【ゆうドラ】サブフェーズ 3フェーズリプレイ一覧

  1. 陰キャ爆殺! 現実充実拳!(PC参加)
  2. 幻影排除(PC/ユニット参加)
  3. きっと君は来ないのでひとりきりのクリスマス・イブ uh...wow...(PC参加)

1.陰キャ爆殺! 現実充実拳!(PC参加)

●愛をつくりましょう
 特設ステージを囲むように、【遠距離攻撃特化部隊「LRA」】メンバーによってBBQや雰囲気のあるBGMといった準備が整えられていた。
「チキチキ! 第1回ゆうどら合コン、ここに開催を宣言する!!」
 赤羽 恭弥(la0774)の一声に、愛を求める者・肉を求める者たちが拳を上げて呼応する。
「食料はおやつじゃないので予算オーバーセーフ理論。存分にリアルを充実してくれ」
 カップルを現在進行形で成立させ、どんどんリア充を創出しちゃおう作戦だ!
 食事目的の参加や既にカップル成立している面々もいるため、SALF本部より通達された『作戦方針』統一は難しくなったがリアルを充実させる目標が一致しているゆえ許されたい。

 合コンというキーワードに背を押し押され、参加しているのは【【守護刀】】の面々。
 愛を探し求める場であるが『指定席』は、決まっているようで……
「合コンねぇ」
 作法に則って声を掛けるべく女子を探す東海林昴(la3289)の腕を、アリア・クロフォード(la3269)がグイッと引っ張る。
「私が隣にいるのに、今どこ見てたのっ?」
 幼馴染の獣人少女・アリアは、ずっとこの調子。
 曰く『合コンに昴だけじゃ危ないから、私も幼馴染としてついて行ってあげる!』だが、これでは新しい出会いは望めない。
「普段通りじゃねーか」
 昴の隣には、アリア。いつもと変わらない光景。2人の定位置。
 憎まれ口を返しながらもどこか照れくさくて、目を泳がせつつ昴は仲間たちの元へ戻る。
「珍味と酒の追加を持ってきた。こっちは自前のカップル用デザートだ」
 タダ飯の場所と合コンを認識しているラルフ(la0044)だが、今回はナイトメア・イブを倒すという目的があるため行動は積極的だ。
 フリートークを楽しみつつ位置固定している面々へ差入れに登場。
「持ち込んだ酒が切れるところだった、ありがたい」
「ラルフ、カップル用デザートってどういうのなの?」
 不動の夫婦・不知火 仙寿之介(la3450)と不知火 あけび(la3449)が、日本酒とデザートをそれぞれ受け取る。
「説明しよう。1、相手の好きな所を言ってから食べる。2、『あーん』をする」
 表情一つ変えること無く言い放ったラルフへ、夫婦は楽しそうに手を叩き、昴とアリアは硬直する。
「仙寿様は、第一に格好良くて、出会いの時は(略)そして今は(略)もちろんずっと(略) はい、仙寿様! あーん!」
「……うむ、美味い。苺のソースは無論だが、同じように染まったあけびの頬を見ていると格別だな」
 熟れたように赤い唇も美味そうだ。
 (中略)
「という2人を手本に」
 ラルフ、淡々と昴たちへ無茶振りをする。
 昴が迷っているうちに、アリアが先陣を切った。
「えーと、一緒にいて暖かくなるとこかな。お日様みたい」
「え。そうなの?」
「ななななによ、その反応! もう、黙ってカップル用デザート私と食べなさいよ!」
 デザートは、甘くてレモンの酸味が効いた青春の味がした。

 志多 龍一(la2673)、外見年齢31歳。男性。
 厳つい彼の容姿を恐れることなく談笑する相手もいるが、カップル成立には至らない。
 ――そんな中、一心不乱にBBQを堪能する少女が目に留まった。
 彼女の名は、キキ・モンロ。『普通の奴隷』を自称する異世界の娘。
 龍一は、かつて自身が金に苦しめられた闇の時代を思い出す。
 奴隷という概念は、コチラとアチラでは違うそうだが、そうだとしても。
 華やかとは言えない衣装を苦にするでなく、とても幸せそうに止まることなく料理を味わう彼女は――美しい。
「キキ・モンロとかいったか? なかなか可愛いじゃねぇか。どうだ、オレと付き合わないか」
 BBQゾーンには壁がないため、テーブルドンでキキへ迫る龍一。
 2人の距離が、一気に近づく。
「んむ……キキと~、おつきあいなの……?」
 言葉の意味を、キキは串焼きと一緒に咀嚼する。
「いいよなの~。ここのお肉もお野菜も、とってもおいしいの~♪ お兄さんも、キキといっしょに食べるの~~♪」
 あ。コレ絶対伝わってないやつ。
 しかし、美少女から骨付きラム肉を『あ~ん』されて悪い気はしない。
「フッ、オレも男だ。どこまでも付き合ってやろうじゃねぇか」
 食材の枯渇が2人を分かつまで。



●できあがった愛がこちらです
 合コンとは別の場所で、クリスマスを充実させているのはこちら。

 好物は辛い料理だけれど、今日という日は甘いクリスマスケーキを作ってきましたサラ・T・アクランド(la3678)。
 キャンドルの揺れる白いテーブルを、2人分サイズのケーキが彩っている。
 葡萄酒ではなく葡萄ジュースのグラスは1つだけ。らぶらぶなストローが2つセットされていて、お察しである。
 好きなものは『おやつとサラ』そう公言してはばからない、婚約者のあい(la3513)は幸せで今にも溶けそうな顔をしていた。
「とても素敵デス……サラ、2人きりでクリスマスを過ごせるなんて」
 ※周囲にはたくさんの人々がいます
「その、なんていうか、恥ずかしさはあるんだけど……」
 普段はキリッとしているサラが、頬を真っ赤に染めている。
「サラ、口にケーキついちゃったデスよ♪」
「ふあ!!」
 食べさせあったクリスマスケーキ、サラの頬についたクリーム。
 あいがキスをしながらペロリと舐め取る。なんという悪魔的所業。
「サラから愛の言葉が聞きたいデス……」
 とどめとばかりに、仔犬のような上目遣い。
「わっ……、私はっ」
 気持ちを言葉にするのは恥ずかしい。でも、あいに対する気持ちは真実であり、とても深い。
「私も……愛しているわ。あいの角も、髪も、魂も……それに……」
 遠い何処かで、爆発音がした。

「ひまりちゃん先輩ー! めっちゃかわいい、めっちゃかわいい!!」
「えー、ほんまにー? うち、何を着ても似合うやんなぁ。ユーくんも、なんや賢そうに見えるで♪」
「やったネ!」
 学園の制服に着替えて学園デートを楽しむのは、ユウジ・ラクレット(la3983)と桜小路 ひまり(la3290)。
 こんなやりとりをしているが婚約目前の間柄。
「魔法学園なんだろ。折角だから、普通じゃ出来ないデートしようぜ!」
「春の魔法とか使えたりしーひんかなっ。クリスマスに桜の花が咲くのもロマンティックやろ!?」
「はいはーい! 俺、空飛ぶ魔法と花火の魔法を覚えたいでーす!」
 桜の花火を打ち上げて、舞い散る光の中を先輩と空飛ぶ箒でタンデムとかよくない?
 めっちゃええやんー!!
「ビビデバビデブー! 春の魔法よ! ここに! なんてな!」
 満面の笑顔で、ひまりが魔法の杖を振るう。
 しかし魔法は起きなかった!!
 夢オチと公言されてはいるけれど、オチが夢と言うだけであって可能な行動は現実的なものらしい。
「……俺の心に春が来ました……」
 しかしユウジ、心臓を抑えてその場に崩れ落ちる。
「なんでなん!?」
「はー……ほんとパイセンかわいい……」
「立って立って、ユーくん! ……デート、するんやろ?」
「します」
 恋の魔法は発動していますので。
 でも、もしかしたらワンチャン奇跡があるかもしれない。
 杖を振りながら歌いながら、2人は周囲の散策へと出掛けた。
 空間の何処かで、どでかい破裂音が響いた。



●にんげんとは、ふしぎなものである
 ユウジとひまりの後姿を見かけた風花雪乃(la2627)は、形容しがたい胸の痛みを覚えた。
 ああ、少し前は自分と旦那様が同じように制服デートをしていたのに。
 これは正しい嫉妬だ。互いを想い尊重する姿に嫉妬している。
(彼は……雪乃より幻影排除を選んでしまったのよ……!!)
 島内の時間軸はクリスマスだけれど、現実はとうに過ぎている。
 たとえば12月30日は彼の誕生日であり2人の結婚記念日だ。
 それを。それを。
「記念日何回すっぽかすのよー! もう、贈り物もリア充も期待しないわ! ばかーーー!」
 大好きだからこそ、絶叫のおこである!!
「消えちゃうとこじゃないと、言えないもんね。……愛してるーー!!」
 旦那様、雪乃の愛は届いてるー!!?

 合コンで恋愛そっちのけ肉充をする人々。
 散策デートをする若者たち。
 嫉妬を叫ぶ淑女。
 その一部始終を動画に収めている者がいた。
 撮影大好きヴァルキュリア、アストリート(la2029)である。
「人間観察がはかどりますねぇ……!!!」
 チャンスタイムの気配がすれば、西へ東へ駆けまわる。
「ところでメモリの残量は」
 ふと気になって、端末を確認する。
 ……記録、されていない。
 ――この島では、一部の記録装置が正常に動作しないという報告が上がっている――
 どうやら、保存ができない=外部への持ち出しが不可能、ということらしい。
「残らなくても、まあそれはそれとして!! 観察も撮影も続行ですよー!!」
 観察することに意義があり、ファインダー越しに見ることで臨場感が増すのである。
 もはやこれは、観察充と呼んで良いだろう。



●愛 #とは
 炬燵がある。
 なぜかというと、ベル ダンディ(la0809)が持ち込んだからだ。
 ベルは炬燵に入り、紅茶の香りを楽しみ、そしておもむろに呟いた。
「ベルダンディはリア充が分からぬ。自分らしく生きる自分に『ダンディ』と呟けば、それなりに充実するからだ」
 俗に言う、ダン充である。
 それに対し炬燵を共にする美少女エルフ型ヴァルキュリア、トリス・マリアンデール(la0772)が真剣な面持ちで呟く。
「私はロボットなので、究極的には人間と同じ事は出来ません」
 異世界からの放浪者である亜人種がボディのモデルになっているため、容姿も人間とは異なる。
「ですが、良き隣人として寄り添い続ける事は出来るのです。それが人工生命である私が、人に対して与えられる愛なのです」
 リア充。それは具体的な一点を指す単語ではないことだけは、トリスにもなんとなくわかる。
 愛情。友情。SALFから打ち出された作戦方針を見て、トリスは悩んだのだ。
 そして導かれるように、ダンディズムの炬燵へ入った。
「……人類愛も愛に入りますか?」
「無論さ」
 ふぉっふぉっ。髭を揺らしてベルが頷く。
「俺が愛しているのは米だ! 米から作られる日本酒だ!」
 ベルがティーカップへ指を掛けるタイミングで、鐘田 将太郎(la3223)は愛を叫んだ。
 炬燵に一升瓶は、よく似合う。
「これぞ日本人の心、愛国心の象徴だ! これもひとつの愛のカタチ!」
 食い物や飲み物は、恋愛対象になり得ない? 否!
「俺にとっては愛だ!」
「これが……人間の愛なのですね」
 想像もつかぬ奥深さに、トリルは感嘆した。
「和洋折衷、炬燵で紅茶もまたダンディ……」
 なにか特別なことをする必要はなくて、いつも通りをいつも通り過ごすこと。それがリアルな充実って事なんだね。
 ベルの言葉へトリルは安心したように頷き、将太郎は酒のアテとして持ち込んだ自家製の漬物をつまむ。

 愛の懐は広く深く、日常と呼び変えて差し支えないものなのかもしれない。



●友情について示してみないか
 合コン会場のBBQ食材は尽きることを知らない。
 幸せいっぱいに食べ続けるキキの背へ、1人の男が声を掛けた。
「何か……酒か、死んじまった奴に手向ける花とかねえのか?」
 日サロ焼けした、強面の青年。玖珠・一星(la3747)が少女を見下ろしている。
 キキの隣では龍一が食事に付き合っており、いたいけな少女がカツアゲにあっている絵面だ。
「んう~? 食べられるお花はあったかしらなの~……」
「食うことから離れろ」
 難度の高い要求を突き付けながら、一星は事情を説明した。
「……ダチをな、ちょっと思い返したいんだ。酒や花がないなら、テメェの世界のやり方でもいい」
「『リリー・ミーツ・ローズ』なら、お花がたくさんなの~~♪」
 ――『リリー・ミーツ・ローズ』とは植物園である。
 一星は場違いなところへ来てしまった感を抱きつつ、チキンレースで命を落とした友人を想った。
 夢であるように祈るけれど、溢れかえる花の香りが許さない。
「テメェの事は忘れねえ。だから、俺の生きざまを見ておけ」
 せめて、瞳を閉じてあの日を想おう。
 今は亡き友へ。強い強い、友情を馳せる。
 過去を変えることはできないけれど、想いを背負うことで運命を解き放て。

 氷ついていく時間をぶち壊すのは、バスケットシューズとネットを揺らすボールの音。
 長い黒髪を振り乱しドリブルで突き進んでいた銛夜 狩那(la3607)は、マサト・ハシバ(la0581)のディフェンスと対峙する。
「簡単には抜かせないぞ、銛夜」
「銛夜さん、こちらへ!!」
 後方から追い抜いてきた水樹 蒼(la0097)が手を伸ばす。狩那は強行突破と見せかけた股抜きパス!!
 蒼は、確かにボールを受け取った……はずだった。
「あら?」
 しかし、手の中に在るのはバスケットボール大の手作りおむすび。
「ふっふっふ、うちの存在を忘れたらあかんで~。びっくりした? 握るん大変やってんから」
 悪戯っ子の笑みで、泉(la3088)がパスカットしたボールをマサトへ繋ぐ。
「カッコよく決めてや!」
「ふ、ふれー! ふれー! なの、ですー! あとワンゴールで決まるのですー!!」
 応援は紫雲 桜紅(la3132)。小さな体で、全身全霊の応援を。
「これをマサトさんの後頭部にぶつければ時間を稼げ……いえ、食べ物を粗末には出来ません」
 巨大おむすびを手にしたまま蒼が追いすがるも、一歩届かず。
 ガンッ、と衝撃と共に、マサトがスラムダンクを叩きこんで試合終了!
 【【Gullinkambi】】は空きスペースで2on2のミニゲームを満喫していた。
「とても……久しぶりにスポーツをしました……」
 乱れた髪をそのままに、狩那はベンチに座って用意されたサンドイッチに手を伸ばす。
「全力を尽くしてのスポーツは、まさに青春! ですね!!」
 マサトから冷えたスポーツドリンクを受け取って、蒼は満面の笑顔だ。
「えへへ……。皆さん、とーってもカッコよかった、です」
 応援歌を熱唱していた桜紅も、にこにこである。
「休憩を終えたら、集合写真を撮ろう。夢と消えるかもしれないが、残れば良い思い出になる」
 メンバーたちの充実した表情を見やりながら、マサトはデジカメを取りだした。
 保存も外部持ち出しもできないと聞いてはいるが『皆で写真を撮った』記憶は、誰にも邪魔されることはない。
「例えこれが夢でも、俺達の絆は本物、だ」
 ――ドン
 空間の地下深くで鈍い音が響いた。

 不意にステージの照明が変化する。
 しっとりとしたBGMが流れ、スポットライトが中央の青年を照らした。
「つきおりわたるです。これから、マスターへの日頃の愛と感謝を綴った手紙を朗読します」
 小学生の発表会よろしく、月居 渉(la0081)がくしゃくしゃの原稿用紙を開く。
 ――こんなクソガキをいつも愛情深く指導してくれてありがとうございます。
 ――実はすごく尊敬してます!
 ――これからも役に立てるようバイト頑張るね!
「マスター、いつもありがとうございま……ううっ」
 涙で詰まってしまい、最後まで読み上げられない渉。
「はぁん…………っ」
 正面から聞いていた、バイト先のマスター笹良 権之介(la0137)――純粋な60代オネエ、サラちゃん――は胸を打たれ、こちらも号泣。
「歳を取って涙もろくなったわ……。アンタって子は……っ」
「サラちゃん、はいハンカチ」
 鍋底大根鍋をつつきながら渉のスピーチを話半分に聞いていたロレンタ(la0408)が、タイミングよくハンカチを渡す。
「ありがと、ロレンタちゃん……遠慮なく借りるわね……」
「お返しは大根柄でよろしく」
「大根柄の総レースハンカチ、期待していて」
「あっ、俺も鍋食べるー」
 先ほどの涙は何処へ引っ込んだのか。最初から出ていなかったのか。
 渉はステージから軽やかなジャンプで鍋底大根鍋のもとへ。
 深い愛情であり友情であり、大根への敬愛が溶け込んだ最高の出汁をご賞味あれ。



●ありがとう、そして愛を
 宴は終わる気配を見せない。
 クリスマスと言えば! 定番イベントをしっかり遂行しているのは【リラの力添え】。
 慎ましやかで、暖かなプレゼント交換会を開催中だ。
「ボクからは、皆へリボンのプレゼントにゃ♪」
 ローテ=アオゲン(la3095)は、仲間一人一人に色違いのリボンを。
「あら。結んでくださるんですか?」
 フェリシテ(la3287)はくすぐったそうに笑み、少しだけ背を屈める。
「イブちゃん……見えているかい、君が渡してくれた公認申請書を……!」
 メンバーのプレゼントには、イブ宛も含まれていた。
 ここにはいない、けれど見ているだろう彼女へ。
 テラペイア(la3973)は、空に向けて公認申請書をかざす。一房すくって結ばれた金色のリボンが、風に揺れる。
 実は『イヴ=公認申請ちゃん』ではないため公認の喜びをイブは知らないのだが、公認申請ちゃんが慕われている=友情の姿もまた、響くに違いない(ダメージ的な意味で)。
「私からは~、ピアスを贈りましょう~……♪」
 ローテから贈られた緑のリボンをツインテールに結んだニム・ロココ(la1985)が、1人1人の手のひらへ小箱を乗せてゆく。
「これが夢なら思いが形になるかもしれません……、夢が覚めれば、形あるものが思いへと変わるかもしれませんね~……♪」
 普段は中々口に出せないことも形となり、相手に届いて欲しいと祈らずにはいられない。
 ニムがテラペイアから受け取ったのは『フェリシテの絵のジグソーパズル』。
 夢が醒める前に完成させよというのか、愛を試されている。
 ニムの葛藤を露知らず、フェリシテはたくさんの愛を体いっぱいに感じていた。
 ローテが結んでくれた黒いリボンを着けて。
 テラペイアから贈られた、リラの花束を抱いて。
 ニムが贈ったマグネットタイプのピアスを着けて。
 用意してきた感謝の手紙を読み上げる。
「ニムさんのおかげでフェリシテは幸せです。気配を感じるレイ社長にも感謝を。あなたがいなければフェリシテは存在しません」
 フィッシャー社製量産型アンドロイドのフェリシテは、レイの行方も案じていた。他方で、彼ならば無事だろうという予感もあった。
 だから、今は純粋に感謝を伝えたい。きっとどこかで聞いているはず。
「テラペイアさん。ローテさん。いつもありがとうございます」
 それぞれに、それぞれをイメージしたぬいぐるみを手渡ししていく。



●乙女心は複雑なの
 かくして。
 フトゥールム・スクエア特設ステージではBBQやバスケといった目立つ行動の他、仲よくアップルパイを食べたり即興曲で盛り上がったり、ケーキを食べさせ合う姉妹愛だったりと、素晴らしいリアルの充実ぶりを見せつけていた。
 これはナイトメア・イブにも大打撃間違いなし!
 ――しかし。
「……う、うう」
 会場の片隅で、他にもダメージを受けている人物がいた。
「女神たるもの……嫉妬なんて、してはいけないと思いますわ」
 オフィーリア アシュクロフト(la2756)の声は、震えている。
 陰キャ爆殺とは誰が言い出したか。
 リア充は陰キャではないとでも?
 いや、いえ、名家出身で気高き女性であるオフィーリア アシュクロフト(la2756)が陰キャなわけはないし非リアなはずがない。
 『という設定』? いやいやいやいや、オフィーリアはオフィーリアである。
「ですが……何処かの神話の女神は、嫉妬の女神なんて呼ばれているのです」
 血を吐く思いで、オフィーリアは立ち上がる。
「つまり女神だってjealousyを感じでもいいのですわ! そう! jealousy!」
 睦まじく、友や恋人と戯れる姿! 羨ましい!! jealousy!
 これは純然たる嫉妬であり羨望であり敬意である!
 なぜなら、わたくしは女神ですもの。幸せな者たちを爆破なんてしませんわ!
「嫉妬の心は乙女心。決して恥ずかしいものではありません!!」
 嫉妬充、ここに在り!!



●大団円は、輪になって
「……見てるだけなんて、寂しいよね」
 堂々と宣言するオフィーリアを眩しげに見つつ、ソレイユ・フラム(la0139)は金の髪をなびかせて振り向いた。
「ムーン! 私たちでリア充すれば、わざわざ見守る必要なんてないわ!!」
「ソレイユ……しかし、我にはユーゴ殿に託された大切な任務が……」
 『ここでリアルが充実してるか見といてくれ』、死地へ向かったユーゴ・ノイエンドルフからの頼み事だ。
 ムーン・フィッシャーは、親友であるソレイユの誘いに微かな揺らぎを見せる。
 楽しそう、と思っていた。
 見守るだけの寂しさやもどかしさは、イブに通じるのかもしれない。
 そもそもムーンだって、胸を張ってリアルが充実しているとは言い難い。未熟でコンプレックスだらけで自信がない。
 そんな中、ともだちと呼びあえる喜びをソレイユを始めとしてたくさん与えてもらった。
「太陽がある限り月は輝く。私たちが居る限りムーンもリア充なのよ?」
「エミリーちゃんも一緒に。今日が今年最後のクリスマスなら、悔いなく踊りましょう?」
 つい先日も踊り明かした気はするが、楽しい聖夜もこれで本当に最後だろうから。
 ユリア・スメラギ(la0717)がエミリー・ルイーズムの手を取った。
「そうだね! 今日という日は、みんなのために歌とダンスを捧げるよ!」
 エミリーはノリノリで誘いに乗る。
「甘いお菓子やケーキも持ってきたよ。ちゃんと300円以内に収めたからねっ」
 たぶん300円では収まらないスイーツを手に楪 アルト(la3509)が顔を出し、
「キキさん。デザートを楽しみながら、お友達になりませんか?」
 月鏡 由利菜(la3027)がキキを誘う。
「わ~い、デザートタイムなの~♪ とーっても幸せなの~~~♪」
「わたくしもムーンさんとお友達になりたいですわ。もちろん、エミリーさん、キキさんとも」
 優雅な所作で、エリーヌ・ペルグラン(la3172)が手を差し伸べる。
「例え僅かな間の絆であったとしても、わたくしたちは忘れません」
「えっ。私は、とっくにみんなと友達だと思ってたよ?」
「キキもなの~~。おいしいものをいっしょに食べて、うれしいをわけあったら友達なの~♪」
「とても嬉しいです。こうして友情の輪が広がっていくのですね」
 由利菜は持参した楽器を手にリズムを取り始め、アルトのピアノが追い掛け、主旋律を奏でる。
 【【F.A.Lucifer】】による、アニソンメインのダンスパーティ!
 陰キャも陽キャも胸躍る、疾走感のある曲をチョイス。
 作品を知らなくても楽しい気持ちになれるのがアニソンパワーである。
「一緒に歌お?」
 アルトの天真爛漫な笑顔が背を押した。
「我は! リア充するぞー!!!」
 勇気を出して、ムーンは友たちの輪へダイブした。
 
 アニソンがクライマックスを迎えて。
 クリスマスアレンジなんかされちゃったりして。
 この時ばかりは、誰からと言わず手を止めて。

「「ハッピー・クリスマーーース!!」」
 \クラッカー・パーン!/


 それは盛大な現実充実砲として、ナイトメア・イヴの力を弱めたに違いない。
 我々はリア充を心置きなく謳歌した。
 後は頼んだ、同胞たちよ!!

リプレイ執筆
佐嶋 ちよみ

リプレイ監修
WTRPG・OMC運営チーム

文責
株式会社フロンティアワークス
  1. 陰キャ爆殺! 現実充実拳!(PC参加)
  2. 幻影排除(PC/ユニット参加)
  3. きっと君は来ないのでひとりきりのクリスマス・イブ uh...wow...(PC参加)