オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 聖霊崇拝

聖霊崇拝 影絵 企我

形態
ショート
難易度
易しい
価格
1000
ジャンル
バトル ホラー 
参加人数
83~8人
予約人数
10010100
基本報酬
180000G
180SP
1800EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
4
締切
2019/12/01 08:00
完成予定
2019/12/15 08:00
機体使用
-
関連シナリオ
-

●ヤミノナカ
 9人の制服を着た男達が、建物の陰からじっと一棟のビルの様子を窺っていた。ビルの前では人々がぞろぞろと列を成し、その中へと吸い込まれるように入っていく。列に並んでいるのは老人から若者まで、男も女も、何の変哲もない人々だ。だからこそこの光景は異様だった。青年は息を呑み、隣の男をちらりと見遣る。
「“アゴラ”ですか」
「ああ。ここまで大規模なものは何年ぶりだろうな」
 ビルはただの雑居ビル。テナントもろくに入っていない。そんなところに、どうして大勢の人間がこぞって足を踏み入れるというのか。その理由はたった一つに他ならない。
「今日こそ摘発するぞ。奴等がレヴェルなのは、殆ど間違いないんだからな」

 レヴェル。各地でその活動が散見されるナイトメアの信奉者達を十把一絡げにして、人々はそう呼び表す。だがその内情は様々だ。ただナイトメアに対して『世直し』を期待するだけのおめでたい連中もいれば、ナイトメアの作戦を支援するために陰日向で犯罪行為を何度も敢行する厄介な存在もいる。
 良心の自由により、前者の存在は大抵の国で許される。ナイトメアが今まさに世界を蚕食せんとしていても、それを応援することのみでは罪に問うことが出来ない。
 だが後者は話が別だ。ナイトメアに与する事で己の生命を保障しようとしているに過ぎないとしても、ナイトメアに資する行為は決して許されるものではない。ましてや、最終戦争の実現であると信じて刃を取ったのだとしたら、問答の余地なく裁きを下さなければならない。

 制服の男達は列が消えるのを待って静かに動き出す。潜り込ませた密偵が盗聴器を仕掛け、中の様子を彼らに伝える手筈になっている。日本でも有数のレヴェル組織『カート』の支部を潰すためにも、此処は踏ん張りどころだ。
『……時は来ました。かつて、預言者が語った、新世界を齎す為の戦いをこれより始めましょう』
 男達のインカムから、一人の女の声が響く。まだ言わせておくしかない。ただ気の触れたようなことを言っているだけである。
『これより、皆さんにだけは特別に計画をお話しします。なぜなら、あなた達は救い主によって選ばれた伝道師だからです』
 まだ駄目だ。その計画が、ただの講習会といった類だったら法には触れない。
『皆さんにあるものを渡します。それぞれ皆さんには以前から四次元座標を伝えていたはずです。これより皆さんは伝えた場所へと赴き、それを起動して頂きます』
 まだだ。
『それは福音を奏でます。一度、二度、三度と奏でられた時、多くの者が神の使いとして馳せ参じる事になるでしょう。そう、ロシアに現れたあの使徒達のように』
 その時、男達は一斉に動き出した。その歌うような声の震えが、彼らから冷静な判断力を失わせていたとは知りもしないで。最後の一言は、見え透いた罠にすぎないのに。
「動くな――」
「そう、新世界を齎す救い主とはすなわち、私だから」
 扉を蹴破った彼らに女が微笑んだ瞬間、男達の世界は闇の中へと消え去った。

●どぶさらい
 君達はトレーラーを降り、一斉にIMDを起動しながら雑居ビルへと向かう。そのそばには、澪河 葵(lz0067)の姿もあった。彼女は腰のホルスターにぶら下げた銃を抜き放ち、電柱の陰からそっとビルの様子を窺う。
「君達なら大丈夫だと思うが、一応任務を確認しておく。我々の今回の任務は、あのビルの調査だ。先日、あのビルにガサ入れを仕掛けようとした調査員の10名が音信不通になった。何かあったとして、もう行方不明者が生きているとも思えないし、このビルを根城にしていたというレヴェル組織の人員が居残っている筈も無いが……“その事実”を検めることも必要だ」
 彼女はそこまで言うと一旦言葉を切り、眉間に深く皺を寄せた。
「しかし、どうにも一筋縄ではいかない気がする。君達もどうか気を付けてくれ」

目標 行方不明になった調査員の捜索

登場敵(PL情報)
☆ヌケガラ×10
 かつて人間だったモノ。完全に廃人化しており、まるで操り人形のように不気味に動き回る。
●区分
 人間
●ステータス
◎物理攻撃
●攻撃手段
・体術
 限界を超えた膂力で殴りかかってくる。人によっては警棒なども行使してくる。

舞台(PL情報)
☆雑居ビル
 4階建ての雑居ビル。レヴェル組織『カート』の支部であった。
→階段とエレベーターで階層を行き来する。それぞれの階は廊下とそこから2、3の部屋に分かれている。
→2~4階にそれぞれ均等な数ヌケガラが割り振られている。
→4階の一室を除いて、中には何もない。慌てて片付けられたような痕跡が残っている。
→4階の一部屋は、奥が壁一面赤黒いペンキで塗りたくられ、そこに白文字で
  「全てはこの色より始まる」
    とだけ書かれている。

TIPS(PL情報)
☆ヌケガラを救出する事は不可能だが、死んでいるわけではない。殺すのは控えたい。

影絵です。
久々にこういうテイストのシナリオを作った気がします。
Lではいの一番に書いたんですが。

という事でよろしくお願いします。

【全体】
A、Bの2組に別れる
Aは1階から上階へ、Bは4階から下階へ向け調査
澪河には階段の1階〜中1階にてビルから出ようとするモノへの対応や緊急時の外部への連絡・増援要請要員としての行動を依頼

⚫️行動
事前にガサ入れに行った捜査員の容姿や所属、適合者の有無等のプロフィールを申請
あるとして捜査員の遺体や遺品のみと考え、それらの回収目的

B班
エレベーター乗り込む前に空の状態で一度4階まで往復させ細工等ないか確認
何もなければエレベーターで、異音や異臭等通常でない何かあれば階段で4階へ
インカムにてA班及び澪河と逐一状況変化やヌケガラ等の情報授受

前衛で壁として動く
ヌケガラ遭遇時制服や事前申請の情報と照会し捜査員と確認
盾攻撃受け止め
→非IMDやナイトメアでなければイマジナリーシールド抜けないはずと考え、敵の状態確認
「操られてる、のか?とにかく良い状態じゃねえのは確かだな」
人間とわかればEXISでの攻撃は絶対しない
宣戦布告で引きつけ図り味方が拘束・制圧しやすいように動く
敵が身体が壊れる程攻撃してくるなら素手で対応
ダメージ厭わずタックルで倒したり手加減して鳩尾を殴りつけ制圧図る
動きを止めたらさらしで全身を簀巻きにして拘束を図る

  • 転生のタンザナイト
    都築 聖史la2730
    人間22才|セイント×グラップラー

■準備
拘束具申請
ビル外観・行方不明者等画像資料
ビル見取り図(施設内でも捜索

■行動
A
前衛
不殺徹底
敵の情報収集、後衛の被ダメ抑制目的
仲間の行動優先
継戦能力維持最優先
接敵情報は仲間全体と最優先共有

エンカ直後、服装から組織や人物特定
盾で攻撃を受け流し、その動きで間合いを詰め
敵の動きの進行方向に合わせて力をより加えバランスを乱す(敵を足払い、腕引き
転ばせる、壁に押し付けるなど敵の体制を崩して行動遅延図り拘束
相手の動きが止まった時に逆手を取る(膂力の確認込
拘束具装着時、拘束具破壊の際はサブのウィップ換装
相手に巻き、武器の両端を持ち一時的な拘束等で利用(EXIS起動せず使用

顎へ攻撃、脳を少し揺らし動きが止まるか試す

仲間残生命5割でヒール
B班と交差した際に両班合わせて範囲回復

警棒がEXISや類似する装備か確認
敵が適合者か一般人か判別する際に怪我させぬよう配慮
発見者の数は常時確認
制服が人数と事前情報から多いのはわかるが、制服以外の人物に要注意
人数が澪河の証言より↑になった時点で確保した敵再確認

過去の事例から敵の力の発生源を観察(目視確認できる範囲で
詳細な身体調査は本部へ一任

敵・味方問わず怪我は救急セット使用

>捜索
暗がりではペンライト使用
隠し部屋、隠し通路の有無等、室内と(入手できれば)地図、外観から予想

警備室に相当する部屋があれば、施設内部の資料捜索
ビルの電気系統動作状況確認(防犯カメラの映像あれば回収

2階以上は各部屋撮影
残留物から組織の行動や目的、集めていた人物の特徴など考察
服・ピンバッチ等の身につける残留物にも注目

葵の勘です。油断せずに行きましょう
全体方針は宴のプレ参照。レヴェル逮捕の為に拘束具とビル見取り図を申請し各自所持
調査員の特徴確認(服装、装備、ライセンサーか否か)
情報共有は密に

B班
エレベーターに乗ったら受け流し使用
狭い中で回避が出来るかは分かりませんが無理なら刀で往なすだけです
四階に着いた途端ナイトメアに襲われる可能性考え刀は常に構えておく
到着後も四人で連携。一つ一つの部屋を確認

ヌケガラ
EXISでナイトメア反応探知+襲ってくるなら対応(絶対殺さない)
攻撃を回避し、可能なら手加減した無拍逆襲撃で気絶させる
仲間が襲われたら銃に切り替えダメージの無い支援射撃で援護
拘束し纏めて一つの部屋に閉じ込めておく
事前情報と照らし合わせ調査員ではないかと推測。全階のヌケガラ人数と配置確認
各階均等に振り分けられている・全員が私達を襲ってくる・操り人形のよう…
そして4階の悪趣味な一部屋
「挑発されていますね。隠す気が全くないようです」
或いは時間稼ぎか。カートの能力の確認の為、ヌケガラを隅々まで調べ意思疎通試みる

部屋に資料や痕跡が残っていないか確認
慌てて片付けたという事は敵にも不測の事態だった筈
即対応し、調査員を廃人に出来る何者かがいた…他の参加者はどうなったのでしょう

あたし、わらわはロボットだからな

準備
バックアップを取り
自身の認識をお掃除ロボットに上書き
動きに乱れが出るので
ハッキング許可を申請
雑居ビルの監視カメラの記録を探る

お掃除(行動)
A班
エレベーターを占有する為
階段で昇降
ヌケガラ
大きな体を活かして道を塞ぎ体に取り付けた
ストライクシールドで抑える
確保した後
部屋に閉じ込めを行う。
扉の正面に陣取る
つまり廊下を占有して扉をこじ開ける事を阻止いたします
怖いのですが
外に出そうになったら攻撃を耐え続ける
ハイヒールで回復をしながら
移動攻撃で
扉に盾押しを仕掛けて押さえ込みながら
知覚攻撃を発動軽くくりだすぞ。

アナライザー
ナビゲーションとして仲間を下から支える
調査員の人相を記録して
確保したヌケガラの悪夢化の痕跡を見る
何かしらの傷跡や噛み痕
口や鼻孔なども侵入の形跡を写真や画像データに残しますよ。
憑依型かも知れないですが

ここ、お掃除してぇ
怖いです・・・。させねぇ!

解決後
雑居ビルの清掃願いを申請

【目的】
ビルの探索、ヌケガラの調査

【心情】
最初は怠そうに参加するものの、ビル内の淀んだ気の流れとヌケガラ状態の元人間を発見するや興味津々。
出来れば捕獲して引渡しになる前に独自に調べてみたいなー 等と考えている。
「こらぁ『意志』を無理やり禁じて操っとるんか…?それだけでも無さそやけど…はぁ、こんなんまともな奴のやることやないわなぁ」

【準備】
・調査員達の写真を申請
・拘束用のロープを購入

【行動】
・全体行動『B』(他同行者の後列に付く)
・同行者達と離れないようにしながら階層の部屋を探索し、重要な手掛かりが残されていないかを調査
・ヌケガラとの戦闘になった場合、スキルは直撃させずに注意を逸らす等に使用
・ヌケガラの動きを停められた場合は、ロープで動きを拘束
・同行者に怪我人が出た場合はヒールを使用
・拘束したヌケガラはそれが元々何者であるかの確認と共に、ナイトメア化しているのか等おかしな点を探れるだけ探る
「こいつの気の流れはどうなっとるん…ふんふん…へぇへぇ…ほおぉぉ…」
「なんやえらい意味深やなぁ。時間が無くて消せなかったか…或いは私らへの伝言、か」

※アドリブ絡み歓迎

  • 凪の果てへと歩むもの
    御剣 沙織la3776
    人間23才|スピリットウォーリア×グラップラー

【心情】
「こちらがレヴェル組織『カート』さんのビルですね~。調査員さん達はいらっしゃるでしょうか~」
「怪しいことをしていないか強制捜査ですよ~」

ヌケガラを見て
「…あの方々がレヴェルならもっと生気がありそうですし、統率も取れているはずなのですよね~」
「そして、調査員の方々は未だ帰ってきた報告がない…嫌な予感がしますね~」

【目的】
調査員や施設内部の情報収集

【準備】
ペン、拘束用の手錠
初期位置:1階
PL情報対策:調査員

【同行者】
1階開始メンバー

【行動】
メイン装備拳
暗記1を使い、情報の記憶や最短ルート把握
得られた情報は手帳にペンで書き記す
急ぐべき状況では全力移動を使い、同スキルを持っていないメンバーは手を引っ張って連れて行く

☆敵の妨害が来た時
基本的に敵は回避、どうしても戦う時は戦闘不能までに留め、手錠で拘束
「現状、この方々と調査員の関係が不明確ですからね~…」「もし死なせてしまったら、レヴェルや噂のアルタールに非難の大義名分を与えかねません~」

威圧で敵の攻撃力ダウン
「あらあら~…何故私を見て怯んでいるのでしょうね~」
(御剣の闘気…普段表に出さないようにしていたつもりだったのですが…)

敵攻撃は回避
但し、機密情報に繋がるものが破壊されそうなら扇装備でガードして止める

  • 闇のブローカー
    Y・Ela3784
    人間28才|ゼルクナイト×グラップラー

調査員が…複数人、同時、突然に、連絡途絶。
私、こういうケースには幾つか心当りがありますが…
確かにこれは…『どぶさらい』になるかもしれません、ねぇ

○行動
事前に、葵さんに調査員十名の特徴を伺っておきましょう
顔、服装ほか、目視で判別できる要素を

建物では、二手に別れて調査します
私は、1階から上階へ上がる組に

通路を進む時には、私は前衛側に立ちます
ライセンサーとしては新人で、まだ殴られ役位しか能がございませんもので~、
曲がり角や、部屋に入る際、まず手鏡ごしに物陰を覗き安全確認、奇襲や罠を警戒します
自分達以外に物音を発している存在がないかも、要注意ですね

遺留品は殆どなくとも、床の足跡、壁の傷、付着物、匂い…
そういった物に『彼ら』の行動の痕跡…特に、調査員に何をしたか判るものがないか
よく調べてみましょう

襲われた場合、ウォールスキンで守りつつ接近、相手が人かナイトメアかの判別を
人ならば、命を奪いたくはありません
緊急時以外は攻撃にも盾を使い、命を奪わない様、慎重に無力化します
縄や手錠を借りて拘束すれば安全かしら
拘束できたら、瞳孔や発汗、注射痕から薬物等の影響を調べてみます
…とても、気分がいい行為ではないですけど

○白文字の壁
あの塗料、本当にペンキかしら
まさか、人間の…
いずれにせよ、これで終わりじゃないかもしれませんねぇ
なんだか、嫌な感じです

・事前
レヴェル遭遇、拘束に備えてダクトテープと工具申請
調査員の顔写真確認

このビル、誰がオーナーだ?
レヴェルの所持物件なら屋内改造も疑う

インカム活用

▼B班所属し味方と行動
・エレベーターでは敵襲撃に備え後衛で銃構え

・調査
各部屋の用途目的探る
屋上や地下への入り口あるか。鍵は銃で壊す
部屋の臭い、壁や床・天井に違和感ないか
ソファの隙間や照明器具の裏、窓の棧や換気扇や排水溝やごみ箱、コンセントの中など忘れ物ないか
赤黒いペンキをナイフで削り、下に何かあるか確認
記録や録音の類い無いか探す
スマホで調査写真撮る

・戦闘
基本は後衛・回避優先。急所狙わず殺害せず。人間か確認
グローブで旋空連牙し敵フィールド確認
情報共有含め人間と判断
敵が死角攻撃に反応すれば違和感。誰か見てんのか
気絶狙い

・拘束
敵所持品探る
ダクトテープで後ろ手に関節を固める形で両手足共に適宜拘束
救急セットと医療2で応急手当し救急搬送に備え
調査後のひとつの部屋に抜殻集め、扉をラック等で封鎖

抜殻の状態にBS付与疑う

●怪しいビルへ
 ヨランダ=エデン(la3784)はスマートフォンを手に取り、画面に映る調査員達の顔写真を一人一人確かめる。
「調査員が……複数人、同時、突然に、連絡途絶。私、こういうケースにはいくつか心当たりがありますが……確かにこれは……『どぶさらい』になるかもしれません、ねぇ」
「誰かが生きていると期待するだけ無駄だろうな。少なくとも良い予感はしない」
 葵は顔を顰める。九十九里浜 宴(la0024)はそんな彼女の顔を横目に見遣り、にやりと笑う。
「良い予感はしない、か。澪河ってフラグっぽい事結構言うよな」
「ただの勘ではあるがな。ともかく気を付けてくれ」
 彼女はごくごく真剣な表情だ。宴は肩を竦めると、右腕に嵌めた手甲を起動した。
「ああ。わかってるさ」
 日暮 さくら(la2809)は刀の鯉口に指を添えたまま、しなやかにビルの入口へと駆け寄る。照明が落ちたままの薄暗いロビー。ペンライトを向けて様子を確かめ、彼女は素早く手招きする。
「こちらへ。ロビーには誰もいないようです」
「これが『カート』さんが集会所にしていたというビルですか~。何だか、レヴェル組織が根を張っていた建物のわりに、ずいぶんと綺麗ですね~」
 御剣 沙織(la3776)も扉の脇から様子を窺う。床や壁紙はまだ新しい。完成して間もないか、メンテナンスが十全に施されているのか。いずれにしても奇妙な雰囲気だ。さくらは片手を扉へ伸ばし、そっと押し開く。
「油断せずに行きましょう。レヴェルの構成員が待ち伏せしててもおかしくはありません」
「けったいやなぁ。ろくに成果の出ない場所に入って襲われるなんて事になったら……」
 虚木 ヒノト(la3710)は気怠そうに呟く。金が欲しくてライセンサーになったものの、精力的に活動するだけのモチベーションはまだ無かった。
「このビルのオーナーはこの何某ってヤツらしいが、こいつの身元も後で調べておいた方がいいかもなぁ。このビル全体がレヴェル組織の所有物なんて、中々とんでもねえ話だぜ」
 雨月 氷夜(la3833)は携帯に一枚の書類を映し出す。そこにはビルの管理権所有者の名前などが簡潔にまとめられていた。彼はにやりと笑みを浮かべる。静まり返ったビルの重苦しい雰囲気も、彼にとっては好奇心を満たすための要素でしかなかった。
「レヴェル組織はナイトメアの襲撃以来出現したものもありますが、旧来のカルト教団が姿を変えたモノも少なくありません。私が知る限り、この周辺は半世紀以上前から大きなカルト教団の根拠地になっていたはずです。その頃から溜め込んだ財力があれば、あるいは……」
 都築 聖史(la2730)もペンライトを手に辺りを見渡す。人間の呻き声にも似た音が聞こえてきた。彼は顔を顰めると、仲間達へと振り返る。
「ともかく、手早く捜査しましょう。そこにエレベーターもありますし、二手に分かれて上下から探索していくのが良いかと」
「ならばわらわは下からだな。業務用エレベーターでないと壊れてしまうよ」
 エイラ・リトヴァク(la3147)は業務用掃除機を大きくして業務用スチームクリーナーをくっつけたような新型のボディを揺らす。中には元々のボディも収まっているが、当面はこれでやっていくつもりらしい。聖史は肩を竦めた。
「……でしょうね。そして、澪河さんは情報統括と何かあった時の備えとしてここに残っていてください」
「承知した」
 葵は刀の柄に手をかけながら頷く。沙織は携帯とメモを手にし、ひっそりと歩き出す。
「それじゃあ、強制捜査と参りましょうか~」

●ヌケガラのヒト
 四人がビルの四階に足を踏み入れる。宴は盾を構え、隣のさくら、背後の氷夜やヒノトと目配せした。
「まずは俺が先行する。カバーは頼むぞ」
「ええ、任せてください」
 さくらは頷くと、そっと刀の鯉口を切った。ドアに歩み寄った宴は、耳を澄ませながら慎重に押し開く。氷夜が銃を構え、さくらが腰を落とす。しかし、部屋は空っぽだった。完璧に。宴はライトを構えつつ、中へ足を踏み入れる。
「おいおい。何にもないぜ」
「いえ、こちらを見てください」
 さくらは床を照らす。白一色のタイルだが、ある一点を境に色が悪くなっていた。
「日焼けやな。つまり、此処には元々何かがあったって事になるなあ。見てみぃ、これも」
 ヒノトは床の一点を指差す。埃を何かで引きずったような跡がくっきりと残っていた。さくらは跡をじっと覗き込む。
「随分と急いでいた様子ですね」
「せやろなぁ。にしてもここは随分とおかしなところや……気の流れが澱んどるわ」
 最初は気怠そうにしていたヒノトも、今はすっかり乗り気になっていた。眼鏡の奥で眼を爛々とさせている。
「次行こうぜ、次。何にもねえところを探るのは後でいいだろ」
 氷夜は廊下を親指で差す。空っぽの部屋を睨んでいた宴は、やがてその場を離れる。
「そうだな。……こいつは遺体の回収も期待しない方がいいか……?」
「かもしれませんね」
 宴とさくらが顔を見合わせた時、別の部屋から呻き声に似た音が再び聞こえてきた。今度は空音ではない。宴はインカムのスイッチを入れつつ、早足でその部屋へと向かう。
「まだ誰かいる。注意してくれ」
 廊下で体勢を整え、今度は一気に扉を押し開く。飛び込んだ宴の眼に飛び込んできたのは、一面深紅に塗られた壁。思わず彼は息を呑んだ。
「血か――」
 その時、呻き声を上げつつ、スーツを着た三人の男が突っ込んできた。警棒を振り上げ、宴へと殴りかかってくる。さくらは叫んだ。
「気を付けてください! 彼の顔は行方不明の捜査員と一致します!」
「そんくらい俺も分かるぜ!」
 宴は盾で警棒を受け止める。跳ね除けると、男はそのままぐらりと仰け反った。
「ナイトメアにされた……ってわけでもねえか。でも良い状態じゃあなさそうだな」
「とにかく取り押さえましょう。彼らは重要参考人です」
「ああ。よし、とにかく俺にかかって来いよ。まとめて投げ飛ばしてやっから!」
 コートを脱ぎ捨てアロハ姿になり、宴は右腕の黒い紋様を見せつける。三人は呻きながら襲い掛かってきた。繰り出された警棒を受け止め、宴は一本背負いで背中を床に叩きつける。
 さくらも半身になって男を躱し、すれ違いざまに膝頭で男の鳩尾を蹴り上げた。
「捜査員を発見しました。しかし錯乱してこちらを襲ってきます。気を付けてください!」

「ええ、分かってるわよ。今まさに襲われてるもの」
 一階の廊下では、盾を構えたヨランダが男の振り下ろす警棒を受け止めていた。また別の男がその盾を掴み、強引に彼女を床へと投げ出そうとする。
「おっと……大した力ですねぇ。投げ飛ばされてしまいそうだわ」
 ヨランダは咄嗟にその場へ踏み込むと、男の勢いを利用して宙へと撥ね上げ、その背中を地面へ叩きつける。男の手が緩んだ瞬間、彼女は咄嗟に飛び退いた。テーザー銃の引き金が引かれ、電極が飛び出す。そこへエイラがずんずんと飛び出した。
「させねぇ!」
 電極がエイラのボディに突き刺さる。激しい電流で火花が散るが、その程度でエイラの身体は傷まない。そのままペイント銃の銃口を向け、蒼い蜃気楼を辺り一面にばら撒いた。拳を構えた男は、エイラの目の前で勢いよく蹴りを空振る。そこへ聖史が踏み込み、男の顎へ向かって掌底を繰り出した。動きが鈍った隙に、肩を掴んで捻り上げ、そのまま足を引っかけて床に叩きつける。
 沙織もまた、片手に手錠をぶら下げたまま男達へと歩み寄っていく。焦点の合わない目をしているが、彼女が笑みを深めた瞬間、僅かに彼らは後退った。
「あらあら~……何故私を見て怯んでいるのでしょうね~?」
 首を傾げながら一歩一歩迫った沙織は、男の繰り出した蹴りを半身になって躱し、そのまま背後に回り込んで片手に手錠を嵌める。男は振り向きざまに警棒を繰り出すが、その腕を掴んで捻り上げ、もう片方の腕にも
(御剣の闘気、普段から表に出さないようにしていたつもりだったのですが……)
 沙織は襟を軽く絞り、男の気を失わせる。
「死なせないように気を付けましょうね~。もし死なせてしまったら、レヴェルや噂のアルタールに非難の大義名分を与えかねません~」
「ええ、もちろんよ。そもそも、人の命を奪うなんてこと、したくはありませんからね」
 ヨランダは盾で男を床に押し付け、そのままロープを使って男の腕と足をそれぞれ縛り上げる。それでも男は縄を無理矢理引き千切ろうとする。縄目が食い込み、血が滲み始めた。
「……よくないわね」
 呟くと、彼女も頸動脈を絞めて気を失わせた。
「とりあえず、これでここは片付いたですかね」
 エイラは眼をちかちかさせる。襲い掛かった三人はみな気を失い、動く気配を見せない。聖史は頷くと、男達を廊下の脇に寝かせ、警備室の扉を開く。配電盤や守衛の詰所はあったが、防犯カメラを管理するスペースは見当たらない。エイラは唸った。
「困りましたね。まさか防犯カメラが無いなんて」
「いざという時に映像として足が付くことを恐れたのでしょう」
 配電盤を開き、聖史はじっと覗き込む。
「エレベーター以外のブレーカーが落ちていたようです。今戻しますよ」

 氷夜は目の前に迫った私服の男を銃床で力任せに殴り、床に叩きつけた。鼻が潰れて血が飛んだ。男が昏倒している隙に、氷夜はその体を足で踏みつけ押さえつける。
「……ったく、殺さねえように手加減すんのも結構面倒なもんだぜ」
「こらぁ、『意志』を無理矢理禁じて操っとるんか……? それだけでも無さそやけど……はぁ、こんなんまともな奴のやることやないわなぁ……」
 ヒノトは男の側に跪き、ロープを伸ばして男をぐるぐる巻きに縛り上げていく。それを見届けたさくらは、インカムで葵に通信する。
「これでこちらは五人です。全体としてはどうなっていますか、葵」
『それで十人目だ。今一階組のメンバーとそちらへ向かっている』
 それを聞いた氷夜は乱暴にインカムを外し、うんと伸びをした。
「とりあえず、少なくとも捜査員達が死んでなかったって事だけは確かみたいだな」
「これが生きてるって言えるのかもわからねえけどな」
 宴は溜め息交じりに壁のスイッチを押す。蛍光灯が薄暗く灯り、深紅の壁を照らし出す。
「……何だ、こりゃ」

――全てはこの色より始まる――

 真っ白で、荒々しい文字が書きなぐられていた。

●深紅のペンキ
 鎮圧した調査員達を一つの部屋へと担ぎ込み、並んで寝かせる。氷夜は一人の男の側に跪くと、片目を開かせペンライトを当てる。瞳孔には僅かな反応があった。胸腔も僅かに膨らみ、息だけはあるらしい。ヒノトはゆらゆら歩み寄ると、眼鏡を掛け直してその場に腰を下ろした。
「こいつの気の流れはどうなっとるんや……ふーん……なんや、変やな」
 ヒノトは溜め息を吐く。ヨランダは首を傾げた。
「変……? この方達の状態に関して何か違和感でも見つかったのかしらぁ?」
「せや。こいつら、気の流れを何も感じないで。こんなもん、心臓と肺が動いてるだけや。死んどるのとおんなじになっとるわ」
「まあ、それはぁ……困ったわねぇ」
 ヨランダはそっと彼にライトを向ける。注射痕などないものかと思ったが、目立つ位置にそれらしきものは無い。薬物を打たれてどうにかなったわけでもないようだ。
「あらぁ。一体どんなカラクリなのかしらねぇ……」
「変いうたらこっちもやけどな」
 ヒノトはおもむろに顔を上げ、部屋の奥、壁の文章を見つめる。まるで人が来るのを待ち構えていたようだ。
「壁を塗っているの、本当にペンキなのかしら。まさか、人間の――」
「いえ。普通のペンキでしょう。でなければ、壁一面を綺麗に塗ることなどできないでしょうから」
 壁の真ん前まで歩み寄り、逆手に持ったペンライトを当てて聖史は壁の色を見つめる。まだ色は鮮やかだが、表面にはほんのり埃が張り付いている。
「塗るだけ塗って、そのままろくに手入れもせずにこの場を立ち去ったというところでしょうか」
「はあん。てことは私らへの伝言、って事やね」
 ヒロトは眉を寄せる。沙織もかくりと首を傾げた。
「全ては赤色から始まる……一体どういう意味なのでしょうか~」
「何にしたって趣味の悪い連中が顔を出したには違いねえな。しばらくはこっちが忙しくなりそうだ」
 宴はカメラを突き出し、壁の画像を写真に収める。その背後で、エイラはゴロゴロとタイヤを転がしながらぐるりと辺りを見渡す。
「ここ、なんだか埃っぽいなぁ。掃除させてもらえねえか掛け合ってみるかな」
「やめておけ。この空間全体が貴重な手がかりだ。余計な手を入れるわけにはいかない」
 葵はそんなエイラの肩に手を置いて首を振る。
「そうか……掃除用ロボットとしては何か落ち着かねえけどなぁ」
「堪えてくれ」
 葵とエイラのやり取りを横目に、宴は一人の男に視線を落とす。虚ろに目と口を見開き、彼はじっと天井を見つめ続けていた。その姿は生ける屍の如くである。
「変なもんだな」
 彼の言葉に二人が首を傾げる。宴はそんな二人の表情を見渡した。
「事前に聞いてた話と照らし合わせりゃ、唯一私腹を着てるこいつが調査員って事になんだろうが……こう、聞くからにカルトみてえな連中な感じがしてたから、もっとそれっぽい服装で過ごしてるもんだと思ってたんだが……」
「今の世の中、そんなワカリヤスイ教団なんかねえよ。ナイトメアが出てからはこういう団体にはより懐疑的な視線が向いたからな。いつだって只の人間の集まりに見えるようにしてんのさ」
 氷夜はへらへらと笑う。彼はつかつかと祭壇へ歩み寄り、横から力任せに蹴っ飛ばした。
「それよりも、こっちの方が面白いんじゃねえか?」
 がらりと祭壇が崩れる。その背後には穴が空き、小さな螺旋階段が一つあった。氷夜はしたり顔をする。
「こういうとこはベタだけどな」
「なるほど~……抜け道ですかぁ~」
 沙織はほうと溜め息を吐き、手元にあったビルの見取り図に抜け道をペンで付け足していく。ヨランダはつかつかと歩み寄って下を覗き込む。
「このビルがもぬけの殻だったのも、此処から全部運びだしてしまったから、という事でしょうねぇ。ますますこの組織が何を企んでいるのか気になるわぁ……」
「どうにも、単なるレヴェル騒動で済むとは思えません。この症状が人為的に引き起こされたとも思えませんし、少なくとも、ナイトメア側がこのレヴェルと直接に結託しているのは確実とみていいでしょう」
 さくらも宴とは別の方角から部屋を写真に収めていく。葵はそんな彼女の手元を覗き込んだ。
「当局がガサ入れ対象にしたという事は、それだけの根拠があったという事だ。事件は起こるだろうな」
「その時は……頼りにさせていただきますよ、葵」
 少女は葵を見上げる。葵は小さく頷いた。
「ああ、任せておけ」



 つづく

成功度
成功
拍手数
4

現在の拍手ポイント:0

あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
拍手1回につき拍手ポイントを1消費します。

MVP一覧

MVPはいませんでした。

重体者一覧

重体者はいませんでした。

参加者一覧

リンク参加者一覧


スレッド一覧

スレッドタイトル(レス数)最新投稿日時