オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
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【甘薔】親愛、友愛、それとも恋愛 茶務夏

形態
イベント
難易度
普通
価格
500
ジャンル
恋愛 日常 
参加人数
111~25人
予約人数
10010100
基本報酬
100000G
100SP
1000EXP
おまけ報酬
10000G
相談期間
4
締切
2020/02/21 20:00
完成予定
2020/03/07 20:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●平穏な休日を乱すもの
 地中海に浮かぶ小さなエオニア王国の一角に、リゾート施設「ランテルナ」がある。
 ローマ時代の遺跡を活用しつつ、コテージは古代ギリシャ様式の建築で、目玉としては一年中バラが咲き続けるローズガーデン。
 昨年暮れにオープンしたばかり。王国内での雇用を創出し、観光の新たなシンボルとしての役割も担っている。

 バレンタインデーの過ぎた週末、多くのライセンサーがそこに招かれていた。新メニューのモニターという名目ではあるが、ランテルナのオープンから現在に至るまで、いや、ランテルナのみならず何かとお世話になっている、そんな彼らへの一種の慰労会としての意味合いが強い。
 広々としたレストランを用いた立食形式。外のローズガーデンでは一般客が散策している。
 おいしい食事や気の合う仲間との歓談。日々の疲れを癒やすように時間は流れる。
 しかしそれを、一体のナイトメアが破った。

「ナイトメアだ!」
 外からの叫びにライセンサーは一斉に飛び出した。
 見れば、ローズガーデンから、レストランのある管理棟へと、向かってくるものがある。
 最近、どこぞに妙な島が出現したなどの話も聞く。あるいはナイトメアではなく放浪者なのかもしれない。そんな風に考えていた慎重派の気持ちを打ち砕くような光景があった。
 人間大の板チョコに、人間の手足が生えている。屈強さやすね毛の濃さから見るに、成人男性の手足。
 その板チョコ男は、両手から小さな消しゴムほどの大きさの粒を大量に周囲の人々に投げつけていた。当てられた人は少し痛がっているが、重さは大したことがないのか深刻そうな痛みではない。よく見ればそれはチョコだった。
 板チョコ男はそれを次々と投げつけ続ける。虚空から産み出すように、両手に握られたチョコは一向になくなる気配を見せない。
 容貌に関してはともかく、その異常能力をEXIS装備もなしに駆使できる(そもそもEXIS装備があってもそんな真似はまずできないが)のは、ナイトメアと考えて間違いなさそうではあった。
「おおかた精神捕食型だな!」
「他に何かされる前にさっさと仕留めるぞ!」
「くたばりやがれ!!」
 血の気の多い者たちが一目散に突っ込んでいく。
 それに負けじとばかりに、板チョコ男は小粒のチョコを盛大にまき散らした。
 後方にいたソアリリも当てられたそれは、個包装。地面に落ちても食べるのには問題なさそうな点は評価できる。


●特殊過ぎる能力
「何か違和感が生じてきましたが……このチョコ自体に何かの効果が?」
 呟きながら、ソアリリは物陰に隠れて携帯端末でナイトメアを調べる。特徴と行動を打ち込みまくり検索、撮影した写真からの画像検索と併用。
 十五年ほど前の記録がヒットした。
 皆の予想通り、精神型。ばらまかれたチョコにも毒などがないことには安堵する。
 が。
「この能力……」
 書かれていた情報にソアリリは戦慄する。
 各人にぶつけられたチョコは一種の惚れ薬として作用し、最初に目にした相手を好きになってしまうという……愛しい家族や親友、あるいは恋人のように。
 あっさりとナイトメアを駆逐したライセンサーたちに、とりあえずそれらの情報を伝えながら、どうしようかとソアリリは悩む。彼女自身はまだ誰も見ていない。
 しかし効果は二時間持続するという。その間、モニターと睨めっこともいかないだろう。
 恐る恐る、ソアリリは視線を上げた。

●任務
 板チョコ男型ナイトメアが現れた際の混乱の後始末(小粒チョコの散乱や建物の内外で椅子が倒れた程度で、大した被害はないので、プレイングに必ず書かねばいけないわけではない)。

●状況詳細
 昼下がり。よく晴れていて、天気が崩れる心配はなし。寒くもない。
 PCは全員、すでに誰かを目にした状態でスタート。

●場所詳細
 ランテルナの、管理棟(レストランやフロントやロビー、売店などのある建物)からローズガーデンにかけてのエリア。一般人の老若男女も訪れていて、巻き込まれている。

●敵詳細
 板チョコ男型ナイトメア×1……討伐済み。精神捕食型。
特殊スキル「愛のショコラ」:小粒のチョコ(食用可)を大量にばらまいて、ぶつけた相手に特殊な精神状態(後述)を付与、その際に生じるエネルギーを捕食する。
※チョコをぶつけられた者は、近くにいる最初に目にした相手に、親愛・友愛・恋愛などの強い好意を抱きます。その相手との普段の関係がどうであろうと、その好意は非常に強いものです。(相談の上、プレイングで相手を指定してください。指定がない場合、現場にいた一般人の誰かが対象となります。ソアリリは、一般人あるいは指定してくれた方がいればその方が対象となります)
 AとBが互いに相手を目にした場合、A←→Bの状態。仲良しあるいはラブラブと言ってよい関係です。
 AがBを、BがCを、Cが別の誰かを目にした場合、A→B→Cと好意の矢印が成立。片思いめいた関係になりますが、BからA、CからBへの感情は、「好意を寄せられているのは悪くない」という程度で、迷惑に感じたりギスギスしたりとはなりません(普段の関係次第では、その限りでもありませんが)。
 二時間有効。二時間経過後、その間の記憶が残っているかはランダム(プレイングで指定可能)。

こんにちは、茶務夏です。
バレンタインで何をしようか考えた末、こんなシナリオを思いつきました。
一種のIFシナリオと考えてみるもよし、今後の関係のきっかけにするもよし、楽しんでいただけましたら幸いです。

  • 未来をその瞳に
    霜月 愁la0034
    人間16才|ゼルクナイト×ネメシスフォース

★同行
ラック(la3613)
親しい友人
口調:呼び捨てタメ口

★行動
ラックを見て、お互いに好意を向けあっている状態に。
一緒に後片付けをしながら、くっついたり見つめ合ったり仲良く過ごします。
「二人の時間が台無しにならなくて良かったよ」
撒き散らされたチョコも食べられそうならあーんしたり。
「あ、これ美味しいね」
尚、元々強い好意(※親愛)を抱いており距離感も近いため、実は普段とあまり変わらなかったりします。

効果が切れても記憶は残っている状態です。
「……何か、普段とあまり変わらなかったよね」
このハプニングもむしろ楽しかったね、と思える程度には羞恥心もありません。

アド絡み歓迎

  • 王国の猛将
    ラルフla0044
    放浪者15才|ゼルクナイト×セイント

相手については特に指定なし。性別含めて
ネタアドリブ他全てお任せ。カオスだと良いなと

惚れたら口説き落とせ。化物どもよりマシな相手を得るチャンスだと言われてるので惚れたら全力で口説き落とすとも。
経験談やら過去話やらで食いつき良いものとかやったり、見たら惚れるとわかってて、かつ相手がまだ誰も見てないならそれを利用して引っかかるとか
全力っすよ

効果終わった後記憶残っても残らなくても
残るなら逆に考える。つまり口説く経験が出来たから本命出来た時に落とす手段をさらに盤石に出来ると

  • 新たなる道
    黄昏 空la0099
    放浪者18才|スピリットウォーリア×ゼルクナイト

同行者:日下 葵葉さん(la3792)
日下さんとはとある依頼の場で知り合った
その後も同じ依頼に入った時には無茶するオレを後ろから援護してくれた
信頼、している…でも、多分それだけじゃない
一緒にいると楽しくて心が落ち着く自分がいる
見た目は無事そうだけど念の為彼女の無事を確認する為声を掛ける
その口は自然と彼女が周りから呼ばれている愛称の「アオ」と呼んでいた
湧き上がってくる心の高揚感のままに一緒にローズガーデンを散歩
普段なら気恥ずかしくて行わない手を繋いで歩くという行為、それだけでもなんだか満ち足りた気分になる
二時間後、はっきり残る記憶に気恥ずかしさから身悶え
アドリブ歓迎

何をこそこそしてやがるですか、ソアリリ様?
チョコの拾い食いなぞしていたらお腹を壊すですよ(もぐもぐ)

ううーむ、味はふつーです
毒とかあるんです?これ
(効能を聞き)
なんだってーーー!!?と叫び
しばしの静寂のあとそっと両手で両目を隠す

まー、男性とラブラブになれなかったのはソアリリ様にとって残念かも知れねーですがここはソアリリ様の理想の男性像とか男性経験なぞを聞き出すちょうどよーい機会なのです!

ちなみに私にはそんな経験や概念はこれーっぽっちもねーです!!!
むしろこのチョコのせいで特に理由もなくソアリリ様に興味がぶくぶくと湧いているだけです
さあさあ!

絡みOKです

目的
 ソフィアンリーゼと家族になる

同行者:ソフィアンリーゼ(la3797)


行動:相手に家族になりたいと思いを告げるが、熱烈なアプローチを受ける。嫌じゃないけど、女の子同士でそれは流石にと、説得を試みながら、逃げまくる。

「わたしもよソフィー。ご店主と女将さんは、わたしを実の娘のように思ってくれているけど、いつかはお別れしなくちゃいけないわ。あなたとは、ずっと一緒にいられるもの。わたし、ずっと前から家族が欲しかったの。うれしい」
「落ち着てソフィー、ほら、人が見てるし、真昼間だし?」

  • 首があるなら刈ってみせる
    紅迅 斬華la2548
    人間25才|セイント×ネメシスフォース

ソアリリちゃん?可愛い…!妹にしたいー!

行動
ナイトメアの影響でソアリリに妹に対する愛情のようなものを抱く
一人っ子の為、姉妹や兄妹に憧れがあった為
「ソアリリちゃんお姉さんの家に養子に来ましょ!きっとお父様もお喜びになります♪」
とはぐはぐなでなでして猫っ可愛がり

近くにいるギャラルホルンもついでに猫っ可愛がり
「ギャラちゃんも紅迅家においで~♪可愛い~♪」

嫌がるなら無理強いはしない
あくまで愛情なので本人の意思尊重
「二人共なんて可愛らしいのかしら…!」

効果が解けたら平謝りする
ソアリリとギャラちゃんに友達になりましょ!と提案


  • 陽波 飛鳥la2616
    放浪者22才|スピリットウォーリア×スナイパー

※飛鳥は故郷に想い人(弟)がいて非常に一途である為、恋愛感情は一切発生しない

一般人の同年代の胸が慎ましやかな女性と目が合う

「大丈夫?怪我してない?

その人に救急セットを持って心配そうに気遣いに行くが
初対面の筈なんだけど親しい相手に感じる
・・胸?胸が似ているから・・?(失礼(

人見知りの飛鳥は誰かを何かに誘う事は滅多に無い
だがこの日は一緒にご飯でも食べない?と誘っていた
そして気づいたら小さな胸の悩みトーク

「これでも努力したのよ、私・・
豊胸に効く食べ物とか体操とか・・うぅ・・

「分かる、分かるわ・・苦労してるわよね、お互いに・・

とお互いを慰め合いながら二時間過ごす(

目的:
ナイトメア撃破後の後始末。
なんか変な感じがするが、気のせいだろう。

行動:
変な気分は気がかりだけど、まずはそこら中に転がったチョコを食べられるかどうか調べ、
問題が無ければどんどん食べていく。美味しいと尚良し。
チョコを口の中に入れる=口の中にぶつけると思われるので、
どんどん感情の勢いはは悪化していくが、さいきょーなので問題ない…はず!
なお限界まで行ったら色んな意味で大爆発する模様。

……対象は誰かって?困ったらダイスロール、しよう!

  • 寡黙な翡翠
    LUCKla3613
    放浪者29才|グラップラー×ゼルクナイト

同行者
愁(la0034)
親しい友人。お互いを見て好意を向け合う
戦闘中の連携のアイコンタクトが原因(
「全くだ。ナイトメアは総じて空気を読まんものだが…愁との休日を邪魔されるのは頂けん」
片づけたらくっついてお喋りしたり、甘やかしたり
「拾い食い…個包装か。大丈夫だな」
チョコは勿体ないし食べる。ナイトメア由来は気にしない
「甘い。が、悪くない。一緒に食うと美味いな」

…とはいうが実は普段とさほど変化していない。いつもとっても仲良し!
なので2時間後も殆どそのまま
「…ん?特殊な効果があったのか」
「疑わしいレベルで普段のオフと変わらんかったな…」
記憶は残る。きっと楽しい思い出になる。

  • 深慮の葉
    日下 葵葉la3792
    人間21才|ネメシスフォース×スナイパー

♪同行者
黄昏 空。
飛鳥も友人。

♪目的
もともと憎からず思う、相手
曰く付きのチョコに乗じ、年下の男の子にリード、されてみる
▽口調
ちょっと、特殊。ご注意。

♪行動
ローズガーデンで買ったもの、プレゼント、する。
「雪結晶の、ガラス細工」
かつて、大事な人に贈る物として、流行。雪結晶は、天の奇跡の造形、唯一無二。
それをひとつひとつ手作り、ガラス細工にすることで、世界にたった1つの『天から授かった融ける事のない想い』という意味合い、持つ。
二つに分かれるよう、作られていて、それぞれストラップやピアスにして持つ、みたい。
「細かくいえば、お揃い、ではないけれど」
今後も、よろしく、空。

同行者:アルフィンレーヌ(la2183)

なんだかよくわからないけど、レーヌへの気持ちが、ありえないほど盛り上がってきている。大好きがどんどん胸にいっぱい溢れてきて、もう我慢できない。女の子だからとか、受け入れてもらえなかったらとか、怖くて言えなかったけど、今は勇気100倍だ。レーヌはぼくのものだ。誰にも渡さないぞ!

「レーヌ!ぼくはきみが好きだ。ずっと一緒にいたい」
「違う!そうじゃない。ぼくの言っているのはこういうことだ!」(お姫様抱っこ)

●様々な組み合わせ
 ――え? ええ?!
 ソアリリから情報を伝えられ、それまでごく普通に振る舞っていた陽波 飛鳥(la2616)は、大いに混乱した。
 飛鳥は故郷の世界に想い人がいて非常に一途。彼以外への恋愛感情が自分に芽生えるとは思えないが……。
 そんな彼女の目が合っていたのは、一般人と思しき同年代の女性。
「大丈夫? 怪我してない?」
 その人に救急治療セットを持って近づく。
 ――べ、別におかしくないわよね? 一般の人を気遣うのはライセンサーの務め!
「大丈夫です。ありがとうございます」
「よかった……」
 しかし相手へかけた声は、自分でも自覚できるくらいずいぶん親身なもの。
 そして応じてくれた相手とは初対面のはずなのに、親しい相手に感じる。そもそも飛鳥は人見知り気味なのに。
 恋愛ではない。彼に対して覚える、身を焦がすような痛みをも伴う感情とは程遠い。
 でも確かにこの気持ちは、常ならぬものではあった。
 ナイトメアの変な能力がきっかけだとは思いたくないくらい、尊い感覚。なのでその理由を飛鳥は探そうとする。
 ――胸? 胸が似ているから……?
 自分と同様に胸が慎ましやかな相手に対し、飛鳥は失礼なことを考えた。



 ソフィアンリーゼ(la3797)とアルフィンレーヌ(la2183)は、ソアリリが情報を周知するよりも前に、互いに見つめ合っていた。
 特にソフィアンリーゼの方に、顕著な変化が起きる。
 ――なんだかよくわからないけど、レーヌへの気持ちがありえないほど盛り上がってきている。大好きがどんどん胸にいっぱい溢れてきて、もう我慢できない。
「レーヌ! ぼくはきみが好きだ。ずっと一緒にいたい」
 女の子だからとか、受け入れてもらえなかったらとか、そんな不安から怖くて言えなかったけど。
 ――今は勇気百倍だ。レーヌはぼくのものだ。誰にも渡さないぞ!

 一方、アルフィンレーヌには少し違う形で影響が出ていた。
「わたしもよソフィー」
 ソフィアンリーゼを喜ばせたのも束の間、アルフィンレーヌは続けた。
「ご店主と女将さんは、わたしを実の娘のように思ってくれているけど、いつかはお別れしなくちゃいけないわ。あなたとは、ずっと一緒にいられるもの」
 彼女が地球で身を寄せているのは和菓子屋だ。老夫婦はよくしてくれているし、彼女自身も看板娘としてお手伝いをしているが、いつまでも続く暮らしではない。
 それに対し、二人は同じ世界の出身だ。宇宙を駆けて星から星へ、悪しき宇宙人や怪獣を倒してきた。
「わたし、ずっと前から家族が欲しかったの。うれしい」
 家族愛と恋愛の、微笑ましくもかなり大きな食い違い。
「違う! そうじゃない。ぼくの言っているのはこういうことだ!」
 叫ぶように言って、ソフィアンリーゼはアルフィンレーヌをお姫様抱っこした。
「お、落ち着いてソフィー?」
 熱烈なアプローチを受けて、アルフィンレーヌも嫌じゃない。嫌じゃないけど、女の子同士でそれは流石に。
「ほら、人が見てるし、真昼間だし?」
「待ってくれレーヌ! 」
 説得を試みながら逃げまくり、追いまくる。小さい女の子同士の追いかけっこに見えて、そこには強い思いが秘められていて、でも全体としてはこのドタバタな騒動の中にきれいに収まっていた。



「さて、排除自体は容易だったな」
 LUCK(la3613)は倒れたナイトメアを見下ろしながら、霜月 愁(la0034)に声をかける。
 彼らは戦闘中に連携のためアイコンタクトを取っていた。
「二人の時間が台無しにならなくて良かったよ」
 ただ、二人は元から親しい友人だ。このランテルナへも誘い合わせてやって来た。前々から距離感も近い。
「まったくだ。ナイトメアは総じて空気を読まんものだが……愁との休日を邪魔されるのはいただけん」
 ゆえに、二人は現状に何の違和感も抱いていなかった。
「とりあえず片づけようか」
 ナイトメア本体を回収してもらったり、倒れた椅子を直したり、派手に撒き散らされたたくさんのチョコを周囲のライセンサーたちと共に拾ったり。
 愁はそのチョコを食べてみた。癖がなく食べやすいミルクチョコレートだ。
「あ、これ美味しいよ」
「おい、拾い食いは……個包装か。大丈夫だな」
 確認し、ラックは安心する。ナイトメア由来であることは気にしない。
「はいラック、あーん」
 愁によって口元に運ばれたチョコ。もったいないし食べることに。
「甘い。が、悪くない。一緒に食うと美味いな」
「でしょ」
 ラックが微笑み、愁はにっこりと満面の笑み。
 一緒に後片づけをしながら、くっついたり触れ合ったり。じゃれ合うような、無邪気なスキンシップが繰り広げられる。



「大丈夫かい?」
 戦闘が終わった直後、黄昏 空(la0099)は日下 葵葉(la3792)に声を掛けた。見た目は無事そうだけど念のため。
「アオ」
 その口は自然と、彼女が周りから呼ばれている愛称を発していた。

 空が「日下さん」と知り合ったのは、哀しい恋人たちに関わる依頼。
 ――その後も、同じ依頼に入った時には無茶するオレを後ろから援護してくれた。
 女子高生たちを救出したり、獅子人と戦ったり。他にも何度も。
 ――信頼、している……でも、たぶんそれだけじゃない。
 戦闘だけでもなく、忘年会や初詣など、共に過ごす機会は次第に増えつつあった。そのたびに、心地よさを感じる。
 一緒にいると楽しくて心が落ち着く自分がいる。それを空は感じていた。

 空から愛称で呼ばれたことに、葵葉は少し驚いた。もともと憎からず思う相手ではあるが、そういう積極さはいささか予想外。
 と、ソアリリからの連絡が耳に入る。倒れたナイトメアの特殊な能力。そういうことかと納得し、同時に空がまず自分へ目を向けたことをうれしく思い、自分も別の人へ目を向けていなかったことに内心胸を撫で下ろす。
 ――曰く付きのチョコに乗じ、年下の男の子にリード、されてみよう。
 自分のこの気持ちがどこまで影響を受けているのかはわからない。でも、それをも利用して、葵葉は動いてみる。



「ソアリリちゃん? 可愛い…! 妹にしたいー!」
 紅迅 斬華(la2548)は今回、クロアチアの戦いで重体だったゆえ、ナイトメア襲来の際も後方に下がっていた(もっとも、それを表に出さないプロ根性と、重体でもソアリリよりおおむね高いほどの能力ゆえ、たいていの一般人は気がつかなかったが)。なので同じく後方にいた少女に目が向いた。

「何をこそこそしてやがるですか、ソアリリ様?」
 ギャラルホルン(la0157)にすぐ近くで声を掛けられ、ソアリリは目を開く。少女型のヴァルキュリアが視界の中心にいる一方、少し遠くからソアリリ目指して(重体ゆえ)ゆっくり進んでくる斬華も視野に入っていた。
「ヴァルキュリアでもねーのにチョコの拾い食いなぞしていたらお腹を壊しかねねーですよ」
 言いながら、ギャラルホルンはもぐもぐと拾ったチョコを食べていく。
「ううーむ、味はふつーです。毒とかあるんです? これ」
「毒はないはずですけれど……」
 ソアリリは、さっき得た情報である、チョコの効果を説明する。
「なんだってーーー!!?」
 ギャラルホルンは叫び、しばしの静寂のあとそっと両手で両目を隠すが、もう遅かった。

 そこへ斬華がやって来た。
「ソアリリちゃんお姉さんの家に養子に来ましょ! きっとお父様もお喜びになります♪」
 いきなりはぐはぐなでなでして猫っ可愛がり。何が起きたか一発でわかる。
「く、紅迅さん、これはナイトメアの影響で……」
「斬華お姉ちゃんって呼んでください♪」
 斬華は一人っ子であった。姉妹や兄弟への憧れが、今回の件で一気に沸き上がったのだ。
「ギャラちゃんも紅迅家においで~♪ 可愛い~♪」
 そしてついでと近くにいるギャラルホルンも猫っ可愛がり。
「何しやがるですか紅迅様!」
 される側のギャラルホルンはいつものようにきつい口調でじたばたするが、斬華が純然たる好意を向けているだけともわかるので、全力でふりほどくこともできず、なされるがままになっていた。



 雪室 チルル(la2769)はナイトメア撃破後の後始末に勤しんでいた。なんか変な感じはするが、気のせいだろうと無視してる。
 まずはそこら中の床に転がったチョコを拾っていった。食べられるかどうか確認し、ソアリリの言によれば毒はなさそうとのことなので(他にも何か言っていたが、戦闘は終わっているので聞き流してしまった)、どんどん食べていく。
「なかなか美味しいわね!」
 チョコを口の中に、ぶつけるように放り込んでいく。どんどん感情の勢いは悪化していく。
 変な気分は気がかりだけど、さいきょーなので問題ない……はず!
 床を見つめ、チョコを食べ続け、おかしな感情が高まりまくった末。
 目の前に立つラルフ(la0044)を認識した。

 ラルフはチョコをぶつけられた直後、ソアリリが情報を伝達するよりも先に、チルルを目にしていた。
 惚れたら口説き落とせ。
 出身世界で見てきた女性たち、特に貴族系の未婚女性の凄まじさを思い出す。油断すればたちまち婚約決定させられ逃げられない。生活は束縛だらけ。あれはガチで人生の墓場だと思い知らされた。
 あの化物どもよりマシな相手を得るチャンス、逃すわけにはいかない。
 ナイトメアの能力を聞き、焦りはするが、じっと観察し続けていたチルルは誰かに目を向ける様子もなく後始末に励んでいる。そんな姿も好ましい。
 ならばこの能力を最大限に利用してやろうではないか。
「全力っすよ」
 いつにない口調で独り言ち、ラルフはチルルに自分を認識させた。

●高まる熱の、発散法
「あ……う……」
 チルルはラルフの顔を見るや、真っ赤になった。いつもの元気娘の雰囲気はどこへやら、雪国育ちのやや白い肌を傍目にわかるほど赤くする。
 そんな様子も愛おしく思いながら、ラルフは思案する。経験談や過去話など、彼女の食いつきの良いものはどれだろう。
 そう言えば、彼女は常日頃から――
「あたいはさいきょーを目指すのよ!!」
 大爆発したように、チルルが絶叫した。
「彼氏は欲しいけど、あたいより強い人じゃなきゃお断り! あんたに勝負を挑むわ!」
 まくしたてるが目は泳ぎ、抜き放った大剣もふらふらと危なっかしい。
「俺が君より強かったら、君は最強になれないのでは?」
「う……! こ、超えるべき壁になってもらうのよ!」
 からかうように応じて斧を取るラルフ。チルルは錯乱気味に挑みかかった。

「大丈夫だろうとは思うが……用心のために行くか、愁」
「そうだねラック」
 ラックと愁は連れ立って、ロビーで剣戟を始めた二人を外へ追い出しにかかる。

「人々に迷惑をかけては駄目。ほら、ソフィーも行きましょう」
「レーヌ、待って!」
 アルフィンレーヌもこれ幸いと二人の監視と周囲の護衛に向かい、そうなるとソフィアンリーゼも後を追い真面目に働くことになる。



 嵐のような喧騒が外へ去り、ロビーは本来のにぎやかさを取り戻した。チョコをぶつけられた老若男女が思わぬ組み合わせで縁を結び、どこか浮つきつつも華やいだ雰囲気が生まれている。
「まー、男性とラブラブになれなかったのはソアリリ様にとって残念かも知れねーですがここはソアリリ様の理想の男性像とか男性経験なぞを聞き出すちょうどよーい機会なのです!」
「ギャ、ギャラルホルンさんは……」
「ちなみに私にはそんな経験や概念はこれーっぽっちもねーです!!! むしろこのチョコのせいで特に理由もなくソアリリ様に興味がぶくぶくと湧いているだけです!」
 話を逸らそうとしたソアリリの努力は空しく、ギャラルホルンに「さあさあ!」と詰め寄られる。
 ちなみにそんな二人は、ロビーのソファに座る斬華の膝の上。ぴたりとくっついて座っていた。ソアリリも、質問に困惑はしつつもギャラルホルンに寄り添うようにしている。
「二人共なんて可愛らしいのかしら……!」
 あくまで愛情なので本人の意思を尊重し、嫌がるなら無理強いはしない。そんな斬華の気持ちは二人にも伝わり、おとなしく抱っこされるがままになっている。



「これでも努力したのよ、私……豊胸に効く食べ物とか体操とか……うぅ……」
「最初は軽い気持ちだったのよね……。いずれは普通に大きくなるだろうし、まあ気休めに、程度で始めたのに……いつしか本気に……」
「わかる、わかるわ……苦労してるわよね、お互いに……」
 飛鳥はローズガーデン内のフードコートで、女性と話し込んでいた。
 誰かを何かに誘うことは滅多にない飛鳥だが、この日は一緒にご飯でも食べない?と誘っていた。
 そして気づいたら小さな胸の悩みトークに。同病相哀れみ、話題はどこまでも弾んでいく。



「飛鳥も、なかなか楽しそう」
 葵葉と空はローズガーデンを散歩していた。友人の姿を目に留め、葵葉は呟く。
「何よりだな。みんな楽しいに越したことはないさ」
 空は湧き上がってくる心の高揚感のままに振る舞う。
 普段なら気恥ずかしくて行わない、手をつないで歩くという行為。それだけでもなんだか満ち足りた気分になる。
 そんな気持ちが足取りに反映したか、それなりに広い庭園のはずなのに案外早く巡り終えてしまった。
「ちょっと、待ってて」
 葵葉は空を止めると、隣の売店へ入った。

●熱から覚めて、記憶は胸に
 そして二時間が経ったものの。
「何か、普段とあまり変わらなかったよね」
「……ん? 特殊な効果があったのか」
 普段から仲の良い愁とラックにとっては、驚くほど変化のない二時間になっていた。
「疑わしいレベルで普段のオフと変わらんかったな……」
 せいぜい、いつもよりスキンシップが多かったくらいだろうか。
「でも、このハプニングもむしろ楽しかったね」
「そうだな、いつも通りに」
 今日の出来事も、きっと楽しい思い出になる。確信を抱きつつ、ラックは言った。



 飛鳥は、今日初対面の女性と向かい合って、途方に暮れそうになっていた。
 お互いを慰め合いながら二時間。そこで魔法は解け、先ほどまでの親密な気分は失せてしまう。相手も居心地が悪そうだ。
 人見知りな自分が顔を出しそうになる。何か口実を作ってこの場から逃げそうになる。
 ――でも。
 傷の舐め合いのような会話ではあったけれど、楽しかったことは間違いなくて。
「あの……よかったら、連絡先でも交換しませんか」
 思いきって、言ってみた。



 ――逆に考えよう。
 戦ったり恋の言葉を交わし合ったり、狂乱めいた二時間が過ぎ、その間の記憶に少しばかり頭を掻きむしりたくなる衝動に駆られながらも、ラルフは思う。
 ――口説く経験を積めたのだから、本命ができた時に落とす手段をさらに盤石にできる、と。
 その隣で、チルルは顔を赤くしたり青くしたり。
「えー」
 ラルフが口を開くと、チルルはびくんと身を震わせる。
「今回のことはナイトメアによる不幸な事故なので、忘れることにしましょう」
「そ、そうね!! ていうか、あたいは何にも覚えてないし!!」
 大声で言って、チルルは急ぎ足にその場を去っていった。



「ごめんなさい……」
 効果が解けた斬華はロビーの絨毯に正座して、二人に平謝りした。
「いえ、別に、その」
 ソアリリは、さっきまでの時間を振り返る。ギャラルホルンと抱き合うようにして、その上から斬華の腕に抱かれていた二時間ほど。
 それは、久しく失われていた家族の温もりによく似ていた。
「気にするこたーねーですよ」
 ギャラルホルンはぶっきらぼうに言ってそっぽを向く。でもそれはいつものこと。
「それで、よかったらなんですけど……改めて、ギャラちゃんとソアリリちゃん、お友達になりましょ!」
 だから彼女もこの提案を断りはしないんじゃないかと、ソアリリは思った。



 逃げるアルフィンレーヌを追いかけ回していたソフィアンリーゼは、効果終了後、二時間の記憶による羞恥に震えた。
「レ……レーヌ。これは、その、あの……」
「あら、どうしたのソフィー? わたし、おかしなナイトメアがチョコをばらまいたところまでしか覚えていないのだけど」
「え? 覚えていないのかい? よかった……」
 安堵するソフィアンリーゼを見ながら、アルフィンレーヌは嘘をついたことを内心で詫びた。
(本当はわたし、ソフィーのことどう思っているのかしら……)
 悩むものの、答えは簡単には見つかりそうになかった。



 空は二時間後、はっきり残る記憶に気恥ずかしさから身悶えていた。
 一方の葵葉は、売店で買ったものを取り出した。
「プレゼント、する。雪結晶の、ガラス細工」
「え……」
 かつて、大事な人に贈る物として流行した品だ。
 あらゆる雪結晶は唯一無二の、天の奇跡の造形。それをひとつひとつ手作りのガラス細工にすることで、世界にたった一つの『天から授かった融ける事のない想い』という意味合いを持つという。
「二つに分かれるよう、作られていて、それぞれを持つ、みたい」
 説明しながら、葵葉は実際に二つに分けてみせた。美しい造形のストラップが現れる。
「細かく言えば、お揃い、ではないけれど」
 片方を差し出して、葵葉は空に言う。
「今後も、よろしく、空」
「こ、こちらこそ……アオ」
 さっきまでの楽しさを一つのきっかけに、空は葵葉の気持ちをしかと受け取った。

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