●交渉・マルセイユにて 【エルロード】を率いるシオン・エルロード(la1531)は、【前線支援小隊『久遠之翼』】たちと共に、ラディスラヴァ、ヘクターの二人と接触を果たす。 「人類が減るのは互いに損失だ。効率的に敵へ対処すべきではないか」 【F.A.Lucifer】小隊長であるユリア・スメラギ(la0717)も交渉に加わった。 「あたしたちはルルイエでハオヘアを倒してる。今、敵に回すのは得策じゃないわよ」 皇 快晴(la3046)も両者への交渉に参加する。 「あんたらとは、またいつか戦うことになるんだろう。でも、それは今じゃないはずだ!」 ラディスラヴァとヘクターは目配せを交わした。 「そうね。人手が欲しいところだったし、今回ばかりは特別よ」 「とにかくインベーターの数が多い。せいぜい頑張ることだな」 話術に長けたシオンとユリアが交渉を成功させ、ここに一時的な共闘関係を築く。 ライセンサーたちはエルゴマンサーというものの強さを改めて目撃することとなった。 とてもタフでしぶとく、機敏なはずの植物インベーダーが、目にも止まらぬ速さで駆けぬけるラディスラヴァに手玉に取られて右往左往し、広範囲をカバーするヘクターの砲によって一瞬で蒸発させられる。 「恐ろしい敵なのには違いないが……今だけはその強さが心強いな」 間違ってもヘクターの砲の範囲に入らないよう注意しつつ、快晴はスナイパーライフルCT-3に毒弾をこめ、インベーダーを狙って撃ちぬいていった。 ●交渉・ジェノヴァにて 【ぐろりあすしXXX本店】小隊長のフィノシュトラ(la0927)はボマーに共闘を持ちかける。 「お互いに手が足りない状況でしょうから、ここは一時的に手を組みませんか? ライセンサーの現在の力量や、成長推移の見極めがついでにできますよ」 ナイトメアの視点にも立って説得した。 「インベーダー掃討はあなたにとって手柄にもなるでしょう。餌が減りすぎるのは本意ではないはずです」 『……今は味方になれ、と?』 しばらく黙っていたボマーから、返答があったものの、芳しくない。 ジュリア・ガッティ(la0883)も交渉に加わった。 「共闘なんて言いたくないけれど、意地を張っている場合でもない。こちらからは、子蜘蛛を増やしても問題ない場所を逐一教えるわ」 【チームα】小隊長のシマダ・α8(la3782)は、内心では忸怩たる思いだった。 だがそれでも、状況的に共闘という選択肢を取らないわけにはいかない。 大量のインベーダーを相手にするだけでも厳しいのだ。 さらにボマーまで敵に回った日には、戦線は瓦解しかねない。 ゆえに、シマダもまた提案する。 「闇雲に子蜘蛛を放っても効率が悪いでしょう。ここはひとつ、互いのリソースを活用して共闘しませんか。回復に長けたライセンサーを囮として、インベーダーたちを集めます」 『都合のいいことだな』 「もちろんこんなことはしたくありません。ですが軍人として、目的達成の手段を選んではいられない。それだけのことです。利害は一致していると思うのですが」 裏を疑っていたボマーだったが、苦肉の策であることを隠さないシマダに警戒を解いたようだった。 すかさずフィノシュトラもたたみかける。 「ライセンサーを囮に子蜘蛛をけしかけてくだされば、効率よくインベーダーを抑えられると思いますが、いかがですか?」 『……フン。せいぜい、爆発に巻きこまれないよう注意することだな』 ジェノヴァの土地情報をライセンサー側が供出し、ボマーが子蜘蛛の分布範囲を伝え、さらにライセンサー側に子蜘蛛の利用を認める。 緊張をはらんだまま、それでも提案は受けいれられ、共闘関係が成立した。 ボマーとの共闘成立後も、ジュリアはその場に留まっていた。 ジュリアが監視する中、ボマーは子蜘蛛を利用するだけでなく、自らも糸をくり出して絡めとって爆破し、束になって現れる触手インベーダーたちを始末している。 さすがの強さで、ボマーの周囲のインベーダーたちは常に一定を上まわることはない。 「……敵の強さに有難みを感じる日が来るなんてね。複雑だわ」 『……クッ』 スナイパーライフル「ドロレス」で子蜘蛛を撃ちぬき自爆させ、インベーダーを巻きこむジュリアのぼやきが聞こえたのか、ボマーの小さな笑い声が響いた。 ●ジェノヴァに避難所を 広鳩 新(la3272)は状況把握に努めた。 「……SALF支部だけでは、避難しきれない、か」 もちろん、SALF支部は住民の避難所としては真っ先に候補として上がるものだが、いかんせんジェノヴァは広い。 SALF支部までの中継地点にするという意味でも、別の場所に避難所を作ることは必須だった。 幸い、ジェノヴァの地図とボマーから伝えられる子蜘蛛の分布情報、さらに味方が得るインベーダーの索敵情報をつき合わせれば、安全地帯となる場所を割りだすのはそう難しいことではなかった。 「……俺に……できることを……」 新は避難所の設営に動きはじめる。 一時的に安全でも、完全にインベーダーが現れない保証はないので、付近の警戒や作った避難所の防衛など、やらなければならないことはいくらでもあった。 そして避難所が完成し、イーリス・セールイ(la3420)がその防衛にあたる。 少し開けた道に陣取り、迎撃担当として率先して前に出た。 まだ避難所として機能し始めたばかりなので触手インベーダーの数は少ないものの、住民たちが集まるに従い、増えていくだろう。 「なんとか、持ちこたえなければね」 イメージによって、触手の、閃光の、様々な攻撃の軌道が予測線となってイーリスの視界を埋めつくす。 それらを見極めんと、イーリスは全神経を集中させた。 「さあ、踊りましょう」 軽やかに舞うイーリスは、優雅にするりと予測線の合間を縫って動き、最小限の動作のまま紙一重で避けていく。 「囮はするから、始末をお願いね?」 後続の味方を振りかえり、艶やかにほほえむ。 雪室 チルル(la2769)は避難所に集まる住民に釣られ、寄ってくるインベーダーたちの迎撃を行っていた。 団体行動を取る小隊では手が届きにくい細道に狙いを絞り、味方に対する横合いからの不意討ちや奇襲をシャットアウトする。 「登場早々悪いけど、帰ってもらうわよ!」 雪のような粒子エネルギー帯を生成してキラキラと発光させ注目を集めつつ、集まる大量の触手インベーダーたちを細道に引きこんでいく。 「頃合いね! 一網打尽にするわ!」 反転したチルルの身体から、爆裂剣「ライジング」の先端に冷気エネルギーが収束していく。 白く凍りついた刃から吹雪が放たれ、一直線に並んだインベーダーたちを瞬時に凍りつかせ、粉々に砕き吹きとばしていった。 インベーダーとの直接戦闘は可能な限り避け、マクガフィン(la0428)は偵察に専念する。 「これは……」 住民たちが逃げた際に残した足跡を発見し、それを辿ってどこに行ったのか特定してインカムで味方に伝え、回収の手はずを整える。 ボマーが伝える子蜘蛛の分布と実際の分布状況を照らしあわせ、ボマーから送られる情報が正確であることを確かめる。 さらにそれらをもとにナイトメアの気配を探り、各種インベーダーの位置を割りだしていく。 「反応を多数発見。確認に向かいます」 実際にその場に向かい、インベーダーであることを確認する。 常に最前線に立って縦横無尽に駆けまわるマクガフィンは、当然相応に触手インベーダーに狙われるものの、それらのほとんどを避けきり、そうでないものは小太刀「五月雨」で斬りはらった。 ●子蜘蛛の利用法 【ぐろりあすしXXX本店】の路傍の毒(la3693)はおそるおそる子蜘蛛に触れる。 爆発はしなかった。 「だ、第一関門はクリアでしょうか……?」 そっと持ちあげると、子蜘蛛は八本の足を動かしてじたばたともがき、逃れようとする。 「わっ、とと」 落としそうになるのをなんとかこらえる。 仮に、落としていたらまず間違いなくその場でドカンである。 鈴蘭は焼き鈴蘭になっていたかもしれない。 何気なく、それを見た【ぐろりあすしXXX本店】のルシオラ(la3496)の顔が、それはもう見事に引きつった。 ちょっと扱いを間違えた時点で即座に起爆する爆発物をお手玉されたのだ。 それはもう、肝が冷えた。 「せー、の……よーい、どん!」 子蜘蛛を持ったまま走りだした鈴蘭は、走ることに余力を注ぎこみ、一気に距離を稼ぐ。 「鈴蘭さん!!!! 待ちなさい!!! それを捨てなさい!!!!! いえ、そっと地面に置きなさい! 捨てたら駄目よ!」 捨てろと言われてポイ捨てされたりした日には見事に爆発する。 また、持って走っている最中に、子蜘蛛にインベーダーの攻撃が当たっても同じことになるので、ルシオラはなにがなんでも追いかけて守る必要があった。 イメージの力で肉体を強化し、走力を増した足であとを追う。 「させません!」 伸びてくる触手や閃光から、鈴蘭をというより、子蜘蛛を庇うイメージで割りこみ、異聞「ヴァン・ガード」で打ちはらう。 赤い薔薇の花びらの幻影が散った。 「しゅーーー!!!!」 気合一閃、鈴蘭が子蜘蛛を投げとばした。 放物線を描き、子蜘蛛が飛んでいく。 落下先で大爆発が起こり、渦中にいた触手インベーダーたちが巻きこまれ木っ端微塵になった。 ●住民護衛と指揮官発見・ジェノヴァ 保護した住民たちを護送している【ESPOIR騎士団】の面々のうち、ソル=ド=ゴール(la0538)は、SALFから回してもらったジェノヴァの地図をもとに、先行して避難所までの安全確保を行っていた。 「邪魔だ!」 自分のイマジナリードライブを活性化させたうえで、魔導書「ラ・ルーヌ」を向ける。 放出されたイマジナリードライブは炎となって燃えあがり、触手インベーダーたちを焼きこがす。 「あちこちインベーダーだらけだな……これは骨が折れそうだ」 そんなソルめがけ、光線が飛んできた。 振りむけば、人型インベーダーの銃口に狙われている。 攻撃の余韻で残っていた花弁のような燐光がわずかに光線の勢いを殺し、ダメージを和らげる。 「お返しだ!」 イマジナリードライブを矢状に形成し、射出して反撃する。 「これもくらえ!」 続けて毒のイメージを飛ばし、人型インベーダーの身体を冒す。 【ESPOIR騎士団】の都築 聖史(la2730)はボマーから伝えられた子蜘蛛たちの位置情報を参考に、それに重ならないようにしつつ、イマジナリードライブで直感を強化してナイトメアの気配を探った。 「協力を得られていなければ、間違えて子蜘蛛を検出していたかもしれませんね……。それでも、こっちに危険の比重が偏りすぎな気がしますが」 ボマー自身は言うに及ばす、その糸や子蜘蛛に住民たちが近づかないようにしなければならない。 また、いざとなれば自らを盾にできるように、なるべく傍にいる必要があった。 そこへ、先行しているソルから、人型インベーダーとの交戦開始が伝えられる。 「……助けに行きたいですが、今この場を離れるわけにも……。誰かお願いします」 それに応えるのは、ルーカ・ルンガルディエール(la3508)だ。 不安そうな顔の住民たちを元気づける。 「大丈夫です。私たちがついていますから」 イメージの力で自分や聖史の周囲に半透明の障壁を展開すると、遠くでソルと戦う人型インベーダーに雷撃砲「イカヅチ」を向けた。 住民たちが狙われた場合にカバーできるよう離れるわけにはいかないものの、それでも長射程を誇る雷撃砲「イカヅチ」ならば、援護砲撃が可能だ。 「当たってください……!」 轟きと共に稲光のような光が撃ちだされ、鋭角にくねくねと曲がりながら人型インベーダーに突きささる。 まるで、落雷が直撃したかのようだった。 直後、ルーカは前を向いたまま後方へスライドする。 自らが防壁となるイメージが、彼女を住民のもとへと運び、守った。 ●二つの避難所・マルセイユの凱旋門 自らが防壁となるイメージで滑りこみ、イメージを植えつけ植物インベーダーを住民から引きはがしながら、【天満月】小隊長の高柳京四郎(la0389)は指揮を執る。 「避難所を作らないときりがないな。ある程度見晴らしが良くて、多数が集まれる場所………となると、凱旋門付近か?」 インカムで通信し、SALFを介して警察への伝達を要請すると、首刈り大鉈で想像の刃をなぎ払い、周囲のインベーダーを一掃する。 「可能ならでいいんだが、避難所に向かってくる敵を優先して排除をしてほしい」 『凱旋門ね? ならその周辺から集中して釣ってくるわ』 『ラディスラヴァ。倒すのは僕前提で答えないでくれ』 住民を護衛しつつ移動を始め、ついでに、他のライセンサー経由でラディスラヴァとヘクターにもその旨を伝えた。 凱旋門に到着した【天満月】は、急遽避難所を設営し、南雲 檸檬(la3168)はその防衛を行う。 インベーダーたちの攻撃手段は、確認次第インカムで共有された。 「まずは被弾する確率を減らさなければ」 イマジナリードライブによる薄い水のスクリーンを植物インベーダーたちの周囲に張り巡らせ、命中精度を奪う。 さらに別の群れへ、溶解液や炎への対策を施した。 「少しでも、脅威の低下に繋がるとよいのですが」 拘束のイメージが植物インベーダーの群れを縛り、溶解液や炎の勢いが弱まった。 ラディスラヴァが凱旋門周辺のインベーダーたちを引きつけたため、付近に手を伸ばす余裕ができた。 同じ【天満月】の蒼井 流(la3849)は京四郎や檸檬と共に、凱旋門の避難所防衛を続行しつつ、足を伸ばして直接住民たちを誘導する。 インカムの通信はかなり前からオンにしっ放しだ。 「絶対に守りぬくんだぜっ!」 京四郎と囮の役目を入れ替え、イメージを植えつけインベーダーたちを引きつける。 囮が京四郎なら殲滅は流が、逆なら流は囮にという具合だ。 「おらぁっ!」 十文字槍「氷月」を大きく振りまわし、穂先の想像の刃を伸ばして斬りさくと、鋭く刺しつらぬく。 「私でも守りたいものはありますからね!」 続いて檸檬が氷の槍を降りそそがせ串刺しにしていく。 【赤き風】のヴァルヴォサ(la2322)が、凄まじい勢いで突っこんできて強烈な踏みこみを行い、身体ごと植物インベーダーに肘打ちを叩きこむ。 「さあて、人を守らないとね!」 大鷲の爪翼の腕部羽型刃を突き刺しえぐりこむと、下から斬りあげ同時に身を伏せることによって吐きだされる炎から身を隠す。 「どこを狙っているのさ!」 瞬く間に幾度となく閃いた手甲三本爪が、無数の爪痕を植物インベーダーの幹に刻みこむ。 「落ちちまいな!」 上空へ蹴りとばしたヴァルヴォサは続けて自らも跳躍して追撃し、大鷲の爪翼に植物インベーダーを引っかけると、振りまわして遠心力に落下の勢いを乗せ、地面へと叩きつける。 身体の内部にダメージが残り、植物インベーダーの動きが鈍った。 「力を合わせて、守りきりましょう」 「手伝うぜ!」 檸檬と流が協力して暖かな治癒の雫を降らせ、全員のシールドを修復した。 「よっし、回復完了! 避難所までの道はこっちだ! 遅れんなよ!」 流は住民たちに声をかけ、誘導を再開する。 【小隊【月ノ兎】】を率いる佐々音 紗緒(la0165)も、凱旋門の避難所まで住民を誘導した。 同じく【小隊【月ノ兎】】の汐見 奏佑(la0215)が声を張りあげる。 「落ちついて、離れず行動してください!」 住民たちの不安を和らげるため笑顔を浮かべて声かけを欠かさず、励まして混乱を防いだ。 「ルートの誘導を頼む!」 奏佑がインカムで呼びかければ、逐一進むべき方角を指示する声が返ってくる。 「……大事な人たちを守るために、大事な人と一緒に頑張るのですよ♪」 紗緒もまた、薄い水のスクリーンでインベーダーたちを囲むことにより、攻撃精度を低下させて妨害を行い、住民たちを守る。 「近づけさせませんから!」 周囲に冷気が放出され、空気が氷結し無数の氷の槍が現れた。 氷の槍は一斉に回転して穂先を向けると、連続で射出されインベーダーたちへと襲いかかる。 「見えています!」 植物インベーダーたちを貫いていく氷の槍のあいだを縫って、イーリュンの形に形成されたイマジナリードライブが、住民に近寄ろうとしていた植物インベーダーに直撃する。 蒼きイルカが焔を踊らせ、纏わりついて呪いを与えた。 「早く皆を安全な場所へ……!」 セイクリッドスピアで伸びてく枝を奏佑がうち払い、一回転させて石突で触手インベーダーを打ちあげる。 イマジナリードライブの力を強く伝えたセイクリッドスピアをすかさず手元に引きもどし、鋭く渾身の力で突きこんだ。 さらに貫いた植物インベーダーを穂先につけたままセイクリッドスピアを両手持ちし、別の植物インベーダーの脳天に狙いさだめ思いきり振りおろした。 ●二つの避難所・マルセイユの地下鉄メトロ 【ミュージアム】小隊長のアンヌ・鐚・ルビス(la0030)は避難所を稼働させ、地上の入口防衛に努めた。 「あるものは全部使って勝つのよ! それがエルゴマンサーであろうと!」 『なりふり構わない感じね』 『まあ、頑張れ』 地下鉄メトロに避難所を設営したことをラディスラヴァとヘクターへ伝えると、他のライセンサー経由でそんな伝言が返ってきた。 スナイパーライフルCT-3が高々に銃声を鳴りひびかせ、その度に植物インベーダーが吹きとぶ。 だが頑丈な植物インベーダーは、そのタフさでもって無理やり距離を詰めようとしてくる。 アンヌはスナイパーだ。接近を許すわけにはいかない。 「とにかく攻撃の手数を緩めないで!」 想像力を集中させて素早く再装填を行い、途切れなく発砲を続けた。 イマジナリードライブで直感を強化し、ナイトメアの気配を探る【ミュージアム】の涅槃(la2201)は、手応えがあるとわざと姿を見せ、地下鉄メトロから引きはがそうと誘導を試みた。 インベーダーたちは枝を伸ばしながら涅槃に近づいてくる。 「うむ、各自が得意分野を活かすことが肝要でござるな」 その様子を眺めていた涅槃は、捕まりそうになると身を翻し、移動に余力を注ぎこんで、全力の鬼ごっこを始めた。 「よしよし。そのまま追ってくるでござるよ」 そしてヘクターがいる場所へ誘導していく。 到着する頃には、反対側からラディスラヴァもやってきていた。 「こちらも一緒に頼むでござる! しからば御免!」 「やっちゃいなさい、ヘクター!」 「巻きこまれても知らないからな!」 逃げる涅槃を掠めて、ヘクターの砲がインベーダーたちをなぎ払い消しとばしていった。 もう一人、【ミュージアム】のももぴー・スターライナー(la2851)は地元警察との連携を行う。 「メトロに避難所を設けたから、誘導先は凱旋門か地下鉄の二つに絞ってください! 情報の拡散もお願い!」 混乱でまともに機能していなかった警察による避難誘導も、ライセンサーが多数現れたことで、多少機能をとり戻した。 とはいえ、警察ではインベーダーに対抗しようがないので、それを維持できるかはももぴーたちライセンサー側の働きにかかっている。 「そっちはお願いします。人手が必要なら遠慮なく言ってね!」 警察との連絡を終えると、インベーダーたちとライセンサーの戦いの中を、護衛しつつ駆けぬける。 「急いで! ここは安全だから!」 住民たちを地下鉄へ避難させていった。 ●住民護衛・マルセイユ 地図と実際の経路を照らしあわせながら、【エルロード】の来栖・望(la0468)は避難誘導進路を選択する。 進む望みたちの行く道を塞いでいたのは、大量の植物インベーダーたちだ。 「させん!」 想像の壁で囲い、シオンが発射される溶解液から住民たちを庇う。 「路を、拓きます……!」 雨守の戒杖の傘を広げ枝を防いでいた望が、イマジナリードライブを傘の表面に集めた。 撃ちだされたイマジナリードライブの光が、天空からイメージの刃となって植物インベーダーたちへ降りそそぐ。 「纏え護れ、深切の風」 さらに自分やシオン、同じ【エルロード】の山神 水音(la2058)といったメンバーに春の風を護りとして与え、心を鼓舞した。 「俺はここにいるぞ!」 イメージを植えつけ、すかさずシオンが注意を引いた。 次々に溶解液が飛んでくる。 「路を照らせ、幽世の焔」 望は具現化した墓守のランプを、シオンに向けて掲げる。 光がシオンを照らし、溶解液を浄化した。 いくら突破をくり返しても、インベーダーは続々と現れる。 また植物インべーダーたちが寄ってきた。 「次はボクが!」 水音は異聞「クリスタルブレイブ」を盾として掲げ、振りまわされる枝の嵐に突撃した。 イメージを植えつけ、攻撃を自分に集中させる。 「させないよ!」 狙いがそれて住民の方へ行きそうになるものは、自らが防壁となるイメージで庇った。 水音の異聞「クリスタルブレイブ」が二つに分離した。 鞘に当たる本体から、剣の部分が抜きはなたれたのだ。 「一気に倒すよ! 犠牲者は出させない!」 身を焦がすほどの血の沸騰のイメージが、剣を赤く染めあげた。 紅の閃光が十字を描いて迸り、植物インベーダーたちを貫きひき裂いていく。 「舞わせ癒せ、命の花弁」 雨のように舞う望の桜花が、暖かな光となって三人のシールドを修復していった。 ●指揮官発見・マルセイユ 避難誘導から離れた場所で、【虹色ノ翼】と共に、【F.A.Lucifer】の面々を率いて、ユリアは指揮系統の要である人型インベーダーを探していた。 「……見つけた!」 瞬間、ユリアが姿を消す。 現れたのは、植物インベーダーたちを抜けた先にいた、人型インベーダーの手前だった。 すでに、氷華の大剣は黒薔薇をまとっている。 「美しく……残酷に散れ! ブラックバカラ!」 花弁や棘の蔦から転化した想像の刃が植物インベーダーたちを絡めとり、斬りさく。 「逃がさないわ! ブリランテ!」 浮遊して辛うじて逃れた人型インベーダーを、虚空から降りそそぐ真紅の大剣たちが貫く。 地面に突き刺さった大剣たちが、巨大な薔薇の火柱を噴きあげた。 ●避難誘導・マルセイユ 【Lilac】の龍寓(近衛師団長)の塚井さん(la3514)は、狙撃手として堅実に務めを果たす。 「どいつもこいつも食料食料と……誰が食料だ! ホントに食料になってる側の気持ちも考えろ!」 毒づきつつも、活性化したイマジナリードライブを制御し、狙撃の態勢をとって狙いを定めることだけに集中する。 塚井さんの感覚から周囲の雑音が消えた。 プラズマミラージュに番えた矢を引き絞り、イメージの伝導効率と精度を高め、より遠くのインベーダーを探す。 「あの人たちは……やらせない!」 放たれた光の矢は山なりに、虹のような一線を描き、飛んでいく。 頂点に達して急降下した矢が、今にも住民を襲おうとしていたインベーダーを射抜いた。 火煉・W・紅露(la0004)はヘクターを見てはしゃいでいる、自分も所属している【Lilac】の某小隊長にアイアンクローをかました。 「さて、さっさと始めるよ」 狙撃班の一人である塚井さんと連携しつつ、確保された避難経路に住民たちを誘導していく。 「インベーダーが美味しいお刺身を作っちまわないように、お仕事さね」 「人間の刺身か……あいつらの捕食にそんな拘りがあるとは思えないけど、表現としては悪くないセンスね」 「どうでもいいけど、離れないとまとめて吹きとばすよ」 釣ってきたラディスラヴァに合わせ砲を構えるヘクターの警告に、周囲にいたライセンサーたちは火煉を含め一斉に退避する。 さすがの威力で、轟音と共に放たれた一撃が、その場にいたインベーダーたちをばらばらに吹きとばしていった。 【Back the Styx】の吉野 雪花(la0141)は、頭に叩きこんでおいた凱旋門や地下鉄メトロへの避難経路を再確認する。 「し、死にたくない……怖い!」 「だいじょーぶだいじょーぶ。僕が守るから、走ろうねぇ」 ほわほわとおっとり笑う雪花に、恐慌状態に陥りかけていた住民が落ちつきを取りもどした。 走る後ろから、枝が伸びてくる。 「掛介麻久母畏伎伊邪那岐大神──」 雪花はふり向くと住民を背に庇いつつ身体を張って盾となり、射線の妨害を行って幻想の翼を広げ、繭のように包みこむ。 攻撃を受けとめた瞬間、一斉に羽が音もなく舞い、散っていった。 「余裕がある人は、残ってる貴重品の回収と記録、お願いね?」 同じ【Back the Styx】の小隊員が探しに行くのを見つつ、避難所へ急いだ。 ●二つの都市 マルセイユでは着々とインベーダーたちの排除が進んでいた。 SALF支部の他に避難所が一か所しかないジェノヴァとは違い、マルセイユは凱旋門と地下鉄メトロの二つ避難所がある。 ライセンサーの数もマルセイユの方が多く、危なげなく住民たちを避難させることができていた。 もちろんジェノヴァの方も子蜘蛛の誘爆などで一部危ないところがあったものの、その分小隊に所属していない個人の奮闘がめだち、作戦の瓦解には至っていない。 両都市で指揮を執っていた人型インベーダーたちが、それぞれ【ESPOIR騎士団】や【虹色ノ翼】、【F.A.Lucifer】といった小隊の面々に討伐されると、残った触手インベーダーや植物インベーダーたちは連携を崩し、より誘導に引っかかりやすくなってボマーやヘクターの範囲殲滅の餌食となっていく。 そのあいだに住民の避難は進み、両都市のインベーダーも相当数減ったところでついに増援が来なくなった。 上空にあった小型要塞が、ついに駆逐されたのだ。 住民の安全が確保されたと判断され、作戦は終了となった。