オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
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  3. とある放浪者の試練・前編

とある放浪者の試練・前編 久遠由純

形態
ショート
難易度
普通
価格
1000
ジャンル
バトル 続編予定 
参加人数
74~7人
予約人数
10010100
基本報酬
200000G
200SP
2000EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
3
締切
2020/01/11 12:00
完成予定
2020/01/21 12:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●復興中の村
 地中海に浮かぶ小さな島国エオニア。
 西部の海辺に程近い村は、少ない住民が慎ましく暮らしている所だった。
 5年前にナイトメアの襲撃を受けてから満足な人手も物資もなく、SALFの支援に頼らざるを得ない状況が続いている。
 今日もSALFのエオニア支部から、生活必需品や食料などの物資を届けてもらっていた。

 物資を積んだ車の荷台から荷物を降ろすライセンサー達。
 その中に、全体的に青い色をした鳥めいた姿の放浪者、エルルーク=フォルフォルがいた。
 基本的にはヒト型で、20代中頃の青年に見える。肌は薄い水色をしており、顎が細く鼻も低い。腰まである髪の毛と黒目がちな瞳、ふさふさとした立派な尾羽は鮮やかな青緑色だった。
 そして一番の特徴は、人の耳に当たる部分から20cm程の翼が生えていることだろう。全体的に青っぽい彼の身体の中でその翼だけが白く、目立っていた。
 故郷をナイトメアに滅ぼされていたエルルークは、同じように被害に遭った人達をどこか身近に感じ、今回ここの手伝いにやって来たのだった。

 エルルークは物資をもらいに集まって来た住民を見る。
 年寄りと大人が大部分で子供が少し。どの顔も生活に疲れているようだった。エルルークは適合者であるが故に異世界人でも衣食住が保証されているが、ここの人達は限られた中でどうにかやっていくしかないのだ。
 やるせない思いを抱きつつ、エルルークは食料の入った箱を近くの12、3歳くらいの少年へ渡そうと近付く。
 しかし少年は乱暴にその箱をエルルークの腕から叩き落とした。
「! 何をするんだ!?」
「うるさい! お前放浪者だろ! お前みたいな人外のヤツからの施しなんていらない!」
 その言葉はエルルークにとって衝撃だった。
 特異な姿のため時折奇異の目で見られることはあったが、ここまではっきり敵意を向けられたことはなかったのだ。
 エルルークが驚きで何も言えずにいると、少年は
「放浪者なんかこっちの世界に来なければ良かったんだ! お前らが来たから、ナイトメアが付いて来たんじゃないのか!? 今おれ達の世界がこんなになってるのはお前ら放浪者のせいだ!!」
 叫ぶだけ叫んで、走って行ってしまった。
 それを茫然と見送るエルルーク。
 すると、中年の男性が落ちた箱からこぼれた中身を拾い出した。
「あ、ああ、すまない……」
 慌ててエルルークが言うと、男性は箱を抱えて立ち上がる。
「こちらこそすみません。せっかく食料を届けに来てくれたのに」
「あの少年は……」
「あの子は、ウチの近所の子です。失礼なことを言いましたが、どうか怒らないでやってください」
 代わりに男性が頭を下げた。
「いや、ビックリはしたが、怒ってなんか」
 とエルルークはその青緑の瞳を伏せる。
 怒りよりもただ悲しかった。

●憎む少年
「あの子はヨナタンといいます。5年前村が襲われた時、家族全員ナイトメアに殺されてしまいましてね。未だに傷が癒えないんでしょう」
 男は言った。
 エルルークと箱を拾ってくれた男は、支給品を男の家まで運ぶ道すがらヨナタン少年の話をする。
「ナイトメアを憎むあまり、ナイトメアがこちらの世界に来たのは放浪者のせいだと言うようになってしまって……。その、あなたが少し人とは離れた姿をしているので、そういう姿のものは全てナイトメアに思えてしまうのでしょう」
「まぁ……、そんなふうに見られるのは初めてじゃない」
 平静を保った声音のエルルークに男性は恐縮しながら先を続ける。
「でも、あの子も本当は分かっているはずです。放浪者が悪いわけではなく、ライセンサーとして私達のために戦ってくれていることを」
「……彼も、辛い思いをしているんだな」
 エルルークは寂し気に、そう応えた。

 二人が男の家に着くと、向かいの家の窓からヨナタンがこちらを見ているのに気付いた。そこがヨナタンの家なのだろう。
 男性が箱を持って窓に近付く。
「ヨナタン! ほら、お前の分の支給品だ」
 ヨナタンは箱と男の後ろのエルルークを交互に見て、心の中で何かと戦っているようだった。が、憎しみの方が勝ったようだ。憎々し気な顔で、
「放浪者から何かもらうくらいなら死んだ方がマシだ! お前ら放浪者なんかこの世界から消えちまえ!」
「ヨナタン! そんなことを言うのはよしなさい! ……この人は何も悪いことはしてない。ライセンサーとして、世界を守ってくれてるんだ」
「じゃあなんでおれの父さんや母さん、兄弟たちは救ってくれなかったんだよ!」
 悲痛な叫びが空気を切り裂くように響いた。
 結局はそこに行きつくのだ、とエルルークは思った。
 家族を失った悲しみのあまり、全てが憎いのだろう。自分達とは違う放浪者は手近な異形として憎みやすい。
 なのにヨナタンの憎しみが減ることはなく、より深い悲しみに落ちていくだけ。
 エルルークは前に歩み出た。
 びくりとしたヨナタンが一歩引く。
「ヨナタン、僕はエルルークだ。当然、君に危害を加えるつもりはない。僕からの支給品が嫌なら、誰か違う人に持って来させるから、必ず受け取ってくれ」
 少し間を開けてヨナタンの反応を見るがヨナタンがそっぽを向いてしまったので、エルルークはさらに言葉を継いだ。
「僕もできればこの世界から出て行きたいんだが、残念ながら、僕の故郷はもうないんだ。でも、この世界がそうならないように僕達は……」
「うそだ! お前ら放浪者はナイトメアと手を組んで、人間を全滅させてこの星を乗っ取るつもりなんだろ!」
 ヨナタンが無茶苦茶なことを言いだした時、誰かの

「ナイトメアだーっ!!」

 という声が村の奥から聞こえた。
「!!」
「皆家の中に入れ!」
 エルルークが素早く住民に指示を飛ばす。
 しかしヨナタンは外に出て来た。
「お前のせいだ! 放浪者のお前がいるからナイトメアが出たんだ!」
「ヨナタン、外に出たらダメだ!」
「お前の言うことなんか聞くか! おれは自分でどうにかする!」
 そしてそのまま森の方へと駆けて行ってしまった。
「待て!!」
 エルルークはヨナタンを追うが、ヨナタンの姿はあっという間に森の中へと消えてしまう。
 どうするべきかと一瞬足を止めた時、ヘビのような長い体にムカデのように足がたくさん付いたナイトメアが三体現れた。
「!!」
 ナイトメアは長い体の半分にずらっと足が付いていて、その先の頭と首は上にもたげられている。頭の先端が割れたと思ったら、4枚の花弁のように首の根元まで大きく割れてばかっと広がった。
 4枚に広がった口で獲物を包み込まんと、エルルークに襲い掛かって来る。
「っ!」
 エルルークは咄嗟に避け、三又の槍を構えた。
「この先には行かせない!」
 三体のナイトメアを懸命に牽制しながら素早く状況を考える。多分物資を届けに来た他のライセンサー達は別の場所のナイトメアを相手しているだろう。
 ここには大勢で来たわけではなく、エルルークを含め数人のライセンサーしかいないのだ。
 エルルークはスマホを取り出し、
「西の村でナイトメアが出た! 至急応援を頼む!」
 SALFエオニア支部に応援を要請した。

※ナイトメア3体を倒し、ヨナタン少年の放浪者嫌悪を少しでも軽くしてください。

〈ナイトメア×3 攻撃型 危険度1.5〉
・体長約2m。太さ約直径10cm。ヘビみたいな体の後ろ半分にムカデのように足がたくさん生えています。前部の先端から首の根元まで4つに分かれて広がり、ギザギザの歯が生えています。
・主な攻撃
 噛み付き:広げた口で包み込むようにして噛み付きます。射程1
 酸放出:口から酸を放出し攻撃します。命中すると【継続ダメージ】(3)になる可能性があります。射程3

※他のナイトメアは物資を届けに来たライセンサー達が倒すので考えなくて大丈夫です。

〈その他状況など〉
・エルルークは森と村の境界辺りで戦っています。周囲は家がまばらに建っている他には何もありません。怪我人なども出ていません。
・まだ森の中にナイトメアは入っていません。

〈ヨナタン〉
・12歳の少年。茶色いくせっ毛がボリューミー。
・身寄りがないので近所の人に面倒を見てもらいながら、基本一人で生活している。
・悲しみが深すぎて心が頑なになってしまったが、根は頑張り屋で良い子。


※以下はPL情報です※
・皆さんが来るとエルルークは森の中にヨナタンを探しに行きます。誰かが同行するかどうかは自由です。
・ヨナタンは木の上の自分で作った秘密基地にいて、すぐに見つかります。ですが、エルルークの説得や見た目で放浪者と分かる方の言うことは中々聞こうとしないでしょう。
・エルルークの故郷がナイトメアに襲われたことなどの事情をPCが概ね知っているということにしていただいて構いません。(エルルークについては、『とある放浪者の苦悩』や『とある放浪者の恐れ』などのシナリオを参照してくださるとありがたいです)

こんにちは、久遠由純です。

新年初っ端から重たい内容のシナリオになってしまいましたが、興味を持っていただけたら嬉しいです。
一応前、後編の続き物となっておりますので、ご了承の上参加を検討していただけたらと思います。

よろしくお願いします。

  • 王国の猛将
    ラルフla0044
    放浪者15才|ゼルクナイト×セイント

戦闘重視、速攻で狩りに
ロードリーオーラで囮になる人居るので攻撃特化
雷槍、夜嵐でひたすら槍形成して吹っ飛ばす
味方の状況見て月宴での回復兼ねた攻撃も。囮へのダメージ集中+継続ダメージがあると思うので、異常解除に集中できる様に
とりあえず、分かれてるなら、その切れ目からなら割きやすい?後は足を落として軌道の邪魔?

三匹片付けば後は作業
森に敵がいれば、居るかもしれないならそっちの対処、いなそうなら他のライセンサーが狙ってる敵を狩る

ヨナタンに関しては、説得混じるならとりあえず文句は言っときたい
全員が全員来たくて来てる訳じゃないんだよ?寧ろ無理矢理行く事を押し付けられた奴だって居るんだけど?
とりあえず、聞きたい事としては何故「放浪者限定なのか」
救えなかったから→放浪者が来たからナイトメアが暴れたんだ!…おかしいやろ?
助けてくれなかったからライセンサーは許せない!は分かる。放浪者限定で悪い!ってどこから来たんねん?
やらかした放浪者か、放浪者っぽいナイトメアいたのでは?

【願】
俺は子どもの頃、早く大人になりたい、といつも願っていた。
そして気付いた。時間を縮める事は出来なくても、時間を充実させる事は出来る。
求め続けた…本当の意味で早く大人になれる道を。自分自身を受け入れるすべを。

▼個人
敵は戦闘優先の仲間に任せる
到着後すぐエルルークと一緒に森に入り、ヨナタン(以下、彼と表記)が自発的に戻ってくるよう働きかける

対エルルーク)話がこじれないよう、見守ってほしい旨提案
「きっと彼も理屈の上では分かっているんだ。ただ、感情が邪魔をしてしまうんだろう(彼の態度を是認・受容している事を伝える

対彼)説得する気はない。彼のありのままを受容し支える姿勢を示す
また『子どもの自分にはどうすることもできなかった』という無力感も彼の根底に有ると推測
【願】で彼の興味を引き、問い掛けて話を引き出す「なぜそう思うのかもっと話してくれないか?
「誰もが心に闇を抱えたまま生きている。この俺も。それでいいんだ(彼の行動を肯定
彼が自暴自棄な行動に出たら全力移動で接近し制止「腕を取り鞭持たせ)俺は放浪者だ…これで俺をブチのめして気を晴らせばいい。あんたの怒りも悲しみも全部、この身で受けよう(不意を打つ言動で彼を正気に戻す

敵近接時はホーリーライトと鞭使用し彼を守る

【叶】求めよ、さらば得られん…輝く未来を。

【心情】
ナイトメアへの憎しみが晴れないまま歪んでしまうのは、
敗北を重ねてきた私たちこの世界の人間にも責任があるわ。
ヨナタンの心の傷を癒して、放浪者との橋渡しをしたい。

【目的】
ヨナタンを保護し、放浪者への嫌悪を緩和する。

【行動】
「森にまだ誰か居るの!?私たちも付いていくわ!」
エルルークを追って武蔵介(la0849)と共に森に入る。
探索中にエルルークからヨナタンのことを聞きだし、
説得するための言葉を考えておく。

「先に私たちから話をさせてもらえる?」
ヨナタンを見つけたら、放浪者の特徴が目立つエルルークの
前にヨナタンと話をして落ち着かせ、仲立ちを試みる。
目的を達成したら、物資の分配を皆で手伝いにいく。

【説得】
ヨナタン、ナイトメアに大切な人を奪われた貴方が、
異形の存在を嫌う気持ちは良く分かるわ。けれどどうか、
相手の姿形じゃなく、心のありようを見てあげて欲しいの。

私たちが駆けつけた時、エルルークは森に入ろうとする
ナイトメア3体に、たったひとりで立ち塞がっていたわ。
そして誰に頼まれるでもなく、真っ先に森に入ってここに来た。
彼が何故そうしたか、貴方には分かるわよね。

放浪者を好きになれとか、信じろなんて言わない。
ただ彼らのことをちゃんと見て、知ってあげて欲しい。
…行きましょう?村の人も、エルルークも、心配しているわ。

目的
ナイトメアの掃討

同行者:ソフィアンリーゼ(la3797)

「エルルークのことは気になるけど、まずは敵の排除が最優先ね。話はあとからでもできる」

行動
ソフィアンリーゼの後方に位置し、オートマチックRX7での援護射撃及び、支援に専念。状態異常には即座にホーリーライトで対応。シールドが20%を切った仲間にハイヒール。近寄られたなら、守護刀「寥」に持ち替え、近接戦。隙があれば、噛み付き、酸放出で開いた喉奥を狙い、フルーヴ・エトワールを放つ。戦闘後、様子を見るため、森に入る

「森に入られたら、こちらが不利よ。ソフィー、ここで食い止めて」
「星の光よ、悪しき闇を浄化せよ」(ホーリーライト)
「もう少しだけ耐えて!直ぐ治すから」(ハイヒール)
「放浪者と言っても、事情はそれぞれ違うわ。彼のように、ナイトメアに故郷も仲間も滅ぼされた者もいれば、あなたよりずっと幼くて、ひとりぼっちで見知らぬ世界にやってきた子もいる。そんな人たちにまで、憎しみを向けるのはおやめなさい」

ザンクロウはただ己の為すべき事を為すのです

行動
戦闘を先に終わらせる為に敵へ向かう
敵に獅子轟咆を撃ち、首獲蟹で痛打を叩き込み、一体ずつ集中して確実な撃破に挑む
基本斧で戦闘。胴体半分より先を寸断し身体の長さを半分以下にするか、首自体を叩き落とすように狙う

弱っている敵には鬼哭斬魔で追い詰める
「……去ね

回復できる味方がいる間はガンガン前に出て攻撃し続ける。継続ダメージをもらっても攻め続ける

戦闘後に手伝える事があればエルルークなどに聴いて手伝ってみる
「ザンクロウはこの星の方に助けて頂きました。なのでザンクロウは誰が何と言ってもこの星の方に恩を返す為に、力を使います
「それが今のザンクロウのすべき事です。父上は言っていました。己の為すべき事を己で見出しそれを為せ。と

同行者:アルフィンレーヌ(la2183)

二人のことは気になるけど、どんな言葉をかければいいのか、わからないから、ぼくは敵に集中だ。万が一、森に入られて、ヨナタンに怪我でもさせたら、ますます悪い状況になってしまうからね。ロードリーオーラで引き付け、アリーガードで仲間を護る。防御8割、攻撃2割ってところかな。攻撃に転ずるときは・・・首が4本もあるからなぁ。まず、散弾銃でいこう。で、ある程度痛めつけてやったら、エナジーソードで着実に切り落としてやる。離れている奴にはろりぽっぷばずーかだ。噛み付きか酸放出のとき、奴は馬鹿みたいに大口を開けてくるはずだ。そのときは、アジュール・エクレールで喉を貫いてやる。レーヌはかなりエルルークを気にかけているようだ。無茶をしないよう見張らなくては。

「醜悪なバケモノだな。我が滅してやる。まとめてかかってこい」(ロードリーオーラ)
「どこを狙っている。貴様の相手は我だぞ?」(アリーガード)
「所詮、虫だな!隙だらけだぞ」(アジュール・エクレール)

●敵との遭遇
 村に到着したライセンサー達は、閑散とした村の奥の方で他のライセンサー達の戦闘の物音が聞こえる中、エルルークがナイトメアと交戦しているであろう森の方へと急いだ。
 村と森の境界辺りで、青い鳥めいた姿のエルルークと三体のナイトメアが見えてくる。
「速攻で狩りましょう」
 緑の髪の少年ラルフ(la0044)が、デザイアアックスを装備した。
 本来は狼の獣人である放浪者のラルフは、とにかく面倒事を好まない。任務態度の真面目さも人当たりの良さもそのためだし、戦闘も勝つためなら卑怯な手段も使う。
「森に入られたら、こちらが不利よ。ソフィー、ここで食い止めて」
 小柄で尖った耳と鶏冠のような角、額に宝石を持つアルフィンレーヌ(la2183)も状況を見て取って、自分と似ている少女ソフィアンリーゼ(la3797)に視線を向けた。
 ソフィアンリーゼも、尖り耳に鶏冠のような星形の五本の角と、額に宝石がある。
 二人は別宇宙の同じ星からやってきた異星人放浪者で、外見にそぐわない大人びた雰囲気を漂わせていた。
「任せてくれ」
 小柄な体を覆うような金髪を後ろに払い言ったソフィアンリーゼは、見た目は愛らしい少女だが中身は凛々しく真面目で実直、騎士道精神にあふれていた。
 敵をスキルの射程内に入れるとロードリーオーラを発動。
 角が赤熱し、全身に淡い光を帯びる。
「醜悪なバケモノだな。我が滅してやる。まとめてかかってこい」
 挑発的な意思と自分こそ倒すべき君主だというイメージを送り込むと、奴らはすぐに反応した。
「助かった、ここは任せる!」
「待って、森に誰かいるの!? 私達も付いて行くわ!」
 駆け付けたラルフ達に戦闘を任せて森に入ろうとするエルルークを、ジュリア・ガッティ(la0883)が呼び止めた。
 長い金髪で青い瞳の女性ジュリアと一緒に、茶髪で茶眼の好青年葛城 武蔵介(la0849)も後を追う。
 エルルークは肩越しにうなずき、
「さっきヨナタンという少年がこの森に入ってしまったんだ。探さなければ」
「分かった、三人で探そう。ヨナタンはなぜ森の中に?」
 葛城の質問にエルルークは少し悲しげな顔をして、少年を探しながら事の経緯を話すのだった……。

●まずは敵を倒せ!
 ソフィアンリーゼに向かって行く一匹に狙いを付け、ラルフは撃滅の雷槍を使う。
 斧を持っていない方の手を上に伸ばすと、ラルフの周囲に金と薄緑の砂塵が舞った。その手の中に雷を纏った槍が出現し、己の能力が高まる。
「足落とせば動けなくなるかなっと」
 敵の背後に走り込み、雷槍を鋭く振り回したくさん蠢く足に斬り付けた。
 半分ほどの足が斬り飛ばされ移動力が落ちたものの、まだ動けるようだ。
「チッ、しぶといなあ」
 小さく不平を漏らすラルフを追い越して、黒髪に金目のザンクロウ(la3333)もソフィアンリーゼに意識が向いている一体に接敵する。
 ザンクロウもまだ幼い子供だが放浪者であり、元の世界では獣と森を駆け回っていたためその身体能力は高い。
「ザンクロウはただ己の為すべきことを為すのです」
 それが『獣の王』と呼ばれた父の教えだ。
 ザンクロウの全身から真紅の闘気が揺らめくように立ち上る。
 今己が為すべきことは、ナイトメアを倒すこと。
「一体ずつ確実に撃破する」
 ザンクロウは闘気を拳に集中させ、獅子轟咆を繰り出した。
 ナイトメアの長い首の付け根に拳が中る瞬間、闘気が紅獅子となって炸裂。獅子の咆哮のような轟音と共に、ナイトメアの体が弾けた。

 ソフィアンリーゼとアルフィンレーヌは森に入ったエルルークのことが気にはなったが、今はここを離れるわけにはいかない、とそのオッドアイでナイトメアを見据えた。
 残る一体のナイトメアの口が花弁のように開き、ソフィアンリーゼに襲い掛かる。
 ソフィアンリーゼはストライクシールドをしっかり構えて攻撃を受け止めた。
「そのような攻撃で我の防御を崩すことはできぬ!」
 しかしこの村に来る前からイマジナリーシールドが損傷したままだったため、あと一撃食らったらマズい状態だった。
「ソフィー、もう少しだけ耐えて!」
 守護刀『寥』を手にしたアルフィンレーヌが、フルーヴ・エトワールの詠唱を始めた。それに伴い角が赤熱し、全身が淡く光る。
「そは生命の煌めき。そは魂の囁き。星の光よ、守るべきものを護り、倒すべきものを討つ力となれ!」
 胸の前でクロスした腕から光線が放たれた。二つに束ねた緑の髪の毛がふわりと浮く。
 光線は開いたままのナイトメアの口内に中って、ナイトメアを仰け反らせた。
 その隙にハイヒールでソフィアンリーゼのイマジナリーシールドを修復する。
「すぐ直すわ!」
「すまないレーヌ」

 ラルフに足を斬られた一体が突如振り向きざま口を開いた。
「動きが鈍ったからこっちに来たか!?」
 ラルフは咄嗟に飛び退いたが、その大口はイマジナリーシールドをわずかにかじり壊す。
 ザンクロウにやられた一体も千切れそうな胴体をもたげて反撃していた。
「しまった!」
 突発的な動きにザンクロウの反応が遅れた。
 ガッとナイトメアの牙がイマジナリーシールドに食い込み、半分以上破壊されてしまう。
 ザンクロウのダメージを見たラルフは、回復が必要だと判断し素早くスペルを唱えた。
「舞えよ喰らえよ、我が道阻む者此れ全て我が糧なり、そして其れを分け与える事、我が献身の証とならん」
 月夜の饗宴が起動すると金の砂塵がラルフの周囲に出現、槍を形成し敵に飛んで行き、緑の砂塵は自分とザンクロウのイマジナリーシールドの破壊された部分を埋めるように修復していく。
 足を斬られた一体は槍に全身を貫かれ絶命したが、もう一体は体のあちこちを失いながらもまだ生きており、ソフィアンリーゼに向かって行く。
「かたじけないラルフ殿! アレはザンクロウが仕留めます!」
 ザンクロウが怯むことのない闘志を瞳に宿し、地を蹴った。
 反撃されようと己は攻め続けるのみ。
 煌刃・鬼哭斬魔を発動すると、闘気の高まりがイマジナリーシールドの耐久と引き換えに、デザイアアックスの黒い姿を黄金の斧剣に変える。
「……去ね」
 全力で黄金の刃を振り下ろした。
 刃は黄金の軌跡を描きながら、鬼の哭くような音をさせてナイトメアの体をバラバラに打ち砕いたのだった。

 ソフィアンリーゼがアルフィンレーヌを背にした位置で、散弾銃『バスターブリザード』に持ち替え牽制射撃する。
「貴様の相手は我だ」
 近寄れなくなったナイトメアは傷付いた口奥から酸を放出、ソフィアンリーゼは下手に避けてアルフィンレーヌが傷付くよりは、とあえてダメージを受けた。
「くっ、この程度、レーヌが傷付くことを思えば」
 じわじわと酸に侵されていくソフィアンリーゼをすぐにフォローするアルフィンレーヌ。
「星の光よ、悪しき闇を浄化せよ!」
 アルフィンレーヌから放射されたホーリーライトがソフィアンリーゼを包み込み、イマジナリーシールドの浸食を止める。
「ソフィー気を付けて!」
 アルフィンレーヌの声を聞きながら、ソフィアンリーゼはさらに噛み付こうと這い寄るナイトメアに身構える。
「所詮、虫だな! 隙だらけだぞ!」
 言いながら額の宝石に両手の人差し指と中指を広げて添え当てた。すると宝石から紫電を纏った空色の光線、アジュール・エクレールが放たれる。
 だがナイトメアはくねっと首を曲げて光線をかわし、そのまま突っ込んで来た。
「!!」
「ソフィー!」
 アルフィンレーヌの叫び。
 噛み付かれると思った瞬間、不意にナイトメアの体が風刃に切り刻まれ濁流に呑まれた。
 雷槍と嵐棍を持ったラルフが濁流と雷と風刃を操り嵐のように暴れ回って攻撃する、夜嵐だ。
 イメージで作り出した武器や濁流が消えると、切り刻まれ動きを止めていたナイトメアもぐしゃりとその場に崩れ落ちたのだった。
「間に合ったようですね」
 ふう、と一つ息を吐いてラルフが言った。

 とりあえず敵を全て倒したところで、イマジナリーシールドに損傷が残っていたザンクロウとソフィアンリーゼは、アルフィンレーヌにハイヒールをかけてもらい修復する。
 エルルーク達のことも気になったため、敵がいないかの確認も含めて皆で森の中に足を踏み入れた。

●話し合い
 ジュリアと葛城、エルルークの三人は、森に入ってほどなく、樹の上にある小さな小屋らしきものを発見した。
 小屋と言っても板切れを壁代わりに、ブルーシートを屋根や扉の代用にしただけの、人一人がようやく寝られる程度の簡素な物だ。
 その小屋のブルーシートを少しめくって、外の様子をうかがうヨナタンが見える。
「いた。あの樹の上の小屋にいるのがヨナタンだ」
 エルルークが言うと、ジュリアと葛城はエルルークの前に出て、
「先に私達に話をさせてもらえる?」
「今のあんたの話だと、あんたの姿は余計話をこじれさせるだけだと思うし……」
「私達が彼を落ち着かせて、仲立ちしてみるわ」
「きっと彼も理屈では分かっているんだ。ただ、感情が邪魔してしまうんだろう」
 二人の言い分をエルルークはもっともだと思った。確かにヨナタンのあの様子では、放浪者と丸分かりの自分の言うことに聞く耳なんて持ってくれそうにない。
「分かった……。僕はここにいる。ヨナタンのこと、頼む」

 そして、ジュリアと葛城は小屋の下まで近づきヨナタンに声をかける。
「ヨナタン! 私達はライセンサーよ! ここは危険だから、出て来てちょうだい!」
 ちらりとヨナタンが顔を出した。
 ジュリアは人間だし、葛城も放浪者だが外見は人間と変わらない。けれど、二人を見る彼の目は警戒していた。
「やだ! 放浪者がおれの村から出て行くまでここにいる!」
「そのことだけど……私達にちゃんと話して欲しいの。降りて来て?」
「……」
 渋々といった体でヨナタンは器用に樹をすべり降り、むっつりと二人の前に立つ。
「なぜそんなに放浪者が嫌いなのか話してくれないか?」
 普段は軽口を叩いたりする葛城も、今は真剣にヨナタンに向き合っていた。戦乱に巻き込まれた幼少時代を思い出すからか、彼を放っておけなかったのだ。
「……っ、ナイトメアは放浪者がこっちの世界に来るから、一緒に付いて来たんだ! きっと放浪者がいなければナイトメアもこっちに来なくて、おれの家族も死なずにすんだんだ……っ!」
 泣きそうになるのを堪えながら訴えるヨナタン。
「だから放浪者が嫌い?」
「そうだよ! 放浪者なんて結局人間とは違うんだ! ナイトメアとグルになって地球を乗っ取る気なんだろ!」
 ヨナタンの言ってることは何の根拠もなかったが、きっと『家族を助けられなかった子供の自分』という無力感が極端な思考に走らせているのだろう、と葛城は推測する。

「――ヨナタン、ナイトメアに大切な人を奪われた貴方が、異形の存在を嫌う気持ちは良く解るわ。それは敗北を重ねて来た私達この世界の人間の責任でもある。貴方の家族を救えなくてごめんなさい」
 ジュリアが真摯な表情でヨナタンを見つめ、きっちりと頭を下げる。
 理不尽な非難だろうと、ライセンサーが未だナイトメアをこの世界から排除できていないことは事実。ジュリアはそれを認める潔さを持っていた。
 大人のライセンサーに謝られたことに、ヨナタンは一瞬面食らったようだった。
「けれどどうか、相手の姿形じゃなく、心のありようを見てあげて欲しいの」
 ジュリアは言葉を継ぐ。
「私達が駆け付けた時、エルルークは森に入ろうとするナイトメア三体に、一人で立ち塞がっていたわ。そして真っ先に森に入ってここに来た。今だって彼は貴方を気遣って、姿を現すのを控えている。彼がなぜそうしたか、貴方には分かるわよね?」
 ヨナタンの心がぐらつく。
 自分が憎しみにまかせて頑なに貫いてきたものが、崩れてしまいそうになる。
「放浪者全員を好きになれとは言わない。ただ彼らのことをちゃんと見て、知ってあげて欲しい」
「やめろよ……! 放浪者がナイトメアを地球に連れて来たんだ。放浪者のせいなんだ。じゃないと、おれの家族が死んだのは仕方なかったことになっちゃうだろ!」
 ヨナタンは家族の死をそんなふうに考えられなかった。
 だから外から来た者のせいにしたのに。

「全員が来たくて来てる訳じゃないですよ? むしろ無理矢理行くことを押し付けられた奴だっているんですけど?」
 突如聞こえた声にジュリアが振り向くと、戦闘を終えたラルフ達がいた。
 ラルフは転移する時のことを思い出したのか、若干不愉快そうにそのオレンジの瞳を険しくする。
「誰もが心に闇を抱えて生きている。それでいいんだ。あんたのどうしようもない怒りや悲しみは、全部この身で受けよう」
 葛城が自分の薔薇鞭をヨナタンに持たせる。
 彼の怒りも悲しみも否定しない。それらを理解し自分の目で真実を見つめ、思いを伝えるために声を出す。
 それが葛城の哲学だから。
 え、と見上げるヨナタンに、葛城は告白した。
「俺は放浪者だ。これで俺をブチのめして気を晴らせばいい」
「それならわたしもそれを受けるわ」
 アルフィンレーヌも葛城の隣に立つ。
「レーヌ! ……いや、きみが望むなら」
 彼女を止めようと腕を伸ばしかけたソフィアンリーゼだったが、アルフィンレーヌの意思を尊重し手を戻した。
「見れば分かる通り、わたしも放浪者。わたしは自らの意志でここにやって来た。ナイトメアを滅ぼすために。けれども、その誓いは守れていない。恨むならわたしを恨むのね」
 堂々と立つアルフィンレーヌは、ヨナタンと変わらない子供だ。
 ヨナタンは葛城とアルフィンレーヌをキッと睨み鞭を力強く握りしめ――、ぼとりと落とした。
 ヨナタンの目からボロボロと涙がこぼれる。
「なんだよぉ~、おれ、できないよぉ~……!」
 憎いはずの放浪者なのに、鞭打つことができない。
 ジュリアの言ったように、ヨナタンも心の奥では分かっていたから。
 ザンクロウが邪気のない瞳で口を開く。
「ザンクロウはこの星の方に助けていただきました。なのでザンクロウは誰が何と言ってもこの星の方に恩を返すために、力を使います」
 ヨナタンには、ザンクロウの言葉をウソだと思うことが難しくなっていた。

 いつの間にか傍らにエルルークがいて、ヨナタンを穏やかに見下ろしていた。


「ありがとう。正直、僕一人ではどうにもならなかった」
 ヨナタンを連れ村に戻ったエルルークは、葛城達に礼を言った。
「俺達やヨナタン、皆が求めるのなら……、得られるはずだ。輝く未来が」
 葛城の希望を込めた言葉は皆の心に染み渡り、エルルークは微笑んだ。
 そしてジュリアとザンクロウと共に、村人達の手伝いをしに行く。

 ヨナタンは働くジュリア達を見ながら、彼らなら信じてもいいかもしれない、と思っていた。

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