました、心地はどうかしら?」
「ありがとう。花の妖精になった気分かな」
「妖精って素敵ね、じゃあこれも」
 笑顔を浮かべるアイザックの様子に満足したように頷いて、ブバルディアとトゥイーディアのブートニアを胸ポケットに挿した。初めましてのご挨拶と、幸せを願う想いを花言葉に添えて。
「ふふ、さいわいがありますように!」
 アイザックの返事を聞く前に、ふわりとスカート翻し、アウレリアは軽やかに歩き出す。
 事情も過去も何も知らない。でも今日せっかく出会った縁。あなたに幸いありますように、と純粋に願いたかった。
「私も花の妖精になって歩きたいわ」
 薔薇園があると聞いたから、お散歩に行こう。

 細々したものは自信がないアウィンはブーケ作りを選んだ。
 マートル、ブルースター、淡いグリーンのトルコキキョウ、パープルホワイトのアストランティア。アクセントにエケベリアを1つだけ。たくさんの花を用意して、慎重に吟味する。
「エケベリアは『穏やか、逞しい』という花言葉があるそうで、そんな家庭を築いて欲しいものだな……まあこれは花ではなく葉だが」
 見た目が花のようだがエケベリアは多肉植物だ。
 ブルースターとアストランティアは星繋がり。未来が煌くものであるようにと。
 込めたい想いも種類も多い分、バランス取りも複雑だ。恋人に差し出して、アドバイスを求める。
「ふゆ。これでどうだろう?」
「……ん、色のバランスはっと」
 冬呼は教師の顔より甘く柔らかな笑みを浮かべ、丁寧に教えていく。アウィンも冬呼の手元を見ながら、作業進める。
「む? これは……」
「こうして、くぐらせて……結び目が綺麗に出来るよ」
「なるほど。そちらも、とても綺麗だ。黄緑色の薔薇は珍しい気もする」
「これはね……」
 冬呼は薔薇の品種を説明しつつブーケを作る。
 紫色と黄緑小さい薔薇を差し色にして、白いマートルの可憐さを引き立てる。色鮮やかな花々を引き立てるように、幅広の青に細い黒のリボンを重ねて使い、シックに纏めた。
 作業に慣れて余裕ができた頃に、二人の想い出語りに花が咲く。
「師匠が若い頃研究でエオニアに訪れていて、論文を通しての間接的な親しみがあったけど、本当に思い出深い場所になったなぁ」
「エオニアは不思議で……確かギリシャ語が公用語の一つだったか? 文法は異なるのだが故郷の言葉と単語が同じで、初めて訪れた時に内心驚いた。だから、どこか懐かしさもある……」
「アウィンさんの故郷に似ているんだね……今までも色々伺ったけど、またお話聞かせてね……!」
「ふゆが願うならいくらでも」
 文化の類似性の話を聞くと、冬呼の知識欲がむくむくそわそわ。
「エオニアはギリシャとイタリアの影響を受けつつ、イスラム文化の名残が残る街もあるんだって。地中海の中心だからかもしれないね」
 文化への考察を冬呼が語り始めると、途端にわくわく顔に変化する。楽しげに語る冬呼が微笑ましくて、アウィンはじっと見つめながら耳を傾ける。
 途中で語りすぎたとはっとして、慌てて作業に戻る姿もまた愛らしい。何をしても愛しい恋人との想い出をふと思い出した。
「初めてふゆと二人で受けた任務が、エオニアのミーベルステファノスだったな」
「船の上でランタンを飛ばしたね」
「それから何度も訪れて、ランテルナは今回で三度目……特別な場所になった」
 アウィンの言葉に感慨深げに冬呼は頷き、薔薇から香る甘い匂いに思い出す。
 薔薇園で花の知識を何度、語った、聞いただろう。甘い想い出を重ねただろう。
 そしてあの日、薔薇園で永遠を誓い合った。
 気づけば無意識に二人とも胸元に触れていた。互いに贈り合った想い出の品が、二人を繋ぐ架け橋だ。
「せっかくランテルナに来たのに、日帰りはもったいないね」
「ああ、宿泊できないか聞いて見よう」
 これから二人でたくさんの想い出を作っていくけれど、今日という日は一度きりだから。
 二人が過ごす時間は、一秒一瞬が愛おしい。


●陽だまりのカフェにて
 作業後の休憩にカフェで軽く一杯しつつ、聖史はアイザックに話しかける。
 今日も、過去の任務でも、いつもアイザックは多くの人に声をかけられる。
「ケインは人気者ですね」
「皆が優しいんだよ」
「ケインが休んでるのか、心配してる人も多いですしね」
「……そうだね。気をつけないと」
「私はしっかり休んでますよ」
 と言いつつも、聖史は帰ったら実家の手伝い待っている忙しい身である。
 聖史の店の周囲にはブライダル関連の店が多い。日頃からプロの仕事を見慣れてる分、気になることがある。
「でも、大事な日を祝う皆さんがつけるのに、私が作った物で大丈夫でしょうか? なんだか申し訳ないです」
 聖史のブートニアは素晴らしい出来だが、ものづくりの矜持の高さ故に、不安は残る。
「僕はとても綺麗だと思った。それに聖史君が全力をだしたのなら大丈夫だよ」
 ものづくりへの真剣さを知る故に、アイザックはその努力を肯定する。ほっとしたように聖史は息を吐いた。
 紙袋からマートルとグリーンに、金と黄色のビーズをあしらった花冠を取り出す。ナチュラルカラーで纏め、細めのボリューム抑えめに作られて品が良い。
「私なりに王女のイメージにしてみました」
「僕は会ったことがないけれど、何度も話に聞くイメージにぴったりだね」
 それを聞いて安心した。聖史はさっと立ち上がる。
「一足先に帰ります。寄りたい所もあるし、今は祖母にも特別に報告する事も無いですし」
「お疲れ様。またね」
 見送りの言葉に返事を返し、軽やかに歩き出した。

 ミラは一人で心の準備を整えていた。二人で穏やかな時間を過ごせる滅多にない機会だ。
「お待たせ。……ミラ君?」
「そんなに待ってないわ。ゆったりと、お茶会はいかがかしら」
 緊張して震えそうになるのを押さえ、薔薇園を眺め一呼吸。
「アイクとお茶するの久しぶりだわ」
「一昨年のお菓子作り以来だね」
 もうそんなに時間がたったのかと驚く。最近何度か任務を共にしたが、危険な任務ばかりでゆっくりとした時間は過ごせていない。
 二人が会わない間に、互いに色んな経験をしたのだ。その時間の隙間を埋めるように語り出す。
「この前アルガミラに行ったわ」
 目にした風景や料理を楽しげに語るミラの笑顔に、アイザックも微笑む。
「僕も行ってみたいな」
「それで……これ、お土産に」
 青い螺鈿細工のネクタイピン。アイザックは少し戸惑い首を傾げる。
「……高価な土産は申し訳ないな」
「安物だから気にしないで。……アイクの趣味に合わないかしら?」
「ううん、とても綺麗だね。ありがとう」
 アイザックは微笑を浮かべて受け取った。
「アフリカに思い入れがあるのよね?」
「うん。ミラ君には詳しい話をしていなかったね」
 アイザックの家族の話を聞き、仕事への思いを知った。日々の忙しさを忘れられなくても、少しでも癒しになりたい。どうしたら良いか悩ましい。
「ミラ君。何か迷っているのかな?」
 一喜一憂のそぶりを気づかれ慌てて俯く。
(思いを伝えるには、まだ早いかしら。こんなにも胸が苦しくて、悶えるほどに愛しいのに……ううん、今は大事な局面だろうから……)
 もじもじするミラへ、アイザックは問いかける。
「言葉にしないと想いは伝わらないよ。今日話をして少しだけミラ君を少しだけ理解できた気がする。相手を思いやる気持ちで紡ぐ言葉なら、きっと届くよ」
 相手を思いやる気持ち。そう言われ、溢れ出る恋心を伝えたい欲を、ぐっと抑えこんだ。
(……私は、こうしてられるだけで幸せだもの)
 アイクのためにできること。祈りを伝えるだけならと、震える手で青薔薇を一輪差し出す。
「アイクがどうか無事で、不可能だった夢を成し遂げますように」
「ありがとう。とても嬉しいよ」
 今日見た中で一番の笑顔が眩しくて、思わずまたミラは俯いた。薔薇の花言葉は本数でも変わる。
(数に込めた意味は……内緒よ)

 楓はルナリアで一人のんびり薫り高い紅茶と甘酸っぱいザッハトルテを楽しんでいた。
 初夏の薔薇の美しさを眺め、ここで結婚する恋人達と、アウィンと冬呼の幸せを心の底から願う。
 のんびりとした時間の中で、ふと思い出した。
 2月に幼馴染とここに泊まった日の事を。
 あの日二人で過ごしても、何も変わらなかった。
 君を変えるのは何時だってあの子だ。悋気の焔が心を焦がして苦しくて、まるで宵闇を彷徨ってるみたいだった。
 思い出すだけでチョコが苦く思える。でもすぐに舌の上で甘さが広がった。
 幼馴染と桜の親友が本気で手合わせをした日、僕達三人の関係は変わった。
 苺パフェをつつきつつ、過去を打ち明けお互いの胸襟を明かし合い。幼馴染は僕を守りたいと、その為に強くなりたいと言ってくれた。
 ──今も焔は消えやしない。けれど君の過保護さや僕を守りたいという想いが、宵闇を夜明けにしてくれた。
 焔と夜明け。寂しさと愛しさが溶け合って、不思議と心地よい。
 信頼と依存の天秤は、今、信頼に傾いている。希望を持ち前を向いて歩き出した、君の背中を支えている。
 君との絆は僕だけの物だ。そう確信している。
 それに君はあの子との手合わせに夢中だし、恋愛より飯と酒と剣だ。
 子供の頃に戻ったみたいと言えば聞こえは良いけどさ。楽しそうだから良いけど。
 ……でも、やっぱりちょっと悔しい。異性として意識して欲しいという欲もある。
 6月の花嫁を祝いたい。そう心を込めて花飾りを作っていたから、余計に気になった。
 今度エオニア王国に来る機会があったら、僕から仕掛けてやろうか。どんな顔をするのか……。
「……なんてね」
 ふふっと艶めいた笑みを浮かべ、紅茶を一口啜った。心をすっきり洗い流すように、紅茶の雫が喉へ落ちる。


●二人の刻を刻む
 アウィンと冬呼は二人で地下神殿へ来ていた。
 冬呼はマートルと薔薇の花飾り。アウィンは冬呼色のトルコキキョウと、アウィン色のデルフィニウムをイメージした花束を持つ。
 二人で祭壇の前に立つと、冬呼は照れ笑いを浮かべながら双子の弟へ、語りかける。
「大変だ、人妻になる予定が立ちました」
「姉君と結婚を約束しているアウィンと申します」
 きっちり丁寧に一礼し、祭壇に花束を供える。緑のトルコキキョウの花言葉は『良い語らい』彼へ冬呼の想いが届くようにと願いを込めて。
「貴方が没した中国も奪還作戦が始まっています。……あと少し、待っていて下さい」
「あ、研究も抜かりなくやってるし弟子は癖が強いけど優秀です。ライセンサー業も何とかやって、当分そちらにはいかないよう、努力もできてるし! ……今、幸せだよ。大丈夫」
 冬呼は大学での仕事や、出会った人の話を笑顔で語り、姉弟の契りを交わす。どれだけ話しても話題は尽きない。
 そろそろ帰ろう。そう思った時だった。
 ずっと隣で静かに見守っていたアウィンが、真剣な表情で祭壇に語りかける。
「俺は放浪者で、不意の転移だったゆえにこの世界に留まり続けられる確約はありません。それでもふゆと二人で幸せになりたい……なると誓います」
 真摯なアウィンの言葉に、思わず冬呼の涙腺が緩む。慌ててそっぽを向いて、ずびっと鼻をすする。
 これだけ愛されて幸せだ。でも生きた弟と会って欲しかったな。
 そんな複雑な感情を抱く冬呼の手を、アウィンはそっと包み込む。言葉にしなくても、冬呼に寄り添いたい気持ちは伝わる。
 二人は手を取り合って神殿をでた。ランテルナに帰ったら、何をしようか語り合う。
「夜にはまた薔薇庭園を散策したいな」
「うん、すごく楽しみ」
 アウィンは微笑を浮かべ、冬呼は頬を紅く染めつつ笑顔で頷く。
 互いに二人きりでしか見せない、親しい空気を纏って、手を繋いだまま薔薇の園へと帰って行った。
 ここから先は、二人だけの秘密。


●死者への祈り
「アイザックさんも行かれるなら、御一緒できるでしょうか?」
 一馬は邪魔にならないだろうかとおずおずと尋ねる。アイザックはにっこり笑って頷いた。
「うん、一緒に行こう」
 望も笑みを浮かべつつ控えめに尋ねる。
「私もご一緒してもよろしいでしょうか? こうした場所に赴くのは、ひとりは今も少し心細くて」
「もちろん、皆で行こう」
 ジュリアや柊也も一緒に誘って、皆で神殿へと歩き出す。

 向日葵の花束を抱えた一馬は、神殿に向かう途中、ポツポツとアイザックと近況報告をする。
「ちょっと学業とか色々で、随分お久しぶりになってしまったけれど、お元気そうで良かったです」
「一馬君も元気そうで良かった」
「アイザックさんもどなたかにお参りなんでしょうか?」
「うん。家族のね」
 家族やアフリカ奪還への想いを報告すると聞き、一馬も打ち明けた。
「俺は従兄の兄さんに挨拶です」
 祭壇の前に辿り着き、一馬は少し躊躇う。アイザックのように、誇らしく語れる成果はない。
 それでも勇気を出して一歩踏み出し、花を供えて目を閉じた。
(まだまだ兄さんみたいには全然できないし、未だに戦う事は怖いし、弱いけど。それでも今は俺しかいないんだから、兄さんの分まで頑張るよ)
 ぽつりと一言、誓いを零す。
「……頑張るから、ね」
 その声には、やらねばならないという負い目の匂いがした。

 皆がお参りをしている間、柊也は静かな神殿で思索にふける。
 ロシアでエヌイーと対した時に比べて、ライセンサーの力もアサルトコアや武器も、格段の進歩を遂げている。
 だが、知性というヒトそのものの力はどうなのか?
 人は愚かだ。『力』に溺れ、心が『傲慢』に支配され、視野狭窄に陥る。
 柊也は中国での任務について思い出す。
 ナイトメアとの戦いは、常に危険に晒された命がけの任務だ。そこに新兵もベテランもない。新兵だからと甘やかされて良いわけではない。それが最前線というものだろう。
 新人ライセンサーの面倒にかまけている時間に、何が起こるかわからない。弱者を救うほうがずっと大事だろう、そう憤ってしまう。
 過酷な日々を送っていた少女の存在が、柊也の脳裏を掠めた。あの子のような弱者が掴める蜘蛛の糸を残しておきたい。
 酒池肉林への偵察任務の後、『傲慢』について語った司令の言葉を思い出す。
 自分が『傲慢』だと自覚した上で、それを制御する。そういうことではないか。知性の制御を失った力と欲は、何れ自壊を起こすのだから。
 己にも他者にも厳しく律して。他人を救う事は出来なくても、ほんの一寸手伝うことは出来るかもしれない。そう細やかに願う。

 望が祭壇に向けて、想うのは、幾多の戦いの中で救えなかったひと達。
 間に合わなかった小さな命、人として殺めてしまった命、届かなかった多くの命へ。弔いの願いが届きますように。
 小さく、小さく口遊む、鎮魂歌が静かな神殿に広がる。それは皆の耳に優しく響いて、仄かに心が温まった。
 ──助けられなくて、ごめんなさい
 ──せめて眠りの中は、安らかであるように
 死者の声は聞こえずとも、想いよ届けと願って。
 きっとこれからも……私は何度も手が届かずに、その度にこうして祈りと歌を捧げる。
 必死に手を伸ばして、救おうとあがいて、それでも、零れ落ちてしまった命を決して無にしない為に。
 望の慈愛は数多の命に等しく降り注ぐ。
 同時に決して失いたくない大切なひとを護る為に、私は戦い続けます。そう主に誓う。

「私も貴方の家族に花を供えさせてもらって良いかしら」
「ありがとう。とても喜ぶと思うよ」
 ジュリアはアイザックに断りをいれ、白百合のカサブランカを花束にして供えた。白百合は聖母マリアを表し、キリスト式の葬式で手向けられる花だ。
 だから死者に捧げるのに相応しい。
「ありがとうございます」
 小さく感謝の言葉を口にする。ジュリアはイタリアに生まれ育った。戦争区域に近い土地で、平和に生きられたのは、命がけで戦ってくれた人達がいたからだ。アイザックの父や兄もその一人だ。
(家族を戦争の時代に残して先立つのは辛かったでしょうね……)
 辛い想いを抱えて、欧州を守ってくれたお礼と、アフリカ奪還しますと決意を心の中で何度も繰り返す。

 柊也はお参りを終えたアイザックへ問いかける。
「人はこの先ナイトメアに『勝った』としても『負ける』かもしれませんね」
 アイザックは嫌いではない。だが本人の望みに関わらず、皆に特別扱いされる人だ。出来れば他を見ず、自画自賛に溺れないでほしい。
「そうだね。歴史は繰り返す。共通の敵がいなくなれば、次は人間同士の争いが始まる。勝利に溺れてはいけないね」
「はい」
 せっかく勝利しても傲慢さを自覚しなければ、ヒトが築いてきたものも、死者の存在も、全ては無になるのだから。

 望は花で溢れた祭壇を見て、ポツリと呟く。
「生者の命も死者の命も、背負うのは重いですね。重いからこそ……貴方も多くを抱えながら、ライセンサーとして尽力しているのですよね、アイザックさん」
「そうだね。想いも命も背負うのは、とても重い。……だから、僕は少しでも皆の重荷を軽くしたいと思う」
「一人で背負わず、私達もご一緒させてください」
「望君達に、いつも支えて貰ってるよ」
「信念と責任の間で潰されずに、私達が任務を遂行できるのは、貴方の存在は大きいのですよ。だからどうか、無理はなさらずに」
 ライセンサーの中には、アイザックの支援や励ましを受けて、最前線で戦い続けられるものがいるだろう。
 その人達の気持ちも忘れないでくださいねと目で語る。
「僕が誰かの支えになれているなら、嬉しいし、あまり心配させてはいけないね」
 アイザックは穏やかな笑みを浮かべ頷いた。

 ジュリアは祈りを捧げた後、立ち上がってアイザックへ想いを零す。
「正直、私がSALFに所属した時は、上の世代から引き継いだ戦争を次に繋ぐだけの、それだけの役割だと思っていたわ。それがまさか、こんな転換点の当事者になるだなんて」
「僕の気持ちも同じだ。だからとても驚いているよ。いつか戦いが終わるとしても、その時、僕は死んでるだろうと思ってた」
 アイザックは悲観的なことは、日頃口にしないよう意識している。ただ、ジュリアの考えがあまりに自分と似ているから、つい本音がこぼれ落ちた。
 それに釣られたようにジュリアも弱音を零す。
「今あるのは希望と、少しの不安。何かひとつを間違えたら、引き継いできた全てを駄目にしてしまうんじゃないかって……」
 アフリカを奪還するために犠牲になった多くの人々の死を、無駄にしてしまうのが怖い。思わず俯き、手が震える。
「ジュリア君……」
 アイザックが悲しげに何かを言いかけた所で、ジュリアがぱっと顔を上げ笑顔を浮かべた。
「……なんてね。聞いてくれてありがとう」
 不安はある。それでも心配させたくない。明るく前を向いていたい。だからわざと笑顔を浮かべ、話題を切り替えた。
「早く戦争を終わらせて、私も花飾りを贈ってくれそうな、素敵な相手を探したいわ。花の盛りは短いんだから」
「戦争を終わらせた後、自分がどうするかか……考えた事が無かったな。僕もその時は素敵な相手探しをしてみようかな」
 ふふっと冗談めかしてアイザックも笑った。
 今日、皆が作った花飾りを身につけて、幸せな結婚式を挙げる夫婦はたくさんいるのだろう。見知らぬ恋人達へ向けジュリアは願う。
「花飾りで祝福される夫婦の、その子供が育つ頃には戦争が、過去の話として語られるようになっていると良いわね」
 死者の思いを引き継ぎ、未来の生者へ繋げたい。


●『皆』と『友達』
 神殿を出て帰る途中、望はアイザックに問いかける。
「……本日は、ご家族に想いは伝えられましたか?」
「うん。色々話したよ。僕に友達がたくさんいるって。きっと安心してると思う」
「友達?」
 望が思わず目を丸くした。いつもアイザックが言うのは『仲間』であって『友達』ではない。珍しい。
「ふふ。口にはしてない。僕が勝手にそう思ってるだけだよ」
 それは誰なのだろうと気になる。アイザックはふっと思い出したように話し始める。
「聖史君が先に帰ったのは、止まり木に寄るためじゃないかなと思うんだ」
「止まり木……?」
 一馬は知らない名前だったから問いかける。
「僕達がこの国に作ったお店だよ。あそこで過ごした時間は、僕にとってとても特別で……まるで故郷のように大切な場所なんだ……」
 アイザックの言葉に、望、ジュリア、柊也は自然と笑みを浮かべた。言葉にすることが難しいくらい、大切な想い出。それを噛みしめている。
 このまま解散するのが名残惜しい気分で、望が微笑み1つ提案した。
「良かったら、カフェでお茶でもしていきましょう」
「良いね。皆で行こう」
 アイザックが嬉しそうに声をかけると、柊也は頷きつつ隣を見る。
「僕は構いませんが……」
 一馬が困った顔をしていた。自分だけ場違いではないのかと。
「……僕も……ご一緒して良いのでしょうか?」
 自分は止まり木に行ったことがないしと遠慮しようとする。だがジュリアは微笑みながら首を横に振った。
「これから楽しく幸せな時間を過ごす『皆』になりましょう」
 今日こうして過ごした日々も、想い出として積み重なって行くのだから。アイザックも優しく微笑み頷いた。
「僕は一馬君が一緒の方が嬉しいな」
「……ありがとうございます」
 一馬ははにかむ笑顔を浮かべて、皆の輪に交じって歩き出す。夕暮れのカフェで、和やかなティータイムが始まった。

 薔薇園を満喫していたアウレリアは、そっとルナリアを覗き見て、柔らかに微笑む。
「ふふ、素敵なティータイムね。みんなに、さいわいがありますように!」
 そう祈りを込めて、拾い集めた薔薇の花弁を、えいっと空に放り投げた。白魚の指先から放たれた、色とりどりの花弁が、ひらひらと風に舞う。
 今日一日、ランテルナで皆が浮かべた想いが、形となって儚く消えていく。それさえも愛おしい。

 死者の心に寄り添い、鎮魂を捧げる。それは人が前に進むために必要なことかもしれない。
 生きている限り、人は歩き続け、縁が結ばれ、想い出は紡がれていく。
 願わくば、全ての人々へ、笑顔の花が咲きますように。


 エオニア王国の首都エオスに「止まり木」というカフェバーがある。
 ライセンサー達の手で生み出され、想い出が刻まれ、愛される店。
 そこに花冠を乗せたくまのぬいぐるみが新しく加わった。王女のフィギュアと並ぶ姿は、国を上げてのお祝いの日を祝福しているかのようだった。
 きっとこの店に訪れる人々を、くまのぬいぐるみは『お帰り』と出迎えるのだろう。

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