オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
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  3. 【果冠祭】ペイントパフォーマンス

【果冠祭】ペイントパフォーマンス アウトサイダーK

形態
イベント
難易度
易しい
価格
500
ジャンル
日常 
参加人数
111~25人
予約人数
10010100
基本報酬
90000G
90SP
900EXP
おまけ報酬
10000G
相談期間
3
締切
2019/09/02 16:00
完成予定
2019/09/12 16:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●地中海に浮かぶ

 ナイトメアによって壊滅し、国という形を維持するのすら困難な『エオニア王国』
 国を背負う幼い王女は、考えた。
 途絶えている祖国伝統のお祭りを復活させられないか、と。
 国主が前に出て、明るい話題を供する事が大事なのだ。
 この国の未来は続いていくのだと示す必要があるのだ。

 もともとの祭りと同じものは出来ない。
 例えば、果物を大勢でぶつけ合うメインイベント。食べ物を無駄に出来るほど、国の財政は豊かではない。有り体に言えばむしろ貧乏だ。


 ――ぶつけるものは、ペイント弾。
 使われるはずだった果実は、沢山の料理に変えて皆で食べればいい。

 ――ここは今やSALFの前線基地。
 古きに拘らず彼らにとっても楽しいものにするべきだ。

「我と共に、全員が参加者になれる楽しい祭りを作っては貰えませぬか」



●いざ、インクを手に

 快晴に恵まれた祭りの中で、盛り上がりを見せている場所があった。

 用意されているものは、壁面とそれに貼られた大きな紙がたくさん。そしてインクと絵筆など。
 ペイント弾をぶつけ合うメインイベントのためにインクを作ったのだが、それが余ったためにイベント会場の廊下に急遽設けられたキャンバス。
 申し込みさえすれば、自由に何かを描くことができる。
 たったそれだけの場所。

 そんな所も、祭りに参加した人達の手にかかれば綺麗な花が咲く。

 既に完成した作品もあれば、今まさに描かれている最中のものも。
 黙々と丁寧に描いている人もいれば、派手な動きで大胆に描く人もいる。
 通りかかった人々は、思わず足を止めて制作過程に見入っていた。

 このペイントイベントを企画した祭りの関係者は、さらにここを盛り上げようと、きみ達にペイントパフォーマンスを依頼した。
 各々の「武器」を手に、きみ達は――。

●目標
 ペイントパフォーマンスで観客を楽しませる。

●状況
 日中、晴れ。
 場所はイベント会場の広く長い廊下。

 紙面は縦2.5 m、横10 m。廊下の壁に貼ってある。

 少々過激なことをする場合でも、周囲を透明なビニールで覆ってインクの飛沫がかからないようにできるので、観客に悪影響はない。

●使用可能な道具
・インク……様々な色がある。
・絵筆……標準的な大きさのものから、人の背丈ほどある大きなものまで。
・水鉄砲……中にインクを装填して発射可能。

 その他、絵画に必要とされる物は何でも揃っている。
 汚れてもいい作業服も貸し出し可能。

 何を描くかだけでなく、どのように描くかもポイントです。
 参加者全員で1つの紙に作品を描くことを推奨しますが、別の紙で描きたい場合はプレイングに明記してください。

 では、お祭りをお楽しみください。

  • 人魚の揺り籠
    そよぎla0080
    人間15才|ネメシスフォース×セイント

個人作品。

偶然見かけた会場で、なんとなく気が向いたから書いておこうと思った。
そんな感じで1頭の馬を書きます。

書くのは見事な栗毛色で脚部がとくに発達した、赤いマフラーを首に巻いた道産子馬。
名前は「George(ジョージ)」。良い名前だろう。出来た馬なんだよ。知らないだろうがな。

折角だから絵筆を借りて本気で描いていく。
上手くは描けないかもしれないが‥‥まあそれなりの出来でもいいさ。

  • 人を助けるヴァルキュリア
    桜壱la0205
    ヴァルキュリア10才|セイント×ゼルクナイト

「I、知ってます!ゲームでやりました!(んふふ!

●目的
派手で楽しいパフォーマンスをしながら、凄い絵を皆で描きますっ

●準備
大きい水鉄砲:空気の貯具合で絵具の勢いを調節できる
絵具:赤と白を混ぜ合わせた桜色、補充&色味調節用に赤白は沢山確保しておく

●行動
「ここが!Iの陣地ですっ!
「どうですか?ど派手に決まりましたか!?
紙の上の隅っこの辺りに、水鉄砲で桜を描く
頑張ってかしゅかしゅと空気を貯めて、花びらっぽく見えるように強めに絵具を命中さして飛沫が広がる様に
パフォーマンスとして地味であれば、絵具が紙にぶつかる度に雨雫を使用し桜の花びらのように演出できないか試みる

アドリブ、絡み歓迎
白いシャツで動きやすい格好を
絵筆を手に、合作の花を描いていきます
水鉄砲で打ち出されたインクの形に合わせて、花弁で一枚一枚包んでいきます
私が描くのは架空の花
柔らかく揺れる花弁は、透けるように薄くインクを重ねて鬼灯のように色を包みます

気付けば、服もすっかり色付いてしまいました
多種多様の花、多くの個性が集まって幸せな国となりますようにと願いを籠めて
私も画廊で、皆さんに一筆ずつ入れて頂くキャンバスを設置しています
多くの人の筆が入る絵というのは、とても素敵な作品になりますから…楽しみです

  • 四つ葉の白い花
    cloverla0874
    ヴァルキュリア17才|ゼルクナイト×セイント

>行動
色取り取りのインクを水鉄砲に入れ、紙面にどんどんインクを飛ばしていく
出来るだけ色はばらけるように気を付けてみる

張り切っておっぱいを描きましょー!!(終始超爽やかな笑顔で)
…って、言うのは冗談でぇ…
ええ、クロ君はちゃーんとわかってます
空気読んで今回は、おっぱいを事前にたくさん描いてきました!
だから今の俺は、煩悩とは無縁っ!!

巨乳のおねーさん達のお役に立てるなら!
クロ君はインクまみれになってもおっけーなのだっ!
綺麗可愛い花をいっぱい描いちゃってくださいなーっと♪

※アドリブ可

【目的】
ペイントパフォーマンスで観客を楽しませる

【心情】
楽しんでやりましょう。でないと見てる人も楽しくないもの。

【行動】
「さあ、張り切っていきましょう!」
アズラ(la3282)達と合作のペイントパフォーマンスを行う。
水鉄砲でキャンバスにインクを飛ばす役と、飛ばされたインクを
絵筆で「花」に仕上げる役に分かれ、紙面一杯の花を描いていく。

自身は絵筆の役、太い絵筆を使って飛ばされたインクに花の輪郭、
バラ、スミレ、ヒマワリ風など次々と花びらを描いて仕上げる。
テンポ良くスピーディに、インクの飛沫に汚れても気にせず描く。
「皆さん、ご観覧ありがとうございましたー!」

「たくさん描く」
「邪魔はさせない」
カンバスに沢山の撫子の花を描く。ただし、絵画は好きだが得意ではないためモタモタ描く。
企画の趣旨をペイント陣取りか何かと勘違いしており、花を描きつつ水鉄砲からキャンバスを守る。
横10mのキャンバスを2sqとし、射線の妨害(不可能ならばアーリーガード)でがっちり守る。4ラウンドに1回ロードリーオーラも使用。
ペイントまみれは気にしない。目元はゴーグルでガード。

【世間知らs】三人で参加
第二段階を担当

第二段階──テーマの決定
テーマは賑やかさと力強さ
人々の姿を描きたい
作品を見た人達が明るい気持ちになるように
サンニが作り出したカオスに描き加えて世界を描き出す
カオスを上書きするのではなく、活用する
ナイトメアと戦うライセンサーは絶対入れたい
他には生活する人々の姿、明るく笑う王女の姿
街、山、海、空、花、動物、太陽、月、星
現実離れしていてもいい、楽しければ
たくさんの住人をこの世界に描こう
「混沌に方向性をつけて世界が生まれる。感動的だ……」

描くべきものをすべて描いたと思ったら、浩志に交代

🌷準備🌷
「Painting スルデス?
汚れてもいいようシンプルな白のワンピースにビーチサンダルで参加
髪の毛はアップにまとめタオルでガード。その上から麦わら帽子被って見た目フォロー

🌷行動🌷
「Live drawingデス!
サイトで動画を見かけて、ちょっとやってみたかった
いい機会だし参加する
絵を描くのは好きだけど、別に上手くはない

「Laleト……Sunflowerデスネ
筆を持ってペイント銃の跡を花の絵に仕上げていく
Lale(チューリップ)はトルコの国花、ヒマワリは単に好き

【世間知らs】三人で参加
第三段階を担当

第三段階──秩序の構築
描かれた世界の完成度を増す
線を太くしたり、効果線をつけたり、小物を書き加えたり
描きたいものを強調
「何をするか判ってればそれなりにできるんだよな俺は……」
最終的には生き生きとしたたくさんの人々の姿が描かれるはず
色鮮やかな世界で、咲き乱れる人々の生
苦しいことはたくさんある
だけど強く、笑って生きよう
この世界で自分達はそれができるはず
カラフルな世界は
絶望一色に染まることはないから

そんな三人の祈りを込めて

【世間知らs】三人で参加
第一段階を担当
「みんな、しあわせ。だいじ」

第一段階──カオス
様々な色のインクをぶちまけて混沌を楽しむ
鮮やかな色合いで、たくさんの色を使って
形を描かずに
無秩序に水鉄砲を撃つ、直接ペンキを指に付けて出鱈目に線を引く
そうして自然に現れる形をみる
「はじめに、こんとん、ありき」
「……そういう、こと?」
ミメッティスに確認する
意味は判っていない
思う存分インクをぶちまけたらミメッティスに交代する

●紙面に花を咲かせましょう

 ライセンサーがペイントパフォーマンスを行うらしいと聞き、廊下のキャンバスの周りにはちょっとした人集りができていた。
 ナイトメアと戦う戦士達なのだ、さぞ厳めしい絵ができるのだろうと、観客にはやや堅苦しい空気が流れている。

「張り切っておっぱいを描きましょー!!」

 そんな気配を知ってか知らずか、clover(la0874)がとても爽やかな笑顔を浮かべながら叫んだ。

「……って、言うのは冗談でぇ……。ええ、クロ君はちゃーんとわかってます。空気読んで今回は、おっぱいを事前にたくさん描いてきました! だから今の俺は、煩悩とは無縁っ!!」

 人好きのする笑顔を浮かべたまま、cloverは拳銃タイプの水鉄砲を構える。
 半透明の銃に籠められているのは黄色のインク。
 引き金に指をかける。
 黄の奔流が広い紙面に点々と色を付ける。

「巨乳のおねーさん達のお役に立てるなら! クロ君はインクまみれになってもおっけーなのだっ! 綺麗可愛い花をいっぱい描いちゃってくださいなーっと♪」

 黄色のインクを撃ちきると、それを持って来ていた袋に片付ける。もう一つの袋から今度は赤色のインクが充填された水鉄砲を取り出し、どんどんインクを飛ばしていく。
 袋の中には色取り取りのインクを詰めた水鉄砲が入っている。紙面の色ができる限りばらけるようにという彼なりの心遣いだ。


「さあ、張り切っていきましょう!」

 cloverに負けず劣らず元気な声を上げたのはジュリア・ガッティ(la0883)。絵を描くことが好きな彼女にとって、この場はまさに晴れ舞台。
 太い絵筆を持った彼女は、水鉄砲から飛ばされたインクに花の輪郭を与えていく。

 黄色のインクは明るいヒマワリに。
 赤いインクは美しいバラに。
 紫のインクは凜としたスミレに。

 ジュリアの絵筆は広い紙面を縦横無尽に走る。
 テンポ良く、手際良く、色に花びらという形を付与する。

 スピードを重視しているため、水鉄砲の飛沫が服にかかることもある。
 しかしジュリアは汚れても意に介さない。
 金色のロングヘアをなびかせながら、次々と花を生み出していく。

 なお、このインクは元々ペイント弾としてぶつけ合うために作られたものだ。それゆえ体に付着しても害はなく、後から綺麗に洗い流せるため心配ご無用。


 アズラ・サート(la3282)はその様子を楽しそうに眺めていた。

 彼女は汚れてもいいように、シンプルな白のワンピースを着てビーチサンダルを履いている。
 アップに纏めてタオルでガードしている髪の毛は、上から麦わら帽子を被っているため見た目の面も可愛らしい。

 ジュリアの手並みを参考にして、アズラも絵筆を手に水鉄砲跡から花を描き始める。

「Live drawingデス!」

 アズラはサイトでそういう動画を見かけて、自分でもやってみたいと興味を持っていた。
 絵を描くことへの情熱なら、アズラはジュリアにも負けていない。

「Laleト……」

 赤色のインクを、絵筆でlale(ラーレ)ことチューリップの形にする。
 チューリップはアズラの生まれ故郷、トルコの国花だ。

「Sunflowerデスネ」

 黄色いインクはヒマワリに変わる。アズラの好きな花が、この絵を見る人達にも愛でてもらえるように。

 彼女の技量はそれほどでもないが、可愛らしい格好をした女の子が明るく花を描いていく様子は観客を和ませた。


 水鉄砲と絵筆の共同作業により、白いキャンバスに次々と花が咲いていく。
 何より楽しそうに描くライセンサーの様子により、観客は知らず知らずの内に笑顔になっていった。



●混沌より出でし秩序

 花が次々と咲いていくキャンバスよりも一回り小さな紙の前に、3人のライセンサーがやって来た。
 浅からぬ縁で結ばれた、サンニ ガムドラオン(la3759)、ミメッティス デカルト(la2901)、加津佐 浩志(la3758)の3人だ。

 サンニは小さな体で2人を見上げ、アイコンタクトを取り、こくりと頷く。

「みんな、しあわせ。だいじ」

 打ち合わせ通り、まずは彼女が先陣を切る。

 水鉄砲のカートリッジにインクを詰めると、紙面へめくらめっぽう撃ち始めた。
 どのように紙へインクが乗ろうがお構いなし。
 カートリッジを交換して色を変え、様々な色を無秩序に散らす。

 水鉄砲を撃つのを止めたかと思えば、サンニは直接インクに指を付けた。
 サンニにとっては縦にも横にも広い紙面に対し、時には飛び跳ねながら、でたらめに線を引く。
 縦に。横に。斜めに。比較的真っ直ぐな線もあれば、くねくねと曲がりくねった線も。
 カラフルに色を使うことだけは気にしているが、それ以外は何も考えずに表現する。

 サンニは興奮していた。
 まず彼女は祭りに参加すること自体が初めてだ。多くの人が集まり、その誰もが楽しそうにしている空気は彼女に伝染している。
 その上、彼女は王女の演説を聴いた。
 ――我と共に、全員が参加者になれる楽しい祭りを作っては貰えませぬか。
 サンニはその言葉に感動した。皆が参加できる祭り。それはとても素敵だと。

 だから、サンニは小さな体から溢れる興奮のまま、混沌とした「世界」を描く。
 紙面の端から端まで何かしらの色をぶちまけて、ようやくサンニは手を止めた。

 少し離れた位置で静観していたミメッティスと浩志の所までとことこと近付く。

「はじめに、こんとん、ありき。……そういう、こと?」

「そうだ」

 サンニがミメッティスに確認すると、ミメッティスは仮面の後ろで目を細めながら答えた。
 サンニがその言葉の意味を理解していないことはミメッティスも分かっているが、いつか分かればいいのだ。今日の経験は理解の芽になるだろう。


「さて……次は私の出番だ」

 絵筆を手に、ミメッティスが紙面の前に立つ。
 サンニの生み出していくカオスを見ながら構想を考えていたミメッティスは、躊躇することなく「世界」を描き出していく。

 でたらめに引かれた線が、その線の色と形を活かして、この島固有の果物ミーベルの実った畑、豊かな海、明るい街に変わっていく。水鉄砲のインクの細かな跡一つ一つが、人々の姿に変わっていく。
 賑やかに生活するエオニア王国の人々だ。

 サンニが指で引いた桃色の線が、豪奢なドレスになる。ハニーブロンドが美しいハーフアップのツインテールを描き足す。
 明るく笑い国民を見ている、齢10歳のパルテニア王女が紙面に現れた。

 水鉄砲が一所にいくつも散らした赤色を背景に、ナイトメアと戦うライセンサーが描かれる。
 ライセンサーは国民達と王女を背にしている。何を守るために戦っているのかは明白だ。

 細かなインクの飛沫は、紙面上方のものは太陽や月、星に。下方のものは花や動物に変わっていく。

 全体として空想的で楽しげな雰囲気の絵となった。

「混沌に方向性をつけて世界が生まれる。感動的だ……」

 満足げにミメッティスは呟いた。
 ミメッティスが気を付けたのは、カオスを上書きするのではなく、活用すること。
 この絵はサンニの描いた混沌を最大限活かしている。

 サンニの描く混沌を小さな女の子のやっていることだからと微笑ましく見ていた観客は舌を巻いていた。
 でたらめな線や点にしか見えなかったものが、今はそれぞれ意味を持った絵となっている。


 ここで選手交代。三番手の浩志が前に出た。
 彼の役割は秩序の構成。方向性を得た「世界」の完成度を増すこと。

 王女の輪郭線を太くし、王冠や頬の赤みを描き加えた。
 王女がより活き活きと目立ち出す。

 国民やライセンサーも、衣服や持ち物で一人一人の個性を出していく。
 ミーベル畑にいる人は籠を持った。
 海の近くにいる人は魚を手にする。
 街にいる人は鮮やかな衣服を身につける。
 ライセンサーは剣や銃などの形をしたEXISを振るう。

 海のうねりや、ナイトメアに振り下ろされるEXISの軌跡を効果線として描き加える。

 花は、この国で咲いているのを見かけたブーゲンビリアの形にする。

「何をするか判ってればそれなりにできるんだよな俺は……」

 自己分析をぼやきながらも、浩志は手を休めない。
 「世界」が鮮やかさを増していく。

 サンニとミメッティスもそうだが、浩志も特に描画能力に優れているわけではない。
 それでも非常に真面目に取り組み、一切手を抜かずに細部を描き出した。

 浩志は手を止め、大きく息を吐く。
 サンニとミメッティスの所まで下がり、キャンバスの全体を見渡した。

 色鮮やかな「世界」で咲き乱れる、エオニア王国で生きる人々の姿がそこにあった。
 誰もが明るく力強く生きている。

 ナイトメアによって一度は壊滅させられたこの国は、祭りができるほど復活したとはいえ、苦しいことはたくさんある。
 それでも心の強さを失わず、笑って生きてほしい。
 カラフルな世界は、絶望一色に染まることはないから。

 3人は心の中でそう祈りながら、自分達の描いた絵を静かに眺めた。



●インクバトル?!

 花が次々と咲いていく広いキャンバスの前。
 桜壱(la0205)は小さな体で大きな水鉄砲を持った。

 水鉄砲に装填するのは、赤と白を混ぜ合わせて作った桜色のインク。
 美しい色味になるよう、ジュリアにアドバイスをもらいながら自分で調合した。

「I、知ってます! ゲームでやりました!」

 楽しそうにんふふと笑いながら、かしゅかしゅと水鉄砲に空気を溜めていく。
 段々と水鉄砲の抵抗が強くなっていくが、そこは頑張った。

「ここが! Iの陣地ですっ!」

 準備が整い、水鉄砲を構え、強めに断続的にインクを発射。
 紙の上方の隅っこ辺りに、桜色の飛沫が広がる。
 桜色の点が点々と広がり、まさしく咲き乱れる桜の花のようだ。

 インクを放つ合間に、桜壱は福音の雨雫を降らせる。
 イメージの癒やしの雨は、桜壱の思いによって桜色に色付いた。
 それはまるで、散りゆく桜の花吹雪。

「どうですか? ど派手に決まりましたか!?」

 かっこよくポーズを決めてみる。
 観客は美しく可愛らしい演出に拍手を送った。


 続けて桜を描こうとした桜壱のインクを、小柄な体が代わりに浴びた。
 誤射ではない。遅れてやって来た撫子つなみ(la1615)が自ら飛び出し、紙面を「守った」のだ。

 彼女はこのペイントパフォーマンスを少し勘違いしていた。
 水鉄砲から紙面を守りつつたくさんの花を描く、ペイント陣取りだと。
 そのため、つなみは目元をゴーグルで守り、たくさんインクを浴びても花を描くのには支障がないようにしている。

「邪魔はさせない」

 つなみは本気だ。
 ゼルクナイトとして普段はナイトメアを引きつけ味方を守る能力を、今は水鉄砲からキャンバスを守るために遺憾なく発揮する。

 アリーガードを使い、キャンバスの端から端まで素早く移動。
 体がインクまみれになることを気にせず、水鉄砲を代わりに浴びる。

 さらに水鉄砲役の桜壱とcloverに対してロードリーオーラを仕掛けた。

「勝負ですね!」

 桜壱は抵抗力が高いためスキルそのものは効果なかった。
 しかしその手のゲームをプレイしているだけあり状況を把握し、自主的につなみとの陣取り合戦を始める。

「インクまみれになってもしらないぞー?」

 つなみに視線が引っ張られたcloverは、どうせ見続けるなら巨乳のおねーさんがよかったなと思った。
 仕掛けてきたのはつなみであるため、遠慮なく彼女へ水鉄砲を放つ。

「たくさん描く」

 つなみはインクを身に浴びてキャンバスをガードしながら、ナデシコの花を描き出す。
 彼女の名字と同じ名を持つ花だ。
 絵画は好きなので苦ではないが、得意なわけでもないため一つ描くのにも時間がかかる。
 それでも心を込めてたくさんのナデシコを描く。

 だが、同時に2つのことをするのは無理があったか。
 つなみはインクに足を滑らせてすっころんだ。

 桜壱は左目に「!」を表示させ、慌ててつなみを助け起こす。
 幸いにもつなみはしっかり受け身を取ったため、大事はないようだ。


「ワオ。ミンナ、ゲンキ」

 アズラはバトルを見て、思わずそう感想を述べた。

「ええ、本当に」

 静かに微笑みながら来栖・望(la0468)が応じる。

 白いシャツを着て動きやすい格好をしている望は、目をキャンバスの方に戻す。
 つなみが大部分を防いだとは言え、細かく散ったインクの飛沫は白い紙の至る所に色を与えた。
 これを花にすべく望は絵筆を動かす。

 望が描くのは地球のどこにも存在しない架空の花。
 水鉄砲で散らされたインクの形に合わせ、それぞれを花弁で包む。
 丁寧に一枚一枚花弁を描いて、水鉄砲のインクを包みこむ。
 透けるように薄い色で重ねられる花は、決して包んだ色を殺さない。優しく内包する。
 まるでそよ風が吹いているかのように、望の花は柔らかく揺れて見えた。


 こうして、6人の合作の花はキャンバスに咲き誇った。
 色も様々、種類も多様な、明るく美しい花畑が紙面にできている。

「皆さん、ご観覧ありがとうございましたー!」

 ジュリアの明るい声を契機に、観客から万雷の拍手が送られる。
 水鉄砲で飛ばしたインクを絵筆で整えて花にするというパフォーマンスは、観客が見ていても楽しいものだった。

 ふぅと息を吐いた望が自分の服を見ると、キャンバスと同様、すっかり色付いていた。
 まるで自分も作品の一部になったかのようだ。

 望はグロリアスベースにある画廊で、訪れた人に一筆ずつ描いてもらうキャンバスを設置している。
 真っ白だったキャンバスが、様々な人の自由な発想によって色と形に満ちていくのを楽しい気持ちで眺めていた。
 それゆえ彼女は、多くの人の筆が入る絵がとても素敵な作品になることを知っている。
 この絵も期待通り、いや期待以上に素晴らしい絵となった。

(多種多様の花、多くの個性が集まって幸せな国となりますように)

 花を描きながら願っていたことを改めて心の中で呟き、望はそっと目を閉じた。



●平和な世界を駆け巡る

 ケヴィン(la0192)は自分が兵士だと自認している。
 そんな彼が祭りに足を運び、偶然見かけた会場で絵筆を借りたのは、何となく気が向いたから。ただそれだけ。

 他のライセンサーが使っているキャンバスよりも小さな、1.5 m四方の紙をいっぱいに使い、描き出したのは1頭の道産子馬。
 毛は見事な栗毛色。
 脚部が特に発達しており、長い距離でも力強く走り続けられそうだ。
 特徴的なのは赤いマフラーを首に巻いていることか。

 芸術的な観点で言えば決して上手な絵ではない。
 しかし、丁寧に描かれた馬からは描き手の愛情がひしひしと伝わってくる。

「この馬は?」

 ケヴィンの背後から、幼いが落ち着いている女の子の声が尋ねかけた。

「名前はGeorge(ジョージ)。良い名前だろう。出来た馬なんだよ。知らないだろうがな」

 細かな部分の仕上げに入っていたケヴィンは、振り返らずに答える。
 少女に続きを促され、ケヴィンは言葉を続けた。

「色々あってな、仔馬のときから面倒を見ていたんだ。今では立派にレースを走ってる。
 こいつはとてもタフなんだ。諦めずへこたれない。強く優しく賢い、良く出来た馬さ。
 だから此処に描いていく。平和な世を走れる様に」

 愛馬を思うケヴィンは柔らかな微笑みを浮かべていた。
 それは、いつも浮かべている周囲をごまかすための笑顔ではなく、心からのもの。
 残念ながら、キャンバスに向き合っているケヴィンが微笑んだことは、彼自身を含めて誰も気付かなかった。

「他の絵も、この馬も素晴らしい絵です。我はライセンサーの皆様方が楽しく絵を描き上げてくださったことに心から感謝申し上げます」

 仕上げを終えたケヴィンが振り返ると、そこにはカーテシー(跪礼)をするパルテニア王女その人がいた。



●王女の感動

「おうじょ、さま?」

 すぐ近くにいる王女にサンニが驚き、思わず駆け寄る。
 近くでまじまじと見られても王女は気分を害した様子もなく、サンニに微笑みを向けて首肯した。

 ライセンサーのペイントパフォーマンスを楽しんでいた観客達も、突然の王女の登場に驚いている。

「明るい絵を描き上げ、祭りを作ってくださりありがとうございます。
 我も絵ができていく過程を含めて楽しませて貰いました。
 エオニア王国がこの絵のように朗らかで鮮やかなものとなるよう、我も力を尽くします。
 どうか皆様方の力も貸してくださいませ」

 ライセンサーと観客全員に視線を巡らせ、王女は再度カーテシーをした。


 祭りの会場の一角、ただ真っ白だったキャンバスは、今や明るい未来を夢見る素晴らしい絵で飾られている。

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