オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 東西の交わる街

東西の交わる街 雪芽泉琉

形態
ショート
難易度
易しい
価格
1000
ジャンル
日常 
参加人数
63~6人
予約人数
10010100
基本報酬
0G
160SP
1600EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
4
締切
2020/05/18 20:00
完成予定
2020/05/28 20:00
機体使用
-
関連シナリオ
-


 アフリカンゲリラ・アズランのメンバーが大量にライセンサー登録を行い、新人研修の人員が足りない。
 そう聞いて澪河 葵は北海道から、エオニア王国へやってきた。
 びしびし厳しい訓練を終え、へとへとになったアズラン達へ、葵は凜々しく言い放つ。

「今日の所はここまで。明日は休日だ。ゆっくりやすみ……」

 その時スマホに着信があった。来栖 由美佳だ。何の用事だろう?

「……澪河だ」
『澪河さん。今エオニアにいるんでしょう? 明日エオニアに遊びに行こうと思うの。案内してくれないかしら?』
「案内……承知した」

 そう言って切ったが、内心冷や汗を掻く。
 エオニア王国に来て数日。ずっと新人研修ばかりしていて、実はこの国のことをよく知らない。
 普段のツーリングでは念入りに予定を立てる派な葵だから、できるだけ事前に調べたいが、時間が一日もないとなると焦る。
 助けを求めるようにアズラン達を見ると、一つ提案された。

「観光だったらアルガミラがいいですよ。我らアフリカの民にも馴染み深い文化があって、面白い街です」

 イタリアとギリシャの文化が色濃いエオニアでは珍しく、イスラム文化が残る街らしい。
 かつてのアフリカもまた、イスラム文化圏であったから、彼らにとって故郷に似た雰囲気が落ち着くらしい。

「感謝する」

 場所さえ決まれば、後は調べるのみ。急いで観光案内所へ飛び込んだ。
 知り合いのライセンサー達に連絡をするのも忘れない。
 万が一由美佳が何かやらかすようなら、止めて貰うために。



 エオニア王国の南東部の海沿いにアルガミラという街があった。
 17世紀頃、オスマントルコはエオニアの隣であるクレタや、北アフリカ全域を支配に治める大帝国を築いていた。
 その頃イスラム商人達が作った建物や文化が、今もなおアルガミラに名残をとどめ、西洋と東洋が混じり合う不思議な町並みを作りあげていた。

 アルガミラの観光案内所で、由美佳と葵、ライセンサー達は、ガイドの説明を受けていた。

「モスクが美術館?」
「ええ、イスラム商人達が去った後も、建物があまりに美しいので、エオニアの人々は美術品として、大切に保存してきたのです」

 観光案内所でガイドの説明を聞いて、由美佳は興味深げにガイドブックを見る。

「スペインのアルハンブラ宮殿みたいね。綺麗だわ」
「由美佳技師は詳しいのだな」
「旅行雑誌で見たことあるだけよ。もう、休日なんだから堅苦しい振る舞いは無しで、由美佳さんで良いわよ」
「あ、ああ……」

 皆がガイドブックの写真を眺め、ほうと溜息をつく。
 イスラム文化の特徴である、アーチが連なり、幾何学紋様で埋め尽くされた壁の美しさに圧倒される。
 鮮やかな青のタイルで彩られた部屋。壁一面に彫刻が施された部屋。
 アーチの連なる先に、海が見える景色もまた美しい。
 螺鈿細工の施された家具も多く置かれていて、思わずここでお茶したいと思うほどだが、流石に美術館内で飲食はできないらしい。

「この美術館内は、特別に写真撮影OKですので。お好きにどうぞ」

 オリエンタルな写真映え満点なのでは?
 美術館併設のミュージアムショップでは、真珠や螺鈿細工を使った雑貨が豊富だ。
 カタログを開きながらガイドは語る。

「トルコから来た職人達が、エオニアの人々に螺鈿細工技術を教えたと言われています。今エオニアは真珠の養殖にも力を入れ始めたので、真珠貝の殻から螺鈿の材料は大量に手に入りますね」

 エオニアはまだまだ復興中。観光客に土産物として提供できるものにも限りがある。
 真珠のネックレスやピアスは流石に高いが、螺鈿細工の小物なら、お小遣いで買える範囲だ。

「螺鈿の名刺入れ。良いわねこれ。シンプルに綺麗で上品だわ。実物を見てみたいわね」
「コンパクトミラーも綺麗だ」

 カジュアルファッションを好む葵だが、女子の嗜みとして鏡の一つも持ち歩く。可愛い物は好まないが、これくらいすっきりしたデザインならと思わなくもない。
 思わずカタログを覗き込み、首を横に振る。
 丁寧に扱わないと螺鈿が剥がれそうで、アウトドア派な葵に向かない気がした。

「希望者の方には、エオニア民族衣装の一日レンタルもやっています。民族衣装を来て、街を歩いて、好きな場所で写真を撮る。旅の想い出にいかがですか?」

 民族衣装はどうにも落ち着かない気がして、葵は首を横にぶんぶんふって、歩き出す。

「とにかく、今日は一日この街でのんびり遊ぶか! 美味しい物を食べ歩くぞ!」

 市場に海岸に美味しいグルメが色々あるらしい。葵としてはそっちの方が楽しみだ。

「海でのんびりするのも良いわね」

 ビーチチェアに寝そべって、タブレットを弄る時間。ハワイでは飛んだ邪魔が入ったが、ここならのんびりできるだろう。
 いつ由美佳が悪戯に走るのかと気が気でない葵だったが、今日の由美佳はずいぶん機嫌がよさそうで、いらぬ心配だったなと、ほっとする。
 ちらりと背後のライセンサーに目配せして「大丈夫そうだ」と伝えた。

 由美佳や葵と一緒に遊んでも良いし、ここから先は自由行動で良いらしい。



 アルガミラの市場にはスパイスと、肉が焼ける匂いが漂った。
 市場に並ぶ屋台に並ぶエスニックな料理達は、異国情緒たっぷりの風情がある。
 羊肉をスパイスにつけた串焼きのシシカバブも美味しそうだし。焼き鯖を野菜と一緒にパンに挟み、レモン汁をかけた鯖サンドも気になる。
 暑い土地によくあう、エオニアの地ビールもあって、ビール片手に肉に齧りつくのもまた美味しそうだ。

 屋台の一角で、トルコアイス売りが、アイスを伸ばすパフォーマンスで、客を湧かせていた。
 露天のフルーツ売りが、立ち食いフルーツを売っている。マンゴー、オレンジ、レモン、ブドウ、スイカにメロン。エオニアらしくミーベルもある。
 まだ旬には早くまだ硬めだが、瑞々しいミーベルのぷりっとした歯ごたえはなかなか良い。
 果物屋でその場で絞る、フルーツ生搾りジュースも人気だ。

 地元の人々も、訪れる賑やかな市場に、陽気な歌声が響く。その旋律もどこかオリエンタルの香りが漂った。



 アルガミラの海辺。白い砂浜の向こうに広がる青い海。サンゴ礁の生み出す独特の色彩が、とても美しい。
 夏にはダイビングやマリンスポーツも楽しめるらしい。
 しかし、海水浴にはまだ少し早い。
 今日は静かに砂浜のビーチチェアに寝そべって、海を眺めてのんびりするのも良いだろう。

 近場のカフェからテイクアウトした、ミーベルジュースやカクテルを飲みつつ。
 白いふわふわパンに、焼いた肉や野菜をたっぷり挟んだ、ドネルケバブに齧りつくのもまた旅の醍醐味。

 ここはエオニア。けれどどこかアフリカの匂いも漂う。東西の交わる街・アルガミラ。
 のんびり街遊びしませんか?

●目的
 街遊びを楽しむ

●NPC
来栖 由美佳
 SALF技師。ゼーゲン社の仕事を終えて、束の間の休暇を楽しみにきた。
 エオニアに来るのは初めて。

澪河 葵
 ライセンサー。新人研修の仕事をエオニアでしていた所、由美佳の休暇に巻き込まれた。
 エオニア滞在中はずっと仕事をしていたため、エオニアの観光地に詳しくない。

●場所
 エオニア南部の街アルガミラ。希望者はエオニア王国の民族衣装を着て一日過ごせます。男女問わず用意可能。
 衣装イメージは、エオニア王国王女パルテニアが着てる感じの服装です。

 エオニア王国特設ページ。
 https://www.wtrpg11.com/event/eonia/eonia_top


 主な観光スポットは以下の3つ

・美術館
 イスラム商人が作ったモスクを活用した美術館。
 建物の美しさを楽しむ美術館なので、美術品は飾っていない。建物内で撮影OKだが飲食は禁止。
 併設のミュージアムショップでは、真珠や螺鈿細工の雑貨も売っている。

・市場
 主に食料品を扱う、賑やかな市場。買い食いOK。その場で食べることもできるし、ここで買って海で食べるのもよし。

・海岸
 まだ海水浴にはちょっと早い。そのぶん静か。
 海沿いのカフェでテイクアウトした、飲み物や食べ物を味わいつつ、綺麗な海を眺めるのもあり。
 写真撮影にも向いている。

●状況
 リプレイ開始は昼前。夕方頃に終わる予定。
 どこで何をするかは自由。
 観光案内所のガイドに事前に聞いていたということで、ガイドする側に回るのも可。
 NPCと絡むプレがなければ、NPCの出番はないかもしれません。

※質問卓設置可

 スペインのアルハンブラ宮殿行ってみたいなという気分でシナリオを出す、雪芽泉琉です。
 一つの国の中でも、ちょっと文化が違う街があっても面白いんじゃないかなと思いつきました。
 やることは自由なので、戦いの合間に、のんびり休日を楽しんでください。
 素敵なプレイングをお待ちしております。

★アドリブ絡み可
○心情
「任務で来ることはあっても、楽しむのは初めてじゃないかしら…
いい機会だし、楽しまないとね!

○目的
街遊びを楽しむ

○行動
折角なのでエオニアの民族衣装着て楽しむ
美術館で自身のいた世界やその周辺とは異なる文化の芸術に触れる
目に映るものが新鮮で映える角度を狙っては写真撮る
「私のいたところとか、アーシャさまのお屋敷とはまた違うけれど…これもまた、とっても素敵ね?」
民族衣装もあって気分はエオニアの人
ショップでは主人や妹のお土産に真珠のアクセ&螺鈿細工の小物入れを購入
気になるワーカホリックのあの人にも、どれが似合うか考えながら螺鈿細工のネクタイピンを
「あの人には、どれが似合うかしら…」

美術館をゆったり巡ったら市場でエオニアの美味しいものに舌鼓
普段は表に出さない健啖な面が表に出てあれもこれもと美味しく頂く
食べる量は多いが腐ってもお嬢様、食べる姿も上品に
「せっかくのお休みだからってのもあるかもしれないけど、どれもこれも気になっちゃうわね…!」
由美佳さんに会ったらこの前(ワルキューレ開発)のお礼を
おかげでとても気に入り、配備直後にお迎え完了
「あら、御機嫌よう。この前はありがとうね?」

自由行動になってしまった。
困ったな、特に何するかなんて考えてなかったぞ。
…とりあえずミーベルの実でも食べて一息つけようか。
エオニアの畑防衛で駆り出されたときに、一度やろうと思ってたんだよね。

そのあとは―
うん、景色なりモノなり撮りつつ歩き回ろっか。
機会に恵まれれば、ちょっとしたカメラマン気取りもできるかもしれないし。
…できたらちゃんとしたカメラが欲しかったな。
出発前か道中で調達できればそれがいいけど、最悪は手持ちの携帯端末頼りかな?
ま、最悪といってもコレはコレで採れるやり方があるから。愉しめればいいのである。


〈ネタ〉
写真:屋台で購入したトルコアイス
コメント:尚、女神さんは見当たらず。

写真:柱(建築物)が並んで見える
コメント:本物探しを考えた方、現地まで観に来ない?

写真:海辺+休息・食事中
コメント:ここを桃源郷とする!

え、なに、フリー…?
よっしゃあ、ごっつぁん出張!!!
いやーこれなかったアイス教の女神ちゃん(友達)可哀そうだなぁ
とりあえず今日はゆっくりと観光してみますか


・行動
自由に観光、おボッチ様が通る
目指すは市場
食レポのごとく食べるものはいちいちスマホで撮影
画像を女神ちゃんへ送付していくスタイル
レポもちゃんと添えて

鯖サンドって実際どうなのよ、主に小骨とかそこらへん
あと次来ても良さそうな美味しそうな店は探しておく
お酒は飲めないっていうかあのビールっていうの苦くてダメ
なのでとりあえずチャイとか…トルココーヒーとかあるのかな、どうかな?
あったら運勢うらなってもらいたい

そんな食べ歩きをしながら眺めるのは市民の表情
彼らはこの今の世界でこの戦乱の世で何を思うだろう
僕は正直、自分の目の前のことで精いっぱいだ
世界を股にかけて戦う英雄なんかじゃない
だけど、こんな彼らの生活を守れるなら…
もう少し、自分の手を伸ばしてもいいのかもしれない
何かがつかめるかもしれないから

そんなこんなでおなかが少し落ち着いたらトルコアイスのお店へ
伸びる写真、アイスの写真を送り付ける
ノルマクリアだドン

流石にアイスは買って帰れないのでお土産で何かを探す
とりあえず螺鈿細工の施されたものを探してみる
女物ってよくわからないのでもうそこは店員さんのお勧めで

○同行者
アイラ・カウラ(la2957)

○衣装
「あら、アイラさん。やっぱり可愛いじゃないですか。」
「ドレスみたいな衣装だって似合うと思うんですよね。」
「ほら、一緒に行きましょう♪」
もちろん(?)エオニアの民族衣装をアイラに着せている。
可愛い可愛いとご満悦。自分でも着ている。おそろいおそろい。
もじもじなアイラの腕を取り、美術館のある方へくり出す。

○美術館
「あらあら。西ヨーロッパと日本は色々行きましたけど、こういう風情の場所はあんまり来たことがないんですよね。」
「ひとり旅もいいですけど、やっぱり誰かと一緒も楽しいですよね。」
「アイラさん、こういう所ととっても合いますね。写真撮りましょうか。」
「ね、今度はふたりで撮りませんか?」
自分が住んでいる東アジア以外のアジア系は割とごっちゃなヤロスラーヴァさん。
がっつりアイラの写真を撮る。もちろん、ふたり一緒のも。

○ミュージアムショップ
「あら、真珠ですね。B級品なんかはお安く売っているんでしょうか。」
「……いい物は結構なお値段ですね。」
割と簡単に手が届くB級品があれば、買う。
もちろんおそろい狙い。

○おわり
「夕日が差し込んでますよ。綺麗ですね。」
「ね、アイラさん。夜、海辺のほうに行ってみませんか?」

・衣装
……ねえ、ヤローチカ。これ、ちょっと私には可愛らしすぎじゃないかしら。
……毎度毎度のことだけど。
※エオニアの民族衣装を着せられて

ちょっと、ヤローチカ、そんなに引っ張らなくても……。
……私と一緒でそんなに楽しいのかしら?

・美術館
東洋と西洋が混じった場所特有の雰囲気ね。
……ここ(エオニア、クレタの辺り)、私の世界ではビザンツ帝国だったけど。
イスパニア(アイラの世界のスペイン辺り)の辺りは、イスラム教徒の領域もあったから、こんな雰囲気だったわね。
※そうだったらしい

……写真、ずいぶん撮るわね。
この格好の写真が残ることになるのね……。
※いつものように、可愛い格好させられると恥ずかしがっている

流石に真珠のネックレスは値が張るわね。
これ、いい物をいくつも使ってるわよ。
……あら、安いのもあるのね。
……え? お揃い? 私と??

・この後のこと
……え? 海にも行くの??
夜の海は静かでいいでしょうけど……。
ねえ、ヤローチカ。まずは夕飯にしない?
※アイラは静かなところの方が好き

人が多いの…苦手…
(ジリジリ葵ににじり寄り、服の裾をつかもうとソワソワ
(小型犬のように葵の周囲をちょこちょこ

澪河おねーちゃんと一緒に遊んで、美味しいもの食べるの
一緒の人も、よろしく…です(人見知り全開

「おねーちゃん…あれ…おいしそう…なの
のびるアイスも美味しいけど、寿華、フルーツのほうが好き
「アイスと…フルーツ…一緒に…食べる、と…美味しいの

「おねーちゃん、の…一口…ちょー、だい?(を、割と何回も
「寿華の…おねーちゃんにも…上げ、る(「一口上げる」も割と何回も
二人で食べれば、沢山の味が楽しめるの
みんなで食べたら、もっと沢山ね(でも人見知り

モスクはじっくりしっかり拝観するの
きっと、もともとはこの国の神様へ祈りを捧げる寺院でしょ?
床や壁や柱、その国の宗教の神話が描かれてるのをしっかり見るの
中の展示物も楽しみ

螺鈿細工のコンパクトミラーを刺繍の小袋に入れてプレゼント
「おねーちゃん、に…あげるの
寿華とおそろい(同じ物購入
いつも持ち歩かなくてもいいのよ?おねーちゃんの大事な日に使ってほしいの

真珠は「(おねーちゃんの耳に真珠…かわいいの(葵を見ながら
「いつか…プレゼント、するの(ふんす

澪河おねーちゃんはかっこよくて、寿華の憧れなの
寿華も、おねーちゃんみたいな巫女さんになれるかな?
「これから、も…よろしく…なの…澪河、おねーちゃん


 民族衣装に着替えたアイラ・カウラ(la2957)を見て、ヤロスラーヴァ・ベルスカヤ(la2922)は、ぽんと手のひらを合わせた。
「あら、アイラさん。やっぱり可愛いじゃないですか」
「……ねえ、ヤローチカ。これ、ちょっと私には可愛らしすぎじゃないかしら。……毎度毎度のことだけど」
「ドレスみたいな衣装だって似合うと思うんですよね」
(ヤローチカは大人っぽいのを選ぶのに……どうして私ばかり可愛い系を選ぶのかしら)
 アイラに可愛い服を着せたがるのは、ヤローチカの悪癖だ。そうわかっていても、可愛らしい色と装飾が多い衣装は恥ずかしい。
 アイラの腕を組んでヤローチカは歩き出す。
「ほら、一緒に行きましょう♪」
「ちょっと、ヤローチカ、そんなに引っ張らなくても……。……私と一緒でそんなに楽しいのかしら?」
「楽しいですよ」
 照れもなく、ふんわり微笑む姿を見て、アイラは「まったくもう」と呟きながらアイラはつい目を逸らした。

 2人が着いたのはモスクを生かした美術館。
 学芸員なヤローチカは文化や芸術品に目がない。美しい建物を見て思わず目を細め、アイラは呟く。
「東洋と西洋が混じった場所特有の雰囲気ね。……ここ、私の世界ではビザンツ帝国だったけど」
「あらあら。西ヨーロッパと日本は色々行きましたけど、こういう風情の場所はあんまり来たことがないんですよね。アイラさんの方が詳しいでしょうか?」
「ヤローチカの方が詳しいかと思ったけれど」
「イスラム文化は専門外です」
 アイラは珍しく自分がリードできそうで、こほんと咳払いをしつつ説明する。
「イスパニアの辺りは、イスラム教徒の領域もあったから、こんな雰囲気だったわね」
「そうなんですか。ひとり旅もいいですけど、やっぱり誰かと一緒も楽しいですよね」
 ひとしきり鑑賞を終えて愉しんだ後、ヤローチカがカメラを取り出す。
「アイラさん、こういう所ととっても合いますね。写真撮りましょうか」
「……え? 私の?」
「せっかく可愛いお洋服なんですから」
 恥ずかしがって嫌がったが、断り切れずアイラは大人しく写真を取られる。アイラの可愛い姿を思う存分うつしヤローチカは満足げに頷く。
「ね、今度はふたりで撮りませんか?」
「……写真、ずいぶん撮るわね。この格好の写真が残ることになるのね……」
(1人は恥ずかしいけれど、ヤローチカと一緒なら……)
 職員に頼んで海とアーチが綺麗に見える場所で、記念写真。
 美術館を堪能した後は、併設のミュージアムショップへお買い物。
 真珠小物の前で2人は立ち止まった。お土産に買うには高い。
「あら、真珠ですね。……いい物は結構なお値段ですね」
「流石に真珠のネックレスは値が張るわね。これ、いい物をいくつも使ってるわよ」
 小粒で歪な物を使ったアクセサリーコーナーを発見。
「B級品なんかはお安く売っているんでしょうか。アイラさんとお揃いが欲しいのですが」
「……あら、安いのもあるのね。……え?  お揃い?  私と??」
「はい。あ、このデザイン可愛いですね。アイラさんに似合いそうです」
「……ちょっと、私には可愛すぎるわ。こっちの大人っぽい方が……」
 女性同士はしゃぐようにアクセサリーを選んで、結局お揃いのイヤリングを買った。



「自由行動になってしまった。困ったな、特に何するかなんて考えてなかったぞ」
 アークレディア・クレセント(la0542)の目に露天のミーベルが映った。
「……とりあえずミーベルの実でも食べて一息つけようか。エオニアの畑防衛で駆り出されたときに、一度やろうと思ってたんだよね」
 昨年秋の任務を思い出しつつ、丸ごとそのまま齧りつく。まだ少しまだ硬めだが甘酸っぱく、瑞々しい果汁たっぷり。
「おお、美味いな!」
 ぺろりと平らげ元気が出たら、観光気分も盛り上がった。
「うん、景色なりモノなり撮りつつ歩き回ろっか。機会に恵まれれば、ちょっとしたカメラマン気取りもできるかもしれないし」
 観光案内所で良いカメラも借りる。SNSにあげるならスマホのカメラの方が便利だ。両方のカメラを使い分けよう。
 モスクの美術館にやってきてアーチが連なる柱を見てふと思い出す。ニュージーランドで出会った敵ミラージュピラーに似ている。
「観光地の柱でニュージーランドのあんちくしょうを思い浮かべるようじゃ、ストレス溜まりすぎってな。……こんな発想するのは私だけ? ナンダー」
 ぶつくさ言いつつSNSに写真とコメントをアップする。
『本物探しを考えた方、現地まで観に来ない?』
 流石に柱の写真でミラージュピラーを思い出す奴はいないかなと思いつつ、同時に思う。
(戦いを忘れて平和を楽しむ。そのほうがずっといいケド)

 民族衣装に身を包んだミラ・ケートス(la0103)は、街を見渡し楽しげに微笑んだ。
「任務で来ることはあっても、楽しむのは初めてじゃないかしら……いい機会だし、楽しまないとね!」
 自分が守った人々がどう過ごしてるのか、それを見たい。
 美術館で鮮やかなモザイクタイルに目を奪われる。ミラのいた世界と異なる文化の芸術に触れ、新鮮に見えた。
「私のいたところとか、アーシャさまのお屋敷とはまた違うけれど……これもまた、とっても素敵ね?」
 建物と一緒に写真をと思う物の、自撮りはなかなか難しい。そこへアークレディアが通りがかった。
「撮ってやろうか? 良いカメラも借りてるしさ」
「ありがとう。嬉しいわ」
 調度品や壁、海を背景に何枚も撮って貰う。由美佳が歩くのを見かけ声をかけた。
「あら、御機嫌よう。この前はありがとうね?」
「こんな所で会うとは奇遇ね」
 ワルキューレの開発任務で世話になったお礼を述べ、とても気に入りでお迎えしたと、無邪気に語る。
 自然と笑みが零れる2人をアークレディアは写真に写す。由美佳は手を差し出した。
「撮りましょうか」
「え、いいよ、俺は……」
「旅の記念に一緒に映ってくださらないかしら?」
 ミラにも誘われ断り切れず、照れくさくぎこちない笑みを浮かべ一枚。撮った写真をスマホに送って共有。
「恭くんへのお土産が増えたわね」
「旦那様?」
「ええ」
 ミラは由美佳の幸せそうな笑顔が羨ましい。
(アイクにこの美しい建物を見せてあげたいけど……忙しいわよね)
 思い浮かべるのはあの人は、アフリカ作戦で忙殺されているはず。
 大切な主人や妹へのお土産選びにいく。可愛い物を見れば乙女のテンションがあがるもの。どれが良いか楽しく悩み、真珠のアクセや螺鈿細工の小物入れを選ぶ。
 螺鈿細工のネクタイピンがあるのを見かけた。
「アイクには、どれが似合うかしら? ネクタイは青だから白? 瞳の色の青も良いし」
 忙しくても任務で一緒になった時に、渡すくらいならできるだろうか。



 磐堂 瑛士(la2663)は友人と一緒のつもりだったが、都合が悪く1人参加になった。
「え、なに、フリー……? よっしゃあ、ごっつぁん出張!!! いやーこれなかったアイス教の女神ちゃん可哀そうだなぁ。とりあえず今日はゆっくりと観光してみますか」
 アイスの女神へ写真だけでもお供えせねば。市場へGO。おボッチ様が通る。
 羊肉の串焼きに齧りつき、写真を撮ってメール送信。
『スパイスが効いたシシカバブ美味い』
 食レポを添えて女神へ送付していくスタイル。
「鯖サンドって実際どうなのよ、主に小骨とかそこらへん」
「骨は取ってあるよ」
 うまーともぐもぐしつつ、食レポ送信。また来る時の為に良さそげな店を探す。
「チャイとか……トルココーヒーとかあるのかな、どうかな?」
 地元の人が入りそうな小さなカフェを発見。砂糖とミルクとスパイスの効いた珈琲が、食事で脂っこい口をすっきり。
 飲み終わったらソーサーをひっくり返し珈琲の粉で占いだ。形は半月に見える。
「これどうなの?」
「今日は平穏無事に過ごせるってさ」
 カフェのおっさんが笑顔でそう答えた。
 のんびり市場の人々の笑顔を眺める。先日首都にまでナイトメアが出没した割には平和である。
 だが心の中まで平和とは限らない。この戦乱の世で何を思うのだろう。
(僕は正直、自分の目の前のことで精いっぱいだ。世界を股にかけて戦う英雄なんかじゃない。だけど、こんな彼らの生活を守れるなら……)
 ナイトメアが現れれば、この平和な景色は壊される。握りしめた手を見つめ思う。
(もう少し、自分の手を伸ばしてもいいのかもしれない。何かがつかめるかもしれないから)


「人が多いの……苦手……」
 市場の人混みに怯えた桃源 寿華(la3140)は、ジリジリ葵ににじり寄り、服の裾をつかもうとソワソワ。葵は手を差し出す。
「行こう。寿華」
 ぱーっと笑顔になった寿華は、手を繋いで小型犬のように隣をちょこちょこ歩く。
(澪河おねーちゃんと一緒に遊んで、美味しいもの食べるの)
「おねーちゃん……あれ……おいしそう……なの」
「羊肉の串焼きか。美味しそうだね」
 前に一緒に食べたジンギスカンも、羊肉だったなと思いつつ、二人分買って手渡した。ぱくっと齧り付き、寿華は頬に手を当てた。
「……美味しい!」
「鯖サンドもなかなか」
「おねーちゃん、の……一口……ちょー、だい?」
「うん、いいよ。交換ね」
 味付けの違う串焼きと鯖サンドを交代で食べ比べ。
「寿華の……おねーちゃんにも……上げ、る」
 何度も一口ちょうだいと上げるを繰り返す寿華に、葵は目を細めて頭を撫でて頷いた。

 市場にやってきたミラは瞳を輝かせた。
「せっかくのお休みだからってのもあるかもしれないけど、どれもこれも気になっちゃうわね……!」
 おっとりお嬢様らしく上品にと普段は表に出さないが、実は健啖家。目移りしてると葵がミラに声をかけた。
「ここにある椅子は使って良いらしいぞ」
 市場の隅に簡易な椅子とテーブルがある。
「ご一緒しても良いかしら?」
 ミラが優しく微笑むも、寿華は慌てて葵の後ろに隠れた。
「よろしく……です」
(でも、おねーちゃんが……一緒なら)
 早速ミラは大量の串焼きと鯖サンドを買ってきた。
「すごい……の」
「いただきます」
 ミラは育ち良く丁寧に挨拶をして、上品な仕草で次々と口に入れていく。鯖サンドをちまっとかぷり。焼き鯖と野菜たっぷりでレモンの酸味が良いアクセント。
「美味しいわ」
 市場の人々も賑やかで愉しげで、こんな平和を守りたいとミラは思った。
 美味しそうに食べるミラの姿に寿華も影響される。
「アイスと……フルーツ……一緒に…食べる、と……美味しいの」
「どれが良い?」
「のびるアイスも、美味しいけど、寿華、フルーツのほうが……好き」
「買ってくるよ。待ってて」
「え?」
 葵が立ち上がったのでついて行こうとして悩む。待っててと言われた。そわそわしつつ、ミラをちらちら。
 凄い量を食べているのに、食べ方が上品で楽しそうだ。
(……優しい、おねーさん、かな?)
 葵がフルーツとアイスを買ってくると、寿華の表情がふんわり崩れる。
「二人で食べれば、沢山の味が楽しめるの。みんなで食べたら、もっと沢山ね」
 そう言いつつフルーツをそっとミラに差し出した。
「頂いても良いのかしら?」
 寿華はこくりと頷く。葵と分け合いながら食べるアイスとフルーツは飛びきり美味しい。

 トルコアイスの屋台の前で、瑛士は熱心に写真を撮っていた。
 本日の食レポハイライト。これでノルマクリアだドン。
 写真を撮り終え送ろうとした所で、アークレディアの視線に気づいた。瑛士と同じくアイスの写真をSNSに上げようとしていたのだ。
「……アイスの女神さんは?」
「都合が悪くなったらしい」
 そのやりとりだけで通じるアイス教は偉大だ。
「それは残念だろうな。あー、トルコアイス……アイスなぁ」
 アイスを見れば思い出す、鴇色の髪、シスター服。
(なんで真っ先に思い浮かぶんだろ)
 しっかり写真を撮って、アイスを食べてSNSを送信。
『尚、女神さんは見当たらず』



 寿華と葵は食べ物を満喫した後、美術館にやってきた。
「モスクは、じっくり、しっかり……拝観するの」
 寿華も葵も神職につくもの。異なる宗教も尊重したい。床や壁や柱に、神話が描かれているかと思いつつ、寿華は首を傾げた。
「絵も、彫像もない……です?」
「イスラム教は偶像崇拝禁止なんだよ」
 美しい幾何学模様が続き、神も人も風景もない。
「もともとは、この国の神様へ、祈りを捧げる寺院でしょ?」
「昔ここで祈りを捧げた人もいるだろうね」
 国が違っても神に願うことは変わらない。
 お土産を買いに行く。真珠の美しさに、葵をちらり。
(おねーちゃんの耳に真珠……かわいいの)
「いつか……プレゼント、するの」
「寿華?」
 ふんすと意気込む寿華は、螺鈿細工のコンパクトミラーを2つ買って、刺繍の小袋に入れて貰った。
「おねーちゃん、に…あげるの。寿華とおそろい」
「いや……壊しそうで……」
「いつも、持ち歩かなくてもいいのよ? おねーちゃんの、大事な日に、使って……ほしいの」
 寿華が一生懸命訴えるのを聞き、葵は素直に受け取って微笑んだ。
「ありがとう。家で大切に飾っておくね」
「澪河おねーちゃんはかっこよくて、寿華の憧れなの。寿華も、おねーちゃんみたいな巫女さんになれるかな?」
「なれるよ。寿華なら」
 寿華は頬を染めつつ満面の笑顔を浮かべる。
「これから、も……よろしく……なの……澪河、おねーちゃん」

 瑛士もお土産を探していた。流石にアイスは買えない。螺鈿細工の小物と思うが、女物がよくわからない。
「その方の好きな物とか、良く身につけてる物とかありますか?」
 店員に聞かれ思い浮かべる。同居人の趣味で様々なコスプレを着こなすせいで、どれが好きなのかわからない。
「……アイスですかね」
「アイス?」
 店員も一瞬戸惑った物の出したのは銀の小さな匙とそれが入る螺鈿の小物入れ。
「携帯用アイスの匙というのはどうでしょう?」
(流石プロ。これが最適解だよね)



 日が傾き夕暮れが近づいてくる。街を歩くヤローチカは空へ手を伸ばし、アイラへ微笑む。
「夕日が差し込んでますよ。綺麗ですね」
「そうね……綺麗だわ」
「ね、アイラさん。夜、海辺のほうに行ってみませんか?」
「……え?  海にも行くの?? 夜の海は静かでいいでしょうけど……。ねえ、ヤローチカ。まずは夕飯にしない?」
「はい」
 いっぱい歩いてお腹が空いた。それに一日来ても慣れない可愛い衣装に恥ずかしい。そんなアイラが可愛いなと思うヤローチカだった。

 夕暮れ時の海岸でアークレディアは海の写真を撮って送信。
『ここを桃源郷とする!』
「こんな所で、どうでしょう? ってな」
 街の写真を撮り続け、思い浮かぶは人々の笑顔。
(興して、護って、栄える。私の幸せはこれがいい。意地も張れない平穏など、こっちから願い下げだよ)
 ミーベルジュースを一口。甘酸っぱい味が、平和な街に似ていた。

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