オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 【果冠祭】ミーベル、熟れた果実

【果冠祭】ミーベル、熟れた果実 monel

形態
ショート
難易度
普通
価格
1000
ジャンル
コメディ 
参加人数
73~7人
予約人数
10010100
基本報酬
200000G
200SP
2000EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
3
締切
2019/08/27 20:00
完成予定
2019/09/06 20:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●地中海に浮かぶ

 ナイトメアによって壊滅し、国という形を維持するのすら困難な『エオニア王国』
 国を背負う幼い王女は、考えた。
 途絶えている祖国伝統のお祭りを復活させられないか、と。
 国主が前に出て、明るい話題を供する事が大事なのだ。
 この国の未来は続いていくのだと示す必要があるのだ。

 もともとの祭りと同じものは出来ない。
 例えば、果物を大勢でぶつけ合うメインイベント。食べ物を無駄に出来るほど、国の財政は豊かではない。有り体に言えばむしろ貧乏だ。


 ――ぶつけるものは、ペイント弾。
 使われるはずだった果実は、沢山の料理に変えて皆で食べればいい。

 ――ここは今やSALFの前線基地。
 古きに拘らず彼らにとっても楽しいものにするべきだ。

「我と共に、全員が参加者になれる楽しい祭りを作っては貰えませぬか」





 燦々と煌めく翠の波間を黒い影が滑るように泳いでいる。
 艶のある黒い肌に地中海の海水を滴らせ、海面を飛び跳ね、白い波飛沫で軌跡を残していく。
 一体の影を先頭に魚鱗陣となって群を成す。

 そう、それは地中海を泳ぐかつお……いや、バタフライ泳法で泳ぐかつおはいないだろう。
 では人か、と聞かれたら目撃した者は戸惑うかもしれない。
 海面を跳ね、滑るように泳ぐその泳法は人型でなければ難しい気もするが何故か人とは認めたくないような抵抗を覚えるのだ。
 あり得ない、そう思いながらも目撃者は口籠もりながらも告げるだろう。
「あれはどちらかというと、黒い毛並みの、ゴ……」





「エクセレンテ! 素晴らしき哉、熱き日差し! 古の王国、復興を掛けた女王によるその手段はフィエスタ!」
 集まったライセンサー達の前で悶え、身をよじらせながら演説するのはブランドコーディネーター兼異世界スポーツアンバサダーを名乗るチコ・カノだ。
 港に設置されたイベントスペースに立ったチコは、弾けるような胸筋を派手さと上品さの危ういバランスを昇華させたジャケットで覆い、滑らかな動きで嫌味のないお辞儀をした後に、興奮したようにクネクネしながら話し始めたのだった。
「さて、そろそろ特別ゲストが来たようです。……出でよ! 我等が友人……!」
 チラリと金色に光る細めの腕時計を見たチコが間を開けたその時、ステージ背後の海から爆発したような波飛沫が上がり、何か多数の黒い姿が飛び出てくる。
「ウホウホウホホッウホーッ!」
 チコが叫んだ。
 海から出てきたのは優雅に頭を振って黒い毛並みを濡らす海水をはね散らすゴリラ達だった。
 地中海の熱い日差しに、はね散らされた海水がキラキラと舞い、鋭角にカットされたブーメランパンツが目にうるさい。
「あ、では彼等は着替えて貰いますね」
 派手に登場してすぐにシャワーを浴びに行くゴリラ達。最初から普通に居られなかったのか。

「さて、諸君! 今回のイベントについて説明しましょう!」
 張り切った様子でゴリラと一緒にお召し替えをしてきたチコがマイクを持って説明しだす。
 港近くの商店が立ち並ぶエリアの簡易図が描かれたボードを指し示しながら、流暢に説明していく。
 何故か、端にタッチダウンエリアが描かれているが、そこには何の説明もされない。
 そのボードを支えているのは、様々なコスプレをしたゴリラ達だ。
 もれなく胸部がはちきれてる彼等の服装は、スーツやコック服、どこかの民族衣装などバリエーション豊かな装いはまるでゴリラのファッションショーだ。
 特に胸筋を強調するかのような南欧の酒場娘風衣装の破壊力が高い。ついつい視線が胸元に吸い寄せられてしまう。見られている事を自覚してるのか片側ずつ胸筋を動かすのはやめてほしい。

 それはともかく、チコの話を要約すると、こうだ。
・エリアは商店エリア限定
・特殊ミーベルペイント弾(EXIS)使用
・周りは皆敵、ペイント弾をぶつけ合って、最後まで立っていた者の勝利
・市民(ゴリラ)にペイントを当てると、罰ゲーム(ゴリラ)だ! 気をつけて!

 その説明を聞いていたライセンサーの疑問符溢れる表情を見て、チコは少し考え、最後に付け加えた。
「細かいことはパッションで乗り越えましょう!」

 かくして、チコ・カノプロデュース『チキチキ! 第2回異世界スポーツinミーベル祭り』は何となくパッションだけで開催されてしまうのであった。

※OP画像はゴリラ達の心象風景でお送りしてます。

 何よりもパッションが大事。

 最後まで立っていた者だけが勝利の美酒(ミーベル味)を浴びる事が出来るのです。

 細かい所はパッションで乗り切って頂けるでしょう。
 とはいえ、よくあるQ&Aについて説明します。

Q1:ペイント弾(EXIS)って危なく無いの?
A1:非常にIMD効率の悪いEIXSですので、派手なエフェクトが発動する程度です。ただし、色々と仕込んでいるため、物理的には重いです。シールドとの干渉により破裂、ペイントを浴びせられます。

Q2:ペイント弾当てられたら動かないようにするの?
A2:動けるなら全身ペイントされても大丈夫です。何らかの原因によって動けない場合はゲームセットまで寝てて下さい

Q3:何でゴリラ?
A3:彼等は異ゴリラ世界からの放浪者であり、ナイトメアではありません。チコの友人でもあり、スポーツの素晴らしさを世界へ広める紳士的な活動をしています。見た目はゴリラ以外何者でもありません。

Q4:罰ゲーム(ゴリラ)って……何?
A4:ゴリラマニアの世界ではご褒美である可能性を考慮出来ておりませんでした。不適切な表現によりご不快を与えてしまった事をお詫びします。正しくは『ゴリラを汚すとゴリラにけがされる(ご褒美かも)』でした。

 さあ、フィールドに立った瞬間から貴方達はミーベルの戦士です。
 後はパッションの導きでなんとかなるので、好きにしてください。

 なお、滅多にならないと思いますが、重体を恐れない方は『重体◎』などプレイングに入れてもらえると可能性は広がります。

 素直にヨーロッパかつお祭りの雰囲気を楽しむシナリオにするつもりが、チコとゴリラを絡ませたせいで一面ゴリラ色になってしまったmonelです。
 好きなようにボケ倒すも良し、貴重なツッコミ枠を争いミーベル色に染まるのも良し、皆様の想像力によってどこまでも広がるゴリラ・ワールドをお楽しみ下さい。

 なお、本依頼はコメディですので、色々ご注意下さい。

・う(南国から帰還し、重体の姿で参加することになったがそれはゴリラ戦士的にハンデにすらならなかった、力のないゴリラは屍を晒すが、真に力のあるゴリラは病気であっても敵を倒せるので、いわんや怪我ごときに屈しない)
・ほ(卑怯未練にも潜伏するゴリラ、火を使うゴリラが居る。しかし待ってほしい、それは汚リラ行為ではないだろうか。何としてでも倒さねばならないウホ。)
・ウホ(というよりも言語を発することすべてがゴリラを汚す行為であるので言葉を話した瞬間からバナナを顔に叩き付けていくウホ。これがゴリラの最新スポーツ、赤熱バナナゴリデイ。顔に叩き付けるので自然の恵みを無駄にしないのでゴリ解いただけるウホ。)
ホホウ(ゴリラ(Gorilla)サル目ヒト科ゴリラ属に分類される類人猿の総称である。元前5世紀ごろのカルタゴのハンノ2世航海王の航海記に記されたアフリカの毛深い女性中心の蛮族の呼称に由来する。したがってフェニキア語に由来するとは考えられているが、名称そのものの具体的な意味は分かっていない。四足歩行で、『ナックルウォーキング』と呼ばれる拳で地面を突きながら進む歩き方をする。外敵を威嚇する際には、二足で立ち上がって両手で胸を叩く『ドラミング』と呼ばれる行動をとる。凶悪な動物だと誤解されてるが、研究が進み、温厚とされているが関係ないので皆順番に殴るね!!!!!!!!そこら辺の木で!!!!!!!!!)

■準備
・多少は動き易い様『さらし』を巻いておく
・『ペイント弾』を幾つか『さらし』でくるんで纏め、『特大ペイント弾』を作っておく
・『タンブラー』に『サラダ油』を入れて持参

■行動
・最初は『建築物』及び『ゴリラの皆さん』を盾にするよう、遮蔽を重視して動き、エリア内の『開けた場所』を目指して移動
・辿り着いたら『ジャイアントシールド』を地面に置いてその上に乗り、近づいてきた相手を狙う
・『他PC』が多く集まるタイミングが有ったら、その場所めがけて『特大ペイント弾』を使用

・或る程度『ペイント弾』が飛び交って『ジャイアントシールド』の周囲が染まり、且つ『比較的近い位置』に『他PC』が入ったら、おもむろに『ジャイアントシールド』から降りて持ち上げ、盾にしつつ『染料』に『オイルライター』で着火/『可燃性』で無い場合は、『サラダ油』を撒いてから着火
・『ペイント弾』の『可燃性の程度』等によって効果は変わるが、本人は『ジャイアントシールド』で隠れていた位置=『ペイント弾』を浴びていない位置に陣取り、そのまま継続
・尚、この段階で『無差別攻撃』に近い状態になる為『ゴリラの皆さん』を巻き込む可能性が高く、『罰ゲーム』になると思われ/『一度に複数名のゴリラを巻き込んだ場合』の『罰ゲーム』の為、相当酷いことになる可能性も?

・重体◎

  • 宇宙系マスコット
    てくたんla1065
    放浪者10才|セイント×グラップラー

「ゴリラも人間さんも、うちから見たら大して変わらんと思うんよー」
「元を辿ればみーんな母なる海から来たわけやし?」

【準備】
「流行先取り、ふっさふさやでー」
ゴリラを見習って全身にふわもこの冬毛を生やしておく
多分このスタイルが今年の冬の最先端ファッションになると思う、秋の事は来年考える
一見すると、「もこもこ黒ウサギの可愛いぬいぐるみ」のようだが、
よく燃えるし、ペイント弾のインク的な何かとか着きやすいし、あと暑い

【行動】
「当てたらあかんの?あれやろ?熱湯風呂で“押すなよ!絶対押すなよ!!”っちゅーやつやろ?」
パッションってなんだろう?
どこかの芸人の名前だろうか?
とりあえず、隠密活かしつつひたすら逃げる
たまにペイント弾とか投げてみる
当たるか当たらないかは運だろうけど、
ガーディアンストライクとか仕込めば当たる気がする
あと、当てるなと言われると当てたくなるのでゴリラに当てたくて
うずうずしてるかもしれないし、そんな事してる隙に他のメンバーから
ペイント弾当てられてしまうかもしれない…

※アドリブ可、重体OK

アドリブ絡み〇

ペイント弾で撃ち合うのはとっても楽しそう
ふと雪合戦の時を思い出す
雪合戦は楽しかった。顔写真もたくさん撮れた
だがしかしきちんと一つに集中すべきだと弾を捨てカメラを手に取る
一体何をしに来たのかと言われれば胸を張って答える
「お顔のお写真を撮りに来たのよ!」
「ところであちらにいる方(ゴリラ)はもしかして雪合戦の時の?お写真撮らせていただいていいかしら!」(見たことのある顔のゴリラがいれば。いなくても写真は撮る

「お顔こちらにいただけるかしら!」
全力移動で会場を駆け回りとにかく顔を撮って撮って撮りまくる
パッションと勘と執念を駆使し(可能なら)謎の技術力を発揮し風景や体がブレても顔部分だけは何故かブレずに撮れている
タッチダウンエリアはアメフトの知識もなく、よく分からないエリアという認識なのでいい撮影ポイントになれば躊躇なく入る
ペイント弾は出来る限り避けるがそれによって写真が取れないと判断したら避けない
但しカメラは死守
自分には当たっても気にしない。重くなってきても根性と気合と執念で這ってでも動く
原動力は顔と写真へのパッッッションヌ!!!
「お、お顔……お写真……」

何かの手違いで罰ゲーム(ゴリラ)になってしまった場合
「よく分からないけれどもしかしてとっても近くでお顔を撮れるチャンスなんじゃないかしら?!えっ違う?」

◆心情
「お酒とかいらないから美味しいもの食べたいなぁ
(暑くて脳みそがゆだったゴリラなので本能のままに行動する

◆本能
暑い。涼しいところがいいな
おなか減った。果物美味しそうだね
疲れた。スポーツとかどうでもいいし

ペイント弾……重い。面倒だからその辺はみんなに任せるよ

◆行動
あまり汚れたくも無いから手っ取り早く手元のペイント弾を割って、中のペイントで化粧でもしてよかな
コスプレいっぱいあって楽しそうだね……
その酒場娘風衣装、ちょっと貸してよ(汗かいたし着替えたい)

適当に負けて適当に果物と冷たいものでも飲みたい
スポーツってなんだっけ。フードファイトだよこれ
(自堕落にごろごろしながら果物もぐもぐ

パッション……フルーツ?
なんか変わった味だよねあれ
最近はやりのかき氷とかにしてみたら少しは美味しいかな

・心情
妙な姿の放浪者もいるのだから、ゴリラがいてもおかしくない
だが気軽に近寄ってはいけない気がする

・チコに質問
「ゴリラといえばウン〇投げだが、こいつらもソレをやるのか?」

・方針
タッチダウンエリアに向かう
やらねばならぬことがある、そんな気がする
ボールはその辺の青果店で丸い果物を調達、お金は払う
無ければ携帯品のヘルメット代用

邪魔するやつは撃つ、そうじゃなくても視界に入ったら撃つ
さすがにゴリラと参加者の違いは見て分かるのではと思う
ペイントだらけでも走る
動きを阻害する影響があるなら上着を脱ぎ棄て、携帯品のトレンチコートに着替え
帽子も同様
撃ち合いに埒が明かないなら全力移動でその場を離脱
「俺は約束の場所にこれを届けるんだ。娘よ、待っていてくれ」
病気の娘が食べたいと言っていた果物を全力で届けるという脳内妄想でテンションUP
ちなみに独身、家族も彼女も無し

山吹(la2495)の写真撮影を快く受ける
サングラスとってイケメンスマイル、そして撃つ
「すまんな、世の中は世知辛いぜ」

敵の攻撃はラウンドシールドで受けるが、ペイントべたべたで使えなくなったと判断したら捨てる
無事にエリアにボール(果物)を届けたら、脳内妄想の娘が救われた感
病気が治った、妻と娘と抱き合う、そこまで妄想する

エリアで何が起きるかお任せ
果物はその辺のゴリラにやる
アドリブ歓迎

  • 雑草を食べた女
    伊丹 透子la3340
    人間14才|ゼルクナイト×ネメシスフォース




 ゴリラ(Gorilla)サル目ヒト科ゴリラ属に分類される類人猿の総称である。元前5世紀ごろのカルタゴのハンノ2世航海王の航海記に記されたアフリカの毛深い女性中心の蛮族の呼称に由来する。したがってフェニキア語に由来するとは考えられているが、名称そのものの具体的な意味は分かっていない。
 四足歩行で、『ナックルウォーキング』と呼ばれる拳で地面を突きながら進む歩き方をする。
 外敵を威嚇する際には、二足で立ち上がって両手で胸を叩く『ドラミング』と呼ばれる行動をとる。凶悪な動物だと誤解されてるが、研究が進み、温厚とされている……。


ーーとあるゴ年生のノートより抜粋ーー




「ゴリラといえばウン〇投げだが、こいつらもソレをやるのか?」
 街角に馴染むように散らばっていくコスプレゴリラ達に視線を送り、ミハイル・エッカート(la3184)はペイント弾を配るチコに問いかける。
「まさか! 彼等は見事な紳士であり、淑女なのですよ。投げるとしたら真摯な愛情ぐらいですかね。フフフ……」
 無駄にキラキラとした笑顔で去って行くチコを見て、ミハイルは何かを考え込むかのようにゴリラを見つめるのだった。

「ゴリラも人間さんもうちから見たら大して変わらんと思うよー。元を辿ればみーんな母なる海から来たわけやし?」
 ミハイルの肩をぽんと叩くのはてくたん(la1065)だ。
 全身に毛を生やしてもふもふの毛ダルマになっているが、ついさっきまでは短い毛並みだった気がする。その毛は自由自在なのだろうか。気になって仕方がないミハイルはてくたんの言葉を聞き逃してしまった。
「え?」
「ほれ、そんな事より見てなー。流行先取り、冬の最先端ファッションやでー。遠い過去を振り返るよりも近い未来を創り出すんや」
 真夏である。
 てくたんの体温調節がどのように行われるのか不明だが呼吸が荒く目が虚ろなのは暑いのではないだろうか。
「暑く無いの「暑い」か? ……そうか」
 被せ気味に真剣な表情で告げるてくたんにミハイルはそれしか消えず言葉は無かった。





 闘いの始まりはムギホ・イイヅカ(la2846)の無差別爆撃から始まった。ペイント弾を手に放つのは咲き乱れる赤。
 桃色じみたミーベル色の燃え上がるエフェクトと共に生暖かい風がライセンサー達を襲う。
「あかん、めっちゃ暑いやん……」
 始まる前からグロッキー気味だったてくたんは黒ウサギから桃ウサギへとファンシーに変化した。冬の流行はピンクだろうか。
「暑そうだねー」
 他人事のようにてくたんを眺め、当のムギホは仕事は果たしたとばかりに、近くのベンチに座っている。
 おもむろにペイント弾を開けて、中身のペイントでフェイスペイントを始めだした。お化粧してる最中の女子に声をかけるのは躊躇われる。高度な心理戦である。

 伊丹 透子(la3340)は吹き荒れる生温い風に身を書き抱くようにして震えていた。
(きっと分厚い胸板に押し潰され、重いペイント弾をぶち込まれるのですわ……そして汚らしいペイントを塗りたくられて、ゴリラ達に蔑まれるような目付きで見下ろされるのですわね。あぁ、踏み躙られ、全てを奪われるのですわね……はっ! そうですわ、その楽しみすら奪われるというのはどうかしら、目の前に楽園があると言うのに届かない。今、拓かれる新たな境地ですわ!)
「何をぶつぶつ言ってるんだ?」
 さっきから伊丹を見ながらぶつぶつ呟いてたチコにミハイルが問いかける。
 手にはゴリラから買ったこの島特有のラグビーボール型のスイカが持たれている。
「いえ、あのレディの心境を考えていたのですわ。所謂セルフ放置プレイですのよ。このチコの眼は誰にも欺けないのですわ」
 想像し過ぎてお嬢様言葉のマッチョが誕生していた。
「あの御嬢さんか……おっと、俺は行かないとな。病気の娘が待っているんだ。チコ、あんまり人の事をジロジロ見るのは感心しないぜ」
 片手を上げて颯爽と去っていくミハイル(独身)に手を振り、チコが伊丹に視線を戻すと、伊丹が海に飛び込んでいた。
「なるほど、母なる海に抱かれつつ窒息も楽しむつもりですね」
 熱にヨロけただけかもしれないが、真相は海の底だ。
 自分の言葉で伊丹が危険な事に気付いたチコは慌てて助けようと、丁寧に服を畳んで、入念な準備運動をこなしてから、片足ずつ海に入るのだった。

「う……う……うほ……」
 クララ・グラディス(la0188)は熱にあてられ目をぐるぐる回しながら覚醒の時を迎えていた。
 直前の依頼で受けた傷もまだ癒えていない身体には、酷な環境であったのだろう。
「うほほーっ」
 そして少女はゴリラとなった。

 ちゃんとチコのイベントの事について考えている者もいた。良かった。
 天紙垂 結梨(la0340)の戦略は位置取りから始まっていた。
「この辺りで良さそうですねぇ〜」
 間延びした声で広場に陣取った天紙垂の片手には巨大なジャイアントシールド、もう片手にはサラシに巻いた大量のペイント弾が担がれていた。
 ズンッと地響きを立てて置かれたジャイアントシールドの上に陣取り、仁王立ちになったメイドは他のライセンサー達が来るのを待ち受けるのだった。





「うふふ、これって雪合戦を思い出しますわ」
 被弾したペイントで頬を染めた春風 山吹(la2495)は天紙垂とペイント弾を投げ合うミハイルに笑いかける。
「俺はこんな所で足止めを食らうわけにはいかない。やらないといけない事があるんだ」
 スイカを小脇に抱えて物陰からペイント弾を投げるミハイルは、天紙垂の隙を伺う。
 身を隠す物が無い場所に立っている天紙垂は、ペイントを浴び過ぎて泥人形の如き姿になっているが、自作の特大ペイント弾を振り回す様子からは戦意の衰えは伺えない。
「やらないといけない事……そうですわ! 私もやりたい事を1つに絞りますの!」
 ミハイルの言葉に深く頷く春風は、持っていたペイント弾を投げ捨てる。
「む、何をするんだ?」
「もちろん、お顔のお写真を撮りますの!」
 春風がペイント弾の代わりに持ったのはカメラだった。
「そうか、それがお前の『やるべき事』なんだな」
 頷くミハイルに向かって春風は返事の代わりに写真を取り、ニッコリと笑う。
「最高の顔を撮って見せますわね!」
 バシャバシャと連写の音も激しい。
「あ、あなたもしかして雪合戦の時の? お写真撮らせていただいていいかしら!」
 ミハイルや天紙垂だけでなく周囲で見守るコスプレゴリラ達の顔も撮影していく。
 間違いなくゴリラの顔面の個性を把握している。
「よし、ついてこいっ!」
 隠れていた物陰から飛び出していくミハイル。逃すまいとする天紙垂。激しく動く二人の顔面をブレなく撮影する春風。
 流れる風景の中、顔面だけは決してブレないのは春風のパッションと執念そして冴え渡る技術の賜物だろう。今、人生の中で最高に輝いていた。フラッシュが。

「当てたらあかんっちゅーのはフリと思うよな、普通。押すなよ、絶対押すなよ! みたいな。あかん、うずうずするわー」
 てくたんは黒とピンクの派手な迷彩柄となっていたが、最新のファッションは街に馴染む。ひっそりと街角に潜んで、三人のバトルを見守っていた。
 しかし、同じくバトルの行方を見つめるゴリラ達を見て、ペイント弾を当てたくてたまらない気持ちを抑えきれずにいた。
「ちょっとだけ、ちょっとだけやから」
 我慢しきれずにペイント弾を振りかぶるてくたん、その背後から「うほ」と声がかけられる。
「な、なんや! まだ当ててへんで!」
 後ろめたさから言い訳を始めたてくたんが振り向くと、そこにいたのは木の棒を引きずるクララ改めゴリララの姿だった。
「うほ」
 ゴリララがてくたんを指差すと周囲のゴリラから一斉にバナナが投げつけられる。
「な、な、なんでや「フゴォッ!」」
 問答無用に大量のバナナが口腔に突っ込まれ、白目を向いて倒れるてくたん。
「うほ」
 ゴリララが何かを言っているが、ここにはゴリラ語を理解できる人が居ないので詳しくはプレイングを見てほしい。





 一方その頃、ムギホはゴリラ達とキャッキャウフフとコスプレの交換会をしながら、広場に面したカフェテリアで優雅に過ごしていた。
 残念ながらゴリラの衣装は伸びきっており、ムギホの身体にはフィットしなかったが、花冠を被ったゴリラがリボンで良い感じに縛って可愛くしてくれた。
「可愛いね〜その花冠。え、ライセンサーが配ってたの?」
 言葉は通じなくとも意思は通じる。そう、ゴリラならね!
 そんなムギホの元に全てを破壊し尽くすゴリララことクララが現れた。
「うほ」「うほー」
 ゴリラ同士何か通じるものがあったのだろうか。
 ゴリララは何をするわけでもなく、広場の戦場に視線を向けた。粛清すべきは他にある。

「ここしかないですぅ」
 天紙垂は周囲を塗り替えたペイントと集まってきたライセンサーを見て、必殺の罠を発動させる。
 足元のジャイアントシールドを持ち上げて下に潜ると、周囲のペイントに火をつけたのだ。
 そう、パッション溢れるペイントはよく燃えるのだ! たぶん。
 周囲を塗り尽くしたペイントに火は広がり、街は炎に包まれた。

「くっ、これでは進めないな」
 行く手を炎に包まれミハイルと春風は立ち往生していた。炎に照らされ汗が滲む表情をバッチリと抑えた春風は満足げであったが、前に進めなければ新しい顔とも出会えない。
 仕方なく迂回しようとするが、燃え盛る壁が崩れ、道を塞がれてしまう。
「くそっ、火を消さなければ……」
 上着を脱いで炎に被せる事で火を抑え込もうとするが、ペイントに汚れた上着は気持ちがいいほどよく燃えた。
「うほ」
 そこに響き渡るクララの吠え声。高らかにドラミングをするゴリラ達がその声に従うように消化活動を始めると、あっという間に火は消えてしまった。
「すまん、助かった」
 ミハイルと春風は礼を告げ、足早に去っていく。そこに留まると危険な匂いを敏感に感じ取ったのだろう。
「あつっ! うちの毛が燃えてるやんっ! え、なん? あだっ!」
 バナナをもぐもぐさせつつ起き上がったてくたんは、自分が火達磨になっている事に気づいてパニックになる。
 だが、火を消す使命感に燃えているゴリラ達に囲まれて、バナナを投げつけられる。
「バ、バナナ……もう動けへん……」
 バナナまみれになって火が消されたてくたんの口に大量のバナナを詰め込んだクララは、まだ燃えている木片を持って立ち上がる。
 視線の先には、火災嵐の中心で盾を掲げて汗だくになっている天紙垂がいた。
「あ、熱い……新鮮な空気が欲しいですぅ」
 空気を求めて口をパクパクさせる天紙垂は、炎の壁を踏み越えて現れたクララを見て目を疑う。
 服も燃え、手にした木片も燃え、傷口が開いて血を流しながらクラ……ゴリララは迫ってくる。
 四方に逃げ場はなく、両手はジャイアントシールドで埋まっていた。
 天紙垂は迫り来る死のゴリラの気配に目を瞑る事しか出来なかった。


「うほほーっ」
 甲高い吠え声が炎の向こうから聞こえると、ゴリラ達は炎を囲んで輪になり、唄うように吠える。

 うほほ、うほほ、うほほ

 だんっと地響きを立て、炎を渡るようにジャイアントシールドが道を切り拓く。
 その奥から、クララが気絶した天紙垂を抱えて渡ってきた。
「うほーっ!」
 我がゴリ生に一片の悔い無しとでも言うのであろうか、クララが片腕を天に突き上げると、周囲のゴリラ達も一斉に叫び、一際大きく燃え上がった炎は次の瞬間消えていた。
 ゴリラの中心でクララは立ったまま意識を失っていた。





「あれかっ!」
 目指していたタッチダウンエリアにたどり着いたミハイルが叫ぶ。
「やっと着きましたわね……でも、意外と何も無いのですの」
 辺りを見回す春風であったが、ミハイルが思いの外喜んでいるのを見てカメラを構える。
「ゴールに着いた記念にお顔を撮っても良いかしら。サングラスもお外しになってくださいな」
「もちろん構わないぜ」
 サングラスを外し、輝く白い歯を見せて爽やかに笑うミハイルの顔面を春風は連写する。
 徐々に近づいてくるミハイルのどんどん大きくなり、目の前が真っ赤に染まった。
「すまんな、世の中は世知辛いぜ」
 春風の頭にラグビースイカをタッチダウンしたミハイルは、崩れ落ちる春風を一瞥してサングラスをかける。
「この勝利は愛する妻と娘に捧げよう」
 ゲームを楽しむ為のストーリーに嵌り込んだミハイルは背後に気配を感じて振り返る。
 そこにいたゴリラに熱烈なハグを受けたミハイルは「最近少し毛深くなったか?」などと妄想の妻と会話をしていた。
 そのまま持ち上げられるに至って、ようやくミハイルは間違いに気づいたのだった。
 そう、タッチダウンエリアとはライセンサーがタッチダウンするのでは無い。
 ライセンサーがゴリラにタッチダウンされるエリアだったのだ。
「お、お顔……お写真……」
 頭部にスイカを被った春風は、力の入らぬ四肢を根性と気合いで動かし、ミハイルとゴリラに近づく。
「お、お、おぉーーーー!」
 ゴリラにジャーマンスープレックスを喰らいそうになりながら、何とか脱出しようともがくミハイルの必死な顔面。
 何が何でもタッチダウンするのだという決意に満ちたゴリラの顔面。
 地面に衝突する寸前のサングラスの奥で目を見開いたミハイルの顔面。
 そのパッションで全てをカメラに収めた春風は、やり抜いた喜びのまま意識を……飛ばす前に自分の顔面を自撮りして力尽きたのだった。





 ゴリラ達とゴロゴロしながらミーベルかき氷を食べるムギホ。
 本当はパッションフルーツを食べたかったのだが、何を言ってもミーベルを差し出してくるゴリラの推しっぷりに「もう良いよ、それで」と気の無い返事をしたのだった。
 ビーチチェアを何処からか持ってきて冷たい飲み物を飲みながら、伊丹を背負ったチコがサメに追われているのを眺めていると、ゴリラがミーベルかき氷を持ってきたのだ。
 フレッシュなミーベル果汁をベースにコンデンスミルクをたっぷり絡めたかき氷は最高に美味しかった。
 そんなムギホとゴリラの元に、いつのまにか海から戻ってきていたチコが近付いていた。
「マーベラス! 素晴らしいパッションの吹き荒れた良い試合! ムギホ! 貴女の勝利です!」
 暑苦しいテンションで盛り上がるチコとゴリラ達。かき氷は置いとこうよ。
「え、何だっけ。フードファイト?」
 戸惑うムギホに参加賞のタペストリーが授与され、ゴリラとチコは興奮のままにドラミングを始める。
 暁の女神と今は崩れた嘗ての王城が描かれている素敵なタペストリーだ!
「本当に要らないんだけど……」
 熱い闘いは、終わった……!


(完)

成功度
大成功
拍手数
4

現在の拍手ポイント:0

あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
拍手1回につき拍手ポイントを1消費します。

MVP一覧

MVPはいませんでした。

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧


スレッド一覧

スレッドタイトル(レス数)最新投稿日時