オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. いんそむにゃぁからの脱走!

いんそむにゃぁからの脱走! STANZA

形態
イベント
難易度
易しい
価格
1000(EX)
ジャンル
冒険 コメディ 日常 
参加人数
251~25人
予約人数
10010100
基本報酬
80000G
80SP
800EXP
おまけ報酬
10000G
相談期間
4
締切
2019/07/19 23:00
完成予定
2019/08/01 23:00
機体使用
-
関連シナリオ
-



 そこは猫達の楽園。

 日向ぼっこに最適な南向きの大きな窓に、見晴らしのいいキャットタワー。
 猫用ベッドも猫ちぐらも、大小様々な段ボール箱も揃っている。
 爪とぎ用の段ボールや麻布を巻いたポールもあるが、壁や家具でガリガリやっても怒られない。
 お腹が空けばそこそこ美味しいごはんがお腹いっぱい食べられるし、綺麗な水も飲み放題。
 トイレの数も充分で、だいたいいつも綺麗に掃除されている。
 気が向けば人間の膝に乗ってブラッシングをさせてやることも出来るし、喉を鳴らして喜ばせてやってもいい。
 たまには人間の振るじゃらしに飛びついてやるもの悪くない。

 ここは何をするのも、しないのも、自由だ。

 ただひとつ、外に出られないことを除いて。

 窓から見える景色はとても魅力的だった。
 チュンチュンとやかましく騒ぎ立てるスズメ達、草むらを悠々と歩く野良猫。
 通風口から流れ込む風の匂いには様々な刺激が溢れている。

 外に出たい。
 自由が欲しい。

 そして遂に、猫達は決意した。
 この楽園「いんそむにゃぁ」からの、脱走を。



「——っていう設定なんだ、どう? どうよ?」
 そう言って平らな胸を逸らしたのは「バーチャル活用促進協議会」の会長。
「まあメンバー私ひとりだけなんだけどね!」
 つまりそれはSALF内に存在する数多のクラブや同好会、コミュニティのひとつである——それも超末端の。
 しかし規模としては末端でも、やることはスゴイと評判だった——主に会長自身の中で。
 そんな彼女が組み上げた最新プログラム、それがこの「安心安全ぱぁふぇくと猫シェルター・いんそむにゃぁ」である。
 楽園のようなシェルターでのんびり暮らす猫になった気分が味わえるこのVRは、日頃の戦闘や人間関係その他諸々のストレスで疲れ切った心を癒す効果があると、ライセンサーの一部ではそこそこ評判になっていた。
「でも、そんなのんびりまったり猫ライフにも、たまには刺激が必要じゃない? ってことで企画されたのが、この脱走イベントです!」
 余計なことすんじゃねぇ、というブーイングは聞こえなーい。
「まあ参加するもしないも自由だし、何か特典とかあるわけでもないし?」

 そんなわけで、イベントは本日午後一時のスタートです。
「お昼ごはん食べたら、いつものようにそこの椅子に座ってね!」
 室内にはヘッドセットが付いたリクライニングチェアが30ほど、ずらりと並んでいる。
 そこに座ってヘッドセットを装着すれば、そこはもうバーチャルな世界だ。
 体を動かす必要はなく、頭の中で考えただけで——無意識に思っただけでも、それが行動となってバーチャル世界に反映される。
「君達いつもは猫になるわけだけども、今回のイベント中は他のオブジェクトにもなれるよ」
 猫達の世話をする人間、脱走を阻止する犬、外をうろつく野良猫、高見の見物を楽しむ鳥達などなど。
「君達が変身する猫はまあごく普通のイエネコだけど、中身は君達だからね。超イエネコ級の能力とか持っててもいいよ! ただし猫の体で出来ることに限るけど、例外として猫同士のお喋りは日本語でおK!」
 犬や鳥など動物同士なら多種族でも会話可能、ただし人間は除く。
「いんそむにゃぁには脱走を阻止するトラップがいっぱい! さあ、君達は数々の試練を乗り越え、無事に自由を手にすることが出来るのか!」
 おいしいごはん、楽しそうなオモチャ、優しいお姉さんの柔らかな膝、窓越しの心地よい日差し、入りたくなる段ボールやカサカサ音が楽しいレジ袋。
 立ち塞がる怖い犬、ドアの取っ手や窓の鍵、窓に嵌まった脱走防止用の柵、などなど。
「それらを乗り越え自由を手にした暁にはそのまま野良になってもいいし、何食わぬ顔で戻って来てもいいし、好きなようにしていいよ、なんたって猫はフリーダム!」

 なお皆様の様子は逐次モニタし、今後の開発のためにデータを取らせていただきます。
 だから少ないけど報酬も出るよ!

 さあ、準備が出来たらそこに座って。
 猫になって、楽しい冒険のひとときを!


バーチャル世界で猫になり、楽園いんそむにゃぁから脱走しよう!
しなくてもいいけど!


・出来ること
猫になる、脱走する、脱走を試みるもトラップに引っかかり目的を忘れる、我関せずでのんびりする、などなど
猫以外の人間や動物でも可、何故か一緒に飼われている小動物とか大型の猫科動物とか
脱走を阻止する側に回ってもOK
その他、バーチャルなのでわりと無茶が効くと言うかなんでもあり
ただし猫には猫の、他の動物にも種に応じた身体上の制限はある(猫の手は人間ほど器用には動かない、など)

・内部構造
平屋建ての建物に6畳ほどの猫部屋がいくつかあり、猫部屋同士は猫用ドアで自由に行き来が可能
猫部屋にはそれぞれタワーやベッド、トイレなど必要なものが備え付けられている
どの部屋にも大きくて見晴らしのいい窓があるが、しっかり鍵がかかっている
通風用に空けてある窓には網戸と鉄格子が嵌められ、通り抜けは不可(外から煽るには最適な場所
人間用の生活空間(休憩室やキッチン、倉庫など)もあり、鍵はかかっていないがドアは常に閉まっている
場所によっては「あけてー」と頼めば入れてもらえることもあり、猫部屋に比べて脱走防止のセキュリティは甘い
頻繁に開けられる玄関は絶好の脱走ポイントだが、その前には怖い犬がいてほぼ常に目を光らせている
勝手口には脱走防止の柵があるが、猫なら飛び越えるのは簡単(ただし勝手口は滅多に開かず、人間も警戒しているので脱走の成功例はない)

・その他
オモチャやごはんなど、各所に脱走阻止のトラップ(誘惑)満載
動物同士は会話可能、人間との会話は互いに「何となくわかる気がする」程度
面白くするためなら内部構造など独自設定の追加もOK

※絶対にNGという場合を除いて、軽いアドリブや他PCとの絡みは自然発生する仕様です
 アドリブや絡みがOKの場合は嬉々として弄り倒しますので、お覚悟のほどを
 禁止事項がある場合はプレイングに明記をお願いします

お世話になっています、8匹の猫の下僕STANZAです。

今回バーチャルですので、PC名とは別に猫名を名乗ることも出来ます。
毛色や品種、性別も自由ですが、中の人はPC自身なので性格などは設定のままになります。
一応は脱走が目的ですが、猫なのでフリーダムに何でもOK、失敗とか何それ美味しいの、の精神で。

では、よろしくお願いします。

  • 王国の猛将
    ラルフla0044
    放浪者15才|ゼルクナイト×セイント

アドリブとか諸々自由で
禁止事項?:脱出しようとする

ユキヒョウになる
で、脱出しない

別に飼い主いるわけじゃないんだし、無理して動く必要はない
外に出た所で射殺だろうしなぁ。人なんて襲わんのに
というか無意識からの時点で美味いもの食って寝転がりたいという本音しか出ない
働いてたまるかぁ!

あと暑い
めっさ暑い
施設内が良い

  • 空の目
    好野 渚la0076
    人間25才|ネメシスフォース×スピリットウォーリア

●行動
三毛猫の雄
「クハハハ!この程度の牢獄でこの真の漢たる俺の脱走を阻めるものか!いくぞ!
脱走を試みる
三味線の皮にもなる貴重な三毛猫の雄
自由を求め愛を求め真の漢(猫)になる為にいざ行かん!遥か万里の彼方まで!
誘惑にクッソ弱い
ダンボールとか狭い隙間に挟まりたくなる
何故なら猫だから
「こ…このフィット感…楽園(エリュシオン)はここにあったのか
「くっ…巧妙な罠が仕掛けられている…だが俺は諦めんぞ!
この見せ掛けの楽園を飛び出し本当の楽園(天竺)に辿り着く為に俺はまだ登り始めたばかりだ、この漢坂を!
※ご愛顧ありがとうございました。渚(猫)先生の次回作にご期待ください。

  • GLORIOUS DRIVE
    白玉 纏la0406
    ヴァルキュリア18才|ゼルクナイト×グラップラー

【心情、目的】
猫姿で知り合いと楽しむっす、自由を目指し脱走っす!

【行動】
白い毛並み、垂れ耳気味の猫姿、青いスカーフを首に巻いてる
外の猫(三四郎(la2826)等)へ興味持って窓等から鼻チュー挨拶等し自由に憧れて飛び出そうとしちゃう
休憩室や倉庫でアイテムを探しタイミングを見て玄関から脱出
ダンボール等を探しかぶって隠れつつ行動(人の傍では止まる)、犬を引き付ける肉等あれば囮に使う
「ふっふっふ…最強すにーきんぐあいてむっす!」
外に出たら外猫と一緒に遊びに行く

  • 太陽の守護者
    V・V・Vla0555
    ヴァルキュリア16才|ゼルクナイト×セイント

【猫】
少し赤みがかった、つやつや毛並みのアビシニアン
首にリボンを巻いて女子力アピール☆

美味しいご飯に様々なおもちゃ、明るい部屋、正に此処は楽園と言えよう
しかし、何処か安寧とし過ぎてはいまいか…
足らぬのは、そう、わくわくするような予想を超える刺激!
故に敢えて我は楽園に反逆する!未知なる外の世界を、いざ冒険だ!

ハイドアンドシークで玄関に接近
番犬は一対一では分が悪かろう
他の猫と協力し、頭と尻尾同時攻撃!や陽動作戦などで翻弄
ノイズ殿!そんな所にいると怪我をするぞ!
我の事は案ずるな、これしきで遅れを取りはせぬ!(あんまり話聞いてない←

なかなか滾る戦いだった!
我は満足だ♪

  • コドモ(おとな
    モナ美la0646
    放浪者20才|スピリットウォーリア×セイント

【へっぽこ】
慌ただしさと好奇心のデボンレックス
ノリだけで生きている超ハイテンションの猫
名前はデボ美

脱出と聞いて「やるやるー!大脱出―!」と意味も分からず同調
計画を1ミリも理解しないので、予備動作のない突発的な行動で足を引っ張る
しかも悪びれない

壊す、激突する、ひっくり返す、巻き込む、大声で喋る、暴れる、食べるなどやりたい放題
かっ散らかしたり大きな音を立てたり、飼い主や見張りの犬が「!?」と思うような事を連発
それが囮になるのか、それとも足を引っ張る事になるのかは分からない…?

動くものにはとりあえずかぶりつくという妙な習性もあったり
息切れする事なく突っ走ります

\ぽてっ/
  ∩ ∩
⌒(_´・ω・)_[書類]

※アドリブ歓迎

●目的
猫さんになる事

●準備
猫側で参加
品種はアメリカンショートヘア
毛並みは灰色と黒の縞模様
小柄な感じでぴこぴこ動く感じのコミカルな子という感じで行きたいです

●同行者
白玉さん
三四郎さん

●行動
キャットタワーに上ったり玩具で遊んでいたところを面白そうな事をしていそう、という感じで白玉さんや三四郎さん達を遠巻きに眺め、後ろをちょこちょこと着いていこうと思います
犬さんに近づかれそうになったら高い所に移動するか、狭い物陰に隠れようとします
扉はてしてししながら”開けて”ってお願いしてみます

  • 四つ葉の白い花
    cloverla0874
    ヴァルキュリア17才|ゼルクナイト×セイント

同行者:ハドレー(la2191)
関係:責任者!
えー…えぇー…猫になるってさー…
おっさん、そんな疲れてんの?
まぁいいや、クロ君はそんなおっさんを癒す為にわざわざ世話係として登場…って
聞いてる?!
あーっ、勝手に出てこうとすんなーっ
ぐぬぬ…えーとっ、猫と言えば…鍋だっけ?
あと猫じゃらしっ!
それに音の出るなんかこー…うん、猫用のおもちゃ!
ほーれほーれ(おっさん猫を必死で構う

しっかし、元々の髪の毛のせいかすげーなー(毛並み見つつ
よーしっ、特別にクロ君がブラッシングしてあげよう!
ここで恩を売っておけば後々なんかいい事ありそうだし?

アドリブ歓迎
●心情
「ニャァー!(こんな所に居られるか俺は外に行くぞ)」
目付きが悪い灰色青目の猫
●目的
脱出し自由の野良ネコになる
●同行者
テディ(la3698)
●行動
「ナー(俺は外に出る。お前も外に出るか?)」
とテディに話しかけ彼女を連れ外を目指す
「ナウナウ」
彼女が罠に引っかかれば、尻尾を引っ張り連れ戻し、遊びながら進む

「ニャ~♪」
生活スペースの扉を人に開けてもらい。
脇をすり抜けて、犬の気を引けそうな物(玩具や犬餌、肉)を入手し玄関へ

「ニャー!」
犬に入手した物をあげて其方に夢中になってる隙に人が玄関から来たら脱出

同行:clover(la0874)
いつもは保護者的立場だが今回はただのおじにゃん

猫種はラグドール
赤毛で紅の瞳
毛づくろいサボってるのかもさもさ

お気に入りの小さめダンボールにみっちりと詰まって、のんびり過ごす
この狭い空間のフィット感が癖になる…
窓の外にやってくる鳥や、ひらひらちょうちょを窓越しに追いかけては前足でガラスをてしてし
暇なのでふと思い立って脱走を試みる
なんだい、クロ君邪魔しないでくれよ
…む、その小鍋は魅力的
揺れる猫じゃらしから何故か目を逸らせない…猫視点恐るべし(てしてし

ブラッシングしてもらえて、その内気持ちよくなってヘソ天ですやすや
猫生活も悪くないにゃ…

▼猫
ターキッシュアンゴラのレッド
★高所が好き、気儘、長い被毛に優雅な顔立ち、釣り上がったアーモンド形の目
▼協力者
ルルルヴァ:la2766
▼行動
動かぬ事を怠惰と呼ぶのでしたらそうかもしれませんけれど、現状に不満はありませんし
ですが行動する方達を貶める気はありませんわ
何でしたら脱出のお手伝いを、ルルルヴァと共に
高所好きという猫の特性もある事ですし、高所から現状を俯瞰して状況を確認
飼い主や妨害者があれば物を落としたり一鳴きして注意を引いたりしてみましょう
冒険心が強いそうですけれど、元の性格が勝っているようですわね
猫が持つ冒険心は、他の猫達に委ねますわ
▼雰囲気
高所で優雅に

【心情】
バーチャルで猫になるのか。面白そうじゃん!

【目的】
楽園いんそむにゃぁから脱走

【行動】
なる猫:短足なマンチカン(模様は茶トラ)

頻繁に開けられる玄関からの脱走を試みる
果敢に怖い犬に勝負を挑むが、足が短いので猫パンチも猫キックもできず
「シャー!」と威嚇するも犬の睨みに勝てず

それでも脱出しようとするが、オモチャの誘惑に勝てず
オモチャに飽きたらおいしいごはんを食べ、優しいお姉さんの柔らかな膝で丸まり、喉を鳴らして昼寝
(脱出?どうでもいいにゃー。ここで楽しく暮らしてえにゃー)←諦めた

※アドリブ大歓迎
 語尾に「にゃー」がつく

  • 首があるなら刈ってみせる
    紅迅 斬華la2548
    人間25才|セイント×ネメシスフォース

心情
脱出?戦闘依頼でもないのにそんな面倒なことやってられません!お姉さんは猫になってだらけるのです♪

目的
毎日毎日ナイトメアの首を刈るだけの生活に潤いと癒しを
首刈りに飽きたわけではない

行動
今日は決して首刈りにゃんこなどにはならない!決して!
とにかく猫のようにだらける
邪魔する者には容赦しない
正確に言うと首を‥‥駄目駄目…。今日はそんなあれじゃないの!
うんうん♪平和に猫ちゃんとして休養するの♪
絶対邪魔はしてはいけませんよ?絶対ですよ!お姉さんとの約束ですからね♪
邪魔するとどうなるかって?それはもうあれですよ!さっきも言いかけたやつですよ!

【へっぽこ】
◆猫
背の高いサバンナキャット
名前はくーちゃん
中型肉食獣のサーバルキャットとイエネコの交配種
まさに過去の大魔術師クーラと現在のニート女王クーラが合体したかのようなソレ
◆特徴
他の猫よりスマートででっかいけど、元の性格がニートなのでどんくさめ
でっかい分、行動で失敗した時の被害は大きそう
猫用の出口で詰まったりしそう
隠れるのヘタそう
ドアとか蛇口を開けられるらしいから、猫特性を活かそう
水も怖がらないらしいよ
◆行動
でっかいから切り込み隊長ってディーちゃ(ディエスフィデス)にいわれた
もしかして作戦って力技なの?
ダメな気しかしない
最悪もう邪魔者の顔に飛びつくとかヤケ

【へっぽこ】
●猫
エジプシャン・マウのブラックスモーク/名はディー子
【へっぽこ】リーダー
●特性
神経質で内気ながら古代エヅプト時代から存在しるという由緒正しき猫なのです
ブラックカラーは非公認らしいのですけれどもアウトローたるワタシには丁度よいのです
●作戦立案
高貴なワタシならば勝手口で一鳴きすれば扉は開くのです
100回鳴いても開かなければ全員でにゃんにゃん大合唱なのです
開いたら一気に駆け抜けるのですよ(雑すぎる計画)

クーラたんはでっかいので、先頭で突撃なのです
単なる体格といえども、それは持てるものの義務なのです
全軍突撃なのです
メンバーの濃さが少し心配なのですよねガッデム

▼心情
いつかのクロヒョウでも良かったが
ハバナブラウンという猫が運動好きらしい
自意識と身体能力の反映もし易かろう
自身の名に反応し、芸も覚えるという優秀な猫だ
▼協力
ゲルセミナ・エレガンティーア/同じ小隊の仲間/魔王軍の共闘者
二匹で他猫に協力する
▼行動
広い世界は魅力的だが、飼い主への義に背きたくはない
いつか飼い主が連れ出してくれるまで、私は此処に在り続ける
だが、若き者達が未知の世界を求める事までは止められん
表立っては不可能だが、横合いから手助けをしよう
▼助力
落とす、倒す、開く、これらの動作を用いた助力
蹴ったり叩いたりも行う
玉乗りや「ゴハン」発言等で注意を引く等で行う

  • 吾輩は猫である
    三四郎la2826
    ヴァルキュリア10才|グラップラー×ネメシスフォース

🐈心情
なぁんっ(貴公らも猫社会のいち猫であるな!。
にゃぁお(ここから出ないのであるか?
んなぁごっ(扉はこうあけるのである!

🐈行動
地域の縄張の野良猫ボスである!
お外から扉に飛び付いて開けたり、前足で扉開いたり
10歳と結構な年齢の猫なので器用なのである

縄張の中にいるのに猫社会に出てこない猫たちの様子を見に
猫ハウスに入っていくのである
ボス、色々と家猫たちに教えてやるのである!

優雅な白いチンチラの家猫です。
駆け回るの苦手、いつものんびりした子なのです。

一緒に寝るの大好き、お外に出るなんて考えたりしない大人しい子。

猫達のお世話をする人間役で参加(擬人化)
色々と猫達をお世話しようとか可愛がろうとするが
攻撃される/何もないところで転ぶ/喧嘩に巻き込まれるetc…基本ドジっ子
「ふふっ…たくさん猫さんがいて、可愛いなあ…」
「えぇと、逃げないように…見張ればいいの、かな?」
「あ、あれ?ファオさんっぽい猫が…あっ、外は危ないから駄目で…わわっ?!
(足元の玩具で転び、近くのキャットタワーに顔面強打)
…いたた…なんだかいつもと感覚が、違うか…ら…」

※アドリブOK
◆アバター
黒いペルシャ
一目見て毛並みが立派だったから選んだ

◆行動
「イベントねぇ」
参加よりもむしろ参加してはしゃいでいる他猫のチャレンジを見ている方が面白い
「私は家から出ない自由を満喫しているので気にせずに励むといい」

とりあえず人間の休憩室のドアを跳躍から足を引っかけてグイっと開ける
そのまま何食わぬ顔で侵入し人間の頭や肩に乗っかる
基本無抵抗で何されても動じないが
おろされるといつの間にかまた乗っかっている
イベントなのでぺちぺちと叩いて「乗せたままあっち行って」的な感じで脱走チャレンジする他猫のところにお世話さんを誘導する

犬は仲良し(精神力で屈服させた)

  • 葱を背負った
    la3453
    放浪者10才|セイント×ゼルクナイト

アドリブ絡み大歓迎
●目的
猫を満喫するかも!
滅多にない経験かも!(普通はありません

●猫名?
鴨にゃん

●外見
鴨に猫耳カチューシャを装着
鴨は何でも似合うイケ鴨だから!猫耳も似合うかも!(ドヤァ
尾羽に猫尻尾

●行動
猫かも!
鴨もちょっと哺乳類に憧れちゃう多感なお年頃かも

猫ってどう鳴くかも?
にゃーんかも
にゃんにゃーんかも!
クワァ!
我ながらいい感じな猫っぷりかも!
やっぱり~イケ鴨の鴨が猫になったらイケ猫になっちゃうかも~!
(鏡の前で猫の練習
かなりイケてるかも!

猫の練習に気を取られ脱走?なにそれおいしいの?

●猫の種類
意味深に語るも意味不明なキジトラ
●傍観者のような
この閉ざされた冥き牢獄より出でたるを決意した者たち…
生まれながらにして自由たる我らの四足を繋ぎ止める枷は、やはり存在せぬか…
既に無我の境地に至った我は、銀の受皿に満ちた真白き聖水(ミルク)で渇いた心を癒すのみ
そして我は、時の存在せぬこの空間にて、再び餓えるその時まで微睡に身を沈めるのだ…
すやあ
●ずっと傍観者
・みんな脱走中?
混沌の渦はまさに極まれり…
四つ足に載せて運ぶ命をして「運命」とは、道は果たして誰のものか…神のみぞ知る、だな
光に向かって進むがよい、勇者たちよ
●要するに
ごはん、まだかな、おなかすいた

  • 希望の星
    アニタla3684
    放浪者16才|グラップラー×セイント

●猫
茶トラの仔猫(ミックス)名前はアニタ
●心情
みんな騒がしいなぁ
のんびりごはん食べて寝てたら最高なのにさ(だめ猫
脱出とか言ってるけど、外とかこわいじゃん(ボールいじったりして遊ぶ
●行動
とはいえ周囲が気になる小心者でもあるので、うろうろ歩き回って様子見
「ほんとに脱出するの?」と疑心暗鬼で、行動する猫達を見ています
みんなと一緒なら怖くないかも、と思いながらも今の生活にも未練があって…
逆に残る仲間がいないか探し回ったり、脱出する猫達を見に行ったり
最後まで優柔不断な様子でそわそわ「ああもうどうしようー!」
でも奮闘する猫達を見て「カッコいい」と思ったりして、またヘタれたりもして

・心情
脱出してみせるのデス!Miaou☆
・目的
目指せ、ノラネコなのデス
・同行者
リアス(la1966)

・行動
「ニャォ(モチロン、一緒に出ましょう)」
リアスと一緒に脱出を試みる

「みゃぉ…♪」
エサ(特にミルクとお菓子)には釣られそうになるけど…
そこはリアスに助けて貰いつつ進む

犬の為に持ってきた物(餌、玩具等)を犬の前で動かしたりして惹き付け与える
犬をかわして玄関の外へ出たら首輪を外してノラネコのフリをする

【へっぽこ】
賢いロシアンブルー
しかし元キャラ設定継続で目が悪く、他猫の見分けが付かない
意とする猫とは別の猫にものを言う事が多々にある
猫用の眼鏡は無いと思うので、混乱を招く
しかも口煩いので、他猫にとっては言いがかりのようになる事も

気儘過ぎる(気がする)メンバーに頭を抱えそうな予感
グループの参謀を気取るも、きっと思い通りにはいかないと覚悟も

周囲の状況を見て、勝手口が開いた時にクーラ・スサ・ルァフに囮になるよう指示
大きくて目立つから、注視させられると判断
その隙に機動力のあるメンバーが抜ける
誰か一匹でも抜けたら、それでいい
犠牲の上に、成功はあるのよ
一匹だけシリアスかも?

【へっぽこ】
・猫の種類
孤高なるブリティッシュショートヘア
しかしまだ幼さを残す為に、ネズミを追い掛けてしまうヤンチャなクセが残っている
名前はハンゾー(素早いところから名づけられたっぽいニンジャ猫(自称))

・姿勢
脱出するという仲間の案に乗っかる
「拙者はニンジャゆえ、機動力はお任せあれ」
しかしボールを見ると、動くオモチャを見ると、昆虫とかも見ると、つい追い掛けてしまう
そして何もかも忘れる、そんなお茶目な(ダメ)猫

・実行
ドアノブに飛びついてみるとか、高い所に上って開けられる場所を探すとかする
しかし動くものがあったら、そっちに行ってしまう
どうしても、行ってしまう

●ねこは基本、自由である

 保護猫シェルター、楽園いんそむにゃぁの外には自由な世界が広がっている。
 三四郎(la2826)は、そんな自由な猫世界のボスとして君臨していた。
 地域のボスであることも、形のいい耳やしっとりお鼻、ピンと伸びた髭やふさツヤ毛並みが自慢の、魅惑の肉球とふさ尻尾を持つキジ三毛という設定も、リアルとほぼ同じ。
 中身がヒトである他の猫達とは意思疎通が出来ないのもリアルと同じだが、なんとなくフィーリングで通じてしまうのもやっぱりリアルと同じだった。
 つまり全てが平常運転。
 ただひとつリアルと異なるのは、ここでは怪我の痛みも思うように動けない不自由さも感じずに、いつも通りにのびのび動けるということだ。
 いんそむにゃぁの建物を囲む塀の上で、三四郎は中の猫達をじっと眺めていた。
「んなぁ(ここも吾輩の縄張なのである!」
 なのに、ここの猫達は家の中に籠もったきりで外に出ようとしない。
 ボスである自分に挨拶にも来ない無礼はまあ許そう、吾輩寛大なボスであるからして。
「んなっ(来ないなら吾輩の方から行けばいいのである!」
 自ら格下の者に挨拶するなどボスの沽券にかかわるとか、そんな器の小さいことは言わないのである。
 三四郎は毎日のパトロールを欠かさない。
 この建物も毎日のように見回っているから、内部の構造もなんとなくわかる。
 中にどんな猫や人間がいるのかも、ガードの甘い窓や出入り口も把握している。
 そう、今がその時だ。
「なぁんっ(貴公らも猫社会のいち猫であるな!」
 身軽に塀から飛び降りた三四郎は、庭を横切って窓に近付くと、中の猫達に声をかけてみた。

(あれは……いつも見かける恰幅のいい猫さんっす!)
 窓辺でまったりしていた白い毛並みの白玉 纏(la0406)は、気を抜くと勝手に垂れる耳をぴんと立てて外を見た。
 あの大きな三毛猫は、いつも堂々と庭を横切っっていく。
 窓辺で見つめる自分達には関心がなさそうに、ちらりと一瞥をくれるだけで歩き去る。
 けれど、今日は違った。
 三毛猫は窓のすぐ近くまでトコトコ歩み寄ると、そこに座って一声鳴いた。
「にゃぁお(ここから出ないのであるか?」
 閉まったサッシ窓の向こうからでもその声はよく通る。
 意味はわからなかったが、なんだか誘っているように聞こえた。
 纏はこれまで、外に出るなんて考えたこともない。
 窓はテレビと同じで、そこに映る小鳥はどんなに頑張っても捕まえることが出来ない。
 どんなに画面を引っ掻いてもテレビの中に入れないのと同じように、窓から見える景色の中には入れない——そう思っていた。
 でも、テレビと窓は違うのかもしれないと、そんな思いがふと湧いた。
「出られるっすか? あたしもそっちの世界に行けるっすか?」
「んなっ(吾輩に任せるのである、こんな窓くらい簡単に開けられるのである!」
 三毛猫はサッシの隅に前足の爪を引っ掛け、ぐぐぐ、と横に引いてみる。
 しかし窓にはしっかりと鍵がかかっていた。
「んなぉう(ここは無理であるな、吾輩どこか別の出入り口を探すのである!」
 歩み去る三毛猫を目で追った纏は、その目を部屋のドアに転じた。
 そこには猫用のドアがある。
 これがある場所は、どこでも自由に出入りが出来る。
 猫ドアがないところは猫が入ってはいけない場所——ずっと、そう思っていた。
(でも、違うのかもしれないっす)
 首に巻かれた青いスカーフは纏のお気に入りだ。
 しかしそれは飼い猫の証でもある。
(決めたっす、あたしは自由猫になるっす!)
 一度火がついた自由への憧れは、もう消せない。
 お気に入りだからスカーフは外さないけれど、心の自由は譲れない。
 纏は窓辺を離れると、意を決したように猫用ドアに歩み寄った。

 \ぽてっ/

 それを眺めていたメアリー スミス(la0813)は、キャットタワーのてっぺんからぽとりと落ちた。
 本猫としては華麗に下りたつもりかもしれないが、どう見ても落ちていた。
 けれどメアリーは気にしない。
 アメリカンショートヘア特有の渦巻きが入った灰色と黒の縞模様が、むくりと起き上がる。
 小柄な猫はぽてぽてちまちまと纏の後を追っかけて行った。
「ん? メアリーさんも行くっすか?」
「はい、なんだか面白そうなのです」
「わかったっす、一緒に行くっす!」
 いざ、自由を求めて!

 そんな彼等に触発されて、我も我もと猫達が続く。
 こうして猫類史上最大の脱走劇が幕を開けたのである。



●ねこは基本、怠惰である

 いんそむにゃぁは、一度その中に捕らえられたら二度と出られない恐怖の館——と、猫世間では思われているらしい。
 だが実態は異なる。
 ここは働かなくても食べ放題、ごろごろぐだぐだでれ〜ん推奨の天国なのだ。
 一度その暮らしに慣れてしまえば、普通はもう二度と野良には戻れない、戻る気もなくなる。


「だって別に飼い主いるわけじゃないんだしー」
 ごろんごろん、でっかいユキヒョウのラルフ(la0044)はエアコンのど真ん前に陣取って思い切り体を伸ばしていた。
 ユキヒョウになったラルフは、いつもの百倍増しくらいの勢いで怠惰まっしぐらだった。
「無理して動く必要はないだろー、野生状態なら狩りの時以外は体力温存のために殆ど寝てるんだしー」
 その狩りをする必要さえなくなった今、一日中寝ていても何ら問題はないわけだ。
「退屈? 知らない子ですね」
 ごろんごろん。
 普段の休暇はただ「仕事中ではない」という意味でしかなく、従ってここまで気を抜くことはない。
 ナイトメアは人が休暇中だろうが重体で入院中だろうが構わず出現する。
 リモコンのボタンひとつで瞬時に立ち上がる家電製品と同じように、ライセンサーもコンセントを抜いて完全休養するわけにはいかないのだ。
「別にこの世界の為に頑張ってるわけじゃないけどなー」
 故郷に影響が出て欲しくないから必死こいてるわけで。
「そういうの関係ないなら監視の鬼とかいない今、真面目になんかやらんのじゃー」
 ごろんごろん、のびー。
「外に出た所で射殺だろうしなぁ。人なんて襲わんのに……めんどくさいから」
 もうね、無意識からの時点で美味いもの食って寝転がりたいっていう本音しか出ないからね。
「働いてたまるかぁ!」
 ごろんごろん。
「あと暑い。外めっさ暑い」
 でたらしぬ、だってユキヒョウだもの。
 ごはん出来たら起こしてください、Zzz……

「脱出?」
 紅迅 斬華(la2548)は、いつもの着物と同じ柄のリボンを首に巻いた由緒正しき日本猫になっていた。
「戦闘依頼でもないのにそんな面倒なことやってられません! お姉さんは猫になってだらけるのです♪」
 毎日毎日ナイトメアの首を刈るだけのサツバツとした生活に潤いと癒しを!
 今日は決して首刈りにゃんこなどにはならない! 決して!
「あ、首刈りに飽きたわけではないのですよ?」
 飽きるとか有り得ない、刈られた首から足が生えて逃げ出すくらい有り得ない。
 これも更なる首刈り技術向上のため、精度を上げるため。
「オンとオフの切り替えは大事なのです♪」
 しっかりケジメを付けてこそ、首刈りの技もますます冴え渡るというもの。
 そこで斬華は施設の中で最も上等なもふもふ毛皮、ユキヒョウのラルフのお腹にてーんと乗っかった。
「やっぱりラルフさんの毛皮は最高にもっふもふです♪」
 ふみふみ、ふみふみ。
 交友ないとか気にしない、だって猫だし。

 その頃、別の部屋では優雅な白いチンチラ、シスター・ジャンヌ(la2827)がマイペースにのんびり遊んでいた。
 お気に入りの蹴りぐるみを抱えて、でも蹴らずにぺろぺろ舐めるのがジャンヌの遊びスタイル。
「お友達を蹴るなんて、とんでもないことですわ」
 ひたすら同じところを舐め続けるおかげで布が擦り切れ、中身が出そうになっているけれど、猫は細かいことを気にしないもの。
 しかしその時、ジャンヌの周辺がにわかに騒がしくなる。
「……皆様、何を騒いでいらっしゃいますの……? え、脱走? お外に?」
 誘われても、ジャンヌは頑なに首を振る。
「こうしてのんびりしているのが一番の幸せですわ。お外を駆け回るなんて、とてもとても……」
 蹴りぐるみを口にくわえ、ジャンヌは騒がしくなった部屋を後にするのだった。

「……どこか静かにお休みできる場所はないでしょうか……」
 廊下に出たジャンヌは興奮して走り回る猫達の間を縫って、ぽてぽて歩く。
 と、隅の一角からひんやりと冷たく静かな空気が流れ出ているのを感じた。
「あら、ここは……」
 確かとても大きな猫がひとりで暮らしている部屋だ。
 猫ドアから中を覗くと、白いご飯にごま塩をかけたような大きな猫が気持ちよさそうにでーんと寝そべっている。
 そのもふもふな腹の上には一匹の日本猫が乗っかって、一心不乱にふみふみしていた。
「……あの、ご一緒させていただいても……?」
「ええ、どうぞ♪」
 その日本猫、斬華の許可をもらって、ジャンヌも一緒にふみふみふみふみ……
 なお、ふみふみされる方の許可を取る気はない、だって猫だもの。
「このお腹、とても気持ちがいいですわ」
「うんうん♪ これが正しい猫生活なのです♪」
 満足した二匹はゆっくりと上下するラルフのお腹の上で、蹴りぐるみを枕に静かに寝息を立て始める。
(今日は平和に猫ちゃんとして休養するの♪)
 目を閉じた斬華は自分に言い聞かせる。
 何か物足りないなんて、そんなの気のせい。
 この平和なひとときを邪魔する者には容赦しない、正確に言うと首を——
(……駄目駄目……。今日はそんなあれじゃないの!)
 首刈りは封印です、猫の手じゃ首刈り大鉈も持てないしね!
(絶対邪魔はしてはいけませんよ? 絶対ですよ! お姉さんとの約束ですからね♪)
 押すなよ、絶対に押すなよ!
(邪魔するとどうなるかって? それはもうあれですよ! さっきも言いかけたやつですよ!)
 そこに、どこからともなく迷い込んできた虫が一匹。
 それが辿った運命は、言うまでもない。


「えー……えぇー……猫になるってさー……」
 clover(la0874)は元の姿を保ったまま、この世界に飛び込んでいた。
 一緒に飛び込んだハドレー・ヴァインロート(la2191)は、紅の瞳を持つ赤毛のラグドールとなっている。
『おっさん、そんな疲れてんの?』
 問いかけられてもハドレーは答えない。
 頭の中まですっかり猫になってしまったかのように、お気に入りの小さめダンボールにみっちりと詰まっていた。
「にゃ……(この狭い空間のフィット感が癖になる……」
 みっちりすぎて今にもサイドが崩壊しそうになっているけれど、猫的にはこれくらいが丁度いいのだ。
 しかし猫は気まぐれ、猫の気分は猫の目のようにくるくる変わる。
 のっそりとダンボールから出てきたハドレーは、窓の外にやってきた小鳥を見つめて「ケケケッ」と妙な声を出したり、ひらひら舞い飛ぶちょうちょを窓越しに追いかけては前足でガラスをてしてし叩いてみたり。
『まぁいいや、クロ君はそんなおっさんを癒す為にわざわざ世話係として登場……って、聞いてる?!』
 聞いてない、今度は爪とぎで忙しいから。
『さすがのフリーダムだよなー』
 まあ、たまにはこんな立場の逆転も悪くない、かも。
『ちょっと妙な気分ではあるけど……って、いない!? どこ行った!?』
 僅かに目を離した隙に、ハドレーの姿は忽然と消えていた——と思ったら、カラカラと窓の開く音が。
『あーっ、勝手に出てこうとすんなーっ』
 鍵はかけてあったはずなのに、自分で開けたのか。器用だな。
 cloverは慌ててハドレーを窓から引き離し、窓を閉めて鍵をかける。
 だがハドレーは頑固だった。
「なうー(なんだい、クロ君邪魔しないでくれよ」
 窓に突進する勢いでじたばた暴れている。
 ふと思い立って試みた脱走が思いのほか楽しかったらしい——特にcloverの慌てぶりが。
『ぐぬぬ……えーとっ、猫と言えば……鍋だっけ? あと猫じゃらしっ!』
 何とか気を逸らして脱走ブームを終わらせようと、cloverは部屋の中に目を走らせる。
『それに音の出るなんかこー……うん、猫用のおもちゃ!』
 土鍋にネズミ、鈴入りボール、鳥の羽やふわふわのウサギの毛が付いたじゃらし等々、ありったけかき集めて目の前に並べてみる。
「にゃ(……む、その小鍋は魅力的」
 ハドレーは鍋の中にすっぽり収まり丸くなる。
 ダンボールも良いが、これはこれで良いものだ。
 しかし、そのまま昼寝を決め込もうと思ったのに、揺れる猫じゃらしから何故か目を逸らせない。猫視点恐るべし」
『ほーれほーれ』
 おっさん猫を必死で構うclover、思わず手を出すおっさん猫。
「うにゃっ」
 しかし夢中になりすぎたのか、バランスを崩して鍋がひっくり返る。
『あーあー、中身こぼれちまったー。しっかし、元々の髪の毛のせいかすげーなー』
 転がり出た格好のままぼんやりしている呑気なおじにゃんのもさもさ毛並みを見て、cloverは猫用ブラシを取り出した。
『よーしっ、特別にクロ君がブラッシングしてあげよう!』
 ここで恩を売っておけば後々なんかいい事ありそうだし?
『あ、ここ絡まってる……毛繕いとかしてないだろこれ』
 もつれた毛をほぐしながら丁寧にブラシをかけると、ハドレーの喉から盛大なゴロゴロ音が漏れてくる。
『そうかそうかーそんなに気持ちいいかー』
 ごろんと仰向けになり、お腹も頼むと催促するハドレー。
 そのうちにゴロゴロ音が間遠になり、ヘソ天のまますやすやと寝息を立て始める。
(猫生活も悪くないにゃ……)
 ただし忠実な下僕付きの飼い猫に限る。


「イベントねぇ」
 アイリス・L・レイバルド(la3254)は、その立派な毛並みに一目惚れして選んだ黒いペルシャだ。
 その黒くてツヤツヤな毛並みは、毎日きちんとブラシをかけてもらえる飼い猫でなければ維持することは出来ない。
 この見事な毛並みと自由、その二つを天秤にかけるならば、選ぶのは当然——いや、選ぶ必要などない。
「私は家から出ない自由を満喫しているので気にせずに励むといい」
 アイリスはキャットタワーのてっぺんに寝そべり、ふさふさ尻尾をふぁさりと振った。
 イベントは参加するより見て楽しむ派、はしゃいでいる他猫のチャレンジを見ている方が面白い。
「メイン会場は向こうだね」
 タワーを降りたアイリスは人間の休憩室まで優雅な足取りで歩いて行くと、慣れた様子でドアノブに飛び付き、あっさりとドアを開けて何食わぬ顔で侵入を果たすのだった。
「ここが特等席」
 人間の肩は不安定で乗り心地がいいとは言えないが、なにしろ高い。
「高さこそステータス」
 それにこいつは、動く。
 乗っているだけであちこち移動できるのだ。
 ただ時々「イタイ」とか「ツメ」とかいう変な声を出すのと、方向音痴なのが玉に瑕だが。
「あっち行って」
 ぺちぺち。
『え? あっちに行きたいの?』
「違うそっちじゃない」
 ぺちぺち。
『ねえ、ちょっと重いんだけど……はい、ここでいいわね?』
 降ろされた。
 方向音痴な上に話も通じないとか、何というポンコツなのか。
 しかし猫は寛容なのだ、わかるまで何度でも繰り返し教えてあげよう、どっこいしょ。
『あら、この子また乗っかってきた……そんなに肩の上が好き?』
「好き嫌いの問題じゃない、楽して向こうに行きたいだけ」
 ぺちぺち。
 しかし、やはり通じない。
『まだお仕事あるから、ひとりで遊んでてね』
 降ろされた。
 人間とは不思議なものだ、犬の言葉なら大体正しく理解するのだから、それほど頭が悪いわけでもないのだろうに、何故こうも猫の言葉は通じないのだろう。
 あれか、猫が高度すぎるのか。人類には早すぎる存在なのか、どっこいしょ。
『はいはい、じゃあ好きなだけ乗ってていいわよ』
 降ろしても降ろしても、いつの間にかまた乗っかっているアイリスに根負けしたようだが、違うそうじゃない。
 今まさに猫達の大脱走が始まろうとしている、その現場を見せてやろうというのに、この下僕は何故それがわからないのか。
 これなら話が通じるだけ、あの玄関前にいる番犬の方がまだマシだ——というわけで、今度は犬の背に乗ってみた。
 なお犬とは仲良しだ、精神力で屈服させたとも言うけれど。
 高さは足りないが、ここは脱走劇の最前線。
 さぞかし色々なドラマが見られることだろう。



●ねこは基本、永遠に明日から本気出す

「クハハハ! この程度の牢獄でこの真の漢たる俺の脱走を阻めるものか! いくぞ!」
 好野 渚(la0076)は立派な雄の三毛猫だ。
 三毛猫の雄はとても珍しく、その毛皮は三味線の皮として結構な高値で取引されるらしい。
 ペットとして普通に取引される場合でも、やはり高く売れるとか。
 この猫シェルターいんそむにゃぁでは、血統書付きでもミックスでも、たとえ雄の三毛であろうと、猫の譲渡は基本的に無料だ。
 だから猫で儲けようとする人間にとって、渚はまさに動く札束。
 もちろん施設の方でもそんな連中に彼を引き渡すことはないだろうが、人間は嘘をつく生き物だ。
 騙して手に入れ、売り飛ばすことだってあるだろう。
 それに良い飼い主が見付かったとしても、過保護にちやほや甘やかされるのは渚の性に合わなかった。
 というわけで、自由を求め愛を求め真の漢(猫)になる為にいざ行かん! 遥か万里の彼方まで!
 しかし、自由への道は長く険しい。
「はっ! あれは……!」
 ダンボールがあれば入りたくなる、だって猫だもの。
「こ……このフィット感……楽園(エリュシオン)はここにあったのか」
 いや、だめだ、ここで誘惑に負けるわけには——しかし、そこに襲いかかる猫じゃらし!
「ふっ、この猫じゃらしハンターと呼ばれた俺に勝負を挑むとは良い度胸だ、存分に遊んでやろう!」
 いやいや、遊んでいる場合ではない。
「くっ……巧妙な罠が仕掛けられている……だが俺は諦めんぞ!」
 この見せ掛けの楽園を飛び出し本当の楽園(天竺)に辿り着く為に俺はまだ登り始めたばかりだ、この漢坂を!
 しかし坂の手前には思わず挟まりたくなる狭い隙間が!
 そこに美味しいおやつの追い討ちが!

 ※ご愛顧ありがとうございました。渚(猫)先生の次回作にご期待ください(ちーん


「バーチャルで猫になるのか。面白そうにゃん!」
 そう思った時にはもう、五代 真(la2482)は猫になっていた。
「早いにゃ、おい」
 猫になると同時に変化した語尾、そして体を彩る勇猛な縞模様。
「茶トラでもトラはトラにゃー、密林の王者にゃー!」
 そしてこのピンと立った耳、雄々しいヒゲ、長く伸びた尻尾、短い手足!
 そう、彼はマンチカン。
 様々な猫種との交配によって生まれたとされるその体には多分、野生の血も流れている。
「自由が俺を呼んでいるにゃー!」
 頻繁に開けられる玄関からの脱走を試みるべく、その前に陣取る犬に果敢に勝負を挑んだ。
「シャー!」
 体と尻尾を目一杯に膨らませ、威嚇してみる。
 背中に黒いペルシャ猫を乗せた犬は、むくりと起き上がった。
 でかい。
 背中の猫と合体したその姿は、巨大な怪物のように見えた。
 しかし真は怯まない。
「警告はしたにゃー、いくぞ必殺猫パンチにゃー!」
 振り上げた前足が神速で振り下ろされる。
 マンチカンは見た目の可愛らしさとは裏腹に、とても筋肉が発達している。
 その猫パンチは超強力だ!

 ぺちっ!

 だが、当たらなければどうということもない。
 圧倒的に足りないリーチの前に、虚しく床を叩く必殺の猫パンチ。
 ぺち、ぺち、てち。
 足りないリーチは踏み込みで補えば良いだろうって?
 無理、だってめっちゃ睨んでるもん、あの犬。
 その眼力は見えないバリアーとなって真の接近を阻んでいた。
 そうこうしているうちに、騒ぎを聞きつけた世話係のお姉さんが駆けつけて、真の体をひょいと抱き上げる。
『あらあら、わんこさんに遊んでもらってたの?』
「違うにゃー! これは漢と漢の真剣勝負にゃ、邪魔するにゃー!」
 じたばた暴れる真をがっちりホールドし、猫部屋に連れ戻すお姉さん。
 それでも諦めず再び玄関に向かおうとするが——その耳がカサカサという微かな音を捉えた。
「大好きな羽根じゃらしにゃー!」
 短い手足を懸命に動かして駆け戻り、飛び付き、転げ回る。
 それに飽きたら美味しいごはん、そして優しいお姉さんの柔らかな膝の上で丸まって、ゴロゴロ喉を鳴らしながらお昼寝する、この至福のひととき。
(脱出? どうでもいいにゃー。ここで楽しく暮らしてえにゃー)
 今が良ければ全て良し。
 明日のことなんて知らないにゃー。


「みんな騒がしいなぁ」
 お気に入りのハウスから顔だけ出して、茶トラ(ミックス)の仔猫アニタ(la3684)は不思議そうに首を傾げた。
「のんびりごはん食べて寝てたら最高なのにさ」
 アニタは外の世界を知らない箱入りにゃんこだ。
 だから大人の猫達が言う「外の世界の素晴らしさ」はわからない。
「脱出とか言ってるけど、外とかこわいじゃん」
 ハウスから出たアニタは、ぐーんと伸びをしてから床に転がっていたお気に入りのボールに突進する。
 逃げるボールを追いかけ、跳ね飛ばし、また追いかけて——でも、なんだかいつもと違う。
「いつもならこのへんで邪魔が入るのに……」
 ボールを横取りする、意地悪なあの子。
 あの子も外に行ってしまったのだろうか。
「意地悪な子がいなくなるのは大歓迎だよ、別に寂しくなんかないし、ない、し……」
 寂しくはないけれど、自分ひとりだけ取り残されるのは困る。
 ちょっと様子を見て来ようと、アニタは猫ドアをくぐって廊下へ出た。
 玄関の方を見ると、誰かが犬と喧嘩している。
 かと思うと猫同士で喧嘩になっていたり、人間達の部屋から何かが落ちて割れる音や叫び声が聞こえたり、やたらと騒がしい。
「ほんとに脱出するの?」
 猫は騒がしい場所が嫌いだ。
 いつもの静かないんそむにゃぁなら離れたくないが、たまに今日みたいな騒がしい日があると、どこか別の場所に行きたい気持ちが湧いてくる。
「みんなと一緒なら怖くないかも……でも、やっぱりここがいいかな……」
 どうしよう、誰か残るひといないかな。
 ああ、でもやっぱり外も気になる。
 気になるけど、やっぱり戻ろうかな。
 ああ、でも自由に向かって突き進む姿もカッコいい。
 自分もあの仲間に入ったらカッコよくなれるかな。
 でもやっぱり外は……
 うろうろそわそわ、うろうろそわそわ。
「ああもうどうしようー!」
 決められないお年頃の仔猫は、そうしていつまでも優柔不断にうろうろそわそわ——
「え、ごはん? 食べるー!」
 しかし、ごはん部屋にはしっかり一番乗りを果たすのだった。


「猫を満喫するかも!」
 鴨(la3453)は猫である。
 何を言っているかわからないかもしれないが事実である。
「滅多にない経験かも!」
 滅多にどころか普通はない、しかしバーチャルなら普通にある……のに、どうしてこうなった。
 鏡の前でポーズを取るのは猫耳カチューシャを着けた鴨。
 尾羽に着けた猫尻尾が、お尻を振ると良い感じにゆらゆら揺れる。
「名前は鴨にゃんかも!」
 せっかく何でもありのバーチャルなのだから、すっかり猫になりきってしまえばいいのに……と思うのが素人のあかさたな。
「鴨は何でも似合うイケ鴨だから! 猫耳も似合うかも!(ドヤァ」
 鴨は鴨としての誇りと矜持を芯に保ちつつも、ちょっと哺乳類に憧れちゃう多感なお年頃——この姿はそんな繊細な鴨心の現れなのだ。多分。
「猫ってどう鳴くかも?」
 猫社会に受け入れてもらうには、やはり最初が肝心。
「挨拶するかも! にゃーんかも? にゃんにゃーんかも!」

『クワァ!』

「我ながらいい感じな猫っぷりかも!」
 ここまで来たら、より完璧を目指すのが立派な鴨の嗜みである。
「爪とぎはこうするかも!」
「ダンボールにはこうやって詰まるかも!」
「香箱座りはこうかも!」
「喉を鳴らすのはクルルッポゥかも!」
 完璧。
 これならきっと、鴨にゃんが本当は鴨だということは誰にもわからない。
「やっぱり〜イケ鴨の鴨が猫になったらイケ猫になっちゃうかも〜!」
 モテ期到来かも?
 引く手数多で困っちゃうかも!
「いざ猫デビューかも!」
 え、脱走? なにそれおいしいの?


(この閉ざされた冥き牢獄より出でたるを決意した者たち……)
 サラ・イェルファ(la3677)は意味深に語るも意味不明なキジトラである。
(生まれながらにして自由たる我らの四足を繋ぎ止める枷は、やはり存在せぬか……)
 その姿はまるで置き物の如く、動かない鳴かないごはんも食べ……いや、ごはんは食べる。
 だが常日頃からほとんど動かないため、いんそむにゃぁでは特別な地位を得ていた。
 つまり人間の休憩室におけるインテリア、雑貨が並ぶ棚の中に違和感なく収まるオブジェとしての地位を。
 人間達はこの手のかからない生きた置き物に全幅の信頼を寄せていた。
 窓が開いていても絶対に外に出たりしない、と。
(その通り。既に無我の境地に至った我は、銀の受皿に満ちた真白き聖水(ミルク)で渇いた心を癒すのみ)
 なお聖水は猫用もしくは悪魔の象徴たる角あるものより滴りし——早い話がヤギミルクでよろしく、牛乳はお腹壊すからね。
(そして我は、時の存在せぬこの空間にて、再び餓えるその時まで微睡に身を沈めるのだ……)
 すやあ。

 ……。
 …………。
 ………………。

 しかし今日は騒がしくて、おちおち寝てもいられない。
(混沌の渦はまさに極まれり……)
 誰かが棚から物を落とす音で目覚めたサラは、細く目を開けて周囲を伺う。
(四つ足に載せて運ぶ命をして「運命」とは、道は果たして誰のものか……神のみぞ知る、だな)
 賢者のように深く静かに目を閉じて、彼等に念を送った。
(光に向かって進むがよい、勇者たちよ)
 そして慌てふためく人間達にも。

(ごはん、まだかな、おなかすいた)
 まさか、忘れてないよね?



●ねこは基本、へっぽこである

 ここは通称へっぽこ部屋。
 自他共に認めるへっぽこな猫が集まる部屋だ。

 その頂点に立つのはディエスフィデス(la2755)、猫名をディー子というエジプシャン・マウのブラックスモークだ。
 解説しよう、エジプシャン・マウとは神経質で内気ながら古代エヅプト時代から存在しるという由緒正しき猫である。
 絹のように滑らかな短毛と長い四肢、少し小さめの顔と大きな耳が特徴で、その優雅な姿はまさに女王の気品と風格がある。
「ブラックカラーは非公認らしいのですけれどもアウトローたるワタシには丁度よいのです」

「ディーちゃカッコよいな」
 背の高いサバンナキャット、クーラ・スサ・ルァフ(la2696)の猫名はくーちゃんだが、親友のディー子にその名前で呼んでもらえないことが目下の悩み——あ、悩んでない?
「クーラたんだっていつもの呼び方なのです、お互い様なのですよ」
 サバンナキャットは中型肉食獣のサーバルちゃ……キャットとイエネコの交配種、溢れる野性味とイエネコの愛らしさがミックスした「まさに過去の大魔術師クーラと現在のニート女王クーラが合体したかのようなソレ(本猫談」である。
 その体型などはエジプシャン・マウに似ているが、なにしろでかい。
 他の猫にはぴったりサイズのダンボールに、どう頑張っても入れないくらいでかい。
 だが手先は器用で頭も良く、ドアや蛇口を開けるのはお手の物、掛けがね式のような鍵なら簡単に開けてしまうという。
 ただ、中の人の特性ゆえにその強みを十全に発揮することは難しいようだが。
「水も怖がらないらしいよ」
 怖がらないだけで泳げるとは言ってないけどね。

「拙者はニンジャゆえ、機動力はお任せあれ」
 孤高なるブリティッシュショートヘア、ベララシェヴァ(la3704)の猫名はハンゾー。
 動きが素早いところから名づけられたっぽいニンジャ猫(自称)である。
 だがシノビとしてはまだ幼く、それゆえに誘惑に弱い。
 ネズミを見るとつい追い掛けてしまうヤンチャなクセも残っていた。

「やるやるー! 大脱出ー!」
 脱出と聞いて意味も分からず同調するやたらとテンション高いデボンレックス、モナ美(la0646)の猫名はデボ美という。
 犬並の慌ただしさと好奇心、そして巻き毛を持つことにより「プードルキャット」とも呼ばれるデボンレックスとモナ美の合体により、ここにノリだけで生きている超ハイテンションの猫が爆誕した。

 そんなへっぽこな猫達を影で支える参謀役は、賢いロシアンブルーのエマ・ウィルドレイク(la3701)だ。
 だがしかし、彼女もやはりへっぽこの一員だけあって残念な属性を抱えていた。
 中の人の近視が影響したせいで目が悪く、他猫の見分けが付かないのだ。
「猫用の眼鏡かコンタクトでもあればよかったんだけど、仕方ないわね」
 バーチャルならメガネ猫もアリなのだろうが、元の生真面目な性格がそれを許さなかったようだ。

 さて、今回はこのメンバーで脱出に挑むわけだが。
 不安しかない気がするのは気のせいだろうか。

「まずは作戦なのです」
 リーダーのディー子が何故かそこにあった黒板を爪で引っ掻いて仲間の注目を集める。
「やめなさいディー子、猫は耳が良いんだから人間よりずっとデリケートなのよ?」
「拙者はハンゾーでござるよエマ殿、ディー子殿は向こうでござる」
 さっそく間違われてとばっちりを受けるハンゾー、そこに更なる引っ掻き音がキキキキィィィィ!
「はいそこ、注目するのです」
 一度しか言わないからよく聞いてねー。
「高貴なワタシならば勝手口で一鳴きすれば扉は開くのです。開いたら一気に駆け抜けるのですよ」
 以上、反論は受け付けない。
「あとは実行あるのみなのです」
 この作戦に不安があるとすれば、それはメンバーの濃さのみ。
 それ以外は完璧!

『にゃー!』

「開かないわよ」
 エマの低音ボイスがディー子の丸い後頭部に突き刺さる。
 しかしディー子は気にしない。
「100回鳴いても開かなければ全員でにゃんにゃん大合唱なのです」
 101回目には開くかもしれないし、1匹でダメでも5匹ならきっとたぶん。
「雑すぎるでしょ、それ」
 思わず頭を抱える参謀、だが計画は走り出したら止まらない。
 猫ドアに詰まったくーちゃんの尻尾にハンゾーがじゃれついたり、無理やりくぐったらドアの枠ごとぶち抜いちゃったり、嵌まった枠を人間に取ってもらったり……色々あったけど、勝手口の前に全員集合。

『にゃー』
『にゃー』
『にゃー』
『にゃー』

『にゃにゃーっ!!』

 仲間の声に興奮したデボ美は自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回る!
 その姿はまるでチャクラムの如く、勝手口の前に置かれた柵を薙ぎ倒し、ぶち壊し、巻き込んで——
『あらあら、何してるの?』
 騒ぎを聞きつけて現れた人間の足をガブゥ!
 ついでに周りの仲間や他の猫にもガブゥ!
 動くものにはとりあえず何でもかぶりつく、それがデボ美。
「痛いじゃない!」
 エマの反撃! しかし相手を間違えた!
「リーダーに刃向かうとは良い度胸なのです」
 ディー子の報復、しかしそのネコパンチは盾にされたくーちゃんを直撃!
 驚いたくーちゃんは思わず飛び上がり、その大きな体でドアに体当たり!
「おお、さすがクーラたん。そのままドアをぶち破るのです」
 今から君は切り込み隊長だ!
「単なる体格といえども、それは持てるものの義務なのです」
「もしかして作戦って力技なの?」
 ダメな気しかしないけど、リーダーの指示には従うもの。
 くーちゃんは半ばヤケになって体当たりを繰り返す。
 なおサバンナキャットはドアが開けられるという特性はすっかり忘却の彼方である。
 仕方ないね、へっぽこだからね。
「ならば拙者が代わりに!」
「ハンゾーに続くのです、全軍突撃なのです」
 5匹の力を今こそひとつに……ひとつに、ならない。
 デボ美は相変わらず無双してるし、ドアノブに飛び付こうとしたハンゾーは目の前を横切った虫を追いかけるのに夢中になっている。
 そして5匹はまとめて猫部屋に連れ戻され、作戦は失敗に終わるのだった。

 しかしディー子は諦めない。
「失敗は成功の母なのです。今のは本番前の予行演習、威力偵察というやつなのですよ」
「なるほど、ものは言いようね」
 今度こそ脱走を成し遂げるため、参謀エマが主導権を握る。
「あのドアは体当たりでは開かない。だったら開くまで待てばいいのよ」
 開かぬなら、開くまで待とう勝手口。
「ドアが開いたら突撃よ、でもまずはくーちゃんに囮になってもらうわ」
 大きくて目立つから、人間の目を惹きつけることが出来るだろう。
 その隙に機動力のあるメンバーが抜ける。
「誰か一匹でも抜けたら、それでいい。犠牲の上に、成功はあるのよ」
 シリアスな空気のもと、作戦の第二段階が開始される。
 勝手口を見張れる物陰に身を隠し——
「クーラたん隠れてないのです」
「拙者の忍術アイテムを貸すでござるよ」
 ハンゾーが差し出したのは、隠れ蓑という名のただの毛布。
「これをかぶっていれば、ただの毛布が落ちているようにしか見えないでござる」
 そして彼等は待つ。
 ただひとり計画を1ミリも理解しないデボ美だけは相変わらず無双状態だが、下手につつくと火に油だし、そのうち電池が切れることを期待して放置しつつ、待つ。
 待つ。
 ひたすら待つ。

 ……すやぁ。

 しかし、ドアが開く微かな物音に全員が素早く飛び起きる!
「今なのです!」
 だが寝起きの猫がすぐに動けると思ったら大間違いだ!
 くーちゃんがアクビをしながらう〜んと伸びをしているうちに無情にも閉まるドア!

 その隙に大きくて丸々としたキジ三毛の猫が堂々と入って来たことに気付いた者は誰もいなかった。
 いんそむにゃぁは出ていくものには厳しいが、入って来るものにはザルだったのだ。

「今度こそ、寝ないで見張るのです」
「拙者、その間に他に出口がないか調べてくるでござる」
 音もなく姿を消したハンゾーはカーテンレールに身軽に飛び乗り、天窓が開けられないか試してみる。
 しかしさすがにそこは厳重にロックされていた——が、ふと天井を見ればそこには大きな蜘蛛の姿が!
「はっ! あれはアシダカ軍曹でござる!」
 素早く動き回る蜘蛛は、猫にとって格好のオモチャ。
 夢中で追いかけるハンゾーは今や生粋のハンター。
 仲間も使命も作戦も、何もかも忘れてひたすら蜘蛛を追いかける、そんなお茶目な猫。
 ダメ猫ではない、これが猫の正しい姿なのだ。多分。

 そして再び勝手口のドアが開けられる。
 くーちゃんはその大きな体を生かして人間にどーんと体当たり!
「今だぞ」
 よろけた人間の足元を駆け抜けるべく、ディー子が突進する!
 しかし、その素早い動きにデボ美が反応した!
 どーん!
 横から吹っ飛ばされるディー子、巻き添えを食らった人間の手から落ちる買い物袋、その中からおやつと一緒に転がり出た鈴入りのボール——
 その音に、蜘蛛を追いかけていたハンゾーが反応、ターゲットを切り替えてボールを追う!
 弾んで転がるボールはドアの外へ、ハンゾーもそれを追って外に——

 バタン。

 ハンゾーの背後で閉まるドア。
 しかし全く気付かずボールを転がし続けるハンゾー。

 ドアの内側では、デボ美がおやつの袋を食いちぎっていた。
「これ美味しいよ! みんなも食べようよ!」
 かくして脱走計画は潰えた。
 こんなことになるんじゃないかという気はしていたのですよガッデム。

 なおハンゾーはその後、ネズミのオモチャで釣られて無事に連れ戻されたとか。


●結局、誰も脱走に成功しないのでは?

「ニャァー!(こんな所に居られるか俺は外に行くぞ」
 ネムリアス=レスティングス(la1966)——リアスは目付きが悪い灰色青目の猫だ。
 しかし目つきは悪いが面倒見はいい。
「ナー(俺は外に出る。お前も外に出るか?」
 同じ部屋にいたテディ・ロジャーズ(la3698)に声をかけ、誘ってみる。
「ナーオ(お前もこんなところで飼われている猫ではあるまい」
「ニャォ(モチロン、一緒に出ましょう。目指せ、ノラネコなのデス」
 意気投合した二匹はまず、人間の生活スペースに向かった。
『ニャ〜♪』
 できる限りの可愛い声を出して、ドアを開けさせる。
 しかし人間は何やら警戒しているようで、ほんの少ししか開けてくれない。
 しかも足で隙間を塞ぐようにしながらという警戒ぶりだった。
『あらあら、ここに入りたいの? でもごめんなさいね、今はちょっと——あっ!』
 御託を並べる人間の頭を身軽に飛び越え、リアスはテディを振り返る。
「来い」
「わかったのデス!」
 テディは慌てる人間の足元をすり抜け、リアスに続いて部屋に入る。
 そこは自分たちの猫部屋とはまるで違っていた。
 棚の上には落とし甲斐のありそうな小物が並び、爪とぎに良さそうなソファや壁、ふかふかのクッションなど、猫心をくすぐるアイテムが満載。
 ソファの間に置かれた低いテーブルには人間用のお菓子が散乱し、ひっくり返ったマグカップからは黒っぽい液体が流れ出ていた。
 興味を惹かれたテディはテーブルに飛び乗り、ふんふんと鼻を鳴らしてそれらの匂いを嗅いでみる。
「どれも美味しそうなのデス!」
 しかし若いのに経験豊富なリアスがそれを止めた。
「ダメだ、人間用の菓子は猫の体に良くない。その黒い水はコーヒーといって、良くないどころか毒だ」
「Realy?! これはまさか、私達の反乱を力ずくで制圧しようとする人間の非道な罠デスカ!?」
 こんな恐ろしいところにはいられない。
 一刻も早く脱走しなければ!
 そして他の猫達も助けなければ!
 しかしその部屋には誘惑が多すぎた。
「あそこで楽しそうなことしてるのデス!」


 ゲルセミナ=エレガンティーア(la2437)は長い被毛に優雅な顔立ち、釣り上がったアーモンド形の目をしたターキッシュアンゴラのレッド。
 高い所が大好きで、気儘な女王様といった風情の彼女は、この騒動に加担するつもりはなかった。
「動かぬ事を怠惰と呼ぶのでしたらそうかもしれませんけれど、現状に不満はありませんし……ですが行動する方達を貶める気はありませんわ」
 だから傍観者に徹しようと思っていたのだが。
「義を見てせざるは勇無きなり、と言うな」
 相棒のルルルヴァ(la2766)の言葉で考えを変えた。
「そうですわね。少しばかり手を貸してさしあげるのも吝かではございませんわ」
 こうして二人……いや二匹は同じ小隊の仲間として、また魔王軍の共闘者として、他の猫達に協力することとなったのである。

 ルルルヴァはいつかの夢ではクロヒョウの姿になっていた。
 今回もそれで良いかとも思ったのだが、この狭い屋内で行動するには些か体格が良すぎる。
 そこで目をつけたのが、ハバナブラウンだ。
「この猫は運動好きらしい」
 ならば本来の自意識と身体能力の反映もし易かろうと考えた。
 それに自身の名に反応し、芸も覚えるという優秀な点も気に入った。
 ルルルヴァは義理猫情に厚い猫だ。
 広い世界は魅力的だが、飼い主への義に背きたくはない。
「いつか飼い主が連れ出してくれるまで、私は此処に在り続ける。だが、若き者達が未知の世界を求める事までは止められん」
 自らが置かれた現状に疑問を抱き、変革を求めるのは若者の常。
 自身には訪れることのなかったその機会を得た者がいるのなら、そっと背中を押してやろう。
 表立っては不可能だが、横合いから手助けをするくらいなら。

 ゲルセミナは玄関に向かい、吹き抜けの天井近くまで身軽に駆け上がった。
 ここは攻防の最前線、遥か下では猫と番犬の睨み合いが続いている。
 どちらも譲らない気迫のぶつかり合いだが、まだ本格的な衝突には至っていなかった。
(これは何かきっかけを与えてやる必要がありそうですわね)
 ゲルセミナは周囲を見渡す。
 と、目に入ったのは一輪挿し。
 かなり高い場所に置かれている上に足場も狭く、普通の猫なら手出しは出来ないと人間は思っているのだろう。
 だが甘く見てもらっては困る。
 ゲルセミナは僅かな足がかりを渡り歩き、花瓶に近付くと、そのふさふさしっぽをさっと一振り。

 ガシャーン!

 その音に驚いた犬と猫が同時に飛び上がり、互いに相手の攻撃と勘違いしたのか、ギャンギャンの大喧嘩に発展した。
 犬の背中から飛び退いて逃げるアイリス、その大騒ぎに反応した人間達も部屋から飛び出して来る。
 その隙に、ルルルヴァは休憩室に滑り込んだ。
 その行動に気付いた人間もいたようだが、構っている余裕はなかった。
 ルルルヴァは棚に上がり、そこに置かれた物を片っ端から下に落としていく。
 ガシャーンパリーンと小気味のいい音をさせて壊れていくオブジェ、割れないものもガランゴトンと楽しげな音を立てて転がっていく。
『ああもう、あっちでもこっちでも!』
『なんなのよ今日は!?』
『お願いもうやめてー!』
 下から聞こえるそんな声もお構いなしに、ガシャンバリンゴロンゴロン。


「楽しそうデス、私もやりたいデス!」
 その様子を見てテディが目を輝かせる。
 しかしそれをリアスが引き止めた。
「気持ちはわかる、だが俺達には大切な使命があることを忘れるな」
「そうだったのデス! まずは犬の気を引くものを探すのデス!」
 だが、そこに新たな罠が!
『ああもう、お願いだからこれ以上面倒を増やさないで!』
 人間は猫達の懐柔作戦に出た。
 具体的には美味しいおやつとミルクで足止めをしようというわけだ。
『みゃぉ……♪』
 思わずフラフラと吸い寄せられるテディ、しかしその尻尾をリアスが引っ張った。
『ナウナウ』
「尻尾はダメなのデス! ここはとってもデリケートなのデス!」
「すまん、だがこれは罠だ。捕まったらケージに入れられるぞ」
 ケージ、それは一種の懲罰房。
 家の中を出歩く自由さえ奪われてしまう最悪の措置。
 それだけは絶対に避けなければならなかった。

(このもふもふはどんな音が……)
 ルルルヴァがキジトラの置物に手をかけようとした、その時。
「これ、我はぬいぐるみではない」
 置物が喋った。
「これは失礼した」
 それは空きっ腹を抱えて微睡むオブジェ猫サラ。
「いや、構わぬ……しかし今日はこの大騒ぎにかまけ、人間達は食事の用意を失念しておる様子。そなた、すまぬがひとつ頼まれてはくれぬか」
「わかった、食料を調達してくればいいのだな」
「一番美味しいやつで頼む……」
 棚から飛び降りたルルルヴァは、ご飯の匂いがする戸棚に歩み寄る。
「ふむ、観音開きか」
 取手に爪を引っ掛けて引くと、扉はいとも簡単に開いた。

「あのひとが開けてくれたのデス!」
 ルルルヴァが戸棚を開けると、テディがすっ飛んで来た。
「ここに犬を倒すアイテムあると聞いたのデス!」
「……これだろうか」
 ルルルヴァが戸棚の奥をちょいちょいして、齧ると音の出るぬいぐるみを引っ張り出す。
「ロープと骨型のおやつもある、好きなものを持って行くがいい。猫にはわからぬが、犬にはたいそう魅力的だろう」
「ありがとうデス! 感謝するデス!」
 彼らの行動に気付いた人間の手をすり抜け、ぬいぐるみを咥えたテディは一目散にドアに駆け寄る。
 キッチンの冷蔵庫からパックの肉を失敬してきたリアスも合流し——だがドアは閉まっていた。

 その時、玄関の方からゲルセミナの切羽詰まった悲痛な鳴き声が響いた。
 尋常ではないその声に慌てた人間は、二匹の泥棒猫の捕獲を諦めてドアを開ける。
「テディ、今だ!」
「わかったデス!」
 その足元をすり抜けて走る泥棒猫。
「見事脱出してみせるのデス! Miaou☆」
 二匹が部屋を出たその時、悲痛な鳴き声はぴたりと止んでいた。

 一方、部屋に残ったルルルヴァは窮地に立たされていた。
 戸棚の前に重たい箱でバリケードが築かれてしまったのだ。
(くっ、これではもう開けられぬ)
 こうなったら最後の手段、直接訴えるしかない!
『ゴハァ〜ン』
 鳴いてみた。
 猫の声帯を使って、出来るだけ人の声に似せて「ゴハン」と。
 人間はこういった芸に弱いのだ。
 そして猫達の食事が遅れていることに気付いた人間は、慌てて支度を始めるのだった。


 戸棚の前に置かれた箱のひとつがもぞもぞ動く。
「出すっす! ここから出すっす!」
 中から聞こえるくぐもった声は纏のものだ。
 どうしてこうなったのか、説明しよう。
 外から聞こえる声の誘惑に負けた纏は、脱走を決意した。
 まずは廊下に積まれた空き段ボールを被ってこっそりと移動——
「メアリーさん上に乗っちゃダメっす、それじゃ見つかっちゃうっすよ!」
 箱の上にちまっと座ったメアリーを箱の中に招き入れ、二匹でそっと動き……動かない。
「メアリーさん、そっちじゃないっす」
 二匹で反対に押してたら、そりゃ動かないよね!
 息を合わせて同じ方向に、二匹はゆっくりと進んでいく。
「ふっふっふ……最強すにーきんぐあいてむっす!」
 人間に見つかりそうになったら頭の上に「!」が出る前に止まること。
 もし見つかっても箱を捨ててダッシュで逃げればOK……ということで。
「逃げるっす!」
 一目散に逃げ出して、隠れた場所は——
「ここはどこっす?」
 見覚えのない部屋だ。
 だが部屋のほとんどが段ボール箱で埋まっているところを見ると、おそらくは倉庫の類だろう。
「ゲームならこのあたりで次の展開に繋がるアイテムが手に入るっす、肉の塊とかそのへんに落ちてないっすか?」
 辺りをきょろきょろ伺う纏、しかしそこに人間が近付いて来た!
「隠れるっす!」
 二匹が咄嗟に身を隠したのは空き段ボールの中。
 そのままひょいと運ばれて——今ここ。
 ガムテープで封印されているらしく、背中で押しても蓋は破れない。
 と、そこに。
「うなっ(見付けたのである」
 あの外猫の声がしたと思ったら、ぺりぺりと剥がされるガムテープ。
 蓋を持ち上げて顔を出すと、そこにいたのはやはりあの猫——三四郎だった。
「なおん(やっと会えたのである」
「ありがとうっす! 助かったっす!」
 纏はまず、恩猫に鼻と鼻をくっつけて猫式のご挨拶。
「でもどうやってここまで来たっす?」
 だいぶ荒らされてはいるが、見た所ここは人間達の休憩室。
 ドアは閉まっているし、他に出入りが出来そうな場所も見あたらない。
「うなん(なに、簡単なのである」
 三四郎は残った段ボールを力任せに押して端に寄せると、戸棚を開けて犬用の骨ガムを取り出した。
「おっ、重要アイテムゲットっすね!」
 三四郎はそれを纏に手渡すと、出入り口のドアへ。
「あけてー」
 てしてし、メアリーが扉をひっかいてみるが、食事の支度やその他諸々で忙しい人間達は気付かない。
 けれど大丈夫。
「んなぁごっ(扉はこうあけるのである!」
 ドアノブに飛びついて、いとも簡単に開けてしまう三四郎。
 さすがは十歳、年の功だ。
「なぁご(あとは玄関から出て行くだけなのである!」


 少し前、まだいんそむにゃぁに静けさが満ちていた頃。
 ノイズ=ブラックベルベット(la2831)の人間態は、コワモテ風のクールイケメンだ。
 しかし猫の世話をする人間になった今、コワモテもクールも5秒と保たなかった。
「ふふっ……たくさん猫さんがいて、可愛いなあ……」
 ノイズは思い思いに寛ぐ猫達の様子に目を細める。
 お世話の方法はちゃんと勉強してきた。
 けれど、まさかこんな大騒ぎが起こるなんて。
「えぇと、逃げないように……見張ればいいの、かな?」
 とりあえず猫ドアの前に座ってそこを塞いでみる。
 にゃーにゃー文句を言われても退かない覚悟で——
「あ、痛っ」
 反対側から引っ掛かれ、思わず飛び退いた。
「あ、えっと、ごめんね? 邪魔、だったかな……」
 が、飛び退いたところでキャットタワーの角に頭をぶつけて悶絶。
 涙目になりながらとんがり耳をしゅんと垂らして後頭部をさする、なかなか残念なイケメンである。
「……あ、あれ?」
 ふと視線を感じて顔を上げると、そこには見覚えのある猫の姿があった。
「あ、あれ? ファオさんっぽい猫が……」

 V・V・V(la0555)——ファオは少し赤みがかった、つやつや毛並みのアビシニアン。
 首に巻いたリボンで女子力をアピールする可憐なお嬢様だ。
(美味しいご飯に様々なおもちゃ、明るい部屋、正に此処は楽園と言えよう)
 ここの待遇に問題はない、それどころか大満足だ。
 なのに、この心を吹き抜ける隙間風のようなものは何だ。
(しかし、何処か安寧とし過ぎてはいまいか……)
 何かが足りない。
 その足りない部分から風が吹いてくる。
 誘うように、背中を押すように。
(足らぬのは、そう、わくわくするような予想を超える刺激!)
 世話係のノイズも遊んではくれる。
 それはもう一生懸命に、楽しませようとしてくれている。
 しかし、やはり違うのだ。
(故に敢えて我は楽園に反逆する! 未知なる外の世界を、いざ冒険だ!)

『にゃー!』

「え? なに? なんて言ったの?」
 猫なったファオの言葉はノイズにはわからない。
 けれど、その決意に満ちた表情とカーテンを登ろうとする動作から、脱走を企てているものと想像はついた。
「……あっ、外は危ないから駄目で……わわっ?!」
 慌てて止めようとしたものの、足元に転がっていた鈴入りボールを踏んづけて、すてーん!
 キャットタワーとの邂逅ふたたび、今度は顔面から!
「……いたた……なんだかいつもと感覚が、違うか……ら……」
 額をさすりながら顔を上げると、ファオがいない。
「あ、れ……ファオさん……?」
 今の物音と大きな動作に驚いたのだろうか。
「ご、ごめん……びっくり、したよね……」
 窓は閉まったままだから、猫ドアから外に出たのだろう。
「た、大変……だ……」
 ノイズはドアを開け、ファオの姿を探す。

 彼女は玄関先にいた。
 ハイドアンドシーク、つまりは猫流の抜き足差し足忍び足で番犬に近付く。
 しかし彼女はひとりではなかった。
「番犬と一対一では、さすがの我でも分が悪かろう。しかし、我には共に戦う仲間がいる!」
 纏にメアリー、三四郎、リアス、テディ。
 たった今出会ったばかりだが、脱走にかける想いは本物!
「さあ行くぞ! 自由に向かって!」
 しかし、そこに思わぬ邪魔が!
 慌てて走って来たノイズが慌てすぎて転んだ末、玄関にヘッドスライディング!
『だ、だめだよファオさん……ここから出ると危ない、から……みんなも、戻ろう?』
 しかしファオは犬からじっと目を離さない。
「にゃー!(ノイズ殿! そんな所にいると怪我をするぞ!」
『あ……通じてない、のかな……』
 いいえ、聞いてないだけです。
「我の事は案ずるな、これしきで遅れを取りはせぬ!」
 睨み合うファオと番犬、その目の前にリアスが投げた肉のパックがどさりと落ちる。
 思わず気を取られた犬の尻尾にファオが噛み付いた!
『ギャンッ!』
 怒った犬は反撃に出ようとする、が!

 ぷきゅっ!

 テディが踏んづけたぬいぐるみの音に、またもや気を取られている!
「こいつ実はかなりのポンコツか?」
「見かけ倒しなのデス!」
 リアスとテディに鼻で笑われ、我に返った番犬は、今度は最も小さくて弱そうなメアリーを狙う!
「こ、来ないでくださいー!」
 隅っこに隠れようとするメアリー、しかしその前に纏が立ちふさがった!
「大丈夫っす! ほら、ホネホネっすよ! これが欲しかったらお手するっす!」
『わん!』

 ちょーん。

 番犬は纏に向かって前足を差し出す。
 番犬としてのプライドはどこ行った。

 その間に三四郎が悠々と玄関のドアを開ける。
「にゃう(お邪魔したのである!」


「……本当に、行ってしまったのですわね」
 優雅に高みの見物をしていたゲルセミナが呟く。
 自身が選んだターキッシュアンゴラは冒険心が強いと聞く。
 しかし彼女の場合は元の性格が勝っているようだ。
「猫が持つ冒険心は、他の猫達に委ねますわ」
 彼等の前途に光あらんことを。



●ねこは基本、我が道を往く

「はぁーっ! 外の空気は美味しいっす!」
 青空の下、纏は思い切り体を伸ばす。
「これはもういらないのデス」
 テディは木の枝に引っ掛けて首輪を外した。
 自分は自由な野良猫。
 首輪が保証してくれる安定は必要ない。
「青空に憧れた 狭い箱庭じゃ あの青空に届かない」
 リアスが呟く。
 今もこの手は届かないけれど。
 届く場所を探しに行こう、テディとふたりで。
「あたしは思いっきり遊びたいっす!」
 纏が行く手に広がる原っぱに目をやると、そこには大勢の外猫達がたむろしていた。
 彼等ならきっと、楽しい場所を知っている。
 楽しい遊びも知っている。
 れっつエンジョイ外猫ライフ!


「なかなか滾る戦いだった! 我は満足だ♪」
 外に出て行った仲間達を見送ると、ファオは尻尾を立ててノイズの足にすり寄っていった。
『え? あれ? ファオさんは……行かないの?』
 戸惑うノイズの問いを綺麗にするーして、ファオはその足元に寝そべった。
「思い切り暴れたら毛並みが乱れてしまったな。さあ、我にブラシをかけるが良いぞ!」
 何をぼんやりしている、早く早く!

 いんそむにゃぁは、今日も平和だ。

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