オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 【3C】アズランとの交流

連動 【3C】アズランとの交流 久遠由純

形態
ショート
難易度
普通
価格
1500(EX)
ジャンル
3C 日常 
参加人数
55~8人
予約人数
10010100
基本報酬
200000G
200SP
2000EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
3
締切
2020/04/21 12:00
完成予定
2020/05/04 12:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●エオニアのアズラン
 地中海に浮かぶ小さな島国『エオニア王国』。
 ここにも、アズランはいた。
 南西にある漁村の片隅に、身を寄せ合うように、まるで自分達だけしか信じられるものはないとでも言うように、ひっそりと彼らは暮らしている。
 しかしアズランのリーダーアイシャがSALFと手を組むと決めた以上、彼らもそれに従うつもりだ。
 つもりだけれども、アフリカの民は今まで自分達を放っておいたSALFに頼ることなく、ここまでやって来たという感情は消えず。
 アズランには偵察や潜入など危険な行為すらも自分達だけの力で行い乗り越えて来たのだという自負があり、今更手を取り合おうというSALFを完全に信じられない者達がいるのも事実。

 SALF側にとっても、今後アフリカを攻略するにあたってアズランの協力は必要不可欠だ。

 そんな訳で、ライセンサー達は少しでもそんなアフリカ難民の信頼を得るべく、この漁村にやって来たのだった。

●IMD抜きで
 その漁村には大人も子供も、男女含めて30人のアズランが、三つの家に分かれて暮らしていた。
 家と言ってもどれも立派なものではない。倉庫のような粗末な建物の中に、全員分の二段ベッドがある部屋とシャワー室とトイレが区切られて、あとは小さなキッチンがあるだけだ。
 家は分かれているが食事や仕事などの生活サイクルは30人全員が同じに行動しており、役割分担もされている。
 50代くらいだろうか、ここのアズラン達のまとめ役らしき年長の男が、ライセンサー達に言った。
「昨日皆で話し合ったんだが」
 彼も他のアズランと同じく浅黒い肌と彫りの深い顔立ちをしており、短い黒髪には所々白いものが混じっている。
 アズラン達は全員三つの家の前に並んでいたが、今日は適合者はライセンサーとしての訓練でSALFのエオニア支部へ行っているため、年長の男を含め23人しかいない。
「SALF側が我々に歩み寄って努力するなら皆信用すると言っている」
「どうすればいいのですか?」
 ライセンサーの一人が尋ねると、男はアズラン達と、その後ろの家々を手を振って示した。
「見ての通り我々は貧しい。だが我々は自分達の生活を支え、時には他の地に住む仲間と協力しやって来た。その我々の仕事を手伝ってほしい」
 それならお安い御用だ、とライセンサー達の表情が緩みそうになった時、年長の男が重ねて言う。
「ただし、ライセンサーとしての力、イマジナリードライブ抜きで、だ」
「えッ?」
「それはそうだろう? 俺達の中の適合者だって、今まではイマジナリードライブに頼らずにやって来たんだ。お前達もその力なしでどこまでできるのか、本気で俺達と協力してアフリカを解放する気があるのか見せてくれたら、手を結ぶ仲間として信頼しよう」
 ライセンサー達の顔に戸惑いや思案が浮かぶが、男は続ける。
「仕事はいくつかある。それぞれに責任者がいるから、細かい内容は彼らに聞いてやってくれ。では頼んだぞ」

●お仕事
 海岸まで連れて来られたライセンサーは、一人の男を紹介された。
「俺は漁を担当しているジャミルだ。自分のやり方でいいから、とにかく魚をいっぱい獲ってくれ! これが俺達の生活の糧に直結してるからな!」
 ジャミルは40歳くらいの、がっしりした体格で顔の下半分は濃い髭で覆われた厳めしい顔つきの男だ。
 上半身は裸で、下はひざ丈のだぶだぶしたパンツをはき、手には使い古した銛を持っている。
 ジャミル以外のアズランメンバーは毎日持ち回りで、今日は20代~30代の屈強な青年5人が漁をするらしい。
 全員ジャミルと同様の格好で銛を持っており、彼らは素潜りで魚を突いて獲るようだ。
 皆挑戦的にライセンサーを見つめていた。

 アズランは家の近くに小さな畑も持っており、野菜を自家栽培している。
 そこの手伝いもライセンサーに任された。
「僕はハリドと言います。この畑の管理責任者です。天気や害虫などに気を配り、できる範囲で最大の収穫ができるようにすることが僕の役目です」
 ハリドはまだ20代の若者だが、眼鏡をかけていかにも真面目そうな青年だった。
 ハリドの他に、持ち回り分担でここには子供達が回されることが多く、今日も10歳程度から15歳くらいまでの少年少女が4人いる。
「今回はスティッキオ、ビーツ、スイスチャード、トマトベリーの収穫をお願いします。子供達もいますので、くれぐれもトラブルは起こさないようにしてください」
 ハリドは厳しい目つきでライセンサーを見、くいっと眼鏡のブリッジを押し上げた。

 もう一つ手伝いを頼まれたのは、掃除洗濯だ。
 三つの家の裏に共同の物置小屋のような物があり、そこにアラフォーと思われる恰幅のいい女性がライセンサーを待っていた。
「あたしはアヤ。この物置の中に洗濯機が三台あるから、皆の汚れ物を洗ってちょうだい!」
 家事全般を受け持っているアヤは皆のお母さん的な存在で、ガラリと小屋の戸を開けた。
 今日ここに割り当てられたアズランの若い女性三人が、30人分の汚れ物をいくつかのカゴに分けて持って来る。
「あ、皆の下着類はあたしらが洗うから、その他を洗って。で、干す場所はこっちの日当たりのいい場所でね。それが終わったら全部の家のシャワー室とトイレ、キッチン周りの掃除もよろしくね」
 アヤ達女性4人はにこりと笑った。

※アズランと協力して仕事を手伝い、信頼を得るようにしてください。

※漁、畑、家事のどれか一つを選び、仕事をこなしつつ交流しましょう。それぞれ人数が極端に偏らないようにしてください。
※スキルやEXISを使うのは禁止ですが、種別が【一般】のスキルはOKです。

<漁>
・責任者はジャミル。荒くれっぽい青年5人も一緒に漁をします。
・男達は仲間意識が強く、物事にすぐ熱くなるタイプです。
・自分達より力がある、良いアイディアを持っている等、何か感心できる部分があれば素直に認めてくれる、実は心優しい男達です。

<畑>
・責任者はハリド。4人の子供達も収穫を手伝います。
・畑の大きさは25m×25mくらいです。
・ハリドはとにかく真面目ですが、人の意見はきちんと聞きます。畑の管理を任されているものの、特に農業に詳しい訳ではなく、自分にない知識などを聞けたらだんだん心を許すでしょう。
・子供達はライセンサーに興味津々です。「どこから来たの?」とか「ナイトメアと戦うの怖くない?」とか「何かカッコイイ技見せて」とか言ってくるでしょう。

<家事>
・責任者はアヤ。若い女性3人も担当です。
・アヤは失敗しても怒りませんが、怠けるのは大嫌いです。誰にでも平等に接するオカン気質です。
・大人数がいる家の家事はとにかく大変。時短でしかもキレイになる掃除法や、生活の知恵などあれば、女性達は喜ぶでしょう。


※ただ仕事をこなせばいいということではありません。アズランに誠意を見せることが重要となるでしょう。

こんにちは、久遠由純です。

【3C】連動の第二弾にも参加させていただきました。
今回はタイトル通り、アズランとの交流シナリオです。彼らと良い関係を築き、今後のアフリカ攻略へと向かって欲しいと思います。

よろしくお願いします。

  • 人を助けるヴァルキュリア
    桜壱la0205
    ヴァルキュリア10才|セイント×ゼルクナイト

●心情
家事ですか!?ふふふ、お任せください!
何たって一応家事支援型アンドロイドなのですからっ!
●目的
家事のお手伝い!です!
●行動
▼洗濯
「むむむ、腕が鳴りますね…!(袖まくりまくり
洗濯機があるならこれ幸い、とどんどんローテで回してもらう
「一番の時短は洗濯から乾燥までしてくれるドラム型洗濯機を導入する事です…(くっ(
ネットや手洗い必須の物は見落とさないように!
洗い終わったら、服の種類別(上服、下服、靴下等々)に分けて干しておくと
大量の洗濯物があっても取り込みやすくかつ畳むときに便利
ハンガーとピンチハンガーは主婦の味方なのです!
大人数の洗濯物を畳むのはとても手間な為、各々の収納場所を種別に箱で区切り
そこに畳まず放り込んでいく方針にすると家事をする人の負担が減り
種類も混ざらないから収納も乱れないです!と話す
▼掃除
「一番の時短はIの様なアンドロイドを導入することです…(ふふん(
水回りの掃除は大変ですものね!とちゃきちゃきお手伝い
特に女性陣もあまりしたくないであろうトイレから
日本のトイレやキッチンと同じかわからない為、基本に忠実に掃く、拭く、整頓するを撤退
シャワー室は面倒でも使用した後軽めに拭いておくだけで汚れるスピードがぐんと違う、と話す
終了後は女性陣の家事で負担のかかる腰や膝を医療でチェック
腰の痛みを軽減する為の軽い体操も教える

  • 夜明け告げる者
    高柳京四郎la0389
    人間28才|ゼルクナイト×スピリットウォーリア

漁を手伝いつつ交流を図り良好な関係を築ける様に尽力する
事前にナイフと魚醤油を用意して持参

まずは話術1を使用しつつしっかりと挨拶をして友好的な態度を示す
「俺は高柳京四郎だ、よろしくな

漁では隠密3を使用して魚に気配を気取られないようにし
不意を突いて狙う事で出来るだけスムーズに魚を捕獲
「気配を察知されなければ魚も油断してくれる…か?
「こちらに気付いていないな。狙うなら今…!

魚が獲れたらナイフで締めて血抜きを行い鮮度を保って持ち帰れるようにする
説明時には話術1使用しなるべく穏やかかつ話しやすい状況を作れるように話す
「知ってるかもしれないが、こうやって締めて血を抜くと、長く持つし生臭さが減るんだよ
「こうしてすぐ下処理した魚なら、物に因るが保存食にも出来る。獲れ過ぎた時とかに置いておくのに便利なんだ
「あぁ、一応これでも喫茶店の店主なんぞしてるんでな…こういうのは慣れてるんだ

魚が余剰が出るくらい十分に獲れた場合
目利き1で刺身にして食べられる魚を選別し1匹譲ってもらう
その魚をナイフにて料理2で捌きそのままや醤油を浸けて食べてもらう
「だいぶ獲れたな。良ければ…そうだな、この魚。この1匹を俺にくれないか?
「獲れたての魚をすぐに捌くととても美味しいんだ…生で食べられる魚に限るけどな
「さぁ、食べてみてくれ…あと、この醤油を少し浸けて食べてみても美味しいぞ

【心情】
ハロー、アズランの皆さん。SALFライセンサー兼モデルのユリアよ
今日は依頼を受けて、お手伝いをさせて貰うわ

…長い間、この世界にナイトメアの脅威にさらされない場所はなかった。あたしも、奴らのせいで弟を失っているわ
ニュージーランド、ロシア、太平洋のインソムニアが崩壊して…やっと、SALFもアフリカの人類奪還へ本格的に手に届くようになったってところ。あたしも、それをさせて貰うつもり

【目的】
掃除を行う
アズランの信頼を得る

【準備】
家の間取りを確認
一般スキル以外は使わない

【同行者】
桜壱

【行動】
掃除は家事2を使い、洗濯・部屋掃除・キッチン・トイレなどアヤさんの指定場所掃除
桜壱ちゃんと分担して、効率よくお掃除したいところね

時短
そうねぇ…まずは、よく掃除する場所に余計なものを置かないって言うことかしら。
掃除の度にどける必要があると、やるのも億劫になるでしょ。そう言うのは押し入れとか箱とかに纏めましょ

曜日ごとに掃除ポイントと掃除時間を決めておく
よく使う場所は毎日、あまり掃除しなくても汚れない場所は特定の曜日にやるとかね

廊下の近くにワイパーを置くとかもどうかしらね?すぐ使えるし、移動の最中に床を拭いたりもできるでしょ

洗濯物を乾かす際は、逆さにすると風が当たりやすいと言うわ
特に今後、厚手の服が必要になってくると活躍する豆知識じゃない?

【心情】
「プロの知恵を借りたいのなら、本職の人間を雇った方が確か」
「それでも私たちに手伝いを頼むってことは、見たいのは成果ではなく」
「ライセンサーとしてではない、人間としての私たちってことかしらね」

【目的】
「畑」の仕事を手伝う

【行動】
「良い色…採れたてをサラダにしたら美味しそうね」
最初は畑の現状を見せてもらうためにも、収穫のお手伝いをする。
幸いイタリア出身の自分には馴染みのある、地中海沿岸原産の野菜が
多いので、収穫に適した大きさ等は実生活での経験で目星はつく。
その上で調べたこと、気付いたことをハリドと相談していきます。

「収穫量は大事だと思うけど、もう少し間隔は空けたいわね…」
「近すぎても栄養の取り合いになって、共倒れしてしまうから」
スティキオは根本の幅が小指から親指ほどまでが収穫の目安、
ビーツは長く置きすぎると根が割れてしまうので収穫遅れには注意、
スイスチャードは大きくなると苦くなるので丈20センチくらいが理想、
トマトベリーは赤く完熟し、触って柔らかさを感じたら収穫などを伝える。

【子供相手】
初めまして、私はイタリアから来たの。海を挟んで向こう側ね。
この間は皆のリーダー、アイシャとも一緒にナイトメアと戦ったのよ。
うーん…必殺技は持ってないんだけど、私は絵が得意なの。
他の国やグロリアスベースの景色を描いたスケッチ、後で見てくれる?

  • 首があるなら刈ってみせる
    紅迅 斬華la2548
    人間25才|セイント×ネメシスフォース

初めまして!紅迅 斬華と申します♪ハリドさん!本日はよろしくお願い致します!

目的
畑仕事を手伝い信頼を得る
子供達と仲良くなる

行動
礼儀作法・首刈りお姉さんの会話術使用し、ハリドさん達と会話しつつ全力で畑仕事!
「全力で頑張りますよぅ♪」
収穫は無駄な力を入れず重心移動と体重移動をうまく使い体力消費を最小限に、最大の力を生み出す
ハリドさんや子供達にも体の使い方を教える
「何も力が強い必要はありません♪体をうまく使うのです♪」
畑の仕事をこなしながら、自分の知っている範囲の栽培法をハリドさんに雑談交じりに教える

スティッキオ:苗なら堆肥と肥料を混ぜ合わせた土に植える
根を傷付けない
種なら一か所に5粒程度を土を被せ軽く指で押さえる
乾燥が続くなら水やり
肥料は植え付けと同時に元肥を窒素を含むのがおすすめ
日除け対策も

ビーツ:畑に石灰撒き、酸度がpH6.5〜7.0にする
種は前日に水に浸しておくと育ちが良くなる
しっかりした芽を残し間引き
2週間に1度追肥

スイスチャード:日当たり風当たりの良い場所に植える
発芽まで土表面を乾燥させないよう水やり
間引き要

トマトベリー:分からない
「ご存じだったらごめんなさいね…♪」

仕事後や休憩時間にハリドさんに破壊してもいい開墾に邪魔な木や障害物を聞き、許可を取れるならEXISを使用し子供達に首刈術を魅せてあげる
「ふふ~ん♪こう見えてお姉さんとっても強いんですよ♪見せてあげましょう!これが壱式「空」!!♪」
開墾に邪魔な障害物・植物諸々を根ごと更地にする

許可を得られないなら、首刈術の型を見せてあげる
基本的に斬華の武にIMDの力を上乗せしたものがほとんどなので動きはさほど変わらない

「どうですか?かっこいいでしょー♪」
歌唱スキルで歌ったりしても子供達と遊ぶ

●信頼を得るために
 エオニアに住むアズランの元を訪れたライセンサー達は、彼らの信頼を得るためにまとめ役の年長の男に従って、アズランの生活を支える仕事をすることになった。
 手伝いをして欲しいという仕事とは、漁と畑と家事。
 ライセンサー達はそれぞれに分かれて、仕事をしつつアズランとの交流を図る。

●漁
 この村は漁村なだけあって海岸が近い。
 当然日々の食料は漁に頼っており、高柳京四郎(la0389)は漁の責任者だというがっしりした体格で厳つい顔をしたジャミルを紹介された。その傍には屈強な青年5人もいる。
 ジャミルは黒髪で黒目、すらりとした立ち姿の高柳を上から下まで見てから言った。
「俺は漁を担当しているジャミルだ。自分のやり方でいいから、とにかく魚をいっぱい獲ってくれ! これが俺達の生活の糧に直結してるからな!」
「了解。俺は高柳京四郎だ、よろしくな」
 高柳はまずは身に付けた話術でしっかりと挨拶をし、友好的に見えるよう笑顔も忘れず手を差し出す。
「ああ、よろしく頼む」
 がっしと握ってきたジャミルの手はごつごつしていて、苦労しているだろうことがうかがえた。
 高柳はアズランの青年達にもちゃんと名乗って握手を交わした。皆大体高柳と同年代と言っていいだろう。
 以前は結婚していたという高柳はそれなりの年齢で、妻とは死別している。ライセンサー以前の経歴は全くの不明だが、今は喫茶店を営む中で客の相手などを楽しみ、気の向くままの生活だ。
 どれだけの窮地に立っても諦めることをしない高柳は、今のアウェーとも言える状況でもくじけず、ジャミル達と良好な関係を築くためには行動で示すしかないと考えた。
 男達は皆高柳に興味半分、不信感が半分の目を向けている。
「よし、俺にも銛を貸してくれ」
 上半身の服を脱ぎ銛を持ち、高柳は彼らと同じスタイルになった。
「お前、魚突きやったことあるのか?」
 一人の青年がやや挑戦的に高柳に尋ねる。
「いや、実はない。だけど頑張るよ。少しでも食料は多い方がいいもんな」
「なんだ、素人か。あんまり期待できねぇが、せいぜい頑張って獲ってくれよ」
「なんなら、俺の真似をしてもいいぜ」
 青年達の若干上からの物言いにも高柳は動じず微笑を返して、
「ああ、そうだな。上手い人の真似をすれば俺もすぐ上手くなれそうだ」
 これは試されているのだ。
 この程度の挑発に乗って怒ったり、必要以上にへりくだってはいけない。
「お前ら行くぞ、さっさと小舟に乗れ!」
「は、はい!」
 ジャミルに促されて、男達は必要な道具を持って三つの手漕ぎの小舟に乗る。
 高柳はジャミルの舟に同乗して、海へと漕ぎ出して行った。

 漁をするポイントまでやって来ると、男達は突き出た岩に舟をロープで括り付けた。
 獲った魚を入れるための網を持って、早速潜り始める。
 そこは岩場になっていて、水深は10mほど。
 男達は数分と待たず獲れているようだ。
 高柳も獲物を求めて潜ってみた。
 水は綺麗でよく見え、岩の陰にカサゴのような姿の魚を発見する。
(気配を察知されなければ魚も油断してくれる……か?)
 高柳は銛が届く所まで静かに泳いで行き、気配を抑えつつチャンスをうかがう。今までの戦闘経験などで得た隠密技術が役に立った。
(こちらに気付いていないな。狙うなら今……!)
 そして一気に銛を放った。
 ドスッ!
 見事命中し、20cmくらいのものが獲れた。
「やった!」
 水面まで急いで上がって、逃がさないよう魚を銛から外し網に入れる。
 それを一人の屈強な青年が見ていて、ニヤリと笑った。
「初めてのわりにやるじゃないか。よし、お前がどれくらい獲れるか、勝負だ!」
「構わないが、負けても文句言うなよ?」
 高柳もニヤリと笑い返すと、青年は素人に負けるもんかと熱くなって潜って行く。
 子供のようなやりとりに高柳は少し楽しさを感じるのだった。

 2時間程経った頃、ジャミルは一旦皆を集めて成果を報告し合うことにする。
「今日は中々の成果だぜ、ジャミル! ほら!」
 アズランの男達は皆大体10匹前後の魚を取っており、貝もいくつかあった。その結果にジャミルも嬉しそうだ。
「おう、今日は皆よく獲れたな! タカヤナギ、お前はどうだ?」
 男達が全員高柳に注目する。
「ああ、俺も頑張った方だと思うけど、やっぱり毎日やってる皆にはかなわなかったようだ」
 と少し謙虚に高柳が差し出した網の中には、7匹の魚と大きいロブスターが1匹入っていた。
「おッ、ロブスターじゃねぇか!」
「しかもでっけぇ!!」
 途端に男達が騒ぎ出す。
「やったな、タカヤナギ!」
「お前運がいいぞ!」
 1匹では30人いるアズラン全員に行き渡る分には到底足りないが、予想外の珍しい獲物に皆喜び、高柳の背中をばんばん叩いたりしていた。
「よし、血抜き処理に取り掛かろう」
 男達は舟の上で、自分達の獲った魚を締め、血抜きして海水を入れたバケツに放り込んで行く。
 さすがにこれは素人では手間取るだろうという目で何人かの青年が高柳の様子をうかがうと、高柳は持参していたナイフ一本で、男達と同じように上手く血抜き作業をこなしていた。
「こうやって締めて血を抜くと、長く持つし生臭さが減るんだよな。こうしてすぐ下処理した魚なら、物にもよるが保存食にもできるし、その日食べる分以上に獲れた時とかに便利だ」
「お前上手いじゃないか」
 ジャミルが感心したように言う。他の男達の目もそう言っているようだった。
「あぁ、一応これでも喫茶店の店主なんぞしてるんでな……こういうのは慣れてるんだ」
「へぇ~、ライセンサーってそんなことをしてる奴もいるのか」
「まあ、俺はそれなりの経営だけどな。魚、だいぶ獲れたな。良ければ……そうだな、この魚。この一匹を俺にくれないか?」
 高柳はジャミルのバケツを覗き込みながら、その目利き力で鯛のような魚を指す。
「ああ、まあ、お前も頑張ってくれたし、一匹くらい構わないが……」
「ありがとう」

 高柳は男達が見守る中、その魚をちゃちゃっとさばいて刺身にする。
「獲れたての魚をすぐにさばくととても美味しいんだ……生で食べられる魚に限るけどな。さぁ、食べてみてくれ」
「サシミってやつか」
 しかしジャミル達は魚を生で食べる習慣がないため、皆手を出すのを躊躇しているようだった。
「大丈夫だ、試してみてくれ。ほら」
 まず高柳が一切れ自ら食べてみせる。
「うん、やっぱり新鮮だから美味いな」
「………」
 美味そうに食べた高柳を見て、男達の中でも若い青年の心に競争心のようなものが芽生えたのか、
「俺、食べるよ!」
 意を決して一切れつまんでぱくり。
「……うまい」
「マジか! じゃあ俺も食べるぞ」
「俺も!」
 ジャミルや他の男達も刺身に食いつきだした。
「この醤油を少し浸けて食べてみても美味しいぞ」
 さらに高柳が用意していた醤油の小皿を出すと、それも好評だった。
「うん、こっちの方が美味いかも!」
「俺にもくれ!」
 刺身はあっという間になくなり、その頃には男達の高柳を見る目も変わっていたのだった。

「タカヤナギ、お前なかなか物を分かってる奴だ。見直したぜ! 今日はお前と漁ができて良かった!」
 村に帰る船上で、ジャミルは髭だらけの顔をほころばせる。
「あぁ、俺もいい経験だった」
 高柳が隣や後ろを漕いでいる舟の男達を見ると、皆満足そうに彼に手を上げたり、友好的な笑みを見せている。
(どうやらアズランの試験にパスしたようだな)
 と高柳は心中で独り言ちた。

●畑
 家の近くにあるという畑に向かったのは、ジュリア・ガッティ(la0883)と紅迅 斬華(la2548)だ。
「プロの知恵を借りたいのなら、本職の人間を雇った方が確か。それでも私達に手伝いを頼むってことは、見たいのは成果じゃなく、ライセンサーとしてではない、人間としての私達ってことかしらね」
 ジュリアは腰まで伸びた真っ直ぐな金髪を払って、ぱっちりした青い瞳を思慮深げに細めた。
 イタリア人女性であるジュリアは、さっぱりした姉御肌な性格をしている。美術にも関心があり、絵の腕前はコンクールで入賞したことがあるほどだ。
 まだ見ぬ綺麗な都市や美しい景色をナイトメアから取り戻したい、とジュリアは常々思っており、それはアフリカという地についても同じだ。
「なるほどです。ならばお姉さん達は精一杯お手伝いして、アズランの皆さんと協力したいんだっていう気持ちを知ってもらいましょう!」
 紅迅もポニーテールにした黒髪を揺らし、やる気満々にぐっと両の拳を握る。
 とにかくポジティブな紅迅は皆のお姉さんを目指し笑顔を絶やさない。古い歴史のある武家に生まれ、文武両道の教育方針で家事全般も得意でありつつ、歴代の当主を凌ぐ戦闘能力を身に付けた。
 紅迅の黒い目に、眼鏡をかけた青年とその隣に並んでいる4人の少年少女が見えてくる。
 畑の責任者ハリドと今日一緒に収穫をする子供達のようだ。

「僕はハリドと言います。この畑の管理責任者です。天気や害虫などに気を配り、できる範囲で最大の収穫ができるようにすることが僕の役目です」
「初めまして! 紅迅 斬華と申します♪ハリドさん! 本日はよろしくお願い致します!」
 元気いっぱいに、紅迅が覚えている礼儀作法を利用して挨拶する。
「私はジュリア・ガッティ。今日はしっかり手伝わせてもらうわ」
 ジュリアも挨拶すると、ハリドはよろしく、と返してくれたが、子供達は緊張しているのか人見知りなのか、もじもじとしていて彼女らとあまり目を合わせてくれない。
 きっとアズラン以外の人間と接する機会があまりないのだろう。
「早速ですが、今回はスティッキオ、ビーツ、スイスチャード、トマトベリーの収穫をしてください」
 とハリドはそれらが植わっている列の端に立って、手ぶりで示した。
「分かったわ」
「全力で頑張りますよぅ♪」
 ジュリアと紅迅はそれぞれ畑に入って行く。
「ほら、君達も頼むよ」
「はーい!」
 ハリドに言われて、子供達もハリドに続いて収穫に加わった。

「良い色……採れたてをサラダにしたら美味しそうね」
 ジュリアは色鮮やかに育った葉っぱのスイスチャードを抜いた。
 イタリア出身のジュリアには馴染みある地中海沿岸原産の野菜ばかりなので、収穫に適した大きさなどは経験上から目星は付く。
 それに加え、全体的に栽培の様子を見て気が付いたことなどを心のメモに記しながら、ジュリアは収穫をしていった。
「ふむふむ。育ってますね~」
 紅迅はビーツをいくつか抜いてみて、その育ち具合を見る。真っ赤にふくらんだ根の大きさには少々バラつきがあるようだ。
「やっぱり土ですかね?」
 自分なりに観察しながら、紅迅はてきぱきと収穫していく。その体の動きに無駄な所は一切ない。
 力まず重心移動と体重移動を上手く使い、体力消費を最小限に、かつ最大の力を生み出せる体の使い方だ。

 ある程度獲ったらカゴに入れて、また収穫して、という作業を繰り返しながらも、子供達はチラチラとジュリアと紅迅に視線を向けていた。
 ライセンサーである彼女達に実は興味津々なのだ。
 次第に二人の傍に寄って来て作業をしだす。
「ねえジュリアお姉ちゃん、このスティッキオはもうとってもいいかなぁ?」
「そうね、根元の幅が小指から親指くらいまでが目安よ。それはもう大丈夫」
「こっちのトマトベリーは?」
「トマトベリーは赤く熟して、触ってみて柔らかい感じだったらちょうど良いわね。ビーツは長く置きすぎると根が割れてしまうから、収穫遅れに注意よ。このスイスチャードは大きくなると苦くなるから、丈20センチくらいが理想ね」
 などと、ジュリアは子供達に収穫時期の野菜の特徴を教えてやる。
「おねーさんなんでも知ってるんだねー! ねえねえ、ジュリアおねーさんはどこから来たの?」
「私はイタリアから来たの。海を挟んで向こう側ね。この間は皆のリーダー、アイシャとも一緒にナイトメアと戦ったのよ」
「えーッ、そうなの!? すごーい!」
「何かカッコイイ技とかある!? その技でナイトメアをたおしたの!?」
「うーん……そういうのはないんだけど、私は絵が得意なの。他の国やグロリアスベースの景色を描いたスケッチ、後で見てくれる?」
「うん、見たいみたい!」
「あたしのこともかいてー!」
 子供達はジュリアに教わったり雑談をしながら、収穫を楽しんでいた。

「ザンカねーちゃん、もうこんなに獲ったの?」
「はえー!」
 少年達が紅迅のカゴがビーツで一杯なのを見て言った。
「ふふーん♪お姉さんは上手い体の使い方を知っているのです♪」
「おれにもできる?」
「もちろん♪そうだ、ハリドさんもどうですか? 仕事が楽になりますから、ぜひ! 何も力が強い必要はありません♪やってみせますので、よく見て真似してくださいね♪」
 まずはゆっくり、紅迅が足の運び方や重心移動の仕方をしてみせる。
「さ、同じように動いてみてください」
 ハリドは意外と素直に、子供と一緒になって紅迅の言う通りに真似して動いた。
「こうでしょうか」
「こうして、こう?」
「そうそう、皆さん上手です♪そしてテンポよく収穫ですよ♪」
 ハリドは二、三度繰り返しただけで上手くできるようになり、少年達もだんだん慣れてきたら楽に動けるようになったようだ。
「すごいね、こうやって収穫すると楽だし、いつもより早くできるよ!」
「確かに、疲れ方が違いますね」
 子供は当然のこと、ハリドもその効果に驚く。
「それは良かったです♪」
「あのさ、ザンカねーちゃんは何かすげー技とかあるの?」
「おっ、それ聞いちゃいます? ふふ~ん♪こう見えてお姉さんとっても強いんですよ♪後で見せてあげましょう!」
「ホント!? やったあ!」
「約束だよ!」
 紅迅は精神年齢が低いためか(?)、すぐに子供達と仲良くなった。

 和気あいあいとした雰囲気の中作業は順調に進み、収穫した野菜がみるみるカゴ一杯になっていく。
 ハリドも作業の傍ら、ちょいちょいジュリアや紅迅の仕事ぶりをのぞいていた。
「あなた達はこれらの野菜についてよく知っているようですね」
 二人に興味深そうな目を向ける。
 ハリドは彼女らのことを少し誤解していたかもしれない、と思っていた。頼まれたから仕方なく、ただ言われたことだけをやればいいと思っているのだろうと。
 しかし彼女達は真剣に、この畑仕事に取り組んでいるようだ。
「ええ、私には馴染みがある野菜なの。それで、この畑を見て気付いたのだけど」
 とジュリアが切り出す。
「なんでしょう?」
「収穫量は大事だと思うけど、もう少し間隔は空けたいわね……。近すぎても栄養の取り合いになって、共倒れしてしまうから」
「空けたつもりだったのですが、まだ空けた方がいいですか」
「そうですね。あと、間引きも必要ですよ。スイスチャードは発芽までは土表面を乾燥させないように水やりです」
 紅迅もアドバイスを付け足す。
「ビーツは石灰を撒いて、酸度がpH6.5~7.0にするのです。種は前日に水に浸しておくと育ちが良くなりますよ」
「ちょちょ、ちょっと待ってください。メモを取りますから!」

 ハリドは思いがけず専門的なアドバイスを聞き、真剣にメモしていた。
「スティッキオは苗なら堆肥と肥料を混ぜ合わせた土に植えると良いですよ。根を傷付けないように、種なら一か所に5粒程度ですかね。肥料は植え付けと同時に元肥を窒素を含む物がおススメです。日よけ対策なんかも時には必要になりますかね」
 いつもは口を開くと残念な印象が多い紅迅だが、今は的確なアドバイスがスラスラ出ていてそのドヤ顔も何だか賢そうに見える。
「なるほど……。肥料に窒素とか、土の酸性度とか、気にしたこともなかったです。とても勉強になりました。ありがとうございます」
 全てをしっかり書き留めて、ハリドは紅迅とジュリアに礼を言う。
 一見慇懃無礼なようにも見えるが、彼はただ真面目なだけで、ライセンサーに無闇に不信感を抱いていた訳ではなかったのだ。
「ハリドー! 獲った野菜、保存場所に置いて来たよー!」
 子供達が声をかける。これで今日の収穫は終わりなのだが。
「ねえねえ、ザンカねーちゃんにジュリアねーちゃん、海に行こうぜ!」
「さっき言ってたカッコイイ技見せてよ!」
「いいよね、ハリドさん!」
 子供達にせがまれ、ジュリアと紅迅が問いかけるようにハリドを見ると、ハリドはやれやれというように小さくため息をついて、
「いいですよ、いってらっしゃい。子供達はあなたがたのことを気に入ったようですね。僕はまだ仕事が残っているので、彼らの相手をお願いしていいですか?」
「お任せください♪」
「ええ、大丈夫よ」

 ということで、紅迅とジュリア、少年少女達は海岸までやって来た。
 今はちょうど男達が漁に出ていて、沖合に浮かぶ小舟が見える。
「ふむふむ。あそこにある流木が良さそうですね♪」
 紅迅は砂浜に打ち上げられている大きめの流木に目を止めた。
「それじゃあ、離れててくださいね!」
 七剣星『オルタナ』を構え、精神を集中する紅迅。子供達は固唾を飲み紅迅に視線を注ぐ。
「いきますよ! これが壱式『空』♪!!」
 首刈術壱式『空』を繰り出した。
 不意にオルタナが閃いたかと思うと、離れた所にある流木がいきなり真っ二つに斬れ、その周囲の砂がぶわっと巻き上がった。
「どうですか? かっこいいでしょー♪」
「すげーっ!!」
「さわってないのに切れた!」
 わっと子供達の歓声が上がり、紅迅を取り囲む。
 これ以上砂浜を荒らすのは忍びないし、他にスキルを使えそうな場所もないということなので、その後紅迅は歌の上手さを生かして子供らと一緒に歌ったりして遊んだ。
「あ、これジュリアお姉ちゃんがかいた絵っ? すごい、うまーい!」
「ふふ、ありがとう」
「うわー、グロリアスベースって、こんな所なんだ!」
 どの国の子でも無邪気に遊んでいる子供は可愛らしい。
 ジュリアはそんな子供達の様子をスケッチし、彼らとの思い出を残すのだった。

●家事
 三つの家の裏にある物置小屋では、恰幅のいい女性がライセンサーを待っていた。
「ハロー、SALFライセンサー兼モデルのユリアよ。今日はお手伝いをさせてもらうわ」
 長い金髪をなびかせて、一分の隙もない姿で歩いて来たユリア・スメラギ(la0717)が挨拶した。
 ユリアは日米のハーフで、その遺伝子の良い所ばかりが発現したような美貌と豊満なスタイルを己自身も自慢にしており、美しくあることに強いこだわりがある。
 最近はライセンサー活動を通してモデル業の方でも知名度が上がり、恋人ともラブラブらしい。
「Iは桜壱といいます! よろしくです!」
 ショートカットのためか少年にも少女にも見える桜壱(la0205)も、ぺこりとお辞儀する。
 桃色の髪に、口ほどにものを言うオッドアイ――桜色の右目と、感情に応じて画像を映す左目が特徴だ。
 二人の挨拶を受けた女性は鷹揚にうなずいた。
「あたしはアヤ。この物置の中に洗濯機が三台あるから、皆の汚れ物を洗ってちょうだい!」
 アヤが小屋の戸を開けると、アズランの若い女性3人が皆の汚れ物で満載になったカゴをいくつか持って来て、二人の前に置いた。
「あ、皆の下着類はあたしらが洗うから、その他を洗って。で、干す場所はこっちの日当たりのいい場所でね。それが終わったら全部の家のシャワー室とトイレ、キッチン周りの掃除もよろしくね」
 アヤ達女性4人がにこりと笑うと、桜壱は張り切って、
「家事ですね! ふふふ、お任せください! 何たってIは一応家事支援型アンドロイドなのですからっ!」
 ヴァルキュリアの桜壱は元々高齢者の介護から生活支援を目的として作られたため、洗濯や掃除といった家事は得意なのだ。
「それじゃ、早速始めちゃいましょ」
「むむむ、腕がなりますね……!」
 桜壱とユリアは腕まくりをし、洗濯物を見下ろした。
「まずはネットや手洗いの物がないかIが見ますので、ユリアさんはどんどん洗濯機をまわしてください」
 と桜壱が服のタグを見て行く。
「オッケーよ。アヤさん、洗剤はこれを使っていいのかしら?」
 ユリアは気にする必要のない(ほぼ古着のような服ばかりだった)TシャツやくたくたになったGパン等を洗濯機に入れて、スイッチを押した。

 三台ある洗濯機のうち、一台はアヤ達アズランの女性が下着類洗いで使うので、桜壱とユリアはニ台を交互に回して脱水が完了したらすぐに外に干す。
「ハンガーとピンチハンガーは主婦の味方なのです!」
 桜壱はハンガーを使い分け、上服、下服、靴下、その他の種類別に干していた。
「こうすれば取り込みやすく、畳む時も便利ですよ! 大人数の洗濯物を畳むのはとても手間ですから、収納場所を種別ごとに箱で区切って、そこに畳まず放り込んでいく方針にすると家事をする人の負担が減り、種類も混ざらないから収納も乱れないです!」
「はぁ~、なるほどねぇ! あんた、さすが家事支援型って言うだけあるね!」
 一生懸命に説明する桜壱に、アヤは思わず感心している。
「こういうパーカーなんかは、逆さにすると風が当たりやすいと言うわ。あと、厚手の服は裏返しにして干すと乾きやすいわね」
 ユリアも実践しながら手際よく服を干し。
「あたしら、そんなこと気にしないで干してたわね」
 アズランの若い女性達が照れくさそうに言い合っていた。
「下着の場合は、ここを留めると型崩れしにくいわよ」
 ユリアはモデルという仕事柄、女性用下着の長持ちする洗濯方法や干し方を若い女性達に教え、その長けた話術の成果があったようだった。

「次は掃除だね。何か必要な物があったら言ってちょうだい」
 アヤに言われ、ユリアはまず三つの家の間取りを確認した。
「間取りは全部同じみたいね。桜壱ちゃん、手分けしてやりましょうか」
「了解です! じゃあ、Iはこの家をやりますね!」
 桜壱は一番手前の家に入り、おそらく女性陣もあまりしたくないであろうトイレから掃除を始める。
「水回りの掃除は大変ですものね!」
 基本に忠実に、掃く、拭く、整頓するを徹底する。
「一番の時短はIのようなアンドロイドを導入することです」
 拭き掃除をしながらふふん、と桜壱は得意気だ。
「ホントにそうね~。ウチにもあんたみたいな優秀なアンドロイドを買える余裕があればね~」
 隣のシャワー室を掃除していた若い女性が、苦笑して桜壱に応える。
「大丈夫です! また掃除が大変になったら、いつでもSALFに依頼してください! きっと誰かがお手伝いに来てくれますから!」
「あら、頼もしいわね」
 ふふふ、と女性は微笑みシャワーで洗剤を流す。女性達はあどけなくて一所懸命な桜壱にすっかり好感を抱いているようだ。
「あ、ここはIが拭いておきます。面倒でも、使用した後軽めに拭いておくだけでも、汚れるスピードがぐんと違いますよ!
「よく知ってるのね~。皆にそういうルールを徹底してもらおうかしらねぇ」
 桜壱がシャワー室の壁を拭きつつアドバイスして、キッチン周りの掃除にも精を出した。

 ユリアもアヤと協力しながら、今までに培った家事能力を発揮して掃除をこなす。
「ますは、よく掃除する場所に余計な物を置かないことにするのが良いと思うわ。例えば、こういう物ね」
 キッチン周りなのに関係ない物が入った箱をどかしつつ、ユリアが一緒に掃除しているアヤに言う。
「置き場所がなくてねぇ、つい分かりやすいとこに置いちゃうのよね」
 アヤはあまり細かいことを気にしない性格なのか、あはは、と笑った。
「その気持ちも分かるけど、掃除の度にどける必要があると、やるのも億劫になるでしょ。そういうのは押し入れとか収納場所にまとめましょ」
「確かに、あんたの言う通りだね」
 ユリアはアヤに聞いて中身を使う頻度に分けて、あまり使わない物を扉の付いた戸棚の中に、よく使うものは手近な棚にしまった。
「曜日ごとに掃除ポイントと掃除時間を決めておくのはどうかしら? 全部を毎日掃除するんじゃなくて、よく使う場所は毎日、あまり汚れない場所は特定の曜日にやるとかね」
 シンクを掃除しながら提案するユリア。
「あと、フロアワイパーを一つ買っておくと便利よ。ほら、ここは大体フローリングだから、部屋の隅にでも置いておけばすぐ使えるし、移動の最中に床掃除できるでしょ」
「いいね、それ。そうすれば誰もが掃除できるわね」
 ユリアの意見をアヤはうなずきながら聞いていた。
「あんた、意外と家庭的なんだね。洗濯の時もそうだったけど、掃除の仕方もちゃんとしてるし、色々のアドバイスもためになったわ。参考にさせてもらうよ」
「お役に立てたのなら良かったわ」
「……あんた、モデルをやってるって言ってたけど、そんな綺麗ななりをして、本当は戦う必要なんかないんだろ? なのにどうしてライセンサーやってるんだい?」
 唐突にアヤに尋ねられ、ユリアは長いまつ毛が縁取る茶色の瞳をわずかに見開いた。
 アヤの顔は穏やかだったが、その目はユリアの本心を見逃すまいとしているかのようだ。
 ユリアの雰囲気がふっと愁いを帯びた。
「……長い間、この世界にナイトメアの脅威にさらされない場所はなかった。あたしも、奴らのせいで弟を失っているわ」
 誰よりも愛していた弟を失い、復讐心で一杯の時もあった。
 アヤは少し同情の色を見せたが、黙って聞いている。
 自分の偽りない気持ちを伝えるため、ユリアは真っ直ぐにアヤを見つめて言葉を紡いだ。
「ニュージーランド、ロシア、太平洋のインソムニアが崩壊して……やっと、SALFもアフリカの人類奪還へ本格的に手が届くようになったってところ。あたしも、それをさせてもらうつもり。……ライセンサーだった弟の代わりに、この星の守護者として、ナイトメアを滅ぼすために」
「………」
 二人はしばし見つめ合った後、アヤの表情が和んだ。
「あんたの気持ちは良く分かったよ」
 豪快にバン、とユリアの背を叩くと、外から桜壱の声が聞こえてきた。

「アヤさん、ユリアさん、Iの方は終わりました~!」
 三つ目の家は二人のアズラン女性が掃除したので、これで手伝いは完了ということになる。
「アヤさんも皆さんも、疲れたんじゃないですか? Iが体の具合をチェックしてあげます!」
 桜壱が学んだ医療の知識をもとに、女性達の腰やひざの様子を診た。
「あぁ、皆さん腰も肩も凝ってますね。アヤさんはひざも痛いんじゃないですか?」
「よく分かったね。そうなんだよ」
「家事は足腰に負担かかりますものね。痛みを軽くするための体操を教えますので、やってみてください」
 桜壱は女性達に体をほぐす簡単な体操を丁寧に教え、女性達は体が軽くなったと桜壱に感謝していた。

「二人共、今日は手伝ってくれてありがとうね!」
 アヤや若い女性三人が、ユリアと桜壱に礼を言う。アズランの女性陣はとても満足そうだった。
「色々掃除の知恵や体操なんかも教えてもらって、本当に助かったよ。あんた達のことが少しでも分かって良かった」
「Iは人とそれに連なるモノを助け、守り、支えるためにいますから! 当たり前のことをしたのです!」
「あたしも、アズランの皆さんのお手伝いができて良かったと思うわ」
 アヤ達と桜壱、ユリアはお互いに認め合ったのだった。

●誠意と信頼
 ライセンサー達は、仕事を始める前と同様、まとめ役の年長の男と向き合っていた。年長の男の後ろには、ジャミルと青年達やハリドに子供達、アヤ達女性陣が並んでいる。
「今日は皆ご苦労だった。仕事の責任者達から、君達の仕事ぶりを詳しく聞いたよ」
 高柳達ライセンサーは、アズランがどういう判断を下すのかと若干緊張気味にその先の言葉を待つ。
 年長の男は硬い顔つきで告げた。
「全員、君達の働きにとても満足している。誠意ある者達だという報告を受けた」
 ぱっと、桜壱や紅迅の表情が明るくなる。
「我々はSALFと協力し、共に戦うと誓おう。これからもよろしく頼む」
 ようやくその顔に微笑みを浮かばせた年長の男が、す、と右手を差し出した。

 今日の『仕事を手伝う』というのは、ライセンサーのアズランに対する誠意を見るだけでなく、おそらくはライセンサーを信頼しきれていない仲間に納得させるための、『同じ釜の飯を食べれば仲間』的な、儀式のような意味もあったのだろう。
 そしてそれはアズランの期待を上回る結果だった。
「こちらこそ、よろしく」
 高柳はしっかりと年長の男の手を握り返した。
「分かってもらえて嬉しいのです!」
「共にアフリカを奪還しましょう」
 桜壱とユリアも男としっかり握手を交わす。
「私達を認めてくれてありがとう」
「皆で頑張りましょう♪」
 ジュリアと紅迅も嬉しそうに握手して、

 ライセンサーはアズランの信頼を得ることに成功したのだった。

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