オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 【3C】死者が来たりて人を浚う

連動 【3C】死者が来たりて人を浚う 雪芽泉琉

形態
ショート
難易度
普通
価格
1500(EX)
ジャンル
3C バトル 救出 
参加人数
86~8人
予約人数
10010100
基本報酬
200000G
200SP
2000EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
4
締切
2020/03/23 20:00
完成予定
2020/04/04 20:00
機体使用
-
関連シナリオ
-


 アフリカのとある実験施設。グレイ伯爵は、モノクル越しに蹲る人型ナイトメアを見下ろして、残念そうに、ほうと溜息をついた。
 ヨーロッパで実験したときと同じ液状型ナイトメアを、アフリカに住んでる人間に飲ませてみたが、あの時よりも脆弱だ。

「生きの良い人間でないとダメなのか、環境の問題なのか……」

 ぶつぶつと考え事をしながら『失敗作』をミイラ型のナイトメアに喰わせる。
 主から「家畜を浚ってこい」と命じられている。配下のナイトメアで襲撃させれば良いだけなのだが、少しだけ懸念があった。
 昨年、直接この目で見たライセンサーは、非合理的で、理解不能で、しかし興味深かった。自分の予想を超えて手こずるかもしれない。

「少し強くしておくとしよう。そういえば東方の書物に蠱毒というものがあったな」

 共食いさせあって、エネルギーを蓄え強くするらしい。壺に入れてしばらく放置するとあったが、時間も無いし、ただ喰わせあえば良いだろう。
 雑な思考で『失敗作』をミイラに喰わせ、そのミイラを別のミイラに喰わせた。それを繰り返すうちに、白い包帯が黒ずんでいく。
 家畜運搬用のナイトメアと共に船に乗せ、北へと送り出した。

 グレーのスリーピースのスーツ姿で背筋をぴんと伸ばし、ステッキを手にして目をつぶる。
 いつものように遠くから観察するのだ。

「また家畜が興味深い余興を見せると、良いのだがな」

 直接目の前で見たくなるくらい、興味深いことが起こればよい。




 アフリカンゲリラ・アズランのリーダーと名乗る人物が、アイザックと話がしたいとSALFエオニア支部にやって来た。
 そう職員から聞いて、アイザックは一瞬戸惑った。
 アズランという名前は初めて聞くし、指名される心当たりがない。だが今このときやってきたのなら、一連の襲撃事件に関係あるのかも知れない。

「アズランのリーダー・アイシャ・サイードだ」

 ゲリラのリーダーが予想外に若い、十代の少女だったことにアイザックは驚いた。くすんだ赤毛を肩の上で切り、褐色肌の腕にはタトゥーが見える。
 エメラルドグリーンの瞳は鋭く、醸し出す空気は張り詰めていた。
 後ろに控える男が数人。皆、日に焼けた褐色の肌と、たくましく鍛えられた体躯をしている。
 その1人に見覚えがあった。

「君は、レティムノで会った、あの集会の時の……」

 昨年欧州の襲撃事件の時、レヴェルがアフリカ難民を集めて集会を開き、人類救済政府に入ってアフリカに行かないかと誘った。
 その現場にアイザックもいた。

「話は同胞から聞いています。アフリカを必ず取り戻す。そう我らの同胞に約束したライセンサー達がいると。我らアズランの目的も同じです」

 そう言ってアイシャはアズランの説明をする。
 カイロ防衛戦の後、最後までアフリカで戦い抜いたゲリラの生き残り。そう聞いてアイザックは居住まいを正した。30年間諦めずに決戦に備え、アフリカの情報を集め続けたアズランに敬意を示すために。
 アイザックの祖父はカイロ防衛戦で戦死した。その敗戦の責任をアイザックも背負ってライセンサーとして戦っている。
 目標は同じだ。

「我らの情報によれば、この事件に人類救済政府の人間は関与していない。アフリカにいる別の勢力の仕業でしょう」
「別の? それはどういう」
「それは我々にもわからない。けれど、倒すべき敵がアフリカにいることは確かです」

 挑むような目で見据え、アイシャはすっと手を差し出した。

「……SALFがナイトメアを倒すだけの力があると認めましょう。アフリカ奪還は、我らアフリカの民の悲願。それを叶えるため、我らはSALFと手を結びます」
「アフリカを取り戻すため、最善を尽くします」

 差し出された手に、握手しようとアイザックが手を伸ばしかけ、そこで緊急連絡が入った。
 首都エオスにナイトメアが出没した、人手が足りない。なんとか、かき集めた人員を現場に派遣する所だと。

「わかりました。僕もすぐに現場に向かいます。申し訳ないが、話はあとに……」
「我らアズランにも手伝わせて欲しい。ナイトメアと戦うことはできないが、避難を手伝う程度ならできる」

 一般人とはくぐり抜けてきた経験が違う。ナイトメアが間近に迫っても、冷静に安全地帯まで負傷者を運ぶ、体力も気力も十分だ。

「それに我々も、SALFの実力を直接見てみたい」



 南の海からナイトメアが襲ってくる。そう聞いた人々は慌てて北へと逃げ出す。
 押し合い、転んで泣く子供に、アイシャは手を差し出した。

「大丈夫? 歩ける?」

 SALFの前で見せた大人びた雰囲気とがらりと変わり、優しい笑顔を浮かべ、子供の頭を撫でた。

「だ、大丈夫。ライセンサーが敵を倒してくれるって、王女様が言ってた」
「そう強い子ね。アタシ達がここは何とかするから、落ち着いて歩きなね」

 16歳の少女らしい気さくさで、去って行く子供に手を振った。
 すぐにきりりと表情を引き締め、仲間達に指示を出す。

「私達は人を運ぶだけ、危なくなったら直ぐ逃げろ。SALFに足手まといだと思われる事はするな」

 子供に見せた優しい顔が本来のアイシャだが、アズランのリーダーとして甘さは見せられない。
 前方を走るライセンサーを追って、仲間達と港へ向かう。

「SALFの本気をこの目で確かめる。アフリカの敵と戦うだけの力量と覚悟があるのか」

 世界の平和を守るのがSALFの仕事なら、アフリカ難民の夢を叶えるのがアズランのリーダーの使命だ。




 ライセンサー達が港に着くと、異様なナイトメアがいた。
 小型トラック並の大きさの箱に車輪がついていて、それを轢く黒い牛。その脇を歩く黒いミイラが二体。蝙蝠が守るように飛び回る。
 箱の中には既に何人か人が倒れていた。
 箱と牛を繋ぐ縄を壊せないか。アイザックは試しに、銃で縄だけを狙って攻撃してみたが、傷もつかなかった。

「おそらく、あの箱も縄も含めてナイトメアなんだろう。簡単に壊せなさそうだし、下手に攻撃して中の人を傷つけないように気をつけて」

 そう言ってすぐに、港で逃げ遅れている人々へ助けに向かう。
 異様な敵を目の前にして、恐怖に立ちすくんだり、転んで負傷して動けなくなっている人々が多く、自力で逃げるのは難しそうだった。

 アイザックが人を抱えて後ろへ移動すると、すぐにアズランがやってきて受け取って逃げる。
 バケツリレーのように、チームワークは抜群だ。任せても大丈夫だろう。

 牛はただ、前に歩く。ミイラの包帯はうねうねと宙を漂い、人々を餌食にしようと狙っている。
 捕らわれた人々を傷つけずどう戦う? 
 ライセンサーの姿を、アイシャはじっと見つめていた。

●目的
 ナイトメアの撃破
 一般人の救助


●NPC
アイザック・ケイン
 エオニア支部所属のライセンサー
 アズランと一緒に、付近にいる一般人の避難に専念する

アイシャ・サイード
 16歳。アズランのリーダー
 戦闘中は隠れて様子を見つつ仲間に指示する。戦闘終了後会話可能

アズランの男×5
 戦闘能力はない。敵と距離をとり、気絶した人を運んで逃げる


●敵
黒牛×1
 箱形台車を縄で引く牛。台車も含めて1個体。【注視】無効。防御・生命はかなり高め
 港にいる船に向かってひたすら歩く。邪魔するものは轢く。

・炎弾
 口から火を吐く。直線で3sqに識別可能範囲攻撃

・轢く
 前方のPCを轢く。轢いてる間移動力が落ちる。轢かれてるPCは黒牛が通り過ぎるまで移動不能


黒いミイラ×2
 人型だが人語は話さない。【注視】無効。片手が小刀で、片手は包帯を巻いた手。攻撃・耐久高め
 黒牛の両脇を歩き、一般人を捕獲し台車の箱に入れていく

・殺傷
 小刀で切りつける3回攻撃

・包帯
 包帯を伸ばして絡みつく。射程3。命中判定で成功時【行動不能】を付与
 一般人は気絶するだけで外傷はない


蝙蝠×2
 羽を広げると60cm程。PCの視界を塞いで妨害する。ミイラの周囲を飛び回る。回避と攻撃が高め

・痛打
 体当たり。命中時対象の【防御低下】
・吸血
 噛みつく。命中時対象に【継続ダメージ】


船×1
 運搬用ナイトメア。攻撃能力はなく、防御と生命だけは非常に高く、破壊は困難
 この敵を撃破しなくても成功度に影響なし


●状況
 エオニア王国の首都エオスの港。南側が海で、北側に街。遮蔽物はなく地面は平ら
 既に街で一般人を数人捕まえ台車に乗せています。南へ戻りながら周囲の人を捕まえつつ、海へ向かっています
 何も妨害が無ければ6Tで、黒牛は船へ辿り着き逃げます
 進行方向に一般人が数人いる
 アズランは距離をとって待機中。アイザックから一般人を引きつぎ、抱えて街へ運ぶ

質問卓設置可

 ついにアフリカだ! と1人テンションあげている雪芽泉琉です。
 【3C】連動開幕を告げる物語はエオニアから紡がれます。

 敵の目的は「人を生きて浚う」なので、故意に傷つけようとはしませんが、捕まったまま逃げられれば失敗。
 アズランは立ち回りが上手いので、攻撃範囲に近寄りません。敵に捕まりそうになれば逃げます。アイザックも一緒ですので、彼らの心配は不要です。

 素敵なプレイングをお待ちしております。

  • 夢見る力で世界は動く
    月居 渉la0081
    人間18才|ネメシスフォース×グラップラー

●行動
ミイラ・蝙蝠対応
→半数撃破で救助へ移行

※進行方向要救助者数が多くアイザックらの救助が牛進行で間に合わない場合
全力移動しアズランらが受け取れる範囲への退避運搬を手伝う
ほぼ完了orミイラ・蝙蝠数半減で再び全力移動し、敵注目薄い側から台車へ飛び乗る

>対敵
スキルは本、近接は槍で射程取りつつ攻撃。ただし物理>知覚で効果なら近接時は剣使用
ミイラ・蝙蝠が複数範囲内なら凍銀
自身に意識を向けていない個体や受傷高い個体を狙い、敵側背面からや味方の陰利用し死霊沼
複数範囲巻込>ミイラ>蝙蝠 で優先し行使
抵抗が高く弾かれるようなら狙いを合わせ、光白も使用し純粋に火力を集中させての個体減に努める

>救助
ミイラ・蝙蝠半数撃破で台車上へ(距離あれば全力移動で乗る)
携帯の救急治療セットを開き、声をかけて励ます
「もう大丈夫、落ち着いてね。軽い怪我ならこれ使って!」
怪我人有無を確認、意識有>負傷高め>気絶 の優先で仲間へ受け渡す
受け渡し時は敵意識が向いていない方向と動向を必ず確認

救助完了後はミイラ・蝙蝠残>黒牛 で攻撃
黒牛のみなら台車上から牛背中へ勢いつけ白槍を打ち込む
「これで赤いマントがあれば闘牛だね!」
スキル残あれば使用、台車から破壊していきトドメを刺す

終了後、一般人の様子を確認し必要あれば手当て
アズランも俺たちも向く方向は同じ。覚悟ならとっくにできてるよ

★アド絡み可
〇心情
「人質をとってなんて、卑怯もいいところね。救ってみせるわ!
ただしまずは牛に轢かれる(

〇目的
民間人救助
ナイトメア殲滅

〇行動
牛狙いで動く
味方の動きによって下記に分岐
・味方の行動不能が牛に入る場合
横から剣で斬る
追いつけない場合全力移動使用し加速上乗せ
「足は速いし硬いみたいだけれど、これならどうかしら?」
味方にミイラの行動不能付与時ホーリーライトで回復

・行動不能が牛に入らない場合
自身が前に出て轢かれる
轢かれてる間轢いてる牛の足等機動力削ぐよう斬る
「ドMじゃないけれど、足止めに必要ならやるしかないわよね!」
生命25%以下でハイヒール頼む
静流達が残る敵の抑えに回った場合自身のヒールで凌ぐ
「耐えるのは得意なの、どっちが先に倒れるか我慢比べしましょう?」

自身行動不能受けた場合回復もらい牛に追随
牛足止め必要時轢かれて足止め
足止め不要時戦況見て攻撃or救助に加わる
牛に引き離されたら全力移動で追いかけ射程に入れる

  • 魔女殺し
    Ashen Rowanla0255
    人間31才|ネメシスフォース×スナイパー

……今更だが
首都への突然の出現を許している時点で、防衛は破綻しているな

■行動
人間を輸送している黒牛を撃破出来れば一番だが
耐久力が不明な上、台車上の一般人への影響を考えると火力を集中し難い
故にまずは敵の数を減らして一般人を救助した上で、黒牛を討つ

戦闘時は蝙蝠・ミイラ対応
救出時は一般人の安全圏運搬を担当

戦闘時立ち位置は後衛
味方が足を鈍らせている間に黒牛の斜め前方に位置取り、その後は基本その位置を保持
敵、特に黒牛からは距離取り攻撃
移動速度加味した上で攻撃範囲に入らない要注意

行動としては取り巻きの数を減らす事に重点置き、
蝙蝠・ミイラ対応組を咲き乱れる因果で強化した上で自身も攻撃に参加する
強化状態維持を優先するが、敵を落とすタイミングがあれば攻撃する
攻撃は変調付与なければ悲愴、有れば禍告使用。牛は除く

救助時は受け取った一般人を肩に担ぎ全力移動用い運搬
方向は進行方向の逆、或いは直角方向
ケインやアズランに渡す、或るいは狙われないと判断出来る距離離した段階で解放する
1行動の移動で往復可能であれば、多少手荒な解放も選択肢に
また進行方向の一般人避難が間に合わぬ場合も同様に運ぶ
捕虜を解放するだけでなく、新たに捕らわれないようにするのも重要だ

  • 胸に抱いた覚悟
    白神 凪la0559
    放浪者18才|スナイパー×ネメシスフォース

行動方針:黒牛の足止めを行いつつミイラを撃破。捕獲された人の開放を狙う。

役割:黒牛の対処
優先順位:黒牛の足止め>黒牛へのダメージ蓄積>ほかの敵の対処

行動:牛に対して射線が通るように牛の右側面から追っていく。
できるだけ早く射程に収めるために、距離が遠すぎる場合は全力移動も使う。

射程に入り次第、味方の【免疫低下】付与がかけられるならそれを待ってから、
【免疫低下】付与が遅れそうなら先んじて心射撃で【行動不能】を狙う。
【免疫低下】状態でも【行動不能】が付与できない場合は、
攻撃スキルも併用して黒牛に攻撃を仕掛けて少しでもダメージを重ねていく。

【行動不能】が付与できた場合、効果が切れるタイミングで継続して付与を狙いつつ、
黒牛にスキルを併用しつつ攻撃を仕掛けていく。
その際、心射撃を【行動不能】が途切れないようにかけることを優先し、
適時早めのリロードをかけていく。

一般人の救助完了すれば、残っていればコウモリにも攻撃を仕掛けていき撃破を狙う。

【心情】
アフリカの別勢力、それにアズラン…気になることは多いけど、
今は目の前で助けを求める人たちのために、戦いましょう!

【目的】
ナイトメアを撃破し、一般人を全員救助する

【行動】
「ミラ(la0103)、凪(la0559)、黒牛の方はお願い!」
自身はアイザック達の援護もかねてミイラ・蝙蝠の撃破につく。
銃弾の効果が薄そうなミイラにはグレネードランチャーを使った
『アグロファイア』、回避の高い蝙蝠には散弾銃の『対空射撃』、
近い敵から攻撃し、武器を変えることでリロードの時間を省く。
弾を撃ち切ったらライフル+『高速装填』で残敵の掃討につく。

「アイザック、手伝うわ。黒牛から引き離しましょう」
渉(la0081)が台車から一般人を救助し出したら運搬を手伝い、
アイザックやアズランに託す。運搬のため現場から離れる時間は
ライフルの射程の長さで補って戦力の低下を抑える。

「ありがとう。おかげで助かったわ」
戦闘が終了したら救助した一般人に怪我人がいないか、医療セットを
持って対応に向かう。アズランのメンバーには救援を感謝する。

【アイシャと会話】
初めまして。聞きたいこともたくさんあるけど、先に謝っておくわ。
突然の訪問で疑う気持ちもあったのだけど…子供に手を差し出した時、
貴方の顔を見たら杞憂だったみたい。(握手に手を差し出す)

  • 雛鳥の導き手
    芳野la2976
    放浪者10才|スピリットウォーリア×スナイパー

■心情
「この目当てのもんに一途な感じと蝙蝠…どっかで見たなあ
「ふふ、ええわ。解体ショーとでも行きやしょうか
■行動
ミイラ、蝙蝠の足止めと撃破に向かう
進行方向に立ち塞がるように移動し拉致を妨害
距離次第では1Tで接敵できるよう全力移動
牛以外の多くの敵を巻き込めるように『河』
「はいはーい。こちら通行止めやで
牛、味方は範囲から除外
ミイラの進行方向に立ち続け怯ませ、後ろに仰け反らせる目的で顎、関節を殴るor背中を踏み付ける
進行方向は一般人が逃げる方向を元に予測
ミイラ同士の距離が離れていれば蹴り出すなり殴るなりで範囲でまとめて狙いやすいように距離を近付けたり、味方の邪魔にならないように牛の足元に飛ばしたりする
蝙蝠処理は後方と範囲巻き込みに任せ遠距離から当てやすいようにまとわりつくなら体の軸をずらして射線が通りやすいようにする
蝙蝠の妨害を掻い潜り手早く片付けるためミイラへ無命殺
「死人は死人らしくさっさとおねんねせえや
救助活動はミイラ、蝙蝠を全滅させてから移る
牛車から運び出した一般人をアイザック、アイシャに託すか敵の射型圏外に連れ出す
すぐに急行できるように移動力が足りなければ全力移動
一般人全員の救助が済んでから牛に残った攻撃スキルを叩き込む

その場で捕食するんじゃないなら、連れ去って何かに利用するのが目的、か。

今回俺は全体支援として、牛対応・蝙蝠ミイラ対応の双方をサポートできるように立ち回る。
まずは最初に牛に冒し蝕む金を使用。

その後は、行動順を遅らせつつ状況を見て動く。
味方が【行動不能】を受けたらすぐにホーリーライトで解除。
生命が大幅に減って危なそうな味方をハイヒールで回復。牛に轢かれている人を優先。ケートスのスキルより俺のスキルを先に消費。
そのどちらも必要ない状況なら攻撃に加わる。凍り閉ざす銀で可能なだけ多く敵を攻撃。狙う対象は蝙蝠・ミイラを優先し、もし一般人を傷つけずに牛を攻撃できる状況なら牛も狙う。

仲間たちによって台車の一般人救助が始まったら、俺は芳野を援護して残ってる蝙蝠ミイラの抑えに回る。

基本は軽可動甲「センジュ」をメインに装備にしておく。敵の攻撃は回避できそうなら回避するが、難しいなら盾で防御。
銀を使用する場面では魔導書に持ち替え。
銀を使い切ったら以降は、バスターライフルでの攻撃を2回、リロードはせずレンズに装備変更。
以降はレンズで攻撃、使い切ったらこれをリロード、を繰り返す。

アズランの人らと話す。
あのレティムノでの一件が、結構いろいろと影響広がってんだな。
あ~…ひょっとしてあの時の俺の言動も報告されてる?
一応言っておくけど、ナイトメア側に付くってのは方便だからな?

「蝙蝠と、片手が刃物の黒い人型…
怪人連想させる様相にグレイ伯爵の影を感じる
怪人類似なら三連撃と行動不能、知覚防御高い可能性を仲間に警告

因果の付与後、牛を追いミイラ2+蝙蝠1に凍銀
ミイラに知覚効果薄い時 ⇒凍銀はミイラ1+蝙蝠2、単体攻撃はドロレスでPバレッド
蝙蝠2が範囲内時、牛を外した死霊沼でBS狙う
仲間と攻撃タイミング測り畳掛け、回避が難しくなるように
射撃は一般人巻込まぬ射線に注意

担当方針はミイラ撃破優先
但し個人方針は蝙蝠動向注意し、邪魔する際は優先攻撃
特に牛対応者への攻撃阻む
己が敵ならば一番邪魔なのは牛の進行を阻む者ゆえ
蝙蝠への単体攻撃はM800でPバレッド
敵攻撃は回避試みる

敵数半減で台車の一般人救出開始
台車へ飛乗り運搬者へ一般人渡す「頼む」
慎重な運搬が必要そうな者以外を先に
残り時間無い場合、最悪己がクッションとなり共に飛降りる事も考慮

救出完了で牛・残敵と交戦(攻撃優先度は、残敵>牛)
対牛は刀での斬撃
低い姿勢での足払い、四足動物の急所腹部など狙う
「お前達にくれてやる命など一つたりとも無い」

■アズラン
「共に戦って頂けたこと感謝する」敬意を示し握手、挨拶
武器を取るだけが戦いではない
「私は放浪者だが、この世界で愛する人に出会い、この世界で生きると決めた
欧州での被害者達にも誓った…必ず倒すべき敵は倒す」
私の大切な世界を護る


 黒牛が台車を引いて走り、ミイラと蝙蝠が追随する。人々の悲鳴が響く港で、シュールで不気味な行進が続いていた。

 ミラ・ケートス(la0103)は人を乗せた黒牛を追いながら、不穏な気配を感じていた。
「人を浚うだなんて……何を考えているのかしら。妹の時とは違うでしょうけれど、よからぬ雰囲気を感じるわね」
「その場で捕食するんじゃないなら、連れ去って何かに利用するのが目的、か」
 詠代 静流(la2992)は浚われた人達がどうなるか、考えてみた。わからない、間違いなく危険だろうと感じる。
 鋭い目つきで敵を見据え、白神 凪(la0559)はセレブロの撃鉄をあげて、戦闘準備をする。
「以前にも何度かあったが、また人攫いか。好きかってやって帰れると思うなよ」
「捕まった人を助けてあげないとだね!」
 月居 渉(la0081)は台車の中にいるだろう人達の無事を願う。
「アフリカの別勢力、それにアズラン……気になることは多いけど、今は目の前で助けを求める人たちのために、戦いましょう!」
 ジュリア・ガッティ(la0883)は力強く宣言し、任務に挑む。アフリカの地を取り戻すと難民達に約束した。あの日の約束を果たす為の第一歩が今日の任務なのだ。

 一方、アウィン・ノルデン(la3388)は深く思考していた。黒いミイラと蝙蝠の姿が、怪人と似ている気がしたのだ。
「蝙蝠と、片手が刃物の黒い人型……」
「この目当てのもんに一途な感じと蝙蝠……どっかで見たなあ」
 芳野(la2976)も怪人事件を追っていたから、同じ事を考えていた。
「芳野殿もそう思われるか。あくまで可能性として、情報を共有しておいた方がよさそうだ」
 仲間達に怪人の情報を手短に語り、警告を出した。
 
「……今更だが。首都への突然の出現を許している時点で、防衛は破綻しているな」
 Ashen Rowan(la0255)はポツリと呟くように、言葉を零す。
 アイザックはその言葉に同意するように返事を返す。
「すまない。今回の襲撃は数が多すぎて、エオニア支部も対応しきれなくてね」
 それ以上Rowanは何も言わない。今更咎めても仕方がない。敵を速やかに排除するのが仕事だ。アズランの男達へ指示を出す、アイシャの姿を一瞥して、苛立たしく息を吐き出すだけだ。
 ミラはツヴァイヘンダーFEを両手で握りしめ、牛へ向けて駆け出す。
「アイク。こちらは任せて。人質をとってなんて、卑怯もいいところね。救ってみせるわ!」
 自分の体を張ってでも、敵を押しとどめてみせる。そう覚悟して。



 真っ先に敵に追いついたのは芳野だ。走りながら三本爪で己の指を切り裂いて、地面に血をまき散らす。唇に笑みを浮かべて、軽く声をあげる。
「はいはーい。こちら通行止めやで」
 赫い舞台の上で笑う悪鬼の如く、敵を地獄に引きずり下ろす。まいた血が刀や槍となり、ミイラと蝙蝠に襲いかかった。
 ミイラの腕を切り裂き、蝙蝠の翼を食いちぎる。敵へ浅からぬ傷を負わせる。芳野を脅威と感じたのか、2匹の蝙蝠が次々と襲いかかった。
 纏わり付くような蝙蝠の動きを、体の軸をずらして1匹は躱す。しかし1匹は避けきれずに障壁を削る。

「……」
 Rowanは沈黙のまま、杖を持った手を前方に向け、仲間達を指し示す。杖先から放たれた咲き乱れる因果が、仲間に力を与えていく。
 その後、敵の攻撃範囲に入らぬよう、ぐるりと大回りで移動し、牛の斜め前へと向かった。
 
 静流は黒牛に接近し、イマジナリードライブを紡いで冒し蝕む金を放つ。静流の手から伸びた泥が、牛の体を包み込み、蝕んで抵抗を下げた。
 ライセンサー達の攻撃が始まっても、牛は歩みを止めない。全速力で海へ向けて走って行く。
 その黒牛へ照準を合わせ、凪は心射撃を放つ。放たれた弾丸が牛に突き刺さると、泥の効果もあってか、牛の歩みが止まった。
 その隙に全力移動で牛の前に回り込んだミラが、剣の切っ先を足に叩き込む。
「足は速いし硬いみたいだけれど、これならどうかしら?」
 足を傷つけて、少しでも足止めに繋げる。仲間が救助をする時間を稼ぐ。

 牛を庇いにミイラが向かおうとした所へ、渉とアウィンが待ったをかける。渉はピカトリクスを開き、アウィンはライフルを構える。
「月居殿」
「合わせます。せーの!」
 かけ声に合わせて、2人同時に氷の槍を生み出し、空からミイラと蝙蝠達へ降り注がせた。蝙蝠は肩翼を吹き飛ばされ、ミイラの肩を射貫く。
 攻撃を重ねる事で、敵が避けずらくする。ミイラや蝙蝠に集中攻撃をして、早期に数を減らす作戦だ。
 氷の槍に貫かれたミイラは、ナイフを振るって渉とアウィンへと襲いかかる。2人は咄嗟に回避を試みるも、避けきれずに障壁を切り刻まれる。
「ミラ、凪、黒牛の方はお願い!」
 仲間を信じて足止めは任せ、その間に敵の数を減らす。ジュリアはそう気持ちを切り替え、散弾銃の照準を蝙蝠に合わせた。対空射撃で蝙蝠を撃ち落とす。
 呼吸を整え、神経を研ぎ澄ませる。吹き抜ける心地よい風のながれも読んで、飛行する蝙蝠の動きを予測し、放たれた強力な一撃が蝙蝠の体を吹き飛ばす。
 度重なる攻撃で重傷だった蝙蝠が一体。落ちて消えた。

「ふふ、ええわ。解体ショーとでも行きやしょうか」
 芳野はミイラと黒牛の間に立ち、ミイラの顎めがけて獲物を叩き込む。後ろに仰け反らせて、視界を塞ぐ目的だ。
 ミイラはそれを避けようとして、体勢を崩す。そこへ背中を蹴りつけ追い打ちをかける。蹴って押し込め、2体のミイラの距離を近づけ、範囲攻撃で一気に削れるようにする。
 Rowanは、いまや失われし魔術を思い起こす。過去の力をイマジナリードライブの力で再現し、ミイラと蝙蝠へ解き放つ。
 風に散る白。悲愴の枷。八度焼けども尚残るモノ。
 灰が纏わり付くように、敵を蝕み、蝙蝠の翼は朽ちて地に落ちた。
 邪魔な蝙蝠はいなくなった。冷めた目で敵の撃破を確認し、Rowanは次の行動へ移った。
 芳野を振り切るように逃げたミイラは、ミラへ素早くナイフを振り下ろす。障壁を切り裂かれながらも、ミラは牛の前から一歩も引かない。

 もう一人のミイラは牛を妨害する凪へ手を伸ばす。手のひらから伸びた黒い包帯に絡みつかれ、凪は動けなくなった。
 グレネードランチャーに武器を持ち替えたジュリアは、青い瞳で凪を襲うミイラを睨み、素早くアグロファイアを放つ。高速の二連射がミイラの体を穿ち、爆発。ミイラの装甲を削り落とす。
 凪への注意が逸れた隙に、静流が凪へホーリーライトを飛ばす。きつく縛られた包帯の拘束から解き放たれる。
「援護するから、そっち頼むな」
「助かった。ああ牛への攻撃は任せてくれ」
 拘束に足を止められていた牛が、抵抗して動き出していた。大きな口を開け、今にも炎を吐き出しそうだ。それでもミラは引かない。
「ドMじゃないけれど、足止めに必要ならやるしかないわよね!」
 足止めの為に、まずは牛に轢かれる。
 牛の口から吐き出された炎がミラの身を焼く。痛みを堪え、それでも踏みとどまるミラへ向け、牛の足が大きくあがった。どんっと勢いよくミラを踏み潰し、轢く。
「……っ!」
 牛の体重がミラを押しつぶす。だがミラが轢かれる事で牛の進む速度は落とす。大きく障壁を削られても食いしばり、ミラは剣を握りしめ牛の足を切る。
 踏まれていても、攻撃の手は止めない。
 牛の行動を妨害する為に、凪も心射撃を放った。しかし今度は牛が止まらなかった。
 静流の援護なしでは効かなそうだと判断するも、静流は増え続ける仲間の負傷を治療するので手が一杯で、牛へ攻撃に参加する余裕がない。
 凪はリロードをしつつ、今は攻撃に専念して牛を削るしかなさそうだと、思考を切り替える。
 牛へ攻撃する物が誰もいない状態は避けなければならない。

 蝙蝠2体が落ちた事で、手薄になった台車めがけ、渉が駆ける。それを阻もうとしたミイラ達へ、アウィンは氷の槍を浴びせて足止めをした。
「月居殿。向かってくれ」
「了解! ありがとうございます!」
 ミイラ達の妨害を振り切って台車の縁に飛び乗ると、渉は思わず「あーーー」と声を上げた。
 台車の中に人が折り重なってすし詰め状態だ。想像以上に人の数が多い。皆意識を失っている。慎重に子供の肩を叩いて声をかけてみる。
「大丈夫?」
「あ……う、うん」
 意識を取り戻したようだ。見たところ怪我もなさそうだが、ぼうっとしていて、自力で歩けそうにない。
「もう大丈夫、落ち着いてね」
「ありがと……」
 渉の笑顔と声かけに、安心したかのように子供は微かに微笑んで、ぎゅっと渉の手を握った。



 残るミイラの数を減らすべく、芳野は大鷲の爪翼にエネルギーの全てを注ぎ込み、捨て身の一撃を叩き込む。
「死人は死人らしくさっさとおねんねせえや」
 傷だらけで血の滲むミイラの胴へ、深々と突き刺さり貫く。ぐったりと力を失ったミイラを、芳野は地面に放り捨てた。
 残るミイラは1体。
 渉が子供を味方へ渡そうとした所へ、ミイラの包帯が伸びてきた。咄嗟にアウィンが包帯を掴んで阻む。
「お前達にくれてやる命など一つたりとも無い」
 子供を助ける事はできたが、そのまま包帯にまかれ、アウィンが動けなくなる。
「敵が残ってる間は、下手に人を降ろさない方がよさそうだね」
 渉は方針を変えて、台車の中の人達を護るように台車の縁にへばりつく。

 アウィンを捉えるミイラへ、Rowanは指で指し示す。微かな仕草が、破滅を齎す所作だ。
 鋭き針の如く、災いの枝の如く、ミイラの四肢を打ち砕く。
 ミイラが弱った所でアウィンは抵抗し、拘束から逃れた。
 残り僅かになったミイラの命を刈り取るように、ジュリアの銃弾が貫く。
 最後のミイラが倒れ、残るは黒牛のみとなった。


 静流は味方の被害状況を素早く確認し、アウィンへハイヒールを飛ばし、傷を癒やす。
 静流は手番を遅らせ、二手に分かれた味方のどちらにもフォローできるよう、全体を俯瞰して立ち回る。
 凪は牛の頭に正確な射撃を叩き込む。動き回る敵に当てるには軌道修正の方がいい。そう考える凪が編み出したリ・イグニションだ。
 牛の身を削る手応えはある。しかし牛は意に介さない。
「予想以上に固そうだな」
「攻撃は任せるわ。とにかくあの牛の足止めをしないと。轢かれでも止めて見せるわ」
 ミラが足止めをし、凪は牛への攻撃の手を止めず、静流が回復の援護をする。
 牛の足止めの為、前に立ち続け後方の状況を把握できないミラへ、静流は状況を伝える。
「他の敵は倒し終わったな。これから救助が始まる」
「まだ大丈夫よ。もう少し耐えて見せるわ」
 体を張ったミラの行動により、だいぶ牛の歩みを遅らせられた物の、海へ向かって進むのを止めきれない。
 自己回復の為に立ち止まったミラの体を置き去りにして、牛はまた前へ駆ける。
「俺が変わる。耐えるのが得意なわけではないが、任せっきりじゃあいけねぇからな」
 そう言って牛の前に立ちはだかった凪へ、炎弾が吐き出される。炎に巻かれ障壁を大きく削られた状態で、牛は凪を踏みつける。
 痛みを抱え踏まれながらも、凪は目を逸らさず牛を観察した。他の部位より腹の方が柔らかいかもしれない。凪は真上の牛の胴へ銃口を突きつけ、0距離射撃を叩き込んだ。
 ドン! 確かな手応えと共に、銃弾が腹を穿ち血は流れる。然れど牛は止まらない。
 凪が足止めしている間に、ミラが牛の前に舞い戻ってくる。牛の下から這いずりでてきた凪は、渋い顔をした。
「腹でも硬いな。それに怪我してもちっとも応えちゃいない」
「足を攻撃しても止まらないのよね。痛覚が鈍感なのかしら?」
 静流は武器を魔道書に持ち替えて頁を繰った。
「回復も尽きたし、俺も攻撃に回るな。タフな奴なら攻撃を重ねて削りきる方がいいよなぁ」
「ああ。手応えはある。攻撃が効いてないわけじゃない」
 凪はリロードをしつつ答える。牛の体には、攻撃による傷は残っている。
 静流は頷いて台車に当てぬよう、牛の頭に氷の槍を突き落とす。頭を切り裂かれ、血を流しても牛の歩みは止まらない。

 牛の斜め前の位置をキープし続けたRowanは進行方向に座り込む子供を見つけた。素早く抱えて、近くにいたアイザックへ押しつける。
「……牛の進行方向の人間を、先に救助してやれ」
「そうだね。気をつけるよ」
 捕虜を解放するだけでなく、新たに捕らわれないようにするのも重要だ。そうRowanは考える。
 幸い仲間の足止めのおかげで、牛のスピードは落ちている。牛の前方から人を取り除く時間の余裕はある。
 Rowanとアイザックは協力して、牛から人を遠ざけた。

 その間に渉は台車に乗った人々を抱え、念の為牛の動きを警戒しつつ、仲間へ渡していった。救助の優先順位を慎重に選んで、声をかけて意識を取り戻した人から降ろす。
「1人ずつお願いします」
 全力移動で素早く走るなら、1人が1人を抱えるので精一杯だ。救助中のアイザックへ、ジュリアは声をかける。
「アイザック、手伝うわ。黒牛から引き離しましょう」
「ありがとう。頼もしいよ。そっちはよろしくね」
 渉は台車の上から仲間へ、次々と引き渡す。芳野、アウィン、ジュリアは人々を受け取って、抱えて後方へ走り出す。
 アズラン達の元へ引き渡す時、アウィンは短く言葉を告げた。
「頼む」
 男は無言で頷いて、受け取った人をさらに後方へ運んでいった。
 ライセンサーとアズラン達の協力は、息ぴったりで、バケツリレーのように、次々と人々が運び出されていく。
 しかしライセンサー達の予想以上に台車の中にいる人が多かった。それに台車から人を運び出す往復に、予想以上に時間がかかった。全力移動を使用しても、前線に戻るのが遅れる。

 その間、何度も、何度も、ミラは炎に焼かれ、牛へ轢かれた。ミラが障壁の修復に専念しないと追いつかない程に。
 それでもミラは気丈に振る舞って、笑みを浮かべて立ちはだかる。
 風に靡く髪が、泥にまみれようとも、花のように麗しく。騎士として立ち向かう。
「耐えるのは得意なの、どっちが先に倒れるか我慢比べしましょう?」
 ぽっかり空いた空洞のような牛の目を見据え、ミラは剣を構え、眉間に一突き。固い。
 牛の口が開く。またあの炎に焼かれる。痛い、苦しい、何度も味わった痛みを覚悟して、ミラはぐっと耐え忍んだ。
 凪もリロードを繰り返しつつ、セレブロの銃口を牛へ突きつけ、弾丸を叩き込む。静流もバスターライフルに持ち替え、派手に銃弾をばらまく。
 少しづつ削っている感触はある。牛の傷は増えている。しかし凪と静流の攻撃を合わせても、まだ牛を削り切るには足りない。
 耐久性に優れた牛は損耗が少ないまま、海まで間近に迫っていた。幸い人の運び出しは順調に進んでいる。
「救助は間に合いそうね」
 ミラの言葉に頷きつつ、凪は呆れたようにぼやく。
「人を浚う目的なら、空っぽの台車引いて返っても無駄だよな」
「俺達を無視して、絶対前に進むって言う執念が凄いなぁ」
 静流はリロードする時間も惜しいと、オーパーツ・レンズを頭に装着し、ゴーグルからビームを放って牛を焼く。
 香ばしい匂いを漂わせながら、それでも牛は止まらない。

 最後の人を抱え、空になった台車を蹴って渉は飛び降りた。さっとRowanは駆け寄る。
「……こちらで引き受けよう」
「ありがとうございます」
 Rowanの申し出に渉は遠慮なく引き渡した。Rowanは最後の1人を抱え、後方へと駆けていった。

 救助の為に後方へ下がってしまったジュリアは、牛と距離ができてしまった分を射程でカバーした。
 精悍に表情を引き締め、空になった台車めがけ、遠距離からスナイパーライフルを放つ。着弾して台車の端が砕け散った。
 渉はもう遠慮はいらないとばかりに、白槍を構え、勢いよく飛び跳ねる。台車めがけて光り眩む白を放ち、槍先の魔法弾で台車を突き刺した。純白の槍が牛を穿つ。
「これで赤いマントがあれば闘牛だね!」
 そう叫ぶ渉の表情には余裕の笑みがあった。
 だが台車に槍が突き刺さろうが、攻撃されようが牛が止まらない。台車の上から牛に飛び移ろうとしてみるが、味方の攻撃の邪魔になりそうで辞めた。そのまま台車から飛び降りる。
 戻ってきた芳野が後ろから無命殺を放って台車を削り、アウィンの生み出した死霊沼が、牛に絡みつき足止めを狙う。
 ライセンサー達の度重なる攻撃に、台車は壊れ砕けていった。
 しかし、牛は止まらない。そして牛は船の元へ辿り着いてしまった。
 蝙蝠とミイラを排除してから牛を倒すという戦略は正しかった。
 しかし救助に人員を割きすぎた故に、牛を削りきる前に、時間切れになってしまった。

 台車も人も取り巻きも、何もかも失いつつも、牛は船へと乗り込んだ。
 最後の一撃とばかりに、アウィンは刀を構えて渾身の力を込めて、死霊沼を発動する。港の端から手を伸ばし、船を掴もうとするも、船は止まらない。ゆっくりと海を進み、南へ泳いでいく。
 もはや敵へ攻撃は届かないとわかっていても、海の彼方へ刀を突きつけ、アウィンは叫ぶ。
「見ているのだろう、伯爵。いずれお前を再び引きずり出し、必ず倒す!」
 この事件に伯爵が関与しているだろうと推測し、ならばこの姿もきっと見ているだろうと確信して。空の彼方をキツく見据えた。
「この顔を、誓いを忘れたとは言わせない」
 あの時負った怪我は治ったが、今もその感触はこの身に刻まれている。

 芳野もまた、ミイラの戦闘スタイルと蝙蝠の存在に、伯爵の関与を疑っていた。
 アウィンの後ろに立ち、南へと去って行く船を眺める。
「怪人とは毛色が違うわあ。別のお偉いさんに頼まれたんかいね」
 それが誰かは知らないが、追い続ければわかるのだろう。
 次は逃がしはしない。



 敵が去ったのを見届けて、凪は周囲を見渡した。付近に一般人いないか確認し、アイザックの姿が目に止まる。よく任務で会う同僚から話を聞いた事がある。信頼できる人だと。
「被害はないか?」
「転んで怪我をした人はいるけれど、いずれも軽傷だよ」
「台車の中にいた人間はどうだ?」
「気絶してただけで、今の所異常はなさそうだね」
「ふむ。被害が少ないのはよかったんだろうな……」
 牛を撃破しきれず逃がしてしまったのは惜しいが、凪達の稼いだ時間で人の命が救えたなら良かったのかもしれない。

 からころと下駄を転がす音を立て、芳野はアイシャの元へ訪れた。
「ライセンサーの戦い、どやった?」
「間近で見るのは初めてだが……色々凄いな。自分の身を削って攻撃するのか」
 芳野の指先の怪我をじっと見て、アイシャは呟く。その生真面目さにころころと笑って見せた。
「こんなのたいしたことあらへんよ。捕まった人達、傷つけんために、手加減せなあかんしな」
「これで全力ではないのか……なるほど」
 アイシャは芳野の余裕と実力に舌を巻いた。

 ジュリアは捕らわれた人達へ、1人1人様子を伺っていく。戦いを終えたジュリアの表情は、柔らかく優しい。
「歩けますか? よかったら肩につかまってね」
「ありがとう」
 渉も救急治療セットを片手に聞いて回る。
「痛い所はありませんか?」
「ああ、ありがとう。乗り物酔いみたいな気分は悪いけど、他は大丈夫そう」
 怪我といっても台車とこすれてできた軽い擦り傷程度、それなら救急治療セットで手当も可能だ。消毒をして絆創膏をつけながら渉は人懐っこい笑みを浮かべる。
「皆が無事でよかった」
 敵を倒しきれた方が良かったかもしれないが、誰1人犠牲者を出すことがなかった。その成果に渉は満足げに頷く。
 救急隊員に全員引き渡したのを見届けた所で、渉はアイシャに挨拶に行った。
「敵を倒しきれなかったけど……ライセンサーの戦いぶりを見て、どう思った?」
「人命第一。その判断は正しい」
 渉の思いを理解し、肯定するアイシャへ、手を差し出した。
「アズランも俺たちも向く方向は同じ。覚悟ならとっくにできてるよ」
「そうだな。同じ道を向いて歩いてるな」
 そう頷いて握手を交わす。アズランとSALF、これから手を携えて共に歩く道の先を見据えて。

 ライセンサーの中で、もっとも大きな損耗を抱えつつ、ミラはアイシャに話しかける。
「アイシャさんだったかしら。さっきはありがとう、避難の手伝いをしてくれたおかげでとっても助かったわ。もしよければ、これからもよろしくね」
「ああ。よろしく頼む。体を張って敵の足止めをしていたのは凄かったな。その勇気に敬意を払おう」
「勇気だなんて……そんな凄いことではないわ」
 もう妹のような犠牲者を出したくない、その一念だとミラは想う。傷だらけのミラを気遣うようにアイザックが声をかけた。
「ミラ君。大丈夫かい? 救助車はまだ残ってるから、病院に向かった方がいいよ」
「私は大丈夫。自分で歩いて行けるわ。救助車は他の人に使ってあげて」
 気遣って貰っただけで充分。そう可憐に微笑んで。それから慌てて髪についた泥をはたき落とす。
 戦いを終えれば乙女に戻る。牛に踏まれ続けて、汚れた姿が急に恥ずかしくなった。そこへさっとハンカチ差し出される。
「よかったら使って」
「ありがとう。アイク」
 ぎゅっとハンカチを握りしめた。

 Rowanは遠くからアイシャをじっと見て、眉間の皺を深くした。
 本人に対しては何も言う気はない。本人がやりたくてやっていることなのだろう。それでも憤りを感じ、不機嫌さを消すことができない。
 そこに祈りや想いが在れども、まだ子供と言える少女に、組織のリーダーという重荷を背負わせることを、よしとしてる周りの大人達に対して、苦々しい物を感じながら。

 静流ははーっと大きくため息をつき、アイシャの方へ顔を向ける。
 レティムノで起こった人類救済政府への勧誘現場に居合わせた。
 アフリカ難民を止める為、嘘も方便と人類救済政府に同調するふりをした。その事で悪い印象を与えてなかったか、気になっていた。
「あのレティムノでの一件が、結構いろいろと影響広がってんだな。あ~……ひょっとしてあの時の俺の言動も報告されてる?」
「話は聞いている。人類救済政府の話に乗って見せようとしたと」
「一応言っておくけど、ナイトメア側に付くってのは方便だからな?」
 慌てる静流の様子に、アイシャはくすりと笑みを浮かべた。
「わかっている。我らの同胞を止める為に、芝居を打ってでたのだろう? アズランの中にも心情を偽って、人類救済政府に潜り込み、情報を流す者もいる。有効な方法なら手段に拘る必要はない」
 アイシャの言葉に静流はほっと胸をなで下ろす。
「そうか……それならよかったかなぁ。まあ、これからもよろしくってことで」
「ああ、よろしく頼む」
 改めて見返すと、笑みを浮かべたアイシャは、静流と同じくらいの年に見えて、ずっと身近にを感じられた。

「ありがとう。おかげで助かったわ」
 ジュリアはアズランの男達へ、礼を述べて回る。怪我ないかも確認し、最後にアイシャの元へやってきた。
「初めまして。聞きたいこともたくさんあるけど、先に謝っておくわ」
「……謝る?」
 戸惑うように首を傾げたアイシャへ、ジュリアは穏やかに微笑んで見せる。
「突然の訪問で疑う気持ちもあったのだけど……子供に手を差し出した時、貴方の顔を見たら杞憂だったみたい」
「いやっ! あれは……その、子供を怖がらせないためだからね……じゃない、だな……」
 アイシャは慌てたように、もごもごと言い訳を口にする。動揺した姿が子供っぽく見えて、本来の優しさが滲んで見えた。思わずジュリアもくすりと笑みが零れる。
 虚勢を張っていることを、見透かされたような気恥ずかしさを感じつつ、アイシャは差し出された手に手を重ねた。
「……疑いが晴れたなら何よりだ。ともかく、よろしく頼む」
「レティムノでも誓ったけど。改めて、貴方にも誓うわ。アフリカを取り戻す為に力を尽くすと。私もアフリカを見てみたいの」
「見たい?」
「ええ。この目で見て、描いてみたいわ」
 絵画を嗜むジュリアらしく、絵筆を持って宙に絵を描く仕草をしてみた。
「そうか……アフリカの絵か。それは私も見てみたいな」
 きっと祖父が喜ぶだろうとアイシャは思った。

 アウィンは育ちの良さが滲む所作でお辞儀をし、アイシャへ言葉をかけた。
「共に戦って頂けたこと感謝する。よろしく頼む」
 敬意を示しつつ手を差し出す。アイシャはその手を握り返した。
「こちらこそ。よろしく。礼には及ばない。手を結ぶと決めたなら、アズランの覚悟も見せるべきだろう」
「武器を取るだけが戦いではない貴方達の力は、頼りにしている」
「……そうだな。武器を持たない戦いなら、我らの得意分野だ」
 アイシャは頷いて、アウィンを探るようにじっと見る。まだ何か言いたそうに見えたので、その言葉を待つ。
「私は放浪者だが、この世界で愛する人に出会い、この世界で生きると決めた。欧州での被害者達にも誓った……必ず倒すべき敵は倒す」
「そうか……良い目をしてるな。覚悟を決めた者の目だ。頼もしい」
 覚悟はとうに終えている。この世界に居座って、添い遂げようと決めた時から。大切な人を護る為、この世界を護らねばならない。
「私の大切な世界を護る」
 世界を守り切った果てに、大切な人と過ごす平和な未来があるのだと信じて。


 アイシャはライセンサー達全員の顔を見て、はっきりと告げる。
「SALFの実力と覚悟を見せて貰った。舐めていたつもりはなかったが、想像以上だった」
 ライセンサー達を疑ったことを恥じるように、小さく頭を下げ、また堂々と胸を張る。耳の下から流れる細い三つ編みが風に吹かれて揺れた。
 燃える様な赤い瞳と裏腹に、翡翠の瞳は静かにライセンサー達を見つめる。

「改めて、我らアズランのリーダーとして頼む。共に手を携え戦って欲しい。実は私も適合者だ。これを機にSALFに登録させて貰おう。そうなったら……私は貴方達の後輩……か?」

 戦う力を持たずに、ただ見守るしかない、歯がゆい立場でいたくない。
 そう思える程に、ライセンサーが戦う姿は眩しく。共に戦いたいと願う程に憧れた。
 他のアズラン達も同じように頷く。彼らもまた適合者だった。SALFに登録し、適性があればライセンサーになると申し出る。

「足を引っ張らないように……気をつける、が、よろしく頼む」



 船へ向けて渾身の一撃を放って叫んだアウィンの姿を、伯爵は遠くから観測していた。
「ふむ。覚えておる。記憶に留める価値のある家畜であったな」
 その後ろで艶然と微笑んで見せた振り袖の女・芳野にも見覚えがあった。
 またしても、あの者らに阻まれたのが、少し悔しい気もする。悔しいという感情を持つこと自体が珍しいのだが。
 人間を浚うという目的は失敗に終わった。それも伯爵の予想を超える程に、ライセンサーが強くなったからでもある。
 昨年欧州の事件で見た時より、更に力をつけている。
「……やはり、この程度の戦力では足らぬか。で、あれば。あの実験を早く形にせねばならないであろうな」
 そう呟いて、闇に溶けるように伯爵はその身を消して、アフリカへと戻っていった。 



 こうしてエオニア王国の首都を騒がす事件は、被害者を出す事なく終わった。
 王女が安全宣言の表明をした事で、街から逃げた人々も戻った。
 またエオニアが襲われないとは限らない。この襲撃の裏にある原因を突き止め、打破しない限り、これからもエオニアが危機に晒されることになるだろう。
 しかしライセンサーは何より、人の命を第一に守り切る。そう示したことでエオニアの民は安心して日常に戻れたのだった。

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参加者一覧

  • 夢見る力で世界は動く
    月居 渉la0081
    人間18才|
    ネメシスフォース×グラップラー
  • 睡蓮の恋乙女
    ミラ・ケートスla0103
    放浪者18才|
    ゼルクナイト×セイント
  • 魔女殺し
    Ashen Rowanla0255
    人間31才|
    ネメシスフォース×スナイパー
  • 胸に抱いた覚悟
    白神 凪la0559
    放浪者18才|
    スナイパー×ネメシスフォース
  • GLORIOUS DRIVE
    ジュリア・ガッティla0883
    人間20才|
    スナイパー×ネメシスフォース
  • 雛鳥の導き手
    芳野la2976
    放浪者10才|
    スピリットウォーリア×スナイパー
  • 会いたい人
    詠代 静流la2992
    放浪者18才|
    ネメシスフォース×セイント
  • 比翼の鳥・連理の枝
    神取 アウィンla3388
    放浪者24才|
    ネメシスフォース×スナイパー

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