オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 君は選ばれし新兵

君は選ばれし新兵 追掛二兎

形態
ショート
難易度
普通
価格
1000
ジャンル
恋愛 バトル 救出 
参加人数
63~6人
予約人数
10010100
基本報酬
200000G
200SP
2000EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
3
締切
2018/11/02 23:00
完成予定
2018/11/12 23:00
機体使用
-
関連シナリオ
-


 枯れ葉を踏む音が、まるでざわめきのようだった。
 山間部から森林へ入り、獣道を頼りに木々の間を抜けて進む。
 先頭を歩く男が立ち止まり、身を低くして右手を挙げた。
 続く彼らもそれに倣う。
「この先に、少し開けた場所がある。目的地はそこだ」
 周囲を警戒しながら、男は小声で話した。
 風の音で聞き漏らしてしまいそうで、一同耳に神経を集中させる。緊張した面持ちの者が多いだろうか。
「初めての依頼で大変だろうが、こういうのは場数だ。まずは俺が先行し、引きつける。合図があったら作戦開始だ」
 静かに頷いて了解を伝えると、先頭の彼は胸元にチェーンで下げた指輪を一度握ると、行く先に体を向けた。
「いいか、合図があるまで出てくるなよ」

 福島秀人。SALF所属ライセンサー二年目。年齢、二六歳。
 新人の頃は何かと血気盛んで暴れん坊だったが、現在は相棒とも呼べる間柄の彼女と出会った後は随分と大人しくなり、近頃はめきめきと力をつけてきている。
 この日は、ライセンサーの資格を得たばかりの者を集め、実地訓練と称し、実際にナイトメア討伐の任に当たることになっていた。
 この引率者として名乗りを挙げたのが、この秀人である。

「ま、あの人なら大丈夫でしょ。肩の力を抜いて、ね?」
 そんな彼の相棒、井上香苗。ライセンサー三年目。年齢、乙女の秘密。
 年上の女性、といった雰囲気で、妖艶とは言わないが目鼻立ちが整い、どこかふわふわとした印象を与える彼女も、今回の引率者だ。
 駆け出しだった頃の秀人は、無謀に突撃しては怪我をし、何度治療してもすぐにナイトメアへ突っ込んでは負傷を繰り返していた。
 ある依頼でダメージも顧みず突出する秀人の回復に当たる羽目になった香苗は、「次に怪我したら絶対治してあげないから!」と叱りつけたことがある。二人の出会いと、今日までの関係は、そんなことがキッカケだった。
 秀人の胸元にある指輪は、元々は香苗のものである
 治療を受ける傍ら、「キレイな指輪だな」と秀人は褒めた。その時に香苗は指輪を外してこう言った。「気に入ったなら貸してあげる。絶対返してよ。私が返せって言うまで持ってて」と。
 つまり、指輪を返してもらうその時まで、無茶をするなという圧力のつもりだった。その時は。


 再び木々の間を抜けていった秀人を見送り、新人ライセンサーの一人が武器を手に取る。
「なぁ、合図なんて待たなくても、このまま行って敵を倒しちまえば簡単じゃね?」
 鴨宮雅紀。ライセンサー登録から四日目。今回実地訓練に参加した、新人ライセンサーの一人である。
 中には彼に同意する者もあったかもしれないが、真っ先にそれを否定したのは香苗だった。
「ダメ。初めてなんだから、慎重になりすぎるくらいで丁度いいの」
「そんなこと言って、ナイトメアを全部あの人だけで倒されたら訓練にも何にもならねぇじゃん」
 唇を尖らせ、雅紀はスッと立ち上がる。
「待ちなさい!」
 香苗が思わず声を上げるも、全く聞こえていない。
 よほどの自信があるのか、手柄の一つでも欲しいのか。雅紀は、秀人を追って駆け出した。
 このままにしておくことはできない。
 残るライセンサーには「ここにいなさい」、とだけ言い残して、香苗は雅紀を追っていった。


 数分後。
 香苗が戻ってきた。雅紀を背負いながら。
「あなた達、逃げるわよ」
 ただならぬ表情。
 見れば、背の雅紀は、顔面蒼白となってわなわな震えている。怪我をしている様子はないが、目の焦点は定まらず、自立できそうな気配はない。
 そしてうわごとのように、「俺のせいだ……」と繰り返している。見ればその手に、ネックレスに使うようなチェーンが握られていた。
 秀人は? と誰かが尋ねた。

「……死んだわ」

 ナイトメアの足音は、もうすぐそこまで迫っていた。

あなたたちは、新人ライセンサーを実際に任地で戦闘するという実地訓練に参加したライセンサーです。
実地訓練中、引率者の一名が死亡。さらに新人ライセンサーの一人が戦意喪失、もう一人の引率者が彼のケアに当たるため、あなたたちだけで何とかしなくてはなりません。

●達成目標(AかBのどちらか)
A:敵の攻撃を掻い潜り、下山して逃げる
B:ナイトメアを撃破する
サブ:???を回収する

●舞台 山間部
葉の落ちた木々に囲まれた獣道。
見通しは悪く、狭いです。
天候は晴れ。時間帯は昼過ぎ。

●敵 オオカミナイトメア×4匹
ニホンオオカミそっくりなナイトメア。
俊敏で物理攻撃力が高く、逆に防御力は低め。
牙や爪を用いた攻撃が得意。
木の影や繁みに隠れ、飛び出して攻撃してはまた隠れる、ヒット&アウェイを得意とする。
ファーストコンタクト時には繁みからいきなり飛び出してくる。

・遠吠え
ライセンサーの恐怖心を煽り、対抗判定に失敗すると1ターン行動不能になる。

※敵の行動パターンは事前情報として共有済み。

ようこそ実地訓練へ。
初任務での仰天トラブルはつきものですよね。
サブ目標の???は何か、考えてみるとすぐ分かるかと思います。
ではでは、グッドラック。

(場数を踏んでおきたかっただけなのだが)
若者は無茶をする生き物だが、この状況は…さて困ったね(あまり困った様子がない)

背中を撃たれるよりは、と戦うことを選ぶ
香苗君は反対だろうが、秀人君がとろうとした作戦をとれたなら勝ち目はあると踏んでいる
むしろ無事に帰還するためだ、香苗君なら秀人君の考えていたこともわかるだろう?
…と柔らかい言葉で説得

最悪を考えれば、香苗君は僕たちを助けるために身を呈しそうだ
僕よりも若い子が命を落とすのは、面白くないんだよね

基本的には雅紀君を背負う香苗君のフォロー。移動中もそばにつく
挟撃や包囲を警戒しつつ、なるべく速く目的地へ向かいたい
秀人君の横を通り過ぎる時には、とにかく今は先導者の背中を見るよう促す
後で迎えに来よう、と
立ち止まったなら手を引いて走る
目的地到着後も香苗君のそばからヒールとフォースアローを飛ばす
敵の接近時は咲き乱れる赤で牽制、距離を保つ
遠吠えには持ち前の精神力で耐えてみたい

戦闘終了後に秀人君と指輪を捜索、回収
指輪は雅紀君の手の中にあったりするかい?
秀人君には念のため死亡確認と応急処置を施し、全体を綺麗にしよう
たまたま持っていたさらしも使い、なるべく傷が隠れるように
指輪は香苗君に渡すべきかな
…おつかれさまと、おかえりを、言ってあげてほしいところだね

【心情】
「こうゆう時って大抵、ワッ!みたいな……」
……苦手なんですよね、ホラーとかそういうの。
【目的】
基本は依頼主と同じ
個人的には何をするにしても全員で無事に帰還する事
願わくば死亡した先輩の遺留品及び遺体の回収、婚約者の女性先輩の心のケア
【準備】
視界不良での襲撃を防ぐため目だけではなく耳や鼻も使って警戒する
背負われた負傷者の後ろに位置し無防備な背後からの攻撃を防ぐ
【行動】
「やっぱりこうなりますよね」
基本的には極力負傷者の後方を維持しつつ味方の回復と状態異常解除をする
後方を離れる際には味方に声を掛け負傷者後方の守りを変わって貰う
開けた場所に出てからは射撃により味方の援護をする
正面からの攻撃だけでなく周囲の警戒を怠らない
「周りにも気を付けましょう!」
状況終了後
大切な人を亡くしたであろう先輩を気遣い状況によっては話を聞く
「僕達に出来る事があれば何でも言ってください」

ナイトメア迎撃を行うため、広場に向かって進撃を行う。その際は進路をクリアするために咲き誇る赤を使い、爆撃にて吹き飛ばし、そこを全力移動ルートとする
「コイツを使いたいがためにネメシスフォース選んだようなもんだからな。行け!」

広場に向かって移動する際に遭遇する遺体については傷つけられないように回収して運ぶ
「英雄様っていうのは大事にしないとな」

広場において恐怖しているバカに遺体を見せつけて怒鳴る
「無謀な単独行動がコレを引き起こした。お前は何ができる?震えるだけか?死ぬだけか?手にしているのは何だ?ただの玩具か?死なせた先輩の代わりに戦えるだろうが?最低でも身を守れ!」

新兵相手の激を飛ばした後は咲き誇る赤を使う、または範囲に味方がいる場合はエネルギーガンからクーパーT200へ持ち替え、ポイントショットで精密な射撃を行う
「狙撃兵って感じだな。まあ、ヤクザはマシンガンってイメージらしいがな」

作戦が終了したら英雄を見送る
「後は葬儀だが、ソイツは恋人さんの役目だな」

【心情】
(彼の最後の言葉は、なんだったのだろうか……)
【目的】
敵ナイトメア一掃、指輪、遺体回収。
【準備】
【作戦】共有、基本行動はこれに従う。
【行動】
隊列先頭でPT全体の護衛。
よろけたり躓いた振りして敵の油断を誘い、狼の攻撃に合わせてクロスカウンター、小太刀で首を狙い、タゲが私に無い時、狼の死角からインパクトアタック(以下IA)
狼が居ない時、周囲の警戒をしつつ前進、指輪と遺体探し見つけ次第指輪は回収。
遺体発見時、雅紀、香苗を横目で確認、私が頑張らなければと自己奮起。
広場到着後、私にタゲが無いなら死角からIA。
私にタゲ集中時、回避受け流し優先。
攻撃優先度は、私に攻撃する狼>狼視点で死角である>弱っている狼>それ以外
範囲攻撃の予兆があり且巻き込みを食らう場合ダッシュで退避、不可能なら狼、または小太刀を地面に刺し足場にして跳躍し回避。
「キレイな指輪ですね」
戦闘終了後、指輪回収済みなら指輪を香苗に見せ、未回収なら雅紀の手にあるチェーン確認、指輪があるなら香苗にそれを見せる。
以上に当てはまらない場合、遺体周辺を探索し見つけ次第香苗に見せる。
受け取らない場合は交渉。

  • 常在料理人
    森野 紫苑la2123
    放浪者26才|スピリットウォーリア×グラップラー

【心情】
「俺の来歴は見てるな?こういう荒事にはアンタより慣れてる。悪いがこっからは俺に仕切らせてもらう。ソイツ(雅紀)のことは任せるぜ?」 
ライセンサーとしては新人だが、冒険者としての実戦経験は豊富
引率者である先輩達の顔を立てて大人しく従ってきたが緊急事態の為に行動を開始
雅紀のことは『ぶん殴ってでも止めるべきだった』と内心後悔している

【作戦】
隊列:最前は雨崎と柚子丸 殿に森野 残り4人でNPC二人の前後(可能なら左右も)を囲う

①香苗を説得 この先にある少し開けた場所で敵を撃退する旨を森野から全員に指示
②赤城の爆撃後に全員行動開始 柚子丸は全力移動で先行 残りは敵を迎撃しつつ先を目指す
③目的地に到着したら森野・柚子丸・雨崎が前に出て戦闘
④殲滅後に指輪と遺体を探して回収

【行動】
説得:【心情】参照

移動:A>B>C
A:敵が全て柚子丸に釣られた場合は全力移動で追う 移動後の行動は柚子丸に合わせる
B:行動不能者が出たら守るように立ち可能ならC
C:敵が間合いに入ったら崩撃
初手フィスト次手あればレガースで手応えの差を確認し以降よく通る方で

秀人の遺体を見たときは、後悔の念と自身への怒りが湧き上がる

広場到着後:
ブラッディクロスで巻き込みを積極的に狙う(味方識別)
地面を叩きつけ破壊のイメージを放射

戦闘後:
遺体の運搬を手伝う

【心情】
「‥‥‥」
香苗にかけるべき言葉が思い浮かばなかった
ここは経験豊富な人達に任せ自分は機械のように冷徹に役割に専念しようと思った

【準備】
全体的な行動は森野の【作戦】に準拠
可能なら二の腕を刀で少し斬り血を流す

【行動】
「少し開けた場所」(以下広場)を目指し腕を押さえて痛がるような素振りでジグザグに走る

A:敵が追ってきたら直線的に走る「かかったでござるな!」

以降尽きるまで全力移動
敵を振り切らぬ程度で攻撃が届かぬ程度に距離を維持しつつ広場を目指す
広場の中をグルグルと逃げ回り後続が追い付くまで時間を稼ぐ
「こっちでござる!」
森野が来た場合は並走して走って貰う

全力移動が尽きた又は広場が狭く逃げ切れない場合は香水を地面に投げて割り回避に専念
「これでも食らうでござるよ!」
森野が居る場合は背中合わせで防戦

後続が追い付いたらCへ

B:一匹も追ってこない「うぅ、修行不足でござるか・・・・」

広場に直行し地面にシールドを突き立てる
盾に隠れながらターン最後にミネルヴァでポイントショット
敵が射程内なら狙撃、外なら適当に森へ
後続が追い付くまで続ける
追い付いたらCへ

C:メイン装備で敵の注意を引く目的で旋空連牙を連発

D:戦闘後、指輪を探す雨崎を手伝う


「若者は無茶をする生き物だが、この状況は……さて困ったね」
 言葉とは裏腹にクリストフ・アイントラウム (la0479)は落ち着いた様子で呟く。
 一方、森野 紫苑(la2123)は弱り切った雅紀の姿に拳を握りしめた。
「くそっ、あの時俺がぶん殴ってでも止めていれば……」
 後悔しながらも気持ちを切り替えるように努める。
 今は何よりもこれ以上犠牲者を出さない事を優先すべきだ。
「俺の来歴は見てるな? こういう荒事にはアンタより慣れてる」 
 紫苑はかつては冒険者として、数々の異世界を渡っていた。似たような状況は経験済みだ。
「悪いがこっからは俺に仕切らせてもらう。ソイツのことは任せるぜ?」
「あなた、自分が言ってること分かってる? つい今しがた新人の暴走で犠牲者が出たばかりでしょう?」
「その通りだ。だからこそ、意見の統一をしておきたい。アンタは雅紀のフォローで手いっぱいだろう?」
 先程の出来事、そして自分が責任を取らねばならない状況において、経歴だけで香苗は納得できない。
 だが現実問題として、雅紀を背負った状態で指揮は困難だし、香苗にそこまでの戦闘能力はなかった。
「香苗君の反対はもっともだ。しかし、むしろ無事に帰還する為に、今は秀人君の作戦を完遂すべきではないかな」
 クリストフの言葉に、香苗が息を呑む。
 今となってはこのような状況だが、元々は十分に勝ち目のある戦いだったはずだ。
 新人ライセンサーを引き連れていたとしても達成可能――そんな作戦が秀人の中にはあったに違いないのだ。
 どちらにせよ、今から逃げたところで攻撃される恐れはあるし、雅紀を背負って素早い敵から逃げ切るのは難しいだろう。
 それに。
「秀人さん、でしたよね。彼を置いていくことはできないよね」
 和やかな声で雨崎 千羽矢(la1885)が言うと、香苗は震える声で呟いた。
「気持ちは嬉しいけど……命を賭けて後輩を守った秀人だもの。あなた達を危険に晒すような真似、きっと望まないわ」
 真っ先に駆け出して、死んだ秀人を回収したい気持ちは、香苗が一番強いことだろう。それを必死にこらえて苦渋の決断を下したに違いない。
 だからこそ、今の彼女は非情かつ冷徹にならなければならなかった。
「だったらなおさら、仏さんを転がしとくわけにゃいかねぇな。こっちも筋を通さねぇと、寝覚めが悪くなっちまう」
「仲間を失うのはもう沢山です。それに僕は……自分の目で確かめるまで、先輩の生存を諦めたくないんです」
 赤城 龍一郎(la0851)と佐藤としお(la0612)がそれぞれ続ける。
「あなた達……」
 しかし、そんな時だ。
「敵襲にござる! 皆、警戒をっ!」
 白勢の柚子丸(la2167)の声にライセンサーたちが身構える。
 彼は香苗にかけるべき言葉が思い浮かばなかった。
 幼い頃から過酷な修行に明け暮れた柚子丸は、こういう時自分が共感を示せない事を知っている。
 だからこそ、鍛え上げた己の役割に徹すると決めていた。
 素早く襲いかかるナイトメアにレガースによる蹴りを合わせる。
 一匹は食い止めることができたが、その他の個体が左右へすり抜けた。
「二匹そちらに抜かれたでござる!」
「大丈夫だよ、私に任せて!」
 小太刀を抜いた千羽矢が、ナイトメアの胴へと斬りかかった。
 一匹の撃退に成功するも、不利を悟るとナイトメアは離れる。もう一匹はとしおが銃撃で動きを抑えた。
 全員が追撃の構えを取るが、ナイトメアは素早く森の中に身を隠す。
 ヒット&アウェイでじわじわとこちらの体力を削っていくつもりだろう。
「このままじゃ好きにやられるだけだ。あの先輩が言ってた『少し開けた場所』ってのに行くぞ!」
 紫苑が周囲を警戒しつつ声を上げる。
「挟撃されるのは厄介だからね。今のうちに先を急ごう。香苗君、走れるかな?」
「ええ……なんとか」
「移動中は僕がサポートするよ。若い子が命を落とすのは、面白くないからね」
 クリストフが二人につくと、ライセンサーも急いで移動を始める。
「某が先行するでござる!」
 名乗りを上げたのは、先ほど奇襲を受けたばかりの柚子丸だ。
 先の交戦で受けたダメージを逆手に取り、大きな負傷を装って敵の攻撃を誘うつもりだ。
「獣の習性は、負傷した者から集中的に狙うでござる。囮としては適任でござろう」
 つまるところ作戦はこうだ。
 囮役がナイトメアを引きつけ、先にある少し開けた広場へ向かい、その隙に全員が広場へ向かう。
 そこへ行けば奇襲を受けにくくなるだろうとの判断で、これは先に戦死した秀人も考えていたことだ。
 柚子丸に重荷を背負わせる事になるが、サポートの用意はある。
「俺が合図を出してやる。ようやくコイツを使う時が来たってモンだ」
 即座に龍一郎が準備にかかる。
 先行する柚子丸を待ち受ける敵に龍一郎が放ったのは、煌々と燃え上る炎を花弁のように舞い躍らせ、一面を覆いつくす――即ち是「咲き乱れる赤」。
 木も土も等しく、灼熱地獄と化した獣道。
 小さな獣人の背を押しながら、
「行け!」
 龍一郎は叫んだ。
 同時に、柚子丸があっという間に消えうせた炎の残骸を踏みつけ、飛び出してゆく。
 その小さな背が木に隠れて見えなくなったことを確認し、残る面々も駆け出した。


 広場へ辿り着いた一同は、その場で凍り付いた。
 そこにはつい先ほどまで言葉を交わしていた、先輩ライセンサーである秀人の死体があったからだ。
「そんな……先輩……!」
「秀人君も気になるが、今は彼を助けないとね」
 ショックを隠せないとしおの肩をクリストフが叩く。
 既に広場に到着していた柚子丸が四体のナイトメアに囲まれ負傷している。
 敵がうまく引っかかってくれたのは良いが、柚子丸一人では手に余る。
「柚子丸君っ!」
 一気に駆け寄った千羽矢が小太刀「五月雨」を引き抜いて背後からインパクトアタックを仕掛ける。
 胴を切りつけはしたが、ナイトメアはそれぞれ飛びのき、再び木の陰へと隠れてしまった。
 敵は四匹。恐らく身を隠しながらこちらの出方を伺っているに違いない。
「立てますか? 今回復しますね」
「かたじけないでござる……」
 柚子丸をとしおが助け起こす。
 両腕だけでなく、足にもかじりつかれ、辛うじて立ち上がるも既に満身創痍。
 敵が誘いに乗ったのはよかったが、攻撃が集中すれば負傷は免れられない。だが意外と広場まで距離が短かったことが幸いし、後続の到着が間に合った。
 としおとクリストフがそれぞれ治療を施す。
「やっぱりこうなりますよね。無茶をさせてしまってすみません」
「某は大丈夫でござる。それより……」
「囲まれてますね。周りに気を付けましょう!」
 としおが声をかけると、ライセンサーらは円陣を組む。
 薄暗い森の中、身を顰めたナイトメアが茂みをうろつく音だけが響いている。
「俺と柚子丸、雨崎は前に出て戦う! 残りの皆は援護を頼むぜ!」
 紫苑の指示に従い、前衛三名が前に出る。
 円陣の中心には闘えない雅紀と彼に付き添う香苗がいる。これ以上の被害を防がねばならない。
 香苗も雅紀も、秀人の死体を目の当たりにしてショックを隠せずにいる。
 もう彼が死んでいるのを二人は知っていたはずだ。それでも改めて目の当たりにすれば動けなくなるほど、死とは強烈なものだ。
「……私ががんばらなきゃ」
 千羽矢は決意を胸に抱き、得物を構え直す。
「来たでござる!」
 柚子丸の掛け声。襲い掛かる敵に千羽矢が小太刀を振るう。
 ガチリと刃と牙のかち合う音。千羽矢は攻撃をいなすことに注力する。そして――。
「動くなよ」
 クーパーT200へ持ち替えた龍一郎が、小太刀にぶら下がったナイトメアへポイントショットを撃ち込む。
 胴へ命中。千羽矢が動きを止めていたこともあり、見事に弾き飛ばした。
「狙撃兵って感じだな。まあ、ヤクザはマシンガンってイメージらしいがな」
「後ろです!」
 抜群の手ごたえを覚えた龍一郎に向けて、としおが叫ぶ。
「これ以上好きにさせるかよ!」
 飛び掛かるナイトメアに紫苑の拳がめり込む。
 広場で秀人の遺体を見た時、彼の胸中に渦巻いたのは後悔と怒りだった。
 戦いとは非情なもので、命は時の運。それも経験で理解はしているが……。
「アンタの借りは、俺が代わりに返してやる!」
「これでも食らうでござるよ!」
 レガースを履いた柚子丸が宙に舞い、大きく身を捩って旋空連牙を叩き込む。
 その個体は地面に叩きつけられた勢いをバネにまた木の陰へ隠れてしまった。
「むぅ……結構しぶといでござるなぁ!」
「また隠れちゃいましたか……ワッ! みたいに脅かされるの、僕は苦手なんですよね……」
「確かにあまり気持ちのいいものじゃないね。だが、隠れている場所がわかっていれば打つ手はあるさ」
 観察していればどこに隠れたのか推測するくらいはできる。
 クリストフは打てる限りの咲き乱れる赤を茂みへ向けて放ってゆく。
 指定地点を中心に爆ぜるこの攻撃なら、多少大雑把な狙いでも命中する可能性はあるし、当たらずとも牽制にはなるだろう。
「派手じゃねえか……嫌いじゃない。付き合うぜ、クリストフ!」
 そこに龍一郎も咲き乱れる赤を発射。これに堪らず、文字通りナイトメアが炙り出された。
「おいそこのお前! 震えるだけか? 死ぬだけか? 手にしているのは何だ? ただの玩具か? 死なせた先輩の代わりに戦えるだろうが。最低でも身を守れ!」
 震えてへたり込むだけの雅紀に、龍一郎が檄を飛ばす。
「お、俺は……でも、俺のせいで……っ」
「んなこたぁわかってんだよ! だがお前はそのままでいいのかって言ってんだ! 男にはキツくても歯ぁ食いしばって立たなきゃいけねぇ時があんだろが!」
 自分のせいで一人のライセンサーを死なせてしまった責任に押しつぶされ、立ち上がることができない。
 だが、彼は震える手で拳銃を取り出すことはできた。
「それでいい。てめぇの弱さを乗り越えられるのは、てめぇだけなんだからな」
「みんな、このまま一気に終わらせるぞ!」
 慌てて攻撃したのが運の尽きだ。紫苑がヴァニタスフィストを大地に叩きつける。
 その瞬間十字に衝撃波が迸り、敵をまとめて吹き飛ばした。
「隙ありでござる!」
 地面を跳ねたナイトメアに柚子丸がミネルヴァP8000の銃口を向ける。
 連続する銃声。放たれた無数の弾丸から逃れられず、ナイトメアが倒れた。
 続けて素早く距離を詰めた千羽矢はインパクトアタックを纏わせた小太刀でよろけたナイトメアを斬り伏せた。
「あと二匹……!」

 オォォオオオン――ッ!

 傷を負ったナイトメアが咆哮する。
 心臓を鷲掴みにされるような感覚。抗いきれない恐怖心。前へと運ぶべき足が、出ない。
「くっ、ここで逃がすわけには……!」
 再びとしおが銃を構え、逃げ出そうとしたナイトメアを狙う。
 だがそれよりも早くクリストフがフォースアローを放ち、逃げようとした個体を貫いた。
「お生憎様。僕は結構、驚かされるのは平気なタイプでね」
 クリストフがとしおにウィンクする。
 積極的な戦闘への参加よりも、落ち着いて状況を観察することを優先していたクリストフは、一足先に対応できたのだ。
「攻守逆転だな。散々追い回してもらった礼……熨斗つけて返してやる!」
「かくれんぼは終わりにしましょう!」
 龍一郎ととしおが最後の一体に銃撃を浴びせると、ギャウンと情けない悲鳴があがった。
 四体のナイトメアすべてが沈黙し、長かった緊張状態も終わりを告げた。


「見つけたでござるよ! ……いたたたっ」
 柚子丸が拾い上げたのは秀人の死体の傍に落ちていた指輪だ。
 死体の近くにあるかと思いきや、少し離れた所に落ちていたのだ。
「一番怪我をしているんですから、柚子丸君は休んでてください」
「うぅ、修行不足でござるか……しかし、某がしてあげられるのはこれくらいでござる故」
 こういう時、慰めの常套句が思い浮かばない自分にできるのは、ただ行動することのみだ。
 としおに回復を受けながら、柚子丸は指輪を香苗に手渡した。
 それは沈みかけた夕日を反射してキラキラと光っている。
「キレイな指輪ですね」
 千羽矢の言葉を聞きながら、香苗はじっと指輪を見つめていた。
 秀人が首から下げていた指輪だ。そういえば、雅紀はチェーンを握っていた。
 恐らく、恐怖に駆られた雅紀が秀人に縋りつき、引きちぎってしまったのだろう。
 秀人はそんな雅紀を守って……。
「彼の最期の言葉は、なんだったのでしょうか」
「……全員で生き残れ、よ」
 呟いた千羽矢に、香苗が答えた。
 生き残れ。
 その言葉と共に握りしめた指輪。恐怖か、悔しさか、悲しみか。香苗の頬を泪が伝った。
「……おつかれさまと、おかえりを、言ってあげてはどうかな」
 遺体を出来る限り綺麗に整えながら、クリストフが呟く。
 ナイトメアに殺害された遺体は当然ながら醜い。それを少しでも繕ってあげようという心配りである。
「そう……ね」
 しかし、香苗は上手く言葉を紡げなかった。クリストフが繕ってくれても尚、目の前の現実に……秀人がもういないという現実に、実感が湧かなかったのだ。
「英雄様っていうのは大事にしないとな。葬儀……は俺たちの役回りじゃないが、きっちり回収してやろうぜ」
「……ああ。遺体の運搬は俺たちに任せてくれ」
 両手を合わせる龍一郎に続き、紫苑が苦々しく呟く。
 後悔は消えない。だが秀人の願い、「全員で生き残れ」という言葉は守れた。今はそれだけでも良しとしよう。
「不躾な質問かもしれませんが、秀人さんと香苗さんは……?」
「あ……勘違いさせちゃったかな? 彼とは何でもなかったの。これもね、彼が無茶をしないようにって渡しただけで……」
 苦笑を浮かべ、香苗は目を閉じる。
「だから、何でもなかったのよ。彼とは……“まだ”、ね」
 婚約者ではなかったし、まだ――恋人でもなかった。
 過去と未来に想いを馳せる。失ってしまった痛みは、簡単に癒せるものではない。
「あの、ちょっといいですか?」
 断りを入れ、千羽矢は固く握り締められた雅紀の手を解き、そこからチェーンを預かり、指輪を通した。
「……これで元通り、ですよね?」
 “彼に渡した指輪”だ。
 それがまるで彼が帰って来たような――やっと二人があるべき形に戻れたような気がして。
 戦いが終わったのだと言う実感に、香苗は涙を浮かべながら微笑む。
「ああ……。おかえり、秀人……助けられなくて、ごめんなさい……」
「ちゃんと生きて帰りましょう。それが、秀人さんの最期の願いなんですから」
「僕達に出来る事があれば何でも言ってくださいね」
 千羽矢ととしおが優しく声をかけると、香苗は「ありがとう」と呟いた。


代筆:神宮寺飛鳥

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