オープニング詳細|WTRPG11 グロリアスドライヴ
  1. グロリアスドライヴ

  2. SALF本部

  3. 【堕天】奈落を踏み砕く足と成れ

連動 【堕天】奈落を踏み砕く足と成れ ガンマ

形態
ショート
難易度
普通
価格
1500(EX)
ジャンル
堕天 特務  
参加人数
83~8人
予約人数
10010100
基本報酬
220000G
220SP
2200EXP
おまけ報酬
20000G
相談期間
4
締切
2019/05/10 20:00
完成予定
2019/05/25 20:00
機体使用
関連シナリオ
-

●Durante
 ロシア某所。
 ノヴァ社、アサルトコア開発研究所。
 広い広いフィールドに、見慣れぬ機体が四機ある。

 ギラガースに比べれば装甲は少ない。
 二対の翼のようなユニットに、随所に付けられたジェットノズル。
 一見して天使のようにも見える機能美を持つが、どこか禍々しさがあった。

「ノヴァ社最新作アサルトコア『ダンテ』。……奈落と至高を踏破する意味を込めて」

 ノヴァ社所属のエージェントが、集められた君達にそう言った。
 インソムニア『ネザー』より回収された人型兵器ナイトギア。それに用いられていた亡世界の技術をサルベージ・解析し、ノヴァ社が造り上げた試作型アサルトコアだ。
「……ナイトギアのように、燃料に悪辣なものは用いられておりません。そこはご安心ください」
 ナイトギアの燃料は人間だった。人間の感情を刺激――恐怖させ、そのエネルギーを使い潰す禁断の兵器だった。
 ダンテにはそのような仕掛けは当然ながら施されていないことを、エージェントは淡々と告げる。
「この『感情刺激による高出力』を再現しました。ダンテは搭乗者の感情に負荷をかけることで刺激し、IMD出力を高めます。どのような感情に偏るかはパイロットによりまちまちですが、凡そ『憤怒』『憎悪』『恐怖』に分かれます。感情ではなく幻痛として発露する場合も報告されております」
 エージェントの言葉に、君達は顔を見合わせただろう。

 ――そのようなシロモノ、大丈夫なのか?

「課題は、あります。ゆえに試作段階なのです。正直、人道的問題に接触しているでしょうね。『インソムニアから手に入れた技術を用いるなどいかがなものか』『パイロットの精神を消耗させるような兵器ではないか』……」
 エージェントは眼鏡を押し上げ、静かに告げた。

「プライドで命を守れるか? ――Нет(いいえ)と告げられる者にこそ、この機体は相応しい。
 汚泥にて這い足掻き、薄汚れても勝利を渇望する。そのような者にこそ、このダンテは相応しい。
 幾つも喪い、傷を負い、それでもまだ護りたいと叫ぶ者にこそ、ダンテのパイロットに相応しい!」

 ダンテの物々しさの正体に、君達は気付くことだろう。
 報復と復讐の化身。犠牲を背負い明日を拓く、煉獄の意地。

「確かにダンテは不安定です。上手く操縦できる者は非常に限られています。だからこそ、実験を重ねて洗練していく必要があります。その為に、皆様にはダンテを用いて軽い模擬戦を行って頂きたく。
 ああ、機体を損傷し合うような激しいものでない、あくまでも模擬戦でお願いします。勝敗を追求するよりも、あらゆる戦況を想定した、データの取れるものが理想的です」
 さて、とエージェントは君達を見渡した。
「まずは四名。ダンテに搭乗する意志のある方、どうぞ一歩前へ」


●模擬戦開始!
 ダンテの中は一般的なコックピットと変わらない。強いて言うのならばやはり兄弟機であるギラガースと似ているか。
 だが、想像の力を流し込んで起動した途端――パイロットの精神が熱く大きく脈打った。
 精神の負荷。即ち、ある一点に感情を偏らせることで想いの力を高める機能。衝動の発露、エゴの解放。『憤怒』『憎悪』『恐怖』もしくは『幻痛』……。
 理性が消滅するほどではないが、獣のような衝動が内から沸き上がるのを感じるだろう――。

 ――心が蝕まれることを代償に。
 ダンテは大いなる破壊力を秘めている。
 活火山のような激しさだ。狂犬のような獰猛さだ。

 それを制御し乗りこなすことができるかは――君達にかかっている。

「――アサルトコア:ダンテ、起動実験開始!」

●目標
アサルトコア:ダンテの試運転を行う。

●状況
アサルトコア同士で模擬戦を行う。
4:4で分かれ、ダンテに乗る側、いつものACに乗る側に分かれること。
プログラムは前半戦、後半戦で分かれる。
後半戦では、前半戦と役割チェンジ。
前半戦でダンテに乗っていた者は、後半戦ではいつものACに搭乗。逆の者はダンテに搭乗。
全員一回ずつダンテに乗れます。
前半戦と後半戦の間に大休憩が入るので、損傷やらはその間にサクッと修理される(生命減少は発生しない)
ガチ戦闘ではなく、勝敗にはこだわらない手合わせが相応しい。
現場はロシア某所、ノヴァ社の研究所の広い運動場。日中。晴れ。

●アサルトコア:ダンテ
試作品故にデータとしての数値は不安定。毎ターン数値が変動すると認識して欲しい。
翼のようなユニットを持つが飛行にはプレーンブースターが必要。1つ搭載済み。
武装については搭乗者ACに装備されているメイン武器を用いるものとして扱う。
各所に装備されたブースターによる、爆発的破壊力を誇る超攻撃型アサルトコア。
その代わり不安定で命中回避低。
防御力は並程度だが、下記の要因から耐久や長期戦は不向き。
毎ターン終了時、生命に3d6の実ダメージ。精神負荷による摩滅。
安全装置として、生命力が1になった時点で機能停止。

▽機体スキル「コード666」
アクティブスキル。行動ステップの直前に宣言でき、手番を消費しない。1シナリオ一回のみ宣言できる。
3T継続。毎ターン終了時に減少する生命が、3d6から6d6に変更される。
物凄く攻撃力が上昇&命中力がそこそこ上昇。そのかわり、暴走状態(あらゆるリアクション=「回避、対抗スキル使用、射線妨害、防御」が行えない)になる。

▽機体スキル「過負荷暴走」
パッシブスキル。
生命が半分以下になると更に攻撃力が倍増する。「コード666」と倍率効果累積。
その代わり、常に暴走状態となる。

 こんにちはガンマです。
 破壊の狂犬となるか、知性の怪物となるか。
 ダンテが惨めな失敗作になるか、戦史を塗り替える怪作になるかは、参加者の皆様にかかっています。
 大事なのは乗りこなすという強い意志。
 よろしくお願い申し上げます。

  • 竜殺し
    七瀬 葵la0069
    放浪者14才|ネメシスフォース×セイント

■アドリブ、台詞作成ご自由に

■ダンテ評価
「……ん、生命が行動の度に減るのは、使いにくい。コード666を任意の時間発動できる、方が、いいかも?」
 →通常行動時は若干能力低いアサルトコア
 →「コード666」からターン制限を無くし、任意のタイミングで停止可能にする

「……あと、ダンテは他のアサルトコアと連携して、初めて真価を発揮、する。ダンテばっかりだと、使いにくいし、ダンテばっかりの戦場とか、ありえない」
「……ん、だから、次にデータ取る時は、ダンテと他のアサルトコアの混成編成の方が、現実的」

■模擬戦(前半)
 FF-03(みけきゃっと)に搭乗。
 勝手に自滅するので、相手が進もうとする方向にバルカンを斉射して牽制&引き撃ち。
 回避及び生存を優先して、積極的な行動より「相手の行動を邪魔する」事に専念。
「……ん、避けるのと邪魔する事に、集中すれば、勝手に自滅、する」

■模擬戦(後半)
 ダンテ搭乗。『幻痛』かな?
 装備として同じくバルカン。ダンテの特性は『やられる前にやれ』
 「コード666」は初手発動。バルカンの特性を活かして薙払うように面制圧の掃射を行う。
「……ん、生理痛の、ちょっとキツいやつ。みたいな感じ?」
「……チマチマやって削られるより、最初から全力で動かす方が、いい、かな」

  • 盾界のフロンティア
    星杜 望la0072
    人間12才|ゼルクナイト×セイント

アドリブ○
これが実用化出来たら…ナイトメアとの戦いがこれまでとかわる…でしょうか
平和を取り戻すためなら僕は頑張れます

■模擬戦
皆さんの行動予定伺ってから行い試す項目邪魔せぬ様動く
★後半戦でダンテ搭乗
前半戦の様子を己のダンテ搭乗時参考にする
機体スキル使用後特に注意し観察
暴走をどう上手く使うか
制御できている機体相手に有利な状況作れるか
暴走がデメリットにしかなってない場合
それを克服するにはどうしたらよいか…
パッシブ暴走になる頃合いは…等

*前半戦
暴走前
命中回避低との事なので
まずはライフルで仲間との連携なしに撃ってみる
次に仲間の攻撃タイミングに合わせて同時攻撃で撃ってみる
更にダイブモード使用で一回ずつどうなるか
ランスで近接戦闘時仲間の盾になり既存機体で耐えれるか
暴走後は対抗でダイブ使い回避の難易度体感
ブースターで空中戦も

*後半戦
暴走前白兵と射撃どっちが動きやすいか試す
1:1から対多数迄様々なパターン前半で不足したシーン中心
生命半分手前で仲間壁にできる後方下がりブースターで飛行
自傷又は毎ターンの減少値での過負荷暴走試み更に666使用
暴走でもそこそこな命中カバー試みる太陽を背にして行う射撃攻撃放つ
射撃が当たらぬなら白兵に切り替え突撃
暴走重ねがけでどの程度継続戦闘行えるか
離脱できる余裕作れるか試す

・ダンテ搭乗時精神『恐怖』
根拠のない家族を失う、そも家族なんていなかったかのような恐怖に襲われる
こんな感情は知らない、何故、
そうだ、これをきちんと乗りこなさなくては
本当に家族を失う未来があるかもしれないのだ
これは未来への恐怖、そう己に言い聞かせる
恐怖からは逃げない
その恐怖を現実にしない為、僕はこの力を制御してみせる!

  • スポークスマン
    鈴鴨la0379
    ヴァルキュリア15才|ネメシスフォース×スナイパー

【心情】
凄惨な同胞の姿と齎された情報に言葉を失った
復讐や報復等の激情を自身はまだ知らない
ただ、彼女の赦しを求める慟哭に少しでも未来への意味を持たせられるならば
「これが使命感というものでしょうか」
【目的】
ダンテのテストデータ収集
【行動】
前半搭乗組となる
射撃攻撃での立ち回りをメインに4:4での模擬戦を行なう
この機体で狙撃する余裕があるか等、射撃戦の可否を検証
当てることを考えるなら接近後に突撃銃での近距離射撃がメイン手段か
実際の火力と追いかける為の移動力を中心に検証
短時間の超火力が特徴と考える為生命が半分を切ったらスキル全部乗せの火力を試す
遮蔽物や的が準備可能ならそこへぶっ放す
スキル発動時は事前に参加者に注意を促し、暴走時の感情変動を警戒して意識を強く持ち直す
「ただ一人だけは、何があっても必ず道連れにしてみせる。…そういう機体な気がします、これ」

ダンテに乗っている間は口調を作る余裕が無さそうなので一人称僕のやや砕けたですます調
声も恐らく大きく荒くなりがち

  • 我が脚は昏き氷を砕く光刃
    柳生 響la0630
    人間16才|グラップラー×セイント

※アドリブ大歓迎!

【心情】
「こいつがあれば、あいつらに勝てるかもしれない・・・」
名古屋の大規模作戦を思い出す

【目的】
ダンテの試運転を行う

【行動】
模擬戦は前半戦にダンテに搭乗
「一番先にいきたいです」

ダンテ起動と同時に『憎悪』の感情が増幅するのを感じ
「こいつは良いな!
 あの時を忘れずに済む!!」
ギラギラとした目で相手を見つめ

武装はソードを使用
僚機と足並みを揃え、突っ込んでいく

敵機に接近したら早速「コード666」を起動
ゴリゴリと精神が削れるのを感じ
「ふふ、お前はとんだじゃじゃ馬だな!」
「良いぞ、乗りこなしてやる!!」

模擬戦では攻撃性能を検証していく

大休憩の際、後半組にダンテの感想を告げる

「集団戦で道を切り開いていく爆発力と対ボス戦の切り札となり得る衝撃力」
「良い機体だ!」

後半戦は自機に搭乗
思念式展開装甲を使用し、積極的に攻撃を受けに行く

  • スターゲイザー
    エドウィナla0837
    放浪者12才|ネメシスフォース×セイント

「ナイトギアの技術を使っておいて飛べないのか?」
重く見ている者も多そうなのであえて軽口を
「冗談だよ。どんな新技術もまずはシンプルに使う。賢明な判断だ」
その積み重ねこそ、いつか星に至るのだから

前半:ダンテ搭乗
もし元よりの憎悪を掻き立てられるなら、それは自由の剥奪、即ち束縛に向けて
そして今彼女を最も縛り、夢から遠ざけるモノは
(成る程。今すぐにでも、この忌々しい重力を振り切りたいーー!)
「……Wart,Dante.まだ我慢だ。」
感情と意思をはっきり分ける
仕事なら、愚痴を吐きながらでも、口笛を吹きながらでも、手の動かし方は変わらない。
それと同じように。
味方を見る。敵を見る。フォローに入り、出鼻を挫く。
味方を見る。敵を見る。動きに乗じ、隙をつく。
やることは変わらない。
過負荷暴走発動後、コード666とプレーンブースターを同時に使用
「さぁ、ご褒美だぞダンテ!」
ジェットノズルと空中戦の相性を確認
コード666解除後、飛行時間に余裕がある内に着地

後半:既存機体
基本的には味方のフォロー、どれだけダンテが対応出来るかの確認
相手の暴走中は回避重視

「やはりロクに回避もままならないのはな。大火力もそうだが、捕食や寄生を易々と許すぞ?」
「アイツ、ACも気に入ってる様子だったからな」
「道を究めんとする者としては一流だ。殺意もだが、敬意も忘れるな」

  • 酒呑童子
    神風 初春la2689
    放浪者10才|ゼルクナイト×ネメシスフォース

ダンテ搭乗後半

「さて、感情を糧に動くというが、負の感情は確かに強いが、悪趣味かつ堕ちる引き金となりかねん危険さがあるわけじゃが…しかし随分と早く解析できたのじゃな」(怪しみながら)
前半にて武闘刀牙で戦闘の際はダンテ搭乗者に対する挑発行為を行い、ヘイトの集めやすさがどれだけ変わるか(自制がどれだけ働くか)を調べてみる
「ほれ、避けるなど其方は弱者か?弾幕に突っ込んで来てよ、ほれほれ」
(ライフルで弾幕を張りながら挑発して回避するか突っ込んでくるかを見る)
他の人が相手してるダンテにちょっかいをかけて反応を見る等の現在のデメリットポイントを探してみる。

後半・ダンテ搭乗
「さて、久方ぶりに獣の本性を出してみようかの、にひひ♪」
乗りながら押し寄せてくる感情に身を任せる
「思ったよりは飲まれんか、じゃが……ああ、暴れがいがありそうじゃの♪」(ニヤリ)
機体からくる破壊衝動に身を任せて戦闘。ただ手近な相手に対してライフルによる射撃(狙いは荒い)による攻撃を行いながら接近。弾を撃ち尽くしたらライフルの銃身を持って銃床で殴りかかり、その後はコード666を使いソードに持ち替えてがむしゃらに斬りかかり暴れまわる。


戦闘終了後
「違うんじゃ、妾はもっと理性的なんじゃ、あんな獣性は持ってないのじゃ」(頭を抱えやけ朱塗りのマイ盃で持ち込んだ各種酒をがぶ飲みしながら)

  • 牙持つ闇
    花咲 ポチla2813
    放浪者14才|ネメシスフォース×スナイパー

「控えめに言って……欠陥兵器ですわね」

ゴミと言わなかっただけ控えめである
でも実は楽しみでもある
無理やり感情を揺さぶる兵器というのは
『人間』の心の輝きを増やす事に繋がるのでは無いかと期待

ダンテには後半で乗る

◆目的
ダンテの限界を見たい
前半はダンテの最大の欠点を浮き彫りにする
後半は最大の利点が欠点を補えるか確かめる

◆行動
前半はまともに攻撃せず
全力で相手から離れるように逃げ回り
ダンテ班の精神負荷による機能停止を狙う
移動と回避が落ちるので飛行はしない

後半はライフルで攻撃
基本的に1対1では戦わず
火力を集中させるため味方が攻撃している敵を自分も狙う
過負荷暴走状態になったらコード666発動
ここから先は全力で相手に突っ込んで攻撃
相打ちで良いので最低でも1機は落とせる事を示す
飛行は攻撃が相手に届かない時のみ

◆意見
せめて戦闘外の移動は精神負荷無しででき無いと話にならない
自力で戦場まで辿り着けない兵器など
飛行機にぶら下げた爆弾とどう違うのか

ピーキー過ぎてこの機体のみの運用は無理
最低でも壁になってくれる仲間が必要
乱戦よりも巨大な1体の敵を火力に任せて落とす場面に向く
近接武器よりも命中と射程が異常に高い射撃武器が向くはず

自力では勝てない敵に相打ち上等で突撃するような
格上殺しとなれる可能性はある
欠陥品とは言ったが攻撃力の上昇倍率にもよるが無くすのは惜しい
生命力を強制的に半分にして過負荷暴走も自分の意思で発動できるようになれば
3Tだけの超短期決戦兵器としての運用が可能かもしれない

◆その他
精神負荷は『幻痛』で
指一本一本の生爪を剥がされたり
肋骨が圧し折れて臓器に刺さるような痛みを感じたり
久しぶりに感じる拷問レベルの痛みなら
自分の感情もきっと揺さぶられるはず

「ダンテ……欠陥品では無い貴方の輝きを見せて下さいな」

制御無き感情は思考の亡失に、思考亡き行動は愚行の呼び水に。
はてさて、この鉄砲玉を乗りこなせるか否か…。


【準備】
●不測の事態に備えヒール系スキルを一応

【行動】
●前半戦にてダンテに搭乗
●最序盤は操縦特性の把握に努める
●標的背後を目指す一点突破の吶喊を行い、一撃離脱を繰り返す戦法を試行
●戦闘中は戦闘力そのものより継戦能力への所感を査定
●特にシステムによる搭乗者の思考や冷静さへの干渉具合を詳しく
●搭乗者生命半分で「コード666」使用、一撃離脱せずそのまま白兵戦を試行

●後半戦では懐に突っ込まれると不味しと、距離を保った戦いを意識
●一点突破や一撃離脱に注意し遠距離での削り倒し戦法を敢行
●コード666発動確認により此方から吶喊、真正面の殴りあいへ
●相対した際の注視点は細かく記録

●搭乗時・相対時の所感は纏めて報告

※諸々アドリブ等OKですの

●煉獄の意地

「控えめに言って……欠陥兵器ですわね」

 配布されたスペック資料を捲りながら、花咲 ポチ(la2813)は溜息のように言った。ゴミと言わなかっただけ控えめである。
 ノヴァ社最新作アサルトコア、ダンテ。未だ試作機であるそれは非常に不安定で、データ不足。運用上の課題も多く、完成度は決して高いとは言い切れない代物だった。
 それでもポチは楽しみであった。だからここに来たのだ。
(無理矢理、感情を揺さぶる兵器――)
 それは『人間』の心の輝きを増やすことに繋がるのではないか? そんな期待が根底にある。
 対照的に、神風 初春(la2689)がダンテを見る目は疑念のそれだ。
「感情を糧に動く、か……。負の感情は確かに強いが、悪趣味かつ堕ちる引き金となりかねん危険さがあるわけじゃが……しかし随分と早く解析できたのじゃな」
 その言葉に、明らかに睡眠不足な技術者達がコーヒーを片手に「頑張りました」とゲッソリ得意気に微笑んだ。彼らをここまで駆り立てるほど、インソムニア『ネザー』『エンピレオ』は憎き敵なのだろう。
 なにより――ロシアは『ナイトメアの侵攻に対してアサルトコア導入の対応が遅れた』がゆえに、『国軍と経済に壊滅的な被害を受けた』経験があるのだ。
 チンタラしていては過去の二の舞だ。それを、ノヴァ社の一同は心に刻んでいるのだろう。
「……だとしても少々ブラックなのではないか!? ブラックなのはコーヒーだけにってやかましいのじゃ!」
 ノリツッコミもできる獣人である。

 兎角、この機体に込められている想いは非常に重い。それは確かだ。

(制御無き感情は思考の亡失に、思考亡き行動は愚行の呼び水に。はてさて、この鉄砲玉を乗りこなせるか否か……)
 十八 九十七(la3323)は静かに、未完の大作を見つめていた。
「ナイトギアの技術を使っておいて飛べないのか?」
 スペック確認をしていたエドウィナ(la0837)が片眉をもたげる。だが直後には肩を竦めた――物々しい空気をほぐす為の軽口であるがゆえに。
「冗談だよ。どんな新技術もまずはシンプルに使う。賢明な判断だ」
 その積み重ねこそ、いつか星に至るのだから。――エドウィナは、ダンテのまだ飛べぬ翼に可能性を抱く。

「こいつがあれば、あいつらに勝てるかもしれない……」
 柳生 響(la0630)は名古屋の大規模作戦を思い出す。
 似たような思いを、星杜 望(la0072)も抱いていた。
「これが実用化できたら……ナイトメアとの戦いがこれまでと変わる……でしょうか」
 平和を取り戻すためならば。望は真剣な眼差しで、深呼吸を一つした。

「これが使命感というものでしょうか」
 鈴鴨(la0379)が思い出すのは、ダンテの元となった機体、ナイトギアのことだ。
 ――凄惨な同胞の姿と、もたらされた情報に言葉を失った。
 けれど『復讐』『報復』の激情を、機械の体は未だ知らず。
 ただ、彼女の赦しを求める慟哭に、少しでも未来への意味を持たせられるならば――そんな想いが確かにあるのだ。

「……ん、じゃあ、そろそろ始めよっか」
 準備体操をしていた七瀬 葵(la0069)が言う。
 響は頷くと、一歩前に出ながら手を挙げた。

「一番先にいきたいです」



●前半戦
 四機のダンテにまず搭乗したのは、鈴鴨、響、エドウィナ、九十七であった。

「――アサルトコア:ダンテ、起動実験開始!」

 ノヴァ社エージェントのかけ声と共に、ダンテと搭乗者の思念的接続が行われる。
 瞬間だ。「ドクン」と、パイロットらは何かの昂ぶりを感じることだろう。

 響に発露したのは『憎悪』だった。
 憎い。憎い。憎い。憎い。許せない。赦しはしない――!
「こいつは良いな! あの時を忘れずに済む!!」
 ドス黒い衝動に、双眸はケダモノめいて爛々と。
 それを映すかのように、響のダンテがギラリと――初春のMS-01J『天狐牙威騎装:武闘刀牙』を睨め付けた。
「ダンテは耐久戦が不得手。ならばやることはただ一つ、短期決戦一撃決殺ッ! かッ飛ぶぞ!!」
 響の獰猛な叫びと共に、ダンテのブースターが思念の力で唸りを上げた。
 爆発的な機動による吶喊。一瞬で響は武闘刀牙との間合いを詰めた。
「コード666――起動ッ!」
 漲る衝動に委ねるように、響は獣の数字を起動する。脳が沸騰するような熱さが全身を駆け巡る。焼き切れるほどの衝動が響の頭を支配する。憎い憎い憎い壊せ壊せ赦すものか赦すものか!
「がアッ!!」
 アサルトソード「リーネア」が鉄槌めいて振り下ろされる。
(速い!)
 初春は咄嗟に機体を跳び下がらせんとするが、イマジナリーシールドに切っ先が抉るように掠める。凄まじい威力に、「ほう」と初春は感嘆の息をこぼした。
「さながら荒れ狂う鬼よな。ほれ、斯様に猛り狂うて、よもやすぐ倒れ伏すなどあるまいな?」
 そのまま跳び下がりつつ、武闘刀牙が向けるのはG37アサルトライフルだ。引き金を引けば弾丸が放たれる――衝動に支配された響は回避行動を取ることもできない。
「避けることもできぬか、ほれほれ、しからば突っ込んで来い、鉛玉の雨の中に」
 初春の言葉は響を貶す意図での発言では決してない。ダンテのパイロットが挑発を前にどれほど自制できるかを確かめる言葉だった。
「ふ、ふ、アハはッ――」
 響は肩を弾ませながら、血走る目で眼前の相手を見澄ました。
 精神が瞬く間に削られていくのを感じる。
 つぅっ、とその鼻から血が伝った。
「ふふ、お前はとんだじゃじゃ馬だな!」
 歯列を剥いて笑い、響は無造作に手の甲で鼻血をぐいっと拭った。

「良いぞ、お前のマスターはボクだ――乗りこなしてやる!!」

 その眼は衝動に駆られつつも、確かな自我と理性が残っている。
 乗っ取られるのではない。乗っ取られてはいけない。乗りこなすのは、パイロットだ。
 ゆえに挑発になど左右されない、されはしない。

 脳から噴き出した激情は、指先爪先細胞の隅々にまで行き渡る。
 染めていく。圧倒する。感情の嵐だ。

(なるほど。今すぐにでも、この忌々しい重力を振り切りたい――!)

 エドウィナの心から突き上げられるように噴き出す衝動の名は『解放』だ。それは自由の剥奪、束縛への憎悪である。そして今エドウィナを最も縛り、夢から遠ざけるモノこそ、忌まわしきこの重力だ。
 ひらりひらり、胡蝶のように間合いを開いて逃げるポチのMS-01J。それを見ていると、エドウィナは操縦桿を握る手に筋が浮かび白むほどの感情に駆られる。あんな風に軽く。いっそ速く。音も光も置き去って。あの空へ――宇宙へ――!
「……Wart,Dante.まだ我慢だ」
 深呼吸を一つ。感情と意思をハッキリ分ける。
 仕事なら、愚痴を吐きながらでも、口笛を吹きながらでも、手の動かし方は変わらない。それと同じように。
 味方を見る。敵を見る。連携をする。出鼻を挫き、隙を突く。それが基本だ。やることは変わらない。
 エドウィナは斜め前へと一気に跳んだ――それは鈴鴨のダンテへC-203アサルトバルカンで攻撃をしたFF-01『みけきゃっと』の射線を塞ぐ。
「ふ、」
 エドウィナのダンテの盾は削れるが、それは鈴鴨の攻勢へのスイッチになる。
「行け! 一気に間合いを詰めろ!」
「分かり――ました……!」
 答えた鈴鴨の声は絞り出すようなそれだった。
 ヴァルキュリアである彼の中で渦巻き噴き上がるのは業火の激情、鉛の恐怖。そして機械の身では感じたことのない『痛み』。
「う う うぅうぅううう……!」
 特に痛みが、鈴鴨の動きを鈍らせる。処理しきれない感覚に体が震える。人間で言うと、皮を繊維を肉片を熱されたペンチでゆっくり丁寧に毟り剥がされているような。脳味噌が沸騰して泡立って暴れているような。人間だったなら「痛い!」と叫んでいたのだろう。だが鈴鴨はその感覚の表現方法を知らない。知らないからこそ、混乱している。
「――! ――!!」
 痛みに震えながら、言葉にならない叫びを上げながら、鈴鴨は葵のみけきゃっとへ間合いを詰めんとブースターを噴かせた。猛加速――だが上手くコントロールできず、葵を追い越してそのまま地面に倒れ込んでしまう。
「……ん。ダンテ、なかなか移動力は、あるね」
 鈴鴨へ振り返り、再びバックステップで間合いを開きながら、葵はそう感想を零す。
 だが精度の方は粗削りだ。響の動きを見るに、命中を安定させるのならば、現時点ではコード666前提か。
「くそっ――くそっ!」
 鈴鴨はダンテで立ち上がりながら、待ってくれている葵の方へ振り返った。実戦だったなら、葵が本物の敵だったなら、今の隙でやられている。
「成功させるんだ……ダンテの開発を。届かせるんだ……ナイトギアとそれを生み出した者へ!」
 自らを鼓舞するように鈴鴨は声を振り絞る。
「ソラリスさんは……もっと辛かったんだ……! 彼女の決意を……無駄にしたく、ない!」
 使命感。それを以て、鈴鴨は自らの心を強く律する。
 思念の力をダンテにみなぎらせた。飛べぬ翼に推進力を生み出し、今度こそみけきゃっとに肉薄する。
「…… !」
 鈴鴨のG37アサルトライフルの銃口が、みけきゃっとの思念の盾にぶつかった。
「コード666、起動します!」
 一気に負荷をかける。鈴鴨の視界にノイズが走り、理性が焼き切れそうな衝動と激痛とが駆け巡る。
「――っッ……あァああああああッ!!」
 鈴鴨はその身を軋ませながら、咄嗟に銃口を彼方の地面にずらしてから引き金を引いた――地面に抉られたような大穴が開く。

 ――過負荷暴走とコード666の攻撃性は凄まじい。

「だァあああああらっしゃあああ!!!」
 九十七は憤怒にその身を染め上げ、望の機体MS-01J『望月』にB02アサルトライフルを猛射する。片時も足を止めず、常に相手の背後を狙う。
 だがそれは、ダイブ・モードを起動した望月を捉えられない。
「ッがぁああクソ! クソが! これじゃ――こんなんじゃあ――……!!」
 反撃に飛んで来る弾丸、思念の盾から伝わる振動に九十七は歯列を剥いた。
 ダンテの攻撃性は十二分、だが不安定。どれだけ強くても当たらなければ意味がない、当てなければ勝つことはできない、何より今この時も搭乗者の精神は摩滅しているのだから。
 心を真っ赤に染める怒りに肩を戦慄かせつつも、九十七は自らに「冷静に」と言葉を投げかけ続ける。自らを失わぬように努めていなければ、思考も冷静さも蝕まれて燃え尽きそうだ。逆に言うと、人であることを自ら証明し続けていれば、仲間との会話や連携は可能であるということ。
(ならば。更なる怒りを以て、深淵を覘き返すに良しですの)
 ナイトギアをこの目で見た身としては。
 これを不格好な失敗作になどしたくはない。

 勝つ為に手段は選ぶな、そうだろう?
 負けるとまた喪うぞ、分かってるだろう?
 あの冷たい雪の夜を思い出せ!
 燃え尽きてでも勝ちたい、もう失いたくない、失われたものが無為でなかったと証明したい――これはそういう機体なのだ!

「ダンテッ! しからばッ! 正義と復讐に意義と価値をッ!!」

 弾が尽きた銃を投げ捨て――過負荷暴走。獣の数字を起動する。
 手を地について低く構える姿はケダモノさながら。瞬間、爆発的な勢いでダンテはポチの機体に躍りかかる。叩き付けられた拳が、MS-01Jの思念の盾を波打たせた。
「! ……」
 その絶大な破壊力に、ポチは一瞬だけ目を大きくした。それは期待だ。ここで本気の死闘を、なんて戯れが脳裏を過ぎるもそれは我慢だ。

 ――激情が、痛みが、いっそう人とダンテを一つにする。

 握り締める剣の感触が、生々しいほど響の手に伝わって来る。
 響は燃え尽きそうな意識の中、武闘刀牙を視界に収める。
 込み上げる――込み上げ続ける心の炎を、全て力に。

「あぁ、良い子だ。ボクの期待に応えようとしてくれるんだな。……共に行くぞ、怨讐の彼方に!」

 響はダンテの操縦桿をしっかりと握り直すと、最大の破壊力を込めた剣を叩き下ろす!
「なんのっ……!」
 そこへ割って入るのは望だ。アサルトランス「マフルート」を水平に構え、イマジナリーシールドと共にそれを受け止めてみせる。
(重いっ……!)
 バチバチと火花が散る。このままでは押し切られる、そう判断しては望はプレーンブースターを噴かせて空中へ。
「空中戦か――上等!」
 そこへ追い縋るのは、プレーンブースターによって空へと飛びあがるエドウィナだ。

「コード666起動……さぁ、ご褒美だぞダンテ!」

 エドウィナの自由への憧憬、束縛への憎悪、解放された感情は流星のような推進力を生んだ。
 空中という不安定な状況を、コード666で無理矢理に補完する。
 貫け――煩わしい楔を鎖を全て全て。
 望月とダンテが空中で真っ向からぶつかった。思念の力が火花を上げる。
 ぐらり、と空中で二機がバランスを崩して……
「……ん、大丈夫?」
「前半戦はここまでのようじゃの」
 葵と初春の機体がプレーンブースターで空を飛び、二人の機体を空中で受け止めてくれた。

 他のダンテ搭乗者も限界のようで、響も九十七も限界の疲労に大の字になっていた。



●休憩
「あ゛ぁぁぁ~……」
 響は椅子でグッタリしていた。目の上に温かい濡れタオルを乗せ、徹夜明けのような様相を呈している。
「ああ、それで――個人的なダンテの感想だが、」
 その姿勢のまま、後半戦でダンテに乗る面々へと響はこう告げた。
「集団戦で道を切り開いていく爆発力と、対ボス戦の切り札となり得る衝撃力――良い機体だ! めッちゃくちゃ疲れるけどな……うん」
 疲労が色濃いが、響は満足げに微笑んだ。
「イマジナリーシールドの損傷ではないですゆえ、ヒール系も意味ないのが、なかなか……」
 九十七も長椅子に寝そべったまま、ゲッソリした顔でそう続ける。
「あとアレですの、銃器をメインウェポンにするなら、スリップダメージでリロード時間が惜しいンで、その、なんだ……白兵サブウェポンあるとよさそーですの」
 疲れから九十七の言語出力がフワフワになっている。
 そんな搭乗者達を見守りつつ、初春はあごを擦った。
「敵方に引き撃ちを徹底されると厳しそうじゃのう。ダンテの移動力は低くはないとはいえ」
「……ん、避けるのと邪魔することに、集中すれば、勝手に自滅、する」
 葵が頷く。だからこそ、前半戦の非ダンテ搭乗者は引き撃ち戦法を取る者が多かった。
「相手が間合いを取って来るのなら、射程の在る銃器を使えばある程度は解決しそうですが……」
「そうすると今度は、十八さんの仰るようにリロード問題が発生する、と」
 望とポチが言う。
「時々ものすごい加速できるんですけどね……もっと移動力が上がれば、その辺りの『引き撃ち対策』になるのかもしれません」
 鈴鴨はじっと座ってボディを休ませながらそう答えた。
 エドウィナはゼリー飲料のレーションを飲みながら、仲間達の言葉に頷いた。
「歯がゆいが、どうしても未だ試作機段階……だな」
 なれど、改善点が見つかるのは良いことだ。なんにしても実験あるのみ。

 ……いくらか時間が経てば、ノヴァ社の者が「準備ができました」とライセンサーを迎えに来た。
 いざ、後半戦。



●後半戦
 後半にてダンテに搭乗するのは、葵、望、初春、ポチだ。
「さて、久方ぶりに獣の本性を出してみようかの、にひひ♪」
 ダンテのコックピット内――機体と思念を接続した瞬間、初春の心より込み上げてきたのは、獰猛な破壊衝動だ。理性を全て焼き切るほどでこそないが、血が湧きたつような心地に少女は牙を剥くように笑う。
「思ったよりは飲まれんか、じゃが……ああ、暴れがいがありそうじゃの♪」
 ギラリ、と視界に捉えるのは九十七の月光改陸〔μήνις〕だ。
「――シャァあッ!!」
 吼え猛る本能に身を委ね、初春はダンテのブーストを噴かせてニーミスに迫る。
 ダンテに対し引き撃ち戦法が有効であることは立証済みだ。九十七は後方へ下がらんとするが、そうすることを初春は予見していた。ゆえに向けるのはG37アサルトライフル。狙いは荒いが、牽制ならば十二分。

 しからば――とポチは初春と共に九十七を狙おうとしたが、全身を駆け巡る激痛にコックピット内で顔をしかめる。
 まるで指一本一本の生爪を剥がされるような。肋骨が圧し折れて臓器に刺さるような。皮を剥がれ、剥き出しの神経を直接撫でられるような。
「ふ、ふ……!」
 久しぶりに感じる拷問めいた痛みに、ポチは牙剥くように口角を吊った。
 そんなポチの前に立ち塞がるのはエドウィナ操るMS-01J『Nguyen Mauria』だ。
「いざ」
「……ええ」
 剣を向ける機体に、ポチは答えるように銃口を向けるのだ。

「……ん、生理痛の、ちょっとキツいやつ。みたいな感じ?」
 ガンガンと響く痛みに、葵は情動が希薄な表情を珍しくしかめさせた。
「……チマチマやって削られるより、最初から全力で動かす方が、いい、かな」
 ダンテの特性は『やられる前にやれ』だ。ゆえに。
「……ん、いくよ。……コード666、起動」
 途端、だ。表情が更に歪むほどの激痛が葵の身に襲いかかる。覚悟はしていたがこれほどとは。
 だが我を失うほどではない。奥歯を噛み締め、C-203アサルトバルカンに過剰出力される思念の力を込め、薙ぎ払うように面射撃を行う。
「いいぞ、ぶつかってこい!」
 それを真っ向から受けて立つのは、響が操るHN-01『夜行』。展開される思念式展開装甲に、重い重い思念が込められた弾丸が次々とぶつかり、激しい火花を上げた。バルカンの弾丸なれど、獣の数字を孕んだそれは一発一発がミサイルのように激しい。

「……大丈夫ですか?」
 鈴鴨は望のダンテと相対していたが、望は動きが止まってしまっていた。向けていた銃口を下ろし、鈴鴨は安否を問う。
「う、うぅ……!」
 望はコックピットの中、頭を抱えて実を丸くしていた。
 ダンテと思念接合した途端、彼を襲ったのは途方もない恐怖。根拠なんてないと分かっているし、ダンテの仕掛けだと分かっているのに――喪失感と空虚さが、望の心を掻き乱すのだ。
 それはまるで家族を失うような、そもそも家族なんていなかったかのような……。
(こんな感情は知らない、どうして)
 足元から存在が消えていくような孤独、恐怖。
(……でも、)
 はあッ、と息を吐く。そうだ、これをきちんと乗りこなさなくては。
 手を握り、開き、操縦桿を握り締める。
 臆していてはいけないんだ。本当に家族を失う未来があるかもしれないから。
「これは未来への恐怖――」
 望は己に言い聞かせる。

「――だから、逃げない! 僕はこの力を制御してみせる!」

 この恐怖を現実にしない為にも。
 想いを力に――アサルトランス「マフルート」にありったけの力を込め、望は鈴鴨へ吶喊する。
「よろしくお願いします!」
「ええ、こちらこそ」
 鈴鴨は間合いを測りながら、再び銃口を向けるのだ。

 三十秒――

 短くも長い時間、至る所で鉄の人形達が激戦を繰り広げる。
 武器と思念の盾がぶつかり、光が散り、銃声が響き、土煙が立ち上る。

「はーッ……」
 弾の尽きた銃を手に、初春がくつくつと笑う。
「そろそろ奥の手を使うとするかの。……コード666、起動なのじゃ!」
 次の瞬間、初春の身を包むのはよりいっそうの破壊衝動だ。瞳は血走り、操縦桿を握る手には筋が浮かぶ。
 壊せ。壊せ。壊せ! 引き裂いて喰らい付いて八つ裂きにしろ! ――そんな力の解放。突き抜けるような激情に身を任せ、初春は九十七のニーミスへとケダモノさながらに跳びかかる。
「ガぁああッ!!」
 銃を鈍器代わりに振り被り、叩き落す。ニーミスのイマジナリーシールドがビリビリと震えた。
「……上等、ステゴロのどつきあいと参りますの」
 九十七は銃器を投げ捨て、拳を構えた。初春も同じくと銃を捨て、獣のような四つ足状態で身構える。
「「――っッ!!!」」
 互いに咆哮を響かせ、真正面からの殴り合い、取っ組み合い。がむしゃらな暴行劇。

「……おお」
「滅茶苦茶やるなぁ……嫌いじゃないが」
 土煙を巻き上げ、唸り叫びながらの凄まじい殴り合い。相対していた葵とエドウィナは一瞬そちらにそんな感想をこぼすも、互いに武器を構え直した。
「コード666は尽きたようだな」
「……ん。パイロットが体力に自信ある、なら、結構『もつ』、ね」
「ああ。引き続き実験といこうか!」
 ダンテの銃弾と、グエンマウリアの剣とが交差する――。

「ふっ……!」
 望は鈴鴨からの射撃を思念の盾で防ぎながら、一度大きく後退する。そのままプレーンブースターを使い、飛べない翼で無理矢理に空へと飛び上がった。
 ダンテの能力と暴走状態とにどう付き合うか。それを望は考える。まず考えられることとして発動タイミングの見極めだ。次に考えられることは、やはり味方との連携。
(ダンテは……単騎戦には向いていない……!)
 仲間と連携しつつ、一気にジャイアントキルを狙う。それがおそらく、ダンテの最も効率のよい運用方法だ。考えなしに突っ込めばすぐにやられてしまう。かなりの玄人向けの機体と言えよう。
 ならば、と望は空から戦場を見渡した。相手は知性の低いナイトメアではなく、人間が操るアサルトコア、知性ある敵。そしていずれ自分達が戦わなければならないのはエルゴマンサー、知性ある敵だ。
「! ――」
 地上、ポチは望の意図を汲み取る。
「参りましょう」
「……はい!」
 同時。二人はコード666を起動する。
 翼状ユニットに並ぶブースターを思念の力で強烈に噴かせ――爆発的な速度で、響の夜行へと襲いかかった。
「よーし来い!」
 響はわくわくしながら仁王立ち、思念式展開装甲を展開する。

 望の心を抉り揺さぶるのは激しい恐怖だ。涙がじわりと滲みそうになる、途方もない孤独だ。
(自分の感情に……負けるもんか……!)
 望は自己の存在を証明するかのように、マフルートを握り締める。

 ポチの表情を歪ませるほどにのたうつのは、想像を絶する激痛だ。
 まるで「欠陥兵器」と口にしたポチをダンテが恨んでいるかのような。
 欠陥品なんかじゃない。こんなものじゃない。このままで終われない――終わってたまるか――ダンテに込められた人の願いを、ポチは確かにその身で感じた。
 ゆえに。

「ダンテ……欠陥品ではない貴方の輝きを見せて下さいな」

 告げられる言葉、人の想いに応えるかのように。
 ダンテの瞳が赤く輝く。
 緋色に気高き、煉獄の意地。
 天国にも地獄にも行けない者が、大団円を夢見るように。

 叩き付けられる壮絶な攻撃に、夜行が大きくたたらを踏み、留まり切れずに倒れ込む。
「っ~~……効いたなぁ! 良い攻撃だ!」
 響はコックピットの中で笑い、夜行が二人に親指を立てた。

 それからほどなくもすれば、後半戦のダンテ搭乗者も精神力の限界だ。
 ダンテに乗ればどれだけ疲労するのか、先に身を以て体験した鈴鴨は、人々にこう告げる。

「お疲れ様です。……テストはこの辺りで切り上げましょうか」



●お疲れ様でした
「違うんじゃ、妾はもっと理性的なんじゃ、あんな獣性は持ってないのじゃ」
 休憩室の隅、初春は頭を抱えていた。傍らの朱塗りマイ盃と空っぽの瓶が、彼女のヤケ酒を物語る。
 一方の望は、ヤケ酒ではないが、ノヴァ社印のハイカロリーなレーションをもぐもぐしていた。
「うーんめちゃくちゃおなかすいた……。ダンテの精神負荷ですが、食欲とか他の欲求でも使えないかな?」
 そう呟くと、『飢餓』『渇望』はいいかもしれない、と技術者の者がメモを取る。ちなみに幸福な感情ではそもそも『負荷』にならず、『満足』してしまえば意味がないとのことだ。
「まあ意外と、悪くはないんですけどねぃ」
 提供されたスポーツ飲料水を飲みながら九十七が言う。
 ダンテの中、彼女の中に沸き上がったのは『憤怒』だった。それは九十七の正義の怒りと相性は悪くない。
「……とはいえ、あんまりトびすぎると作戦に支障が出ますし、ガンホー精神とは裏腹に防御と回避が心許ないのが。やっぱ機動力ですの、機動力。一気に敵陣のブレインに喰らい付けるよーな」
 やられる前にやれ、突撃中毒のお言葉である。
「……ん、生命が行動の度に減るのは、使いにくい。コード666を任意の時間発動できる、方が、いいかも?」
 葵はノヴァ社ブランドのプリャーニク(ジャム入り焼き菓子)を頬張りながら技術者に伝える。
「……正直、コード666前提みが、強い。いっそ、コード666の時間制限をなくして、任意タイミングで停止可能、とか?」
「生命を強制的に自ら削って、過負荷暴走も任意で発生できるように……というのも一つの手かもしれませんわ」
 血のような赤いイチゴジャムをお供に紅茶を飲みつつ、ポチが言葉を続ける。
「それからいくつかご意見が。……せめて戦闘外の行動では、精神負荷なしでできないとお話にならないかと。自力で戦場まで辿り着けない兵器など、飛行機にぶら下げた爆弾とどう違うのでしょう?」
 ポチの言葉は容赦がないが、それだけ真摯にダンテに向き合った結果だ。それを汲み取り、技術者は真剣に頷いてメモを取っている。
「それから、ピーキー過ぎてこの機体のみの運用は無理ですわね。最低でも壁になってくれる仲間が必要かと」
「……ん、同感。ダンテは他のアサルトコアと連携して、初めて真価を発揮、する。ダンテばっかりだと、使いにくいし、ダンテばっかりの戦場とか、ありえない」
 葵はもごもごお菓子を頬張りながらも、真面目に言葉を続ける。
「……ん、だから、次にデータ取る時は、ダンテと他のアサルトコアの混成編成の方が、現実的」
「乱戦よりも、巨大な一体の敵を火力に任せて落とす場面に向くかと思いましてよ。命中と射程が異常に高い射撃武器が向くと思うのですが――まあ、アサルトコアの武装に関してはどのコーポにもお伝えしたいこととして」
 未だアサルトコアの汎用装備類については不揃いなのが現状だ。ポチは紅茶を一口。
「あるいは、間合いを必ず詰め切れるような機動力か……敵の懐に飛び込む以上、前述の通りカバーは必要でしょうが」
 ふ、と息を吐き、ポチは技術者を見やった。
「自力では勝てない敵に、相打ち上等で突撃するような……格上殺しとなれる可能性はあるでしょう。欠陥品とは申しましたが、ダンテの火力は目を見張るものです」
 数十秒限りの超短期決戦兵器。そう割り切って、そのように調整しお膳立てすれば、あるいは。
 鈴鴨は仲間達の言葉を聴きながら、バイザーの奥で目を閉じ、ダンテの中を思い出す。
「ただ一人だけは、何があっても必ず道連れにしてみせる。……そういう機体な気がします、これ」
 まるで自らの命を燃料に燃え上がるような。
 それでも、そうしてまでも、勝たなくちゃいけないのだ。ゲームの中で主人公が負けてしまえば、敵勢力に世界が滅ぼされてバッドエンドになるように。
「やはりロクに回避もままならないのはな。大火力もそうだが、捕食や寄生を易々と許すぞ?」
 窓際で空を眺めているエドウィナが言う。
「アイツ、アサルトコアも気に入ってる様子だったからな。……道を究めんとする者としては一流だ。殺意もだが、敬意も忘れるな」
 見据える彼方、エドウィナが思い出すのはネザーを統べる怪物エヌイーのことだ。
「……現時点の改善点が『改善』されたらどうなるか。考えるだけでワクワクするな!」
 そんな中、響の声はやっぱり明るい。「ロマン溢れる機体をありがとう」と、響はノヴァ社の技術者達と握手を交わすのであった。

 今回のデータ、一同の意見をもとに、ダンテはチューンアップされていくことだろう。
 いずれ奈落を踏み砕き、至高を叩き落し、人類の世界から悪夢を払拭するその日まで。



『了』

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参加者一覧

  • 竜殺し
    七瀬 葵la0069
    放浪者14才|
    ネメシスフォース×セイント
  • 盾界のフロンティア
    星杜 望la0072
    人間12才|
    ゼルクナイト×セイント
  • スポークスマン
    鈴鴨la0379
    ヴァルキュリア15才|
    ネメシスフォース×スナイパー
  • 我が脚は昏き氷を砕く光刃
    柳生 響la0630
    人間16才|
    グラップラー×セイント
  • スターゲイザー
    エドウィナla0837
    放浪者12才|
    ネメシスフォース×セイント
  • 酒呑童子
    神風 初春la2689
    放浪者10才|
    ゼルクナイト×ネメシスフォース
  • 牙持つ闇
    花咲 ポチla2813
    放浪者14才|
    ネメシスフォース×スナイパー
  • 撃退士
    十八 九十七la3323
    放浪者25才|
    スナイパー×セイント

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