●インベーダーを警戒させた連携 ビームキャノン「フェリーレ」にエネルギー充填が開始される。 さらに多弾頭誘導弾『散雷』の発射準備も並行して進められた。 「充填率70%……80%……90%……」 淡々とカウントを行う【Logres】の向野・A・黒子(la0227)の目は、FS-10/CG「北極」のモニター越しに急接近してくる格闘型機械兵器群を捉えていた。 「各機へ。時間を稼いでくれ。俺も直掩機を出す」 FS-10/CG「北極」の格納庫が開かれ、次々にアサルトコアが発艦する。 「任せろ!」 一陣の風となって空を舞い、装飾の施された騎士鎧を思わせるヒロイックな機体が格闘型機械兵器を狙う。 【Logres】の小隊長、周太郎・A・ペンドラゴン(la0062)のアングウィレルだ。 「切りこむぜぇ!」 プレーンブースターによる推進力とSeRo-02ラーゼンによる加速力を合わせ、凄まじい速度で空を翔けるアングウィレルが、ア・ドライグ・ゴッホW964を連射しながら格闘型機械兵器たちに急接近する。 格闘型機械兵器群の方も回避運動を織りまぜつつ内蔵機銃による応射を行い、そのまま高機動戦をくり広げながら両者は接敵し、近接戦闘に突入した。 シュヴェールト・フリードリヒを振るうだけの間合いを維持したいアングウィレルと、その内側に潜りこみ格闘の間合いでたたみかけたい格闘型機械兵器群のあいだで、激しいかけ引きが行われる。 「援護する」 黒子が三機の浮遊砲台「八咫烏」を向かわせ、射撃を浴びせかけた。 【ヴァローナ・グニズド】を率いるアグラーヤ(la0287)は、計器類はおろか椅子すらない殺風景なアニヒレイターのコックピットで、格闘型機械兵器群を迎撃する。 同じく【ヴァローナ・グニズド】の88(la0088)は、MS-00改【月蝕】をFS-10/CG「北極」の艦上に位置取りさせる。 「果たして、来てくれるだろうか」 「前回好きなだけ暴れたからね……。私たちを無視するはずがない。予想どおりだよ!」 叫んだアグラーヤは、FS-10/CG「北極」にとりつこうとする格闘型機械兵器群を、アニヒレイターで引きはがしにかかる。 「させない!」 イマジナリーシールドが攻撃エネルギーに変換され、炸裂するオーラとなって周囲に放射された。 オーラに焼かれ、格闘型機械兵器が墜落していく。 「今だ!」 ズルフィカール・ジハードを抜きはなったアニヒレイターが、ウイングユニットを展開し格闘型機械兵器群に突撃していった。 FS-10/CG「北極」の攻撃準備が整い、黒子は操縦席で眼鏡をくいと指で持ちあげた。 「最初から全力でいく。艦砲とミサイルの飽和射撃だ。避けられるものなら避けてみやがれ」 多弾頭誘導弾『散雷』が広範囲にばらまかれ、鳥型や射撃型の機械兵器群を狙い空中に無数の爆発の花を咲かせる。 それらをかいくぐって肉薄しようとした格闘型機械兵器を、ビームキャノン「フェリーレ」の光がなぎ払った。 さらもう一度、ビームキャノン「フェリーレ」の光が機械兵器群をなぎ払う。 今度は、MS-00改【月蝕】が砲撃を行ったのだ。 連携に徹する88は、機体の特殊兵装にリロードを任せ、常にビームキャノン「フェリーレ」にエネルギーを送りながら、黒子との先制同時攻撃を始めとして、鮮やかに援護砲撃をくり返す。 「接近されても気にするな。私たちで落とす」 次々に格闘型機械兵器群へと砲撃が行われる。 そんなアグラーヤのアニヒレイターや88のMS-00改【月蝕】を、同じく【ヴァローナ・グニズド】のリク・ヴィルタネン(la0306)がロヒカールメ・ハルマーで守る。 「そこだっ!」 破砕盾『零八』を突きだして格闘型機械兵器を殴りつけ、ギミックを作動させる。 二連の杭が破砕盾『零八』から飛びだし、その装甲を貫いた。 MS-00改【月蝕】に、格闘型機械兵器たちは狙いを変更する。 対空砲撃をかいくぐった格闘型機械兵器が接近してくる。 応射したい88だが、そろそろ残弾も心もとない。 「一度戻る」 88はMS-00改【月蝕】をFS-10/CG「北極」の格納庫へ進ませた。 「さすがにすげぇ数が来るな……。しかも前回を踏まえて一網打尽にされないように、格闘型ばかり前に出してきやがる」 ロヒカールメ・ハルマーは折りたたみ型シールドパイクを展開し、格納庫まで戻るMS-00改【月蝕】の安全を確保すると、今度は別の方向へ物理的に折りたたみ式シールドバイクを伸ばす。 先端から展開したイマジナリーシールドが、黒子のFS-10/CG「北極」を、遠方から発射された射撃型機械兵器の狙撃から守った。 ●弾幕を形成せよ 想定していたより効果的な打撃を与えられてはいないものの、それでも【ヴァローナ・グニズド】と【Logres】の連携は囮としては十分で、業を煮やしたインベーダー側は、ついに格闘型だけでなく射撃型と鳥型の一部を前に出した。 すかさず【Grau Engel】小隊長のミナ・アッシェンフェルト(la1578)がデスペラードを駆り、射程内に入った鳥型や射撃型の機械兵器群に対空猛射を浴びせる。 そんなミナのデスペラードには、【Grau Engel】のニア・クリムローズ(la2579)がぴったりとルーチェを張りつかせている。 「予測通りね。迎撃するわよ!」 ライフル「ベンティスカ9」による牽制射撃を行いつつ、ミナが機体をふわりと空へ羽ばたかせる。 NBs-01スヴァローグが、神々しいまでの噴煙を吹きあげた。 「同時攻撃でいくぞ!」 デスペラードが弾幕で制限した回避先に、ルーチェはレヴィアタン砲を偏差撃ちする。 大質量の砲弾が、緩く弧を描きながら吸いこまれるように鳥型へ着弾した。 「今だ! ブースター点火、出力全開!」 ルーチェのNBs-01スヴァローグも、噴煙をあげる。 二機はまるで一つの意志で繋がっているかのように、息の合った動きで空中を翔けた。 遠くから、射撃型が横槍を入れてくる。 「……遅い!」 イマジナリードライブの伝達状況を一時的に高め、射撃型の火線を見切ると、デスペラードがバレルロールして鮮やかに弾幕を避けながら鳥型に肉薄し、煉獄鎌で斬りつけた。 同時に鳥型へ到達したルーチェも、すかさずハルバード「ファールバウティ」を振るった。 即座にその場から離脱する。 「そう簡単には当たってあげられないのよ」 鳥型が放ったレーザーが、間一髪で先ほどまでデスペラートがいた空間をなぎ払っていった。 ルーチェもきっちりとレーザーを避けており、デスペラートの傍に舞いおりる。 「このまま射撃続行だ!」 再び、デスペラードのライフル「ベンティスカ9」と、ルーチェのレヴィアタン砲が火を噴いた。 ●力を一つに 機械兵器群の動きが突如乱れた。 ペギーたち放浪者のフィーニクスが、飛行形態を取りいくつかの部隊に分かれて戦域に突入してきたのだ。 「ワレワレも加勢するペン!」 【ハンガー・ワン】小隊長の飛鳥 ナツ(la2131)は、そんなフィーニクスの部隊の一つに、クロス・ザ・ルビコンを帯同させていた。 「甲板は遠慮なく足場に使ってくださいね!」 戦況を確認したナツは、フィーニクスたちに戦術リンクシステムで正確な攻撃指示を与え、搭載AIの演算結果を用いた各種機械兵器群の行動予測情報を共有させる。 「攻撃を開始してください! 目標射撃型!」 眩く輝くビームキャノン「フェリーレ」の光が、空を裂き射撃型を撃ちぬいて消えていく。 それが号砲となり、フィーニクスたちも一斉に高機動戦闘に突入した。 「防衛射撃はじめ!」 クロス・ザ・ルビコンも高機動戦に加わり、弾幕を張って射撃型の弾幕を相殺し、フィーニクスたちを援護して共に一撃離脱をくり返す。 同じ【ハンガー・ワン】の杢(la1639)はクロス・ザ・ルビコンの甲板にSL-Xを立たせ、ペギーたちのフィーニクスを支援していた。 「ペンギンさんのお手伝いだんずー!」 アドバンスライフルαを撃ちまくるSL-Xが、SBs-01白鳥で推力を得てクロス・ザ・ルビコンの甲板から飛びたつ。 瞬間的にSBs-01白鳥の出力が上がるたび、空を駆ける騎士のごとく、SL-Xがフィーニクスたちを身体を張って庇う。 「おらが守るから、安心してほしいだんず!」 イマジナリードライブを音波に変え、杢はSL-Xのシールドを修復させた。 戦場に、戦乙女の歌を思わせる勇猛果敢な歌声が響きわたる。 それに勇気を得たかのように、ペギーたちフィーニクスの攻勢圧力が増した。 「撃つだんず!」 クロス・ザ・ルビコンの甲板に着地したSL-Xが、再びアドバンスライフルαの銃声を轟かせた。 また、別のフィーニクスの部隊には、【黄泉死路】小隊長の詠代 静流(la2992)が星竜を随行させていた。 「格闘型を狙う。多対一で確実に仕留めろ。機動性を生かせ」 ランチャーシールド「フィルジルドR」からロケットランチャーを発射しつつ、そのロケットを追うかのように、星竜がSBs-01白鳥を用いて空に飛びたつ。 「いくぞ!」 ジェネレイトブレイドACを引きぬいた星竜を先頭に、飛びまわっていたフィーニクスたちが一斉に回頭し格闘型機械兵器たちに狙いを定める。 格闘型機械兵器にロケットランチャーが直撃すると、その高機動性を生かしたフィーニクスたちが反対側から襲いかかる。 「ここだ……!」 その対応に振りむかざるを得なかった格闘型機械兵器の背中を、コード「666」を発動させ肉薄した星竜が、漆黒のオーラをまとわせたジェネレイトブレイドACでたたき斬った。 ●カバーに入れ アサルトコアの戦闘に不慣れ、かつ超高機動型というピーキーな機体を駆るペギーら放浪者たちは、連携を取ろうとするも、たびたび突出しかける。 だが、しっかりフォローに回る者たちがいた。 【Recapturer's】の小隊長、橘 達也(la0341)がFS-10の巡航移動用バーニアを短期的に吹かし、フィーニクスに勝るとも劣らない加速を見せて追いつき、戦術リンクシステムを起動させた。 「常に味方キャリアーの位置を確認するんだ。離れすぎるな。危なくなったら着艦してくれよ」 再び戦況情報を共有されたフィーニクスたちの動きが改善され、達也のFS-10を中心に戦闘を展開する。 「それでいい。援護しよう」 ギガントスナイパーで積極的に弾幕を張る達也は、FS-10を囮にフィーニクスたちが攻撃する隙を作りだし、自らも積極的に反撃を行わせた。 達也のFS-10の甲板で、【Recapturer's】のレニ(la1573)はSJ-02Sの音波探査システムを起動させた。 「死角から攻撃が来る可能性もあります。注意しましょうね」 他のキャリアーやアサルトコアで遮られ、見えない場所を中心に、各種センサーを用いた索敵装置で反応を探す。 読みどおり、雲の上に反応があった。 「敵機直上! 迎撃します!」 雲の中から急降下してきた鳥型機械兵器の零距離レーザーをシールド・アイギスで受けとめ、素早く離脱しようと急上昇するのにSBs-01白鳥で追いすがり、断罪者を振りぬいた。 「逃しません! 追撃を!」 断罪者の斬撃痕を斜めにつけられ、火花を散らす鳥型機械兵器へ、レニの指示を受け四方八方からペギーたちのフィーニクスが襲いかかった。 「次の戦域に向かうぞ!」 鳥型機械兵器を追いかえし、あらかた周囲の格闘型機械兵器が撃墜されると、フィーニクスたちを引きつれ達也のFS-10がバーニアを吹かし、後退していく。 【Recapturer's】がフォローしきれない位置のフィーニクスたちについては、【マスクド龍猫隊】の白勢の柚子丸(la2167)がFS-10を急行させて対応した。 「無理は禁物でござるよ! 危ないと思ったら引くでござる! 損傷が激しい機体は格納庫へ!」 戦術リンクシステムを起動して情報を共有し、指示を飛ばしつつ、フィーニクスたちを狙おうと前掛かりになる敵機へ逆にフィーニクスたちの攻撃を集中させ、迎撃していく。 さらに柚子丸自身も、FS-10で応戦した。 FA-14イペルファニヤやJBa-01アデリナにより、常時FS-10を障壁で覆いつつ、距離によって双銃「デュアル・レイ」と遠隔狙撃ユニット「トリステス」を撃ちわけ、弾幕を張り自衛する。 「当てるでござる!」 防衛の合間を縫って放たれた双銃「デュアル・レイ」の一射が、見事鳥型機械兵器を撃ちぬいた。 ●突破口を開け 鳥型機械兵器に酷似した機体であるフィーニクスの編隊に、インベーダーたちの機械兵器群は連携をかき乱された。 情報収集に努める各小隊からの情報提供もあり、積極的に交戦してくる鳥型や格闘型機械兵器殲滅に狙いを定めた者たちがすかさず動きだす。 【対空部隊スカイセイバーズ】の小隊長、クレア・ウェン(la0111)は好機を見逃さず、二機の特殊砲台「FS51」を射出し、有線で操作しつつSS-0 聖天を跳躍させた。 すかさずS-01を随伴させたミラ・R・Ev=ベルシュタイン(la004)が、さらに三機の浮遊砲台「八咫烏」を発射する。 二機の特殊砲台「FS51」と合わせてまるで一つの意志を持つかのような緻密な連携を見せる浮遊砲台「八咫烏」が、鳥型機械兵器をとり囲みオールレンジ射撃を行う。 「部隊の皆に助けられた大きな恩義、ここできっちり返すわ! 全機、私に続きなさい!」 SBs-01白鳥によって、SS-0 聖天が上昇していく。 イマジナリードライブを特殊な電磁波に変換し、空中の機械兵器群に向けて一直線に投射し、リジェクションフィールドに干渉して命中精度を激減させる。 「さあ、突っこむわよ!」 SeRo-02ラーゼンによる猛烈な加速を得たSS-0 聖天は、迎撃に放たれた鳥型のレーザーや格闘型の内臓機銃を置きざりにした。 自ら先頭に立ち、鳥型や格闘型の機械兵器を相手にカットラス・ドレイクを振るうSS-0 聖天は奮闘し、後続の道を作る。 「……今」 戦術リンクシステムで最適なルートを計算したミラは、その情報を周囲の味方と共有し、艦首に装着させたシールド・ヤヌスを展開して鳥型にぶちかましをかけつつ、その背後の射撃型機械兵器群に粒子加速砲を浴びせかけた。 味方機を巻きこまないよう入念に注意して行われた砲撃が、射撃型機械兵器群を飲みこんでいく。 「……せん、めつ……せん……する!」 ミラを乗せたS-01の背後で、浮遊砲台「八咫烏」と特殊砲台「FS51」に追いつめられた鳥型機械兵器が、集中攻撃を浴びてついに爆散した。 【メインディッシュ】の小隊長である珠(la2593)は、すかさずサンタマリアを急発進させた。 バーニアによって猛烈に加速して戦場に急行し、格納庫を開く。 「無人攻撃機部隊、アサルトコア各機、全機発艦してください!」 格納庫から飛びだしていくアサルトコアたちに合わせ、艦後部のハンガーユニットから十五機、無人攻撃機が出撃していく。 「各機へ。珠さんのサンタマリアを軸に動いてくれ」 珠のサンタマリアから出撃した【メインディッシュ】の白鐘 吟(la0402)は、ヘカトンケイルM57で弾幕を張りつつ、BD-01PTを変形させ、残像をその場に残し移動する。 「頃合いか」 別角度から鳥型機械兵器群を狙うBD-01PTが、静かにビームキャノン「フェリーレ」の狙いを定める。 「合わせるぞ……!」 機体動力に直結したEXISからビームキャノン「フェリーレ」へエネルギーが送られ、砲口に巨大な光が収束する。 「主砲へのエネルギー充填開始! ミサイルコンテナ解放!」 サンタマリアの両舷上部から、イマジナリードライブで構成された中型ミサイルが噴煙を描いて無数に発射される。 ミサイル群は鳥型機械兵器群をロックオンすると、金色の軌跡を描きながら周囲をとり囲むように包囲し、その中心へと殺到していく。 「星の海に光を!」 大量のミサイルで発生した爆炎をなぎ払い、さらに殺到したビームキャノン「フェリーレ」の極光が、鳥型機械兵器を飲みこんでいった。 「十字砲火だ、くらえ!」 続けてサンタマリアの砲撃に対し、直角に極太のレーザーが放たれる。 アサルトコアどころかキャリアーすら飲みこんでしまいそうなそのレーザーは、エネルギーの束となって鳥型機械兵器群を巻きこんで空間を貫き、大きな爪痕を残した。 これらの一斉攻撃には、前に出ていた鳥型だけでなく、格闘型機械兵器群も多くが巻きこまれ、爆散した。 空いた穴を埋めようと、最上面の際に座していた射撃型や鳥型が前進を始める。 こうして、最上面への路が拓けた。 ●林のごとく、火のごとく 防衛についていた機械兵器群はその多くがいなくなったとはいえ、最上面にはまだレーダー砲台が健在であり、そのままだと上から突入しようにも狙い撃ちにされてしまう。 一計を案じたのは、【独立機械化歩兵小隊【Заря】】小隊長のイリヤ・R・ルネフ(la0162)だった。 最上面まで外壁を低空飛行してきた【独立機械化歩兵小隊【Заря】】のキリアン・フィッツジェラルド(la3915)のModel-DAGDAが、パチェーリャンヌィ・マリノフを出撃させる。 前に出ていた機械兵器群や、残っていた機械兵器群が慌てて防衛にやってくる。 「僕が囮になります」 パチェーリャンヌィ・マリノフカが飛行形態に変形すると、目まぐるしく高速機動で飛びまわる。 レーダー砲台の直掩をしたい機械兵器たちだったが、イリヤのパチェーリャンヌィ・マリノフを無視できない。 「どこを狙っているんですか?」 射撃型の狙撃が飛んでくるのを、緊急回避システムを駆使して移動し紙一重で回避すると、続く鳥型のレーザーも本来射撃に用いられるエネルギーを短距離に圧縮し、遠隔狙撃ユニット「トリステス」を発射した反動を利用して、一気に距離を取って避けた。 キリアンは慎重に距離を測り、Model-DAGDAをレーダー砲台の届かない距離に留めると、展開しているイマジナリーシールドに指向性を持たせ、甲板に立ったアサルトコアたちを射出した。 シールド強度を増したアサルトコアたちが突撃していく。 「レーザー範囲割りだしました。データに反映させます!」 戦術リンクシステムで逐次戦況を確認し、それによるフィードバックを味方と共有する。 「回復支援します」 搭載された大型のリペアユニットを起動させ、シールドを復元しつつ強化するエネルギー弾をばらまいた。 ナタリア・フィッツジェラルド(la2736)は空中でWHITE-MEABHを飛行形態に変形させ、一気にレーダー砲台を射程内に捉えた。 「気分は戦闘機乗りだな。酩酊の妖精の舞い、刮目せよ」 迎撃に放たれるレーザーをヒットアンドアウェイで避けながら飛びまわり、機を見て一気に突っ切って死角に潜りこむと、トゥルビネW88を向ける。 「脅威は排除させてもらうぞ」 機体動力に直結したEXISからトゥルビネW88にエネルギーが充填され、非実弾の弾丸が装填される。 「破壊する!」 銃口からレーザーが発射され、レーザー砲台に直撃する。 「さあ、次だ」 崩壊するレーザー砲台を背に、ナタリアはさらなる獲物を狙わんとWHITE-MEABHを回頭させた。 ●レーザー砲台の無力化 【スイーパーズ】小隊長の天ヶ原 箒(la3200)が操縦するFS-Xもまた、レーザー砲台のもとへ辿りついていた。 小隊員のアサルトコアたちを引きつれ、近くにいた鳥型や射撃型へ一撃を入れながら、まっすぐ突っ切ってきたFS-Xの背後には、追いかけてきた機械兵器たちが連なっている。 「破壊する。敵の横槍に気をつけろよ」 掲げていたコロウカンからヒートアックス「タパージュ」に持ちかえたFS-Xが、それを全力でレーザー砲台に叩きつける。 金属同士がぶつかり合い、激しく火花を散らした。 「このままぶっ壊す」 イマジナリードライブの補助を受けたヒートアックス「タパージュ」が、赤熱して輝く。 超高温の刃が食いこんだレーザー砲台は、刃が入った箇所から融解していき、砲塔を切断された。 「あとは囮だ!」 FS-Xを反転させた箒は、追いかけてきた機械兵器たちを迎えうった。 サバトラ改の操縦席で、【Jokers】の七瀬 葵(la0069)が通信で退避を促す。 データリンクシステムにより、すべての味方機のモニターに射線が表示された。 「……ん、これから、攻撃を開始する、よ。危ないから、射線から離れ、て」 波が引くように各アサルトコアが退避していき、サバトラ改の正面は機械兵器群とレーザー砲台のみとなった。 葵のサバトラ改に合わせるのは、同じ【Jokers】の華倫(la0118)が操縦する蓬莱だ。 「これは、よい見せ場ですわね」 備えつけられた兵装・乾坤弓にエネルギーが送りこまれていく。 みるみるうちに出力が上昇し、イマジナリードライブの光が溢れた。 「一斉砲撃、用意。準備はい、い?」 「いつでも構いませんわよ」 モニター越しににっこりと微笑む華倫を見て、無表情な葵の口角が、親しい者でなければ分からないほどかすかに持ちあがった。 「ん、上等」 サバトラ改の三連装荷電粒子砲『ブルーメンカッツェ』が、ビームキャノン「フェリーレ」が、機械兵器群やレーザー砲台を射線に入れつつ、排出口に向けられる。 エネルギーを送りこまれた蓬莱の兵装・乾坤弓が、煌々と輝く弦と矢を生成する。 「レーザー砲台と、排出口を破壊、して……全機、突入。……発射」 放たれたビームと三発の荷電粒子砲が、機械兵器やレーザー砲台をなぎ払いながら、排出口に直撃した。 「合わせますわ。ポセイドン全放出。……塵も残しませんわよ」 巨大な光り輝く矢となって放たれた高出力のエネルギー弾は、排出口周囲の機械兵器を盛大に巻きこんで着弾すると、轟音と共に大爆発を起こした。 「さあ、行ってくださいまし!」 すかさず蓬莱に小型ミサイルを一斉発射させた華倫がサバトラ改の突入を援護し、排出口へ送りこむ。 「帰宅部、いくよー!」 続いて、キャリアーが一機バーニアを吹かしながら巡航速度で突っこんできた。 【帰宅部】澄野 歌奏(la3894)の赫映 ‐kaguya‐だ。 格納庫が開き、中から次々アサルトコアが飛びだして、各自戦闘を開始していく。 すでにかかっている援護効果を上書きしてしまわないよう注意しつつ、戦術リンクシステムを起動させ、搭載している【帰宅部】のアサルトコアと、周囲で戦っていた他小隊のアサルトコアに適用させていく。 赫映 ‐kaguya‐の搭載AIが、すべてのアサルトコアとの情報共有を完了したと歌奏に知らせた。 「演算終了! やっちゃって!」 歌奏は目まぐるしく機器を操作する。 「私も援護するよ!」 ギガントスナイパーの砲塔を反転させた赫映 ‐kaguya‐が、猛烈な勢いで弾幕を張った。 【帰宅部】の小隊長である日下 葵葉(la3792)は、癸亥で赫映 ‐kaguya‐の甲板に離着陸をくり返しつつ、機械兵器たちの位置を探っていた。 「音波探査システムに感あり。モニターに反映」 葵葉が、センサーに引っかかった反応の位置情報を、味方に送信し表示させる。 キャッチした反応は、空中を高速で飛びまわっているようだ。 「……鳥型機械兵器? これは狙い目。皆、お願い」 まずは【帰宅部】の面々を迎撃に向かわせ、タイミングを計る。 マルコシアスが、上空の鳥型機械兵器を見上げる。 その操縦席では、ヴァルキュリアである【帰宅部】の木蓮(la3816)が直接身体を接続し機体を操作していた。 「いきます!」 木蓮のマフラーが一対の焔の翼状に噴出するのに合わせるかのように、マルコシアスのエナジーウィング「フォールン・エンジェル」もエネルギーで形成された翼を作りだす。 「速さなら、負けません!」 斬艦刀「破軍」を抜きはなったマルコシアスが、天使の羽のようにエネルギーの光を一瞬舞いちらせ、その場から消える。 肉薄するマルコシアスに、至近距離から鳥型機械兵器がレーザーを放つ。 「甘いです!」 超反応を見せたマルコシアスは即座にレーザーを斬りはらい、返す刀で斬艦刀「破軍」を鳥型機械兵器に振りおろす。 鳥型機械兵器も負けず劣らずの反応を見せ、素早く飛翔してその斬撃から逃れる。 だがすべては作戦どおりだ。 「今」 機を見て張りつめた弦から射かけられた矢のように勢いよく飛びだした癸亥が、SBs-01白鳥によって空を高速で翔け、双銃「デュアル・レイ」を手に鳥型機械兵器を狙う。 高速で次々に発射された二条の光が、鳥型機械兵器を撃ちぬいた。 ●排出口へ突入 小隊長として【戦闘支援機関「オーケアノス」】を率いるキャプテン・ブロッサム(la2215)は、巡航移動用バーニアを吹かし、排出口をめざしてブラッディー・ローズを突撃させた。 「オーケアノス、敵の根城に乗りこめえ!」 格納庫や甲板からアサルトコアたちが飛んでいくのを確認すると、戦況を確認しつつ戦術リンクシステムで適切に攻撃対象を選びその情報を共有させた。 「行けると思ったら行っちゃって! 排出口の防衛はあたしたちでなんとかするから!」 【戦闘支援機関「オーケアノス」】の一員として、雨崎 千羽矢(la1885)も排出口の確保に努める。 「私もいるから大丈夫! いつもどおり、できることをできるだけやるよ!」 日傘がヴラシシエーニイ89を四基飛びたたせ、突入を阻む射撃型機械兵器の排除に向かわせた。 それぞれが複雑かつ綿密な連携を見せるヴラシシエーニイ89が、射撃型機械兵器を包囲すると四方八方からオールレンジ攻撃をしかけた。 避けられないとみたか、射撃型機械兵器は回避行動を取らず、強引に長銃で日傘の狙撃を試みる。 「当たらないよ!」 放たれた弾丸を素早く海賊大砲「トルトゥーガの宴」で撃墜すると、千羽矢の意志に呼応し、ヴラシシエーニイ89が四基一斉に殺到して射撃型機械兵器を斬りきざむ。 役目を終えて戻ってきたヴラシシエーニイ89が、再び日傘に格納された。 「突破する!」 【戦闘支援機関「オーケアノス」】の一員としてスルトを駆り、群がる機械兵器たちを出力強化された炸裂する炎のオーラで焼きつくしたヴォルフガング・ブレイズ(la2784)が、援護を受けて排出口から内部に突入する。 YOKOZUNA-189を猛射し、弾幕を張るブラッディー・ローズは、排出口に戻ろうとする機械兵器たちを近寄らせない。 「隙を見せたね!」 一瞬動きを止めた射撃型機械兵器を、すかさず狙いすました本命の一撃で撃ちぬいた。 なおも排出口上空で抵抗を続ける機械兵器群にさらなる打撃を与えたのは、無所属の九鬼 要(la1279)が操縦するS-01だった。 「到着です! 盾役はお任せください!」 S-01の格納庫から飛びだしてきたのは、ペギーら放浪者たちが搭乗するフィーニクスのうち、まだ戦える機体で組みなおされた編隊だ。 要は特定の所属小隊というものを持たず、従って母艦も特に決められていなかった彼らのための、搭載母艦役を買ってでたのである。 「感謝するペン! さあ、ワレワレも最後まで気を抜かずに戦うペンよ!」 ただでさえ押されていたのに、パイロットがアサルトコア操縦に不慣れとはいえ、最新鋭のエース機に多数加勢されては、機械兵器側に勝利の芽などない。 残り少なくなっていた機械兵器群はみるみるうちに数を減らしていく。 「させません!」 苦しまぎれの反撃は、すべて要がS-01でボディブロックした。 ●自動製造工場を破壊 排出口から要塞内部へ突入したアサルトコアたちは、自動製造工場を攻略するため、小隊ごとに分かれて探索や索敵を始める。 進行方向から駆動音が聞こえ、ヴォルフガングは警戒した。 「さっそくのお出迎えか!」 防衛のためか残されていた射撃型機械兵器が現れ、長銃をスルトへ向ける。 「邪魔だ!」 キャリアーバスターを掲げてそれらの弾丸を受けとめたスルトが、まったく勢いを殺さず射撃型機械兵器の陣形に飛びこみ、キャリアーバスターを一閃する。 吹きとぶ射撃型機械兵器に追撃をかけると、キャリアーバスターで貫きそのまま壁に突進する。 「これに耐えられるか!」 柄や刀身側面に取り付けられたスラスターが連動して突進の勢いを加速し、射撃型機械兵器を激突させ叩きつぶした。 【守護刀】の不知火 楓(la2790)は、盾役として藤吾を最前列に立たせた。 「索敵を始めるよ。おおよその位置を調べよう」 試作型IMD広域センサーを起動させ、楓は周囲のナイトメアの気配を探った。 楓の口元に、薄く笑みが浮かんだ。 「……かなり、外の迎撃に数を割いていたみたいだね。思っていたより数が少ない。ひょっとすると、僕たちより少ないかもしれないよ」 同じく【守護刀】の氷向 八雲(la3202)も、FF-02の試作型IMD広域センサーで内部に残っている機械兵器群の位置を探る。 「こっちも大して反応はねぇな。とりあえず片っ端からぶっ壊すとするか」 八雲のFF-02が、斬艦刀「破軍」を肩に担ぎ意気揚々と歩きだす。 実際、進んでもあるのは散発的な射撃型機械兵器の襲撃くらいで、楓のギガースウォールですべて対応することができた。 FF-02が狙われても、楓は落ちついて庇い、届かせない。 射撃型機械兵器の周囲を高速で動きまわり、八雲のFF-02は的を絞らせない。 「おせぇ!」 斬艦刀「破軍」で縦横無尽に斬りつけると、それを空中にほうり投げバンカーシールド「ディスコリア」を掲げて射撃型機械兵器に叩きつけて中央の杭を射出し、打ち貫く。 バンカーシールド「ディスコリア」の杭を抜いたFF-02が、NBs-01スヴァローグで上空へ飛びあがった。 その両手に、振ってきた斬艦刀「破軍」が納まる。 「そらよっ!」 落下速度を加えて急降下したFF-02が、射撃型機械兵器を頭から唐竹割りにした。 撃破するのを見届けた楓は、敵配置の流れを読んで、先導役を務めた。 「こっちかな? 反応が集まってるよ」 戦闘をくり返しながらスムーズに奥まで進み、工場の破壊を行うことに成功する。 しばらくすると、破壊を終えたアサルトコアが続々と排出口から外に出てきた。 侵入したアサルトコアが全機脱出したのを確認して、キリアンはModel-DAGDAにアドバンスライフルαを発射させ、排出口を潰す。 「長居は無用です。引きましょう」 速やかに搭載を完了させ、巡航速度に達しその場から離れた。 他小隊所属や無所属のキャリアーたちも、それぞれ搭載を完了させそれに続く。 あとはまだ残っている機械兵器を撃墜し、ディードの討伐やその退路を確保するため、より要塞内部奥深くへ突入している仲間の帰りを待つだけだった。