オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
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【甘薔】甘きは残り香と成るか 秋雨

形態
ショート
難易度
易しい
価格
1000
ジャンル
日常 
参加人数
63~6人
予約人数
10010100
基本報酬
180000G
180SP
1800EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
3
締切
2020/02/19 12:00
完成予定
2020/03/05 12:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●エオニア王国、ランテルナ

 寒い、寒い冬もエオニア王国の温暖な気候では少し和らぐ。しかし、かといって温かいかと言うと──そうでもなく。

 オフシーズン真っ只中である。

 だがしかし、エオニア王国を観光地にと望むからにはオフシーズンだなどと言っていられない。少しでも集客をしなければならないのだ。
 時期も丁度良くバレンタイン。イベントとしては申し分ない。あとはどんなイベントにするか──そう、ライセンサーにモニターとなって試してもらおうじゃないか!

 こうして次々と提案されるイベントに、ライセンサーがモニターとしてやってくる。チョコレートの甘い香りがエオニア王国に、ランテルナを中心として漂っていた。
 しかしそれも14日、バレンタインデーを過ぎれば次第に収束されていくだろう。それがイベントというものだ。
 そんなとある日、ランテルナの片隅で。

「……その」
「……はい」

 片や、売店の職員。
 片や、パティシエらしき男。
 2人は向かい合って椅子に座り、俯いていた。
 そこから沈黙が続くこと十数秒。

「……そのですね」
「はい」
「何でこんなに作っちゃったんですか……?」
 職員が視線を横へと向ける。そこには業務用冷蔵庫が大きく鎮座していた。中身は──いや、もう見たから見なくていいか。見るだけ気分が落ち込むだけである。
「いやその、つい、」
「つい!?」
「おわぁっ、ち、違います! 気がついたら沢山出来上がってました!!」
 言い直すパティシエ。何も変わっていない。
 今回はバレンタインに合わせて、ということで売店にて販売する菓子の試作品を作ってもらっていた。
 まあ試作品といえど、作っても1ダースほど。罷り間違ってもそれが十数倍に膨れ上がるなんて誰が想像するだろう。
 本当に──何がどうしてこうなった。

 はぁ、と溜息をつくとパティシエの方が大きく跳ねる。職員の方が小柄だというのに、何だかあちらの方が小さく見えてきそうだ。
「このまま居てもどうしようもありません」
「はい……」
「ライセンサーに依頼しましょう」
「……はい?」
 顔を上げたパティシエ。同時に職員が立ち上がる。
 ランテルナはオフシーズン。ライセンサーへの宣伝をすれば買ってくれるかもしれないが、それだけでこの在庫は捌き切れない。
「折角だから首都まで持っていきましょう。場所とワゴンの手配は私が。あなたはSALF宛に依頼を出して下さい」
 さあ早く! と急かされたパティシエは半分くらいまだ理解せぬまま、ひとまず立ち上がった。


 1度出そうとした依頼書を職員に確認され、書き直しになったとかなっていないとか。


●SALFにて
 これは? と問われたSALFの職員は「ランテルナ……エオニア王国からの依頼ですよ」と紙へ視線を送る。つい先ほど貼られたばかりのものだ。
「何でも、試作品のデザートを作りすぎてしまったんですって。販売品ではあるけれどこんなには売れない、だから売るのを手伝ってくれ〜ってことらしいですよ」
 150個ですって、と職員が苦笑する。
 バレンタインに合わせたらしいチョコレート菓子はランテルナのパティシエによるものだそうだ。絶品だろうが、いかんせん時期と量が悪い。
「この任務に興味がおありでしたらご説明しますよ」
 ずっとそれを見つめているライセンサーへ職員がエオニア王国の地図を広げてみせた。
 デザートを売るのは首都の一角。人通りが多く、売るにはもってこい。ついでにランテルナの宣伝もすれば今後、ひいては来季バレンタインの集客が見込めることだろう。
「もちろん普通に売っても人は集まるでしょうし……あ、大道芸とかしても構わないそうです。アサルトコアは出せませんけれど」
 できることなら何でも──大道芸、手品、ミニライブ、どれも構わない。もちろんワゴンで販売する者も必要だ。不利益とならない程度の試食も良いだろう。
 折角だから、何かやってみようか?
 ライセンサーは内容を見ながら頤に手を当てたのだった。

●すること
 チョコレートを売ろう!

●商品
 ランテルナのパティシエが作った絶品のボンボン・ショコラです。4個入り。
 中には甘いミーベルジャムが詰められています。
 完売まではいかなくても良いけどなるべく在庫を減らして欲しいそうです。

●場所
 首都のとある一角をお借りしています。まあまあ人通りがあり、ワゴンを気にしている人もいるようです。
 派手なことをしても良いけれど、器物損害NG。安全にも配慮をすること、とお達しが来ています。

●ワゴン
 屋根があり、小さなショーケースのついた屋台です。レジや商品を入れるための包装も用意されています。

 秋雨と申します。初めましての方は読んで頂きありがとうございます。2度目ましてのかたはまたお目にかかれて幸いです。
 さて、バレンタインは皆様どのように過ごされたでしょうか。ランテルナのバレンタインはまだちょっと終われないみたいです。
 自分用にちょこっと買っていっても……遅れてのバレンタインだって良いと思うんです(小声)
 ご縁がございましたら、販売協力お願い致します!

【心情】
「あたし達でランテルナの売り子をして欲しいのね。OK、引き受けるわ!」

今後ランテルナの売上を伸ばすには…
「海外通販も拡充してみると良さそうね」

【目的】
ポンポン・ショコラを少しでも多く売り上げる
さりげなくランテルナの宣伝

【準備】
「これからさくらちゃんの演奏するバイオリン、クラシック系なのよね。じゃああたしも、衣装や踊りの雰囲気をそれに合わせるわ」
「柞原さんやアリアちゃんの演出も、楽しみね」

チョコレートイメージの可愛らしいレースやフリル多めのドレス着る
ユリア自身の撮影は自由にして貰って構わない

【同行者】
日暮さくら(バイオリンに合わせて踊る)

【行動】
ボンボン・ショコラの入ったバスケットを持ちながら、舞踏3を使い宣伝
ゆったりした、穏やかな雰囲気の踊り
聴覚1を使い、より深く音楽と一体になる

客が話しかけてきたら踊りを一旦止め、話術3と礼儀作法1で応対
「いらっしゃいませ、お客様」
「エオニア発祥の果実ミーベルを使った、甘いジャム入りのショコラはいかがですか?」
「ありがとうございました。ランテルナを…そして、エオニアをよろしくお願いします!」

他者による写真撮影や、SNSでのアップロードも快諾
「SALFの依頼だと、自力で撮影環境を整えないといけないことが多いから…他の子に撮影して貰えるのは、あたしとしても嬉しいわ」

アリアは大切な幼馴染兼妹分
若葉と凪とは初対面ですが、すぐ「二人は付き合っているのですよね?」と確認
婚約指輪を見て並行世界の二人も二人であると安心
「私の世界の貴方達は両親の友人でした。両親と同年代でしたので、今は若返ったかのように感じています」
「勿論、若葉と薙は生涯のパートナーとして歩んでいましたよ」
【白椿】の隊長達とは幼馴染だと話す
差し出された手に微笑み握手。改めて挨拶

衣装:髪には薔薇を挿し、アリアと揃いのワンピース
「よく似合っていますよ、アリア」
ワゴンをランタン・薔薇・ミーベルで綺麗に飾り付け
「はい、その位置で」
フォトジェニックな雰囲気にしてお客さんがSNSにアップ・宣伝してくれる事を狙う。チョコの感想もお願いする
チョコ写真や準備中のポップ・ワゴン製作の様子、販売中の様子等を都度アップ
撮影許可くれた皆が楽しく活動している所を撮影しコメントつけ掲載
アリアの写真は至高の兎耳もふショット目指す←

ヴァイオリン演奏で集客。皆と連携
伴奏は知人に頼んだピアノ録音持参。優しく甘やかに演奏
バレンタインらしく「愛の挨拶」「ジュ・トゥ・ヴ」
明るく馴染みある「パッヘルベルのカノン」
地中海繋がりで「シチリアーノ(パラディス)」等
アリアと典の演出に合わせアドリブ。アリアとは幼馴染の息合った動き
光の雨と白い花弁、どちらも綺麗で感嘆

やるからには完売させてみせるよ!頑張ろー!

▼事前準備
演出方法は事前にさくらと典さんと打ち合わせ
試食の量も決めておき調整、1つずつ試食では多いので試食分は事前に切って用意(ジャムがこぼれないように注意(ちゃんと冷やしとく

▼服装
髪に薔薇を挿し、さくらとお揃いのワンピースを着る
「えへへ、さくらも似合ってるよ!とってもキレイ!」

▼行動
さくらが演奏を始める前に空に向かってバズーカを放ち派手なエフェクトで注目を集める
遠くの人にも見えるだろうし、興味を持って来てくれるといいな
「皆ー!特別演奏会始まるよー!」
伴奏が始まるタイミングでさくらにホーリーライトをかけ聖なる光を纏わせる
美人だから様になるよね…女神様みたい!
曲にあわせて福音の雨雫、審判の雨雫でキレイな治癒の雨を降らせて演出
回復魔法はキレイだから演出にはバッチリだね!

撮影でさくらがやたらと耳のもふもふを狙ってくるのは
もふもふ好きと知ってるので気にしないけど
「ちゃんと可愛く写ってるのを上げてね?」と(年頃乙女っぽく)気にする

演奏後はどんどん集まった人にチョコの売り込み
「ミーベルジャムを使った限定チョコレートだよ!今しか買えないよー!」と限定をプッシュして購買意欲を煽る
勢いが落ちてきたら試食も配って巻き返し
人がまばらになってきたら再度ばずーか空に発射で人寄せ

  • これからも隣で
    珠興 凪la3804
    人間20才|スピリットウォーリア×ゼルクナイト

▼事前準備
日暮さんの撮影に快諾
皆と協力し準備

・チラシ作成
チョコの写真と紹介を載せミーベルやパティシエの事に触れる
「ランテルナのことを知るきっかけになったら嬉しいな」
「いいね、じゃあそれはこの辺に…」
若葉と相談しながらチラシを作っていく
必要部数コピーして完成

・ワゴン装飾
若葉の乗る脚立を支え飾りを渡す
「次はこれ?」

▼販売
服装:執事服
柞原さんや若葉と手分けし販売促進
レジや包装は若葉と分担

ワゴン付近でチラシを配り試食を勧める
柞原さんの呼び込みで来た人や近くの人に声をかける
「本日限定、ランテルナからの出張販売です」
「お一つどうですか?」
「温かい珈琲も一緒にどうぞ」
チョコの味を楽しめるようすっきりした味わいの珈琲も提供

パフォーマンス中は日暮さんに代わりに撮影
「綺麗だね…」
優しい音や演出に見惚れる

終始楽しく笑顔
袋を手渡し
「ありがとうございました!」

▼事前準備
皆で協力し準備
日暮さんの撮影に快諾

・チラシ作成
「薔薇園とかランテルナの見所も載せたらどうかな?」
凪と相談しながら修正→確認を繰返し
行ってみたい!と思えるようなデザインを考える
必要部数コピーし完成

・ワゴン装飾
ランテルナの雰囲気に合わせ薔薇・ミーベル・ランタン等で装飾
屋根など上の方を飾る時は脚立に乗り
凪から飾りを受け取って
「この辺でいいかな?」
皆に意見聞き綺麗に見える位置を確認し飾る

▼販売
執事服をピシッと着て、柞原さんや凪と協力し販売促進
ワゴン付近で柞原さんが流してくれた人や近くの人に声をかけ、試食と共に温かい珈琲を提供
「珈琲にもよく合うんですよ」
珈琲の苦みと香りでチョコをより美味しく楽しんでもらいたい
レジや包装は凪と分担して担当
「ローズガーデンや遺跡など素敵な場所も沢山あるので、是非、遊びに来てくださいね」
チラシも配布しランテルナを宣伝

心地よい音色も煌めく雨雫も舞い散る花びらも…
「うん、すごく綺麗…」

  • Homme Fatale
    柞原 典la3876
    人間29才|セイント×ネメシスフォース

写真撮影OK
抱えた在庫売捌けやなんてリーマン時代思い出すわ
口揃えて意外や言われるけど、俺はふつーの元サラリーマンやで、ホストやない(苦笑
せやから、商品詳細情報(カカオ%比率、カロリー高低etc)教えてくれへん?
売込むなら『モノ』知らんとあかんやろ
ジャムやと加熱済やし、果物アレルギーは大丈夫か

試食提供で客引きしよ思うてるから、試食用チョコ入れる容器頼むなぁ
外からも見えるよう透明、且つ衛生面考えて蓋つきがええな
衣装に合うお洒落な感じやともっとええかも
それに試食用ピック添えて

男性陣の衣装は、揃いで執事服を調達
ランテルナの方に頼んだら借りれるやろか

基本はワゴンから少し離れた位置での試食提供&客引き
営業で鍛えた能力発揮(話術1
興味ありそう、視線が合った、時間を急いでなさそう…な様子の主に女性が標的(探索・追跡1
すっと接近
「嬢さん、甘いの苦手やあらへん?
「ほんだら、はいあーん(ピックで刺した試食チョコ口元へ
「エオニア特産のミーベルジャム入なんよ(微笑みさり気に商品説明
「ひゃっこいやろ。ぬくい珈琲もあるで、あっちどない?(ワゴンへ誘導
ワゴンの方は他に任す

バイオリン演奏の演出に嗢鉢羅使用(敵認識無し
白花弁のみを降らせ幻想的に
「ほぉ、巧いもんや。俺は特技あらへんもんなぁ

目指せ完売

●作戦は準備から始まっていた

 物を売るためには何が必要か? それは勿論、情報である。
 ボンボン・ショコラについては当然必須だ。加えてランテルナという施設のことも紹介するならその情報も必要となる。
「抱えた在庫売捌けやなんてリーマン時代思い出すわ」
 苦笑いを浮かべる柞原 典(la3876)へ、共に色々聞かせてもらおうとランテルナを訪れていた珠興 凪(la3804)、皆月 若葉(la3805)の2人が目を瞬かせる。仲良く揃ったそれに典はまた苦笑を浮かべて。
「俺はふつーの元サラリーマンやで、ホストやない。
 ……せやから『モノ』の商品詳細情報、教えてくれへん?」
 後半は向かいに座った担当者に投げかけられた言葉だ。

 例えば、カカオのパーセンテージ比率。
 例えば、カロリーの量。

 顧客は様々なことを気にするのだから、それらに答えられなければ売れるものも売れないだろう。
「なるほど、失礼しました。資料をお持ちしますね」
 頷いた担当者が席を立ち、すぐさま資料を持ってくる。ライセンサーの人数分刷ってきてくれたらしい。
(ジャムやと加熱済やし、果物アレルギーは大丈夫か)
 そんなことを考えながら資料に目を通す典。その傍らで若葉と凪は、ランテルナのこと自体も教えて欲しいと担当者に頼む。
「全く知らないわけではないんですが……」
「僕たちも、お客さんも、ランテルナのことを知るきっかけになったら嬉しいな、って思うんです」
 2人の言葉に担当者は頷いて、その資料も揃えつつこの場所やエオニア王国、ミーベルに関しても話し始める。聞いただけでも十分チラシに載せられそうなボリュームだ。


 ということで始まるチラシ作り。
 まずはやはりチョコレート──ボンボン・ショコラについて。中に入ったジャムの原料であり、エオニア王国で採れるミーベルに関しても外せない。パティシエのこともと載せているとチラシがあっという間に半分以上埋まってしまう。
「薔薇園とかランテルナの見所も載せたらどうかな?」
「いいね、じゃあそれをこの辺に……」
 余った部分へランテルナの情報を載せ、まずは仮の完成品。これを共に依頼を受けているライセンサーへ見せ、意見をもらいながらブラッシュアップさせていく。

「──2人は付き合っているのですよね?」

 チラシを見せにいくと日暮 さくら(la2809)からそう問われ、若葉と凪は目を丸くして顔を見合わせた。
 彼女とは2人ともほぼ初対面のはずだ。今だってチラシの意見を求めに来ただけで、友人より深い関係だとはなかなか分からないと思うのだが──いや、もしかして。
「……そんなに、恋人っぽく見えてる、かな」
 頬を染める凪。照れ笑いする若葉。2人は示し合わせ、首元からネックレスに通した指輪を出してさくらへ見せる。それを見た彼女はどこかホッとしたように微笑んだ。
 彼女が語った話は『異世界の若葉、凪』のもの。彼女の両親が友人だったというのだから、こちらの若葉や凪よりもっと大人びていたはずだ。
「両親と同年代でしたので、今は若返ったかのように感じています」
「つい最近、他の人にも同じような事を言われたよ」
 ふふ、と楽しそうに微笑む若葉。
 自分と同じ姿、同じ名前の他人がどこかの世界にいる──なんとも不思議な心地だ。けれど複数回も聞けば流石に疑う余地は何もない。
「もしかして、隊長達とも知り合いだったりするのかな?」
「ああ、そうかもしれないね」
 頷く若葉。凪の言葉にさくらは「隊長?」と聞き返すが、すぐ誰だか思い至ったようで。小隊の者たちは幼馴染だという言葉にやっぱりと凪は納得した。
「勿論、若葉と薙は生涯のパートナーとして歩んでいましたよ」
「生涯の……」
 ふわりと心が温かくなるような感覚。全く同じ自分たちではないけれど、どこかの世界の自分たちがそうあるのはとても嬉しくて、幸せだ。
 そしてそれを教えてくれたさくらは、きっと優しくていい人なのだろう。
「改めて、よろしくね」
 凪の言葉に、差し出された若葉の手にさくらは微笑む。その手はしかと若葉の手を、そして次いで差し出された凪の手を握り返したのだった。

 さらにその後日。
「やるからには完売させてみせるよ!頑張ろー!」
 アリア・クロフォード(la3269)とさくら、典が集まって作戦会議。議題は試食について、である。
「1つを試食にすると多いから……」
「2等分……いや、4等分?」
 試しにチョコレートを切って断面を見る。4等分だとジャムが溢れてしまいそうだ。
「2等分が良さそうやね。入れる容器は透明で蓋つきがええな」
 そのチョコレートを眺め、顔を上げた典は「頼むなぁ」とランテルナの担当者へ告げる。何もない容器よりは個々の値が張るだろうが、それ以上の売り上げになれば良いのだ。
「衣装に合うお洒落な感じやともっとええかも」
「衣装に合う……」
「じゃあ、薔薇とか! ね、さくら!」
 振り向いたアリアにさくらは微笑んで頷く。典はそれを見て男性陣の衣装も用意を、と担当者へ相談に行き。

 ──実のところ、本番より準備の方が時間はかかるものである。


●出張販売当日!
 首都の一角。販売準備を始めていた一同は既に道行く人々から視線をちらちらと受けていた。
「これは……この辺でいいかな?」
「はい、その位置で」
 脚立に登った若葉が凪から飾りを受け取り、ワゴンの屋根へ添えてみる。さくらや下で脚立を支える凪、そして他の者が頷いたのを見るとそこへ固定。
「次はこれ?」
「うん、それにしよう」
 はい、と若葉へ飾りを手渡す凪を含め、男性陣はスラリと見える執事服を見にまとっていた。さくらとアリアはランテルナの薔薇を意識して、髪に薔薇を差している。ユリア・スメラギ(la0717)はチョコレートをイメージした、フリルやレースの多いドレスだ。
「これからさくらちゃんの演奏するバイオリン、クラシック系なのよね。衣装はこれで大丈夫かしら?」
 問われたさくらはユリアを見て頷く。「柞原さんやアリアちゃんの演出も、楽しみね」というユリアの言葉にアリアは「任せて!」と拳を軽く握ってみせる。
「よく似合っていますよ、アリア」
「えへへ、さくらも似合ってるよ! とってもキレイ!」
 揃いのワンピースを褒めあったところで販売開始──の、その前に。
 薔薇やランタン、ミーベルを模した飾りに彩られたワゴンをパシャリ。これから販売開始の旨をコメントにつけて、SNSへアップした。
「はい、お待たせしました」
 もう大丈夫と頷いたさくらをみて、アリアが取り出したのは巨大なクラッカー。空へ打ち出すとハロウィンちっくな飾りが飛び出してくる。
 周囲の人々が驚いたようにそちらを見る。遠くの人まで届いてますように! と願いつつ、アリアは声を張り上げた。
「皆ー! 特別演奏会始まるよー!」

 伴奏が始まると共にさくらの周りにキラキラとホーリーライトの光が降り注ぐ。
(美人だから様になるよね……女神様みたい)
 ほぅ、と息をつくアリア。さくらの演奏が始まると、ユリアはそれらをよく聴いて踊りを優しく穏やかに合わせていく。その手にはボンボン・ショコラの入ったバスケットがあり、人々は「あれは何だろう?」と眺め、やがてワゴンで販売している商品だと気づいたようだった。
 甘く優しく、曲目はバレンタインから聞き馴染みのあるクラシックまで。曲を変えるたびにあたりを舞う光や雨に、さくらは心の中で感嘆しながら演奏を続けていた。
 何も言わずとも、視線を交えずとも、幼馴染だから分かることがあるということだろう。
「綺麗だね…」
「うん、すごく綺麗……」
 凪と若葉は見とれながら、さくらに変わって彼女たちの撮影。後ほど確認してSNSへアップしてもらおう。
「ほぉ、巧いもんや。俺は特技あらへんもんなぁ」
 そう呟く典もまた、白蓮のような白い花弁をさくらたちへ降らせて舞台を彩る。度々出てくる演出は客受けも良いようで。
 客がある程度寄ってきたら、キリの良いところで踊りを止めたユリアがそちらへ近づく。
「いらっしゃいませ、お客様。エオニア発祥の果実ミーベルを使った、甘いジャム入りのショコラはいかがですか?」
 示されたワゴンの装飾におお、と思わずカメラを向ける客たち。同じように販売の様子を写真へ収めていたさくらが「SNSにアップして大丈夫ですよ」と声をかける。最も、それが狙いでもあるのだが。
「他の子に撮影して貰えるのは、あたしとしても嬉しいわ」
 こちら側で必ずしも撮影環境が整うわけではない。各々で撮影して広めてくれるならそれに越したことはない、ということで。
 自分も撮ってくれて構わないと声をかけるユリア。その傍ら、ちらちらとこちらが気になっている様子の女性へ典が近づく。
「嬢さん、甘いの苦手やあらへん?」
「へっ? え、ええ勿論」
「ほんだら、はいあーん」
 目を丸くした女性の口元へ、ピックで刺した試食のチョコを持っていく典。思わず口を開けてしまった女性は恥ずかしそうにしながらも「美味しいわ……」と呟いた。
「エオニア特産のミーベルジャム入りなんよ」
 さりげない商品説明に思わず聞き入ってしまった女性はワゴンの前へと案内される。その後も次々と彼の話術に引き込まれる客がチョコを求めて、或いは温い珈琲も共に求めてワゴンの前へ長蛇の列を作ったのだった。
「待っとる間にSNS、投稿してくれはったら嬉しいなぁ」
 勿論SNSでの宣伝推進も忘れない。必要とあらば客との連絡先も交換する典は、しかし当初の目的を忘れることなく前が空いたら客を詰めさせる。
「本日限定、ランテルナからの出張販売です」
 凪と若葉はチョコレートの試食や珈琲を配りながら、レジや包装を担当する。忙しくないと言えば嘘になるが、2人でやっていると思えば楽しさだってあるものだ。
「ありがとうございました!」
「ローズガーデンや遺跡など素敵な場所も沢山あるので、是非、遊びに来てくださいね」
 にこやかに商品を手渡す凪。若葉が用意してあったチラシを配ると客が興味深げにそれを眺め、懐にしまう。
「ねえ、この珈琲はどこで?」
 珈琲豆の仕入先も問われる2人。チョコレートとよほど相性が良かったらしい。
 一方のさくらは演奏の合間に販売風景などの写真を撮り、SNSへ上げていた──が。
「ちゃんと可愛く写ってるのを上げてね?」
 アリアが苦笑しながら可愛らしくポーズを取る。年頃の乙女だもの、いつだって最高に可愛く撮られたい。
 そんな彼女は誰からどう見ても、最も写真に写されている。その理由は頭でひょこりと揺れる、もふもふなうさぎ耳。もふもふ好きとしては見逃せないもののようだ。
 さて、SNSに写真を上げたら演奏再開!

「ミーベルジャムを使った限定チョコレートだよ! 今しか買えないよー!」

 アリアの呼び込みが途切れかけていた客足を再びこちらへ向けさせる。おかげで誰も彼もが休む暇なく、けれど楽しそうだ。
 さくらが途中途中の写真をSNSにアップし、またそれで人がやってくる。この勢いなら完売もすぐだろう。
 何人目かもわからない客へチョコレートを渡し、若葉は小さく凪を呼んだ。
「ねえ、凪。いつかさ……」
「……うん、そうだね。僕も一緒のこと、思ってる」
 笑顔が溢れるお店を作りたい。今ここに立っているからこそ、尚更そう思う。

 こうして、ランテルナ出張販売は大盛況となった。

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