オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
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とある放浪者の試練・後編 久遠由純

形態
ショート
難易度
難しい
価格
1500(EX)
ジャンル
バトル 救出 
参加人数
105~10人
予約人数
10010100
基本報酬
230000G
230SP
2300EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
4
締切
2020/02/01 12:00
完成予定
2020/02/15 12:00
機体使用
-
関連シナリオ
とある放浪者の試練・前編

●少年と放浪者
 地中海に浮かぶ小さな島国エオニア。
 西部の海辺に程近い村で、ヨナタンという少年は近所の人に面倒を見てもらいながら一人で暮らしていた。
 なぜなら、5年前のナイトメアの襲撃で家族が全員、父も母も、弟達も、皆殺されてしまったから。
 その悲しみが今でもヨナタンの心を苛み、ナイトメアがこっちの世界に来たのは放浪者が来るからだ、と頑なに思っていた。

 『放浪者がこちらの世界に転移してくるからそれを追ってナイトメアもやって来てしまうのだ』
 『今世界がナイトメアに襲われこんなふうになっているのは放浪者のせいだ』

 自分にそう思い込ませて、全てを放浪者のせいにして憎しみを募らせていた。
 だけど……、エルルーク=フォルフォルという鳥っぽい姿をした放浪者と出会い、ヨナタンは変わり始めていた。
 エルルークは基本は人型だが肌は薄い水色で、鼻が低く顎も細い。長い髪と大きな黒目がちの目は青緑色。一番の特徴は髪と同じ色の立派な尾羽と耳の部分にある20cm程度の白い翼が生えていることだ。
 他のライセンサー達に諭されたあの日から十日ほどが過ぎ、その間エルルークはちょくちょく村に来るようになった。村人の遠方への使いを引き受けたり仕事の手伝いをしたり、時折ヨナタンと話すこともある。
 まるで自分の行動をヨナタンに見せることで分かり合おうとしているかのように。
 ヨナタンはまだぶっきらぼうではあったが、放浪者を悪者と決めつけてエルルークを突き放すようなことはしなくなった。
 エルルークは少なくとも誠実だったし、ヨナタンと話す時はどこか遠慮がちで、会話を無理強いするようなこともしない。ヨナタンも少しずつエルルークの話を聞くうち、同胞を失ったエルルークと自分の境遇が似ていると感じるようになった。
 あの日女性ライセンサーに言われたみたいに、エルルークの心を見たのだ。

 そうやってヨナタンが心を開いてきた矢先――、また悲劇が村を襲う。

●再びの襲撃
「ナイトメアがまた襲って来たぞ!!」
「あっちからも来た! 鳥みたいなやつだ!」
 村人達が叫びながら一番家が建ち並んでいる所に駆け込んで来る。
 エルルークが急いで彼らに詳しいことを聞く。
「あっちに三体いた!」
「俺はあっちと、そっちからも来てたのを見た!」
 話をまとめると、村の北、東、西の三方向から三体ずつ、村を襲っているらしい。
「それに、言いにくいんだが……」
 と目撃した一人が言うには、

「そのナイトメアはエルルーク、あんたみたいな姿に見えた」

 ということだった。
「!!」
 エルルークの目が大きく見開かれる。それの意味するところは一つだ。
「皆、早く家の中に入るんだ! 誰かSALFに連絡を!」
 しかしエルルークはライセンサーとして、動揺を押し隠して村人達に避難するよう呼びかける。
 今この村にライセンサーは自分しかいないのだ。
(ヨナタン! ヨナタンは大丈夫だろうか?)
 ヨナタンの家は村の西側にある。
 エルルークはヨナタンの安否が気になって走り出した。

「ヨナタン!」
 エルルークが来ると、逃げる人々の中、ヨナタンはまさにそのナイトメアを認めて驚愕している所だった。
 ナイトメアは三体。
 色こそ黄色かったり緑だったり赤かったりしたが、立派な尾羽と耳についた翼という特徴的な外見は、エルルークと同族だと誰の目にも明らかだ。
 その姿を目の当たりにして、エルルークに衝撃が走った。
 振り向いたヨナタンの顔が驚きと恐怖に歪んでいる。
 緑のナイトメアがヨナタンに迫り、その腕が上がった。手の先には尖った爪。
「ヨナタン!!」
 エルルークは咄嗟にヨナタンを掠め取るように抱きかかえて走り抜けた。
「大丈夫か!?」
 ぎこちなくうなずくヨナタンだが、その顔にはまだ恐怖が張り付いている。
「逃げろヨナタン!」
 ショックを受けたままのヨナタンを押し出し、エルルークはナイトメアに向き直る。
 黄色いナイトメアが逃げ遅れた妊婦を襲おうとしていた。
「止めろ! その姿で……、同胞の姿で人を襲うな!!」
 三又の槍で爪の攻撃を弾いて阻止し、反撃しようとするが――、できなかった。

 その顔に見覚えがあるような気がして。
 何より懐かしい仲間の姿。

 ナイトメアが擬態した姿だというのはよく分かっている。
 理性では分かっているが、エルルークの体が躊躇してしまった。
 その隙に赤いナイトメアが背後から彼を蹴り付ける。
「ぐあっ!!」
 エルルークが前のめりに倒れ込むと再び妊婦を追いかけた。

 同胞が罪もない人を殺そうとしている。

 その光景にエルルークの頭の中が真っ白になった。
「やめろ、止めてくれ! 僕の同胞を、彼らを貶めるな!」
 半狂乱になって叫ぶエルルーク。
 そんなエルルークに躊躇なく攻撃を加える同じ姿をしたナイトメア達。
 エルルークは防ぐので精一杯で、どうしても自分から攻撃することができない。
 ナイトメア共はエルルークを弄ぶように殴ったり蹴ったりを繰り返していた。

 ヨナタンはエルルークから50メートル程離れたゴミ集積所の影から、その様子をじっと見ていた。
 ナイトメアがエルルークと同じ姿をしているのも困惑の元だったが、エルルークが手を出さずやられているだけなのが一番不可解だった。
「エルルークどうしたんだよ……どうして攻撃しないんだよ……! それはナイトメア、なんだろ……?」
 それとも、同じ姿のヤツとはやっぱりグルなのか?
 あのライセンサー達だって、放浪者はナイトメアとは違うって、『自分をブチのめして気を晴らせばいい』とまで言ってエルルークを庇ってたじゃないか。
 それなのにどうしてナイトメアをやっつけてくれないんだよ!

 放浪者を信じたいヨナタンの心も乱れ、もう何を信じればいいのか分からなくなっていた。

※ナイトメア9体を倒し、怪我人の対処、ショックを受けたヨナタンと戦えなくなっているエルルークを助けてやってください。

〈ナイトメア×9 攻撃型 危険度3〉
・体長170cm~180cm程度。エルルークの同胞に擬態している。色は黄色、青、緑、赤など様々。
 手には鋭い爪が生えています。
・回避、抵抗が高めで、簡単な連携を行う程度の知能があります。
・主な攻撃
 通常の近接攻撃の他、
 衝撃波:両腕を交差しながら振り下ろし空気の刃で直線上の敵を全て切り裂く。射程5
 戦意高揚:自身に【攻撃力アップ】(3)と【防御力アップ】(3)を付与する。
・現在は西の三体はエルルークを暴行中で、北と東のナイトメア達は逃げ遅れた村人を襲ったりしながら村の中心に向かっています。

〈その他状況など〉
・怪我人が何人いるかは不明です。
・村の中心部になるほど家が密集して建っています。
・村の中心を通る縦横のメインの通りがあり、道幅は10m程度。皆さんはメイン通りの南側から村に入るということになります。

〈ヨナタン〉
・12歳の少年。茶色いくせっ毛がボリューミー。
・前編のシナリオの結果、頭から放浪者を憎むことはしなくなりましたが、今回の誤解を解かないと不信感を抱いたままになるでしょう。

〈以下はPL情報です〉
※皆さんが到着した時エルルークは気絶寸前です。敵に立ち向かおうとするとパニックに襲われ、そのままだとトラウマを抱え戦えなくなってしまうでしょう。
※エルルークが村にいること(村人の通報で)、及びエルルークの事情(今までの報告書から)を事前にPCが知っていてOKです。
※エルルークについては、『とある放浪者の苦悩』『とある放浪者の恐れ』等のシナリオを参考にしていただけるとありがたいです。

こんにちは、久遠由純です。

前回に続き後編のシナリオとなります。EXですが参加していただけると嬉しいです。
今回はまさにエルルークの試練です。彼が乗り越えられるように、そしてヨナタンと再び交流できるように、皆さんの力を貸していただけたらと思います。

よろしくお願いします。

  • 王国の猛将
    ラルフla0044
    放浪者15才|ゼルクナイト×セイント

とりあえず銃に持ち変え全力移動。行先はエルルークやヨナタンのいる西側
敵を射程に入れたら即攻撃

後は銃撃中心にしつつ人や味方への攻撃に対し射線妨害する様に移動
銃撃も、攻撃より敵の連携妨害意識
射線妨害できなくてもアリーガードでカバー、エルルークが戦場に残るならフォローも
別に銃で攻撃出来るし、近距離に来れば剣で

余裕あれば怪我人に対し医療と応急処置で対処、話術等で誘導
エルルークに対しては偽物と認識出来てるならヨナタン達への認識に触れる?偽物に迷って今の仲間が倒れるのは良し?とかを反応見つつ
ヨナタンに関しては、放浪者2人が戦ってるからそこで不信感拭いに。エルルーク治らんと対処難しいし

西側片付いたら治療等専念しつつ他の人による説得の手伝い
怪我人も人の方も大丈夫そうなら東側の治療へ。北はやる人居るはずだし。レベルの都合で一般判定ゴリ押せる筈だから後回し。被害者多いと印象悪化キツそう

【心情】
「さあ、レスキュー開始よ!」

【目的】
北の敵を素早く全滅させ、村人を救出
ヨナタン、エルルーク救出は西班に任せる

【準備】
目的地:北
狭い場所で村人が直線攻撃に巻き込まれること警戒、注視範囲で村人とは逆方向に位置し自分に攻撃向けさせる。また、村人に退避促す
遠距離攻撃時、村人誤射しないよう注意

【同行者】
雪室チルル
ヴィクター・M・メルキオール

【行動】
メイン大剣、村人防御時盾
全力移動で素早く北へ向かい、ロードリーオーラで敵注視
効かないようならすぐ速攻撃破方針に切り替え

因果をかけてもらい単体敵は大剣通常攻撃、遠距離エクストラバッシュか銃

敵固まったら幻想之刃で一気に一掃
「道幅が10mもあれば、大立ち回りを演じるには十分な広さね」
「黒薔薇が死を呼ぶわ…!ブラックバカラ!」

北の敵全滅後、仲間と無線で連絡。敵が残っているなら全力移動で撃破に向かう
中心部や村人に近い敵優先

依頼後
村人に救急治療セットで手当て

エルルークやヨナタンと会話
「エルルークさんにヨナタン君ね?あたしはユリア。二人の事情は聞いてるわ」
「ナイトメアは、他者の心の弱みにつけこんでくる種も少なくないわ。今回の個体、明確に二人の心理を狙ったものでしょ。…向こうの思う壺にハマっちゃダメよ」
「あたしも、死んだ弟の声をナイトメアに使われたことあるし。あの時はブチキレたわ」

  • 荒ぶる鬼女
    伊吹 リナla0811
    放浪者24才|グラップラー×ネメシスフォース

なるほどな、偽物とはいえ同胞の姿をした奴を攻撃したくねぇってのは理解できるぜ。
俺の故郷も親兄弟もナイトメアのせいで全滅しちまったんだからな。
生き残ったのはこの世界で戦ってる俺と姉貴だけだ。
けど、お前さんに同情することは出来ねぇ。
そいつはただの「逃げ」じゃねぇのか?

現場到着後【西組】に参加。
南側から村に入り、西側を目指す。
甚振られているエルちゃん(エルルーク)に加勢。
「玄夜蔽掌」で敵の命中を、「鳳翔必墜」で回避を落としていく。
他のBSと被らないように注意。
敵の動きをある程度鈍らせたら「龍震虎砲」を叩き込む。
エルちゃんには俺の戦い方、俺の信念をきっちりと目に焼き付けてもらう。

俺がこの世界に来た時、もし俺の兄弟が敵として現れたのなら、全力でぶっ倒すと覚悟を決めてたんだ。
姉貴だって同じこと考えてるに決まってる。
俺たちは只の「大事な肉親」じゃねぇ。
たとえどんな最悪な未来が待ってようと最後まで戦い抜くと決めた同志だからな。
お前さんだって、それくらいの覚悟があってライセンサーやってんだろ?
一度武器を取っちまった以上、逃げるも戦うもどっちみち茨の道だ。
俺にお前さんの心を動かす力はねぇ。
どうやって乗り切るかは、後はお前さん次第だ。

▼全体方針
西班・北班・東班に分かれ、敵を撃退・怪我人を救助

▼個人
西班にてエルとヨナの心労を減らす
最重要)相手の思いを受容し、どんな状況に陥ろうとも支え続ける姿勢を示す

>対エル
全力移動で近接し、回復するのはヨナの傍まで一旦退却してから行う事を提案
「回復しつつ)今のあんたにはキツイと思うけど…あんた自身の『奥底の声』は何を望む?その声を受け入れるのが最善だと俺は思う
「あんたが何を選び取っても、何も選び取らなかったとしても、俺はあんたの決定を尊重する。傍で全力で支えると約束しよう(エルの決意に沿ったサポートを行う

>対ヨナ
エルが葛藤し決定する姿・それを支える自分の姿勢を見せ、理解して貰えるよう努める
「敵が俺の家族の姿をしていたら、俺なら怯むよ。あんたならどうだ?
「敵は、俺達の間に『見えない溝』を作って、一人ぼっちになった奴を食べてしまうんだ
「エルルークにとっては、あんたの信頼を得るほうが、俺のヒールよりずっと役に立つよ

攻撃)ジュリアの前方で、同じ個体を狙う。武器はリロードせずマイペ上から持替
敵から攻撃受けたら回避せず盾で防御し仲間が攻撃する隙を作る
スキル)射程内仲間の生命半減時ヒール、エルにはHH優先で使用
遅らせて行動、回復対象者居る時は即行動
行動優先度)生命回復>攻撃

▼他
携帯品で怪我人に処置を施す

【心情】
同じ外見のナイトメアだなんて偶然にしては出来すぎだけど、
もし意図的なら悪意があるにも程があるわ…エルルークには
辛い戦いになるけど、私は戦意を取り戻して欲しい。

【目的】
エルルークに戦意を取り戻させ、ヨナタンの不信感を払拭する。

【行動】
武蔵介(la0849)、ラルフ(la0044)、リナ(la0811)らと
『全力移動』で村の西へ向かい、ナイトメアを倒す。

基本はライフルで衝撃波の射程外から射撃、敵の気を引いて
エルルークを救出、回復する隙を作る。彼に【戦意】を問い、
戦闘への復帰を願うが無理なら、人命救助をお願いする。

戦闘ではサブマシンガンの弾幕による『ブレイクショット』で
敵の回避を下げ、勝負所は前に出て散弾銃の『ツインラビット』、
連携してくる敵を2体まとめて迎撃する。

【戦意】
エルルーク、貴方がヨナタンにとっての家族と同じように同胞の
ことを気に病んでいるのは、さっきの無抵抗を見れば分かるわ。
でも、貴方を責めているのは同胞じゃなく貴方自身だけなのよ。
この世界の戦いに巻き込んでいる側の私が言えることじゃないけど、
手を貸して欲しいの。自責に追われてじゃなく、皆の命を守るために。

目的
 村人の救出、怪我人の治療、ナイトメアの討伐

同行者
 ソフィアンリーゼ(la3797) ザンクロウ(la3333)

行動
 東側に現れた、ナイトメアの討伐に向かう。途中逃げ遅れた村人がいれば、村中央部に避難する言う促す。怪我人を見つけた場合、すぐに処置が必要ならば、救急治療セットを用いて治療。軽度なら、避難を優先させ、あとで処置を約束する。敵は素早いので、包囲陣形、波状攻撃を心がけ、側面や背後を取るように動く。敵の連携による大ダメージに備え、審判の雨雫により、全員のシールドを高く保つよう努める。仲間のシールドが20%切ったなら、ハイヒールを。敵掃討後は、他方面に向かった仲間に連絡。支援が必要なら急行する。終わったのなら、村に臨時の診療所を設置。身心のアフターケアを行う。

「ここで治療を行う。ソフィー、その間お願いね」
「ごめんなさいね、あなたたちを救ってあげられなくて。わたしにできることは、あなたたちの力で、二度と誰かが傷付けられないようにすることだけ」
「ナイトメアは、捕食した対象の姿や能力を獲得することができる。エルルークは言うまでもないけど、彼の仲間たちも敵ではないわ」

目的:
敵を全員撃破してヨナタンとエルルークの救助。
仲間とそっくりに擬態して襲撃するなんて卑怯な!

準備:
・作戦
西側・東側・北側にそれぞれ別れて行動し、
各方面からやってくる敵を撃破していく。
特に西側はエルルーク及びヨナタン対応もあるため、
東側と北側はなるべく早期に敵を片付け、
西側の救援に向かえるように速攻を目指す。

・準備
怪我人救助のために救急治療セットを用意。

行動:
北側前衛として行動。
基本的にロードリーオーラを展開して相手の注意を集めつつ戦闘。
速攻を優先するためにある程度のダメージは覚悟の上で攻撃を優先。
敵をまとめる際は敵の直線範囲攻撃がある事を考慮し、味方全体が一列にならないように注意する。
攻撃時はなるべく敵を集める事で範囲攻撃でまとめて攻撃できるようにするが、
範囲攻撃が切れたらヘビィバッシュを中心に組み立てて各個撃破に切り替え。
敵を撃破後はすぐに西側に急行して援護に回る。

敵を撃破後は怪我人やエルルークの治療に当たる。
ヨナタンを説得するにせよ、エルルークのトラウマに向き合うにせよ、
まずは治療をして万全な体制を整えなければ。
特にヨナタンは心が乱れているので、まずは落ち着かせることを優先したい。

東側の敵を退治する
「あまり時間はかけられませんか。では、いざ…!

3対3なのでまず1体を倒す事に集中して戦い数の有利を目指す
敵とは体格が違うので膝や踝を砕くか、脚を払うなども狙う。尾羽や耳の羽を掴んで組み付き引き千切るか、バトルアクターの刃で関節を破壊するか。首獲蟹で首を断つなど。人体の急所を小柄のアドバンテージを利用して狙える時は狙う
逆に集中攻撃されるのには注意する。挟撃されるような立ち回りを控えて味方の負担を増やさないように
(大きい。が…相手は人型。ならば)
「人を生かさんとするならば、即ち人を殺める術を知ること。……父上の教えだ

距離をとられたら詰め寄るか、詰め寄りながら赤兎千里脚で蹴りぬけて背後をとったり奇襲したり

味方がもし注視をとった場合は鬼哭斬魔で痛手を狙うか、敵が一箇所に纏まっていれば首獲蟹で圧し断ちつつ敵を巻き込む

鬼哭斬魔の時だけは斧に持ち替えるがそれ以外は格闘で

北側へ向かい敵の討伐を行う

同方位担当ユリアにまず【攻強化】を行い、敵が強化を使うか強化が切れたら再度使用。
【血桜】はチルルの手傷を修復か、自分の周囲に敵が潜り込んだ際になるべく使用する。味方に回復が必要な際はそちらに使用を優先

味方二人の一つ後ろに立ち補助的視点と行動を心がけ、速やかな敵の退治を助ける
敵が味方一人に集中攻撃を仕掛ける場面を作らないように、敵が一箇所に固まってきたら【修羅舞踏】を使って散らす。この時は味方の後ろから撃って攻撃を屈折させ奇襲性を上げたい
「はは、ビックリしたかい?私は仲間の強さにビックリしてるよ

接近されたら杖に持ち替え防戦をメインにする。【血桜】が残っていれば使用してその間に仲間と位置をスイッチする
「退散、退散と…自慢だが私は喧嘩に弱いからね!

戦闘が終わったら民間人の方を落ち着かせる方を優先。子供や年寄りなどが居れば緩く会話しながら片付けを。必要ないなら西の仲間の手伝いに向かう

「ショックを受けるって事は、多少なり信じたい心があったんだね。信じるは易い。だが疑わない事の、どれだけ難しいことか。ある意味それも戦いだねえ

同行者:アルフィンレーヌ(la2183) ザンクロウ(la3333)

ぼくは東側に現れた奴らを討ちに行く。途中、逃げ遅れた村人を見つけたら、敵の急襲に注意を払いつつ、村の中心部への避難をお願いしよう。相手は身のこなしに自信があるようだな。仲間と連携して、死角から攻撃した方がいいだろうな。ぼくがロードリーオーラで敵を引き付けよう。囲まれても平気さ。エペ・デ・ラーヴで蹴散らしてやる。仲良く並んでいたなら、アジュール・エクレールだ。首尾よく敵を掃討したなら、他の方面に行った仲間に連絡を取って、支援が必要なら向かう。終わっていたなら、村人たちに安全が確認されたことを知らせて、早く安心させてあげよう。

「ここはぼくらが死守する。さぁ、早く逃げるんだ」
「レーヌ、怪我人だ。看てくれ」
「紛い者ども、我が滅してやる。来い!」(ロードリーオーラ)
「星の火よ。我が刃に猛き焔を」(エペ・デ・ラーヴ)
「お~い!みんな、ナイトメアは全て倒されたぞ。もう、外に出ても大丈夫だよ」

●再びの襲撃
 エルルークは自分の同胞と同じ姿をした者達に痛め付けられていた。
 朦朧とする意識の中で、これは自分の悪夢が現実になったのだ、という思いに囚われる。

 仲間を救うことができず、一人だけ生き延びてしまった自分を、彼らが罰しに来たのだと。


「エルルークの同胞とそっくりに擬態して襲撃するなんて卑怯な奴よね!」
 一人ぷんすか! と怒っているのは、青髪のショートヘアが良く似合う少女雪室 チルル(la2769)だ。
 北国生まれの元気娘な雪室は考えるよりも先に全力で突撃する性格で、頭脳労働は苦手という彼女らしく、単純明快に卑怯な手を使うナイトメアに憤っていた。
「あたいがみんなやっつけてやるわ!」
 溢れんばかりのやる気と気合も十分。
 今、村に向かうキャリアーの中、集められたライセンサー達は大まかに作戦を話し合っているところなのだ。
「来てくださったのですね、父上」
 ザンクロウ(la3333)は金色の目にわずかに喜びを浮かばせ、赤髪の男性ヴィクター・M・メルキオール(la3592)に言った。
 二人は親子であり別次元からの放浪者である。
 ザンクロウは子供ながら父が依頼に加わったことにはしゃいだりせず、父の教えに従いまずは依頼優先と、自分と同じ東に向かう仲間を確認した。
 ヴィクターは元の世界では獣の王と呼ばれたりするが実は悪魔の魔法使いで、普段はふわふわした雰囲気で人とは違う視点から物事を見ている。
 こちらの世界で己の力を磨こうとしているザンクロウを、ヴィクターは『親』として見守っているのだった。
 ザンクロウを満足気に見やり、ヴィクターも作戦に集中する。
「私は二人のサポートに回ろう。存分に戦ってくれ」
 自分と同じ北班の雪室とユリア・スメラギ(la0717)に方針を伝えると、長い金髪を指先まで意識した手つきでかき上げたユリアが
「素早く全滅させましょ。こちらが早く終われば、他の方向にヘルプに行くわ」
 余裕たっぷりに茶色の瞳を細めた。
 ユリアはその恵まれた美貌とプロポーションを自慢にしており、モデル業の傍らライセンサーをしている。弟の死がきっかけでライセンサーとなったが、今は恋人もできモデルの知名度も上昇、充実した日々がさらにユリアを輝かせていた。

「なるべく包囲陣形と波状攻撃を心がけましょう。わたしは村人の治療を優先して避難を促すわ。あなたたちの回復も任せて」
 ザンクロウと共に東に向かうアルフィンレーヌ(la2183)が進言する。
 アルフィンレーヌは見た目は小さな少女で、緑の髪に左右違う色をした瞳を持つ。尖った耳と頭には鶏冠のような二本の角、額には宝石があるという放浪者だ。
 別宇宙の異星からナイトメアを追ってやって来た。外見とは裏腹な大人びた雰囲気と言動をし、本来は争いを好まない性格だが、戦いに手心を加えることはない。
「ぼくが敵を引き付けてみる。なに、囲まれても平気さ」
 ソフィアンリーゼ(la3797)が頼もし気に、小柄な体格に不釣り合いな豊満なバストを叩いた。
 背格好や金髪にオッドアイの少女という外見に、星形に並んだ鶏冠のような五本の角と尖った耳、額の宝石が示す通り、彼女もアルフィンレーヌと同じ星から来た放浪者だった。容姿は女の子だが言動は女性歌劇団の男役のようにきりりとしている。
「ザンクロウは敵の数を減らすよう戦います」
 よろしくお願いします、と礼儀正しく一礼するザンクロウ。これも父に躾けられた教育の一環だ。
 つい最近も一緒に戦った仲だし、三人共が同年代(に見える)なのでどことなく親近感があり、アルフィンレーヌとソフィアンリーゼもよろしく、と気さくに応えるのだった。

 エルルークとヨナタンがいるはずの西に向かうことになったジュリア・ガッティ(la0883)は青い瞳を険しくした。
「エルルークと同じ外見のナイトメアだなんて偶然にしては出来過ぎだけど、もし意図的なら悪意があるにも程があるわ……。エルルーク、大丈夫かしら」
 褐色の肌に真っ直ぐ腰まで伸びた金髪のジュリアは絵を描くのが好きで、まだ見ぬ美しい風景を守るため、世界をナイトメアから解放しようと戦っている。
 ジュリアはエルルークが同胞を救えず心に闇を抱えていたことを知っていた。最近はそこまで罪の意識に苦悩することはなかったようだが、完全に消えたわけではないはずだ。
「ヨナタンのこともちょっと心配だね」
 同班の葛城 武蔵介(la0849)も不安を口にする。
 爽やかな茶色の目元にかかった茶髪を指で軽く払う葛城のその姿は、こちらの世界の人間と何ら変わらない。だけど彼も異世界からの放浪者だった。
 幼い頃戦乱に巻き込まれ実親や出生地、誕生日も分からない。しかし性格は愛想がよく親切で、ダジャレなどもよく言ったりして陽気だ。そして人に寄り添い、人を否定しない生き方を貫こうとしていた。
 葛城はこの間の出来事を思い出す。
 ヨナタン少年は放浪者をまだ完全に信じたわけではなさそうだったし、今回の状況次第ではより不信感を強くしてしまうかもしれない。
「偽物とはいえ、同胞の姿をした奴を攻撃できねぇってか?」
 長い銀髪をポニーテールにした長身の女性、伊吹 リナ(la0811)が荒っぽい口調でジュリア達に問うように赤い目を向けた。
「今までのエルルークのことを考えると、十分あり得るわ」
 ジュリアの答えに、伊吹はその整った顔の眉間をわずかに寄せた。
 エルルークのことを責めているのではない。むしろその気持ちは理解できる。なぜなら本来は『鬼』の伊吹も放浪者であり、彼女の仲間達も故郷もナイトメアに奪われたからだ。
 その心の空隙を埋めるべく戦闘に身をやつし、それが長年続いた結果、戦いと飲み食い以外には喜びを見出せなくなってしまった。
 同じ境遇だからこそ、伝えられることもあるはずだ。
「エルちゃんには俺の戦い方、信念をきっちりと目に焼き付けてもらおうか」
「それなら、私は状況を見つつ怪我人の対処と皆さんのフォローを中心に動きます」
 ラルフ(la0044)が仲間の役割を考えながら自分のスタンスを決めた。
 緑の髪の少年姿のラルフも、実は狼の獣人という放浪者である。
 普段はぶっきらぼうでいい加減な部分もあるが、任務への態度は真面目なのだ。が、それは面倒事を起こさないためでもある。
 被害者は多くないに越したことはない。ラルフは村人の被害が少なければ、ヨナタンの放浪者に対する心象も少しは和らぐのでは、と考えたのだ。

 全員がそれぞれ作戦を確認し終えた頃、キャリアーは村の南端に到着した。

●偽物との戦闘 西
 迅速にキャリアーから降りると、一行はメイン通りを村の中心へと走った。
 途中村人に避難を促しながら進むが、まだ中心部までは敵の魔の手も届いていないことに少し安堵する。
「では、行ってまいります!」
 中心部の十字路まで来ると、ザンクロウは短く父に挨拶してアルフィンレーヌ、ソフィアンリーゼと共に東へと曲がって行く。
 ヴィクターも『気を付けるんだよ』と目で返し、雪室とユリアの後を追うように北へ突き進む。
 ラルフ、葛城、ジュリア、伊吹は全力で西へと急いだ。

「いたわ、エルルークよ!」
 ジュリアが三体のナイトメアに囲まれているエルルークを発見した。
 武器で攻撃を防ごうとしているが自分から攻撃はできていないようで、一方的にやられ放題なのは一目瞭然。
 敵の姿は体の色こそ違えどエルルークと酷似しており、懸念したことが起こってしまっているとジュリア達に悟らせるのに充分だった。
 このままではエルルークの命が危険だ。
「敵の気を引くわ!」
 ジュリアは全力移動しながらスナイパーライフルZW-1を構え、射程に入り次第引き金を引く。
 しかし素早く反応した黄色い一体に回避されてしまった。
「こっちに意識が向けばそれでいい」
 一旦立ち止まり重い雷撃砲『イカヅチ』を肩に担ぐように装備したラルフも、続けて発砲する。
 落雷のような銃声を発してエネルギー弾が緑のナイトメアに命中すると、三体のナイトメアは新たにやって来たライセンサー達を無視することはできなくなった。
 奇声を発してラルフ達へ向かって行く。
 その間に、葛城がオートマチックXR7を牽制射撃しながらエルルークの所まで回り込んだ。
「大丈夫か!?」
 エルルークは倒れており、イマジナリーシールドも完全に破壊され、気絶寸前になっていた。まさに間一髪だった。
「き、君は……」
 エルルークは霞む視界の中で葛城を認めたが、葛城は挨拶は後だ、とエルルークに手を貸し一旦数十メートル程後退した。
 するとそこには、近所のゴミを一まとめに入れるための大きな鉄の箱の陰に隠れたヨナタンがいるではないか。
「あ、あんたこないだのライセンサーじゃないか」
「ヨナタン! あんたは大丈夫か?」
 葛城はヨナタンとのこんな再会に驚きながらも、塀を背にエルルークを座らせる。
 エルルークは外側のダメージより精神的なダメージの方が大きいようだった。
 葛城の質問に、ヨナタンは返答を迷う。
 体は大丈夫だが、心は大丈夫そうではない。でもどう言えばいいのか分からなかったので、代わりにぐったりしているエルルークの様子を聞いた。
「エルルークは……」
「ああ、今俺が回復させるよ」
 葛城がハイヒールを使いエルルークを全快させると、エルルークはぼんやりと葛城とヨナタンを見た。
「エルルーク、なんで攻撃しなかったんだよ。あいつらはナイトメアなんだよな?」
 我慢できずに、ヨナタンは不信感も露わにエルルークの行動を詰る。
 エルルークはびくりと身を震わせた。
「あいつらは……、仲間を救えなかった僕を罰しに来たんだ……! 僕には、彼らをもう一度殺すなんてできない……!!」
 エルルークの顔が泣きそうに歪む。
 そのあまりにも悲痛な表情にヨナタンは少なからず驚き、悪いことをしてしまったように、胸がちくりと痛んだ。
 彼は苦しんでいた。それだけはヨナタンにも分かった。
「エルルーク、俺を見ろ」
 葛城はエルルークの両肩を持って自分に向けさせる。
「今のあんたにはキツイと思うけど……、あんた自身の『奥底の声』は何を望む? その声を受け入れるのが最善だと俺は思う。あんたが何を選び取っても、俺はあんたの決定を尊重する。全力で支えると約束しよう」
 葛城は揺るぎない瞳でしっかりとエルルークと視線を合わせ、自分の気持ちを語った。
 たとえエルルークがあのナイトメアとは戦えないと選択したとしても、それを否定しない。それでトラウマを抱えてしまうなら、それさえも受け入れて支える覚悟で。

 エルルークの心はギリギリに張り詰めた細い糸の上で、苦しみに喘いでいた。

 黄色ナイトメアが戦意を高揚させ能力を上げ、赤のヤツが伊吹に爪を振り下ろす。
「中るかよ!」
 伊吹は体を半身にして爪を避け、爆拳『火猿』を着けた手に精神を集中した。
 雪のようなオーラが伊吹の周りを舞い、頭部には一本の角が現れる。
「喰らいやがれ!」
 玄夜蔽掌を相手の顔面にお見舞いし、視界をくらませた。

●北
 ナイトメアが見えると、ヴィクターは賢者の一声『攻強化』を自分とユリアに使い攻撃力を上げる。
「頑張ってくれ」
「サンクス! さあ、レスキュー開始よ! 敵はあたし達が倒すわ! まだ誰かいるなら急いで避難して!」
 ユリアはブーゲンビリアを発動した。
「この美貌に溺れてしまいなさい」
 ブーゲンビリアの花弁が花吹雪のごとく舞い、赤い月の光の中宙返りするユリアの姿に敵の心が惹き付けられる――、はずなのだが、黒や青い鳥人ナイトメアには効かなかったようだ。
「あたしの美貌が効かないなんて!」
「それならこっちから行くわよ!」
 雪室は青い目に生気をみなぎらせ敵の中に突っ込み、ツヴァイヘンダーGFに氷状のエネルギーを収束する。360°回転しながらエネルギーを暴発させる技パスチャライゼーションを放った。
 雪室の周囲にナイトメア達を巻き込む大音量の氷爆発が起こる。
 しかし爆発にやられても山吹色のナイトメアは雪室に迫り、一撃を与えた。雪室のイマジナリーシールドが数本の爪の筋に削られる。
「あっ、やったわね!」
 その間に一体が戦意を高揚させ、もう一体がユリアとヴィクターへ衝撃波を放ってきた。
 傷を負っていても行動が素早い。
 ユリアとヴィクターは衝撃波を避けきれず、ダメージを受けてしまった。
 一瞬の判断力が勝負を決めると悟ったユリアは、自分の中のギアを上げ氷華の大剣で速攻をかける。
「道幅がこれだけあれば、大立ち回りを演じるには十分よ!」
 白に染まった刃の猛攻が、黒の体を赤く染めた。

 耳の翼を散らした山吹色の鳥人が雪室に衝撃波を放つ。
「甘いわよっ!」
 しかし避けた先に青いナイトメアが回り込んで来て腕を振りかぶる。
「!!」
「おっと、やらせないよ」
 不意に雪室の後ろからヴィクターが黄金の光線を撃つ。魔力をマスケット銃に変えて魔力球を放つ偽術・六六六帝『修羅舞踏』だ。
 ナイトメアは攻撃の手を止め寸前で回避したので中りはしなかったが、仲間から引き離すという意図は成功した。
「はは、ビックリしたかい?」
 からかうように言って、ヴィクターはまたす、と雪室の背後に消える。
 ユリアに目をやると、路地に倒れている村人の前に立ちはだかりコンパクトシールドで攻撃を防いでいた。攻撃力が高まっている黒ナイトメアの爪がユリアのシールドを削る。
「今が使いどころかな」
 ヴィクターはエスペランサに持ち替え、物質創造『血桜』を発動した。
 たちまち血のように紅い桜の猛吹雪が起こる。花弁はユリアと雪室、ヴィクターのイマジナリーシールドに付着して損傷を修復し、敵に触れればその身を斬り裂いた。
「さて退散、退散と……自慢だが私は喧嘩に弱いからね!」
 ヘビのような金の瞳を楽し気に細め、再び奥に引っ込むヴィクター。
 ナイトメア三体の髪や尾羽は散り散りで、体のあちこちから血を流していた。それでも凶悪に顔を歪め戦意を失っていない。
 今度は三体同時に襲い掛かって来る。
 ユリアと雪室はアイコンタクトを交わし小さくうなずき合った。
「黒薔薇が死を呼ぶわ……! ブラックバカラ!」
「あんたたちなんかに負けないんだから!」
 ユリアは不吉な色の黒薔薇が纏い付いた大剣を大きく薙ぎ払う。
 雪室も回転しながら敵の間を切り抜ける。
 黒薔薇の花弁や棘の蔦は意思があるもののようにナイトメアを斬り裂き、氷爆発が巻き上げさらにダメージを与える。
 一拍後どさどさっと地面に落ちた偽の鳥人達は、既に事切れていたのだった。
「お見事」
 ヴィクターは二人を労うと、すぐに動けない村人がいないか辺りを探し始めた。
「ナイトメアは私達が倒したよ。もう大丈夫だから、怪我人がいたら教えてくれ」
 ユリアは倒れていた村人に駆け寄り状態を診る。雪室が救急治療セットを出して治療を手伝ってくれた。
 他にも二人は怪我が酷い人に手当てをしたり救急車の手配を指示したりと対処し、ヴィクターが身内を殺され悲しむ年寄りや子供に話しかけ、落ち着かせたりする。
 手早くこなし一段落着くと、ユリアはインカムで他の班に連絡を取った。
「北は殲滅完了よ。ヘルプが必要ならすぐに向かうわ」

●東
 東に向かったザンクロウ達は、転びそうになりながら逃げる村人に行き合った。
「あ、あんたら危ないぞ! ナイトメアがいるんだ!」
「分かっているわ、わたしたちはライセンサーよ。早く村の中心部に避難して」
 アルフィンレーヌが男に平静な口調で言うと、男は
「わ、分かった!」
 と走り去る。
 前方にはこちらに気付いた橙色と薄い黄緑色、紫色のナイトメアが戦意を高揚させていた。その足元には血だらけの村人が二人、ぞんざいに倒れ伏している。
「あの二人を助けないと。ソフィー、お願い」
「任せてくれ、レーヌ。紛い物ども、我が滅してやる。来い!」
 アルフィンレーヌの要望に、ソフィアンリーゼはその小さな体をナイトメアの前にさらした。
 精神の集中に五本の角が赤熱し、全身が淡く光る。そしてロードリーオーラを発動。
 自分こそ真っ先に討ち取るべき君主であるというイメージを送り込むが、鳥人どもはそのイメージに釣られなかったようだ。
「だめだ、効いてない!」
 スキルが効かないと分かると、ザンクロウはデザイアアックスを持ちながらすぐに敵との間合いを詰めた。
(大きい。が……相手は人型。ならば)
 ザンクロウの全身から真紅の闘気が湧き出し、揺らめき流れる。一番手近な紫のナイトメアに煌刃・鬼哭斬魔を叩き込んだ。
 己のイマジナリーシールドを削り闘気が変化した黄金の斧剣は、鬼の哭くような音をさせて空を斬り、鳥人の膝裏に振り下ろされる。
 紫鳥人はがくりと片膝を折ってバランスを崩した。
「ここはぼくらが死守する!」
 チャンスとばかりにソフィアンリーゼが額の宝石に両手の二本指を広げて添え、アジュール・エクレールを放つ。
 雷を纏った空色の光線は真っ直ぐ黄緑と橙色のナイトメアに直撃した。
 ザンクロウとソフィアンリーゼは村人から離れるように移動すると、それを三体が追う。
「今だレーヌ!」
「了解よ!」
 ソフィアンリーゼの合図にアルフィンレーヌが倒れている二人を急いで物陰まで引きずって、怪我の具合を診る。まだ息はあるが、食われた傷口がナイトメアの残酷さを物語っていた。
「出血が多いわ……しっかりして」
 救急治療セットを取り出し、できるだけの応急処置を施した。

 黄緑色鳥人に追いつかれたソフィアンリーゼはストライクシールドを掲げ爪攻撃を防御したが、イマジナリーシールドの三分の一程を破壊される。
「くっ、この程度で怯むぼくだと思うな!」
 一時的にアルフィンレーヌが戦線を離れている今、数では不利。
 ザンクロウは二体に挟まれそうだと察知し、その前に動いた。素早くバトルアクターに装備を変え、路駐してあった軽トラの荷台を足掛かりにジャンプし敵の上を取る。
 スキル首獲蟹を使う。
 闘気を両腕に纏い巨大な蟹の爪のようになった腕を交差させ、その間に紫と橙色のナイトメアの首を挟み込んだ。腕が交差しきると圧縮した闘気が解放され衝撃波が周囲に放たれる。
「人を生かさんとするならば、即ち人を殺める術を知ること。……父上の教えだ」
 ザンクロウの着地と共にナイトメア達の首から鮮血が噴き出した。しかしまだ致命傷には至っていない。
 不意に橙の鳥人が背後からザンクロウの首に手を回し、紫の方が衝撃波を放って来た。
 掴まれているため避けられない。
 中る直前にナイトメアが飛び退き、ザンクロウは衝撃波をまともに食らってしまった。
「ぐぁっ!」
 イマジナリーシールドが半壊したが、ザンクロウは堪える。
 負傷のことなどザンクロウの頭にはなく、敵がエルルークと同じ姿をしているなら、これ以上彼を苦しめないためにも彼を知っている自分が早く倒してやらねばと、そう考えていた。
「星の火よ。我が刃に猛き焔を」
 ソフィアンリーゼの盾が、エペ・デ・ラーヴの発動で赤く焼けたようなオーラを宿した。思い切り振り回し周囲を薙ぎ払う。
 黄緑と紫のナイトメアの胴体を抉るように殴り飛ばし、二体は倒れ込んだ。
 そこへ角を赤熱させ全身に淡い光を帯びたアルフィンレーヌが駆け付けて来る。
「二人共平気? 今回復するわ!」
 二人のイマジナリーシールドを修復しつつ敵を攻撃する審判の雨雫を降らせた。
 それでも鳥人達は立ち上がり、こちらの様子をうかがっているようだ。さすがに手強い、と三人が思い始めたその時、

『北は殲滅完了よ。ヘルプが必要ならすぐに向かうわ』

 と、ユリアの声がインカムから聞こえた。
「こちら東側。まだ戦闘中なの、加勢をお願いするわ」
 アルフィンレーヌが応答し、ザンクロウとソフィアンリーゼの表情が改めて引き締まる。
「ぼくが囮攻撃をしてこちらに警戒させよう」
 ソフィアンリーゼが言うと同意するようにアルフィンレーヌもうなずく。
「ザンクロウは奇襲を狙ってみます」
 ザンクロウ達が構えると、敵が動いた。一体が先頭、二体がその後ろの左右に付けている。
 ソフィアンリーゼが奴らの真ん中を割くようにアジュール・エクレールを撃つと、三体の鳥人は二手に分かれてそれをかわす。
 先頭にいた紫の鳥人がソフィアンリーゼに衝撃波を放ち、他の二体がそれを追い連続攻撃するつもりだ。
 ソフィアンリーゼとアルフィンレーヌも左右に分かれて衝撃波を避け、アルフィンレーヌは黄緑色の側面に移動、守護刀『寥』で斬り付けた。
 ザンクロウは赤兎千里脚でナイトメアの間を駆け抜ける。
「邪魔するものは蹴る」
 瞬間的に脚力を上げ、通り抜けざま鳥人どもに飛び蹴りを食らわせた。
 ナイトメア達がザンクロウの姿を求めて振り返ると、ザンクロウの向こうにユリアがいた。

「あたしが来たからにはもうノープロブレムよ!」
 にやりとユリアが不敵に笑う。
 ユリアは大剣を振りかざしながら突進し、ブラックバカラを繰り出した。
「美しく……残酷に散れ! ヴァニッシュ!!」
 刀身に巻き付いた黒薔薇を散らすように剣を振り抜き、殺意に満ちた花弁や蔦が三体のナイトメアを容赦なく斬り殺したのだった。
「どうやら間に合ったようね」
 スキルの名残のオーラが花となって辺りに散りながら消えてゆく中ユリアが剣を収め、アルフィンレーヌがダメージの残っているザンクロウのイマジナリーシールドをハイヒールで直す。
「みんな、ナイトメアは全て倒されたぞ!」
 ソフィアンリーゼが周囲に聞こえるよう呼びかけながら、怪我人がいないか探して回った。
 重傷の先の二人を村人に預け、ソフィアンリーゼが見つけた怪我をしながらも隠れていた子供や村人達に応急処置をしていくアルフィンレーヌ。
「今はまだ屋内に避難していて。救急車が来るまで、怪我人をお願い」
 後の世話をしっかりしてそうな女性に任せ、
「ユリアもありがとう」
 加勢に来たユリアに礼を述べる。
「いいのよ。西側が気になるわ。ここが大丈夫なら行ってみましょう」

●エルルークの選択
 ジュリアはミネルヴァP8000で牽制攻撃をしつつ距離を取り、エルルークに聞こえるよう声を張り上げた。
「エルルーク、貴方がヨナタンにとっての家族のように同胞のことを気に病んでいるのは、その姿を見れば分かるわ! でも、貴方を責めているのは同胞じゃなく貴方自身だけなのよ!」
 家の壁に隠れリロード中も、ジュリアは言葉を継ぐ。
 エルルークにとっては今の状況が辛いだろうことは分かっている。だけどそれを乗り越えて、戦う心を取り戻して欲しい。
「この世界の戦いに巻き込んでいる側の私に言えることじゃないけど、手を貸して欲しいの。自責に追われてじゃなく、皆の命を守るために!」
 さっと銃を構え黄色い姿にブレイクショットを決める。
 ラルフはジュリアの声を遠目に聞きながら、道に突っ伏している妊婦を見つけた。
「大丈夫ですか? 歩けますか?」
 怪我などはしていないようだが苦しそうだ。とても歩けそうにないと判断したラルフは、肩を貸して近くの家の陰まで運んで、ヨナタンとエルルークの前に陣取る。
 赤と黄色、二体のナイトメアが伊吹の両側から掴み掛かろうとしていた。
「まあ、あいつらが昔の仲間に見えて戦えないという気持ちは解りますよ」
 さり気なくエルルークに向けて言いながら、オレンジ色の眼は赤いナイトメアに狙いを付けて狙撃銃を撃つ。もし自分だったら憧れのヒーローを馬鹿にされたかのごとくキレまくるけど、とはもちろん口にしない。
「でも、あれは偽物だって分かってるんですよね。偽物に迷って、今の仲間が倒れるのはいいんですか? こっちの世界の人間はその程度の存在なんですか?」
「ちっ、違う! 僕はそんなつもりじゃ……!!」
 ジュリアとラルフの言葉にエルルークは煩悶する。

 今の仲間を軽んじているつもりはない。この世界でだって誰かの命が失われるのはもう嫌なのだ。
 だけど同胞の姿をした奴らを見てしまうと身が竦んでしまう。
 奴らは同胞を救えなかった弱い自分に、この世界の人々を守れるのかと言っているようで。
 エルルークの心は同胞への贖罪とこの世界を守りたいという思いとに挟まれ締め付けられる。
 今このナイトメアに立ち向かえないと、もう二度と自分は戦うことができないだろう、とエルルークは心のどこかで悟っていた。

 葛城もミネルヴァP8000を持ちジュリアの前に移動して、黄色の鳥人に引き金を引く。
「敵が俺の家族の姿をしていたら、俺なら怯むよ。ヨナタン、あんたならどうだ?」
 エルルークとこちらの様子をうかがっているヨナタンに、ちらりと視線を向けながら葛城が問いかけた。
 ヨナタンにも理解してほしい。
 放浪者達がどんな気持ちでこの世界でナイトメアと戦っているのか。
 緑のナイトメアが放って来た衝撃波を、伊吹は横に跳び回避する。地面を滑る足を踏ん張って体を支えた。
 目の端にエルルークを捉え言う。
「俺の故郷も親兄弟も、ナイトメアのせいで全滅した」
 エルルークがわずかに目を見開き伊吹を見上げた。伊吹は前を見据えたまま話し続ける。
「生き残ったのはこの世界で戦ってる俺と姉貴だけだ。けど、お前さんに同情することはできねぇ。そいつは『逃げ』じゃねぇのか? 俺は、もし俺の兄弟が敵として現れたのなら、全力でぶっ倒すと覚悟を決めてんだ。姉貴だって同じに決まってる」
 伊吹の横顔はどこまでも冷静だったが、その心には確固とした決意が宿っていた。
「俺達はただの『大事な肉親』じゃねぇ。たとえどんな最悪な未来が待っていようと最後まで戦い抜くと決めた同志だからな。お前さんだって、それくらいの覚悟があってライセンサーやってんだろ? ここで逃げるも戦うもどっちみち茨の道。どうするかはお前さん次第だ」
 言い終わると同時にダッと駆け出す。
 そう、どんなに言葉を尽くしてみたところで、結局決めるのはエルルーク自身。伊吹は彼の心を劇的に変えられるほどの大層な力は持ち合わせていない。
 伊吹にできるのは自分の信念を持った戦いを見せることだけだ。
 緑の鳥人の懐に入り込み、鳳翔必墜を仕掛けた。
「オラオラ、もっと俺を楽しませてくれよ!」
 体の内部にまで届く重い拳をねじ込んで、ダメージと共に回避力を下げる。

 エルルークは戦っている『今の仲間達』を苦悶の表情で見ていた。
「僕は……君達とは違う……」
 エルルークには伊吹のような覚悟なんてなかった。彼女の言う通り、ずっと目の前で奪われる命に怯え、本当の戦いから逃げて来たのだから。
 救えなかった己の同胞。彼らは今、命だけでなく姿さえも無慈悲な侵略者に奪われて、他の生命を脅かす悪事に利用されている。
 誇りを踏みにじられ、彼らはきっと悲しんでいるだろう。それを見逃してしまうことも同胞に対する罪なのではないか。
 それなのに僕はまた、昔の仲間も今の仲間も救えないのか?
 色々渦巻く思いに耐えられなくなり戦闘から視線を逸らすと、縋るように己をじっと見ているヨナタンと目が合った。

 「あんた自身の『奥底の声』は何を望む?」

 エルルークの心に葛城の声が蘇る。
「僕は――」


 葛城は正面と右方向からの衝撃波にさらされていた。
「ジュリア避けろ!」
 そして自分はあえて攻撃を受ける。仲間の攻撃チャンスを作るためだ。
 背後で衝撃波を避けたジュリアが、すかさず散弾銃『バスターブリザード』を構えた。
「あなた達のやり方にはうんざりだわ」
 嫌悪感を込めて言い放ちツインラビットを撃つ。二体同時に攻撃し、黄色の鳥人の頭部を撃ち抜いて倒した。
「ホントに迷惑ですよ」
 ラルフは赤い方に雷撃砲をお見舞いする。
 派手な音と共に射出されたエネルギー弾はクリティカルとなり、赤いナイトメアの全身を一瞬にして焼き焦がし止めを刺した。
 間髪入れず残った緑のナイトメアが葛城に躍りかかって来る。
「!!」
 咄嗟に葛城は顔を庇うように腕を上げる。
 ナイトメアの爪が振り下ろされて――、しかしそれは葛城には届かなかった。
 訝し気にナイトメアを見やると、緑色の脇腹に尖った物が突き出ていた。
 突然の攻撃に鳥人は腹を押さえて地面に膝を付く。
 奴の背後に現れたのは、三又の槍を持ったエルルークだった。相当の決心と精神力を必要としたのだろう、額には大量の汗が浮き息も荒い。
「エルルーク! ――あんたは選んだんだな」
 ナイトメアと戦うことを。
 葛城が微笑む。
 全員が再び武器を取ったエルルークを見ていた。
「ああ……、僕はもう迷わない。今度こそ誰かを救えるなら、戦うよ」
 微笑み返すエルルークの青緑色の眼には、己で選び取った意志があった。
 彼の決意を確かめるように、よろめきながらも緑のナイトメアが立ち上がる。
「お前さんの覚悟は見届けたぜ」
 ふっとエルルークの横から伊吹が走り抜け、龍震虎咆を放った。
 拳に力を集中し一気に打ち出したエネルギーは見事敵を撃破したのだった。

●繋がった絆
「終わったみたいね」
 いつの間にかユリアや他の仲間達が全員いた。少し前から戦いを見守っていたらしい。
 ラルフが妊婦を迎えに行って屋内へ運び、念のため他にも怪我人がいないか見回っている間葛城が自分にハイヒールをかけていると、ヨナタンが隠れ場所からそろそろと出て来た。
 その様子はどこか申し訳なさそうで、うつむきながらエルルークに歩み寄る。
「エルルーク、今まで放浪者だからって疑っててゴメン……。おれ、自分のことばっかりで……、あんたたちのことをちゃんと考えようとしなかった」
 エルルークだけじゃなく、放浪者の皆が教えてくれた。
 放浪者も色々な思いを抱え、この世界で戦っているのだ。
 うなだれたヨナタンのくせっ毛頭を、エルルークがふわりとなでる。
「ヨナタン、君は悪くない。でも、そう言ってもらえるなら嬉しい」
 ヨナタンはまだ子供ゆえに自分の悲しみが全てになってしまい頑なになっていたが、本当は素直な良い子なのだ。
「あんたも不安だったよな。よく頑張ったな」
 労るようにヨナタンをハグする葛城。
「誰にでも自分を支えてくれる優しい腕が欲しいと思う時があるだろう。あんたが望むなら、俺はいつでもその腕になろう。俺の腕はそうするためにあるんだよ」
 葛城の顔は少し照れくさそうに笑っていて。
 その腕にヨナタンは在りし日の父親を思い出して、ちょっとだけ泣きそうになった。
 葛城に――、放浪者に頼ってもいいんだ、と漠然と安心する自分がいて、ヨナタンは改めて自分は信頼できる誰かに傍にいて欲しかったんだと思った。
 ヨナタンの前にユリアが身をかがめて言う。
「あたしはユリア。二人の事情は聞いてるわ。ナイトメアは、他者の弱みに付け込んで来る種も少なくないわ。あたしも、死んだ弟の声をナイトメアに使われたことあるし……、向こうの思う壺にハマっちゃダメよ」
 今回のナイトメアはまさにそんな心理をついていた。
「ホント許せない奴らよね!」
 ぷんぷんと雪室が怒っている。
「おれもうナイトメアが来てもビビったりしない。だってライセンサーがやっつけてくれるからな!」
 ヨナタンの答えに皆は繋がる絆を感じた。
「立ち直ってくれて良かったわ、エルルーク」
 ジュリアがほころんだ顔でエルルークにうなずくと、エルルークも皆に心からの感謝を込めて頭を下げる。
「君達のおかげで、僕は自分の心に気付けた。本当にありがとう」
「おれも、ごめんなさい。助けてくれてありがとう」
 ヨナタンも一緒に頭を下げた。

 そんなジュリア達の後ろでは、ザンクロウとヴィクターがお互いの無事を控えめに確認し合い、アルフィンレーヌとソフィアンリーゼは複雑な表情で、そのオッドアイに悲し気な色を滲ませる。
 アルフィンレーヌは、ナイトメアとはいえ同胞と同じ姿をした者を討たなければならなかったエルルークに同情していたのだ。
「分かっているわ。どうしようもないことだって。でも……彼の気持ちを考えると、いたたまれない。同じ立場だったらって……」
「レーヌ、見知らぬ世界の人々まで、助けてやることなんてできない。きみが責任を感じることなんてない。きっと彼らは救われたさ」
 ソフィアンリーゼは、あまり表に出さないが気に病んでいるアルフィンレーヌをそっと慰める。
 優しすぎる彼女の憂いが少しでも晴れればいいと願って。
 それでも、ヨナタンが放浪者達に心を開き、エルルークが再び戦う意義を見出したことは、アルフィンレーヌにとってもせめてもの慰めになるだろう。

 やがて皆は村内の様子を確認しに行った。
 村は落ち着きを取り戻しはじめ、ちゃんとした治療が必要な村人達も時間はかかったが全員病院へ運ばれたようだ。
 アルフィンレーヌやヴィクターは襲撃にショックを受けた人達と話し、最後まで村人の心身のケアに努めたため、彼らから『これ、少ないけど皆さんでどうぞ』などとお礼の品を渡されたりしていた。


 ヨナタンは以前のように暗い顔で自分から一人になるような態度ではなく、子供らしい明るさを持つ少年に変わった。いや、元々の彼に戻ったというべきか。
 放浪者を憎むことを止め、これからはエルルークや他の放浪者達とも交流を深めることができるだろう。
 エルルークも今回のことで同胞の呪いから自分を解放することができた。
 罪悪感が消えたわけではない。それはこの先ずっと、エルルークの中に在り続ける。だけどもう、それに怯え自分を責める気持ちで戦うことはしない。
 同胞達の無念を背負い、今度こそこの世界を守るため、彼らの誇りを胸に戦っていくのだ。
「またこの村に来てくれよな!」
 別れ際村を出るライセンサー達に手を振りながら、ヨナタンが晴れやかな声を投げかける。
 その一言は彼らにとって、ヨナタン少年の初めて見せた満面の笑顔と共に、何よりの報酬となったのだった――。

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