【OL】The origin of liberation メインフェーズ 1フェーズリプレイ一覧

  1. 突入支援
  2. インソムニア・コア破壊
  3. ライセンサー救出

1.突入支援

"●インソムニア
 ニュージーランドにあるサムナー湖の南東山間部に、レイクサムナーインソムニアは山を切り開く形で聳えている。
 サムナー湖側は険しい地形が天然の要塞となっており、例えアサルトコアやキャリアーであっても突破するのは不可能に近い。
 そのため、アサルトコアはインソムニアの東から南を中心に展開された。
 とはいえナイトメア側もそれは予想しており、ミラージュピラーやソーディアンシールド、レールワームといった個体群を並べ防衛網を敷いている。
 【Recapturer's】、【ヴァローナ・グニズド】、【【守護刀】】、【イェーガー隊(仮)】、【Howl Dragon】など、各小隊所属のライセンサーが駆るアサルトコアたちが、待ち受けるナイトメアたちの牙城を切り崩さんと奮闘している。
「とはいえ……こうもミラージュピラーだらけでは……」
「本体が真ん中にあると分かっていてもその真ん中がどこなのか分からなくなるな」
 狡兎と走狗のコックピットで、華倫(la0118)と楊 嗣志(la2717)の二人が通信を交わしている。
 二人は【Jokers】に所属するライセンサーだ。
 遅れて登場したナイトメア殲滅機関【血風会】の面々が一気呵成に攻撃を仕掛けた。
 奮闘する者たちのうち、何人かがミラージュピラーの本体へ攻撃を当てることに成功する。
 それを華倫と嗣志は見逃さなかった。
 跳躍するとプレーンブースターで滞空時間を延ばし、ミラージュピラーの頭上を取る。
「行くぞ!」
「分かりましたわ、お兄様!」
 嗣志、華倫の走狗と狡兎がアサルトランス「マフルート」を突き下ろし、VMP∴S(la2374) がHN-01のアサルトソード「リーネア」を合わせて振り下ろす。
 攻撃を受けた衝撃でミラージュピラーが揺れるも転倒はしない。
 だが狡兎と走狗はその程度では止まらなかった。
「仙女の本領、お見せしますわ」
「神仙の名は伊達ではないぞ!」
 にこりと微笑む華倫とは対照的に、嗣志の表情は真剣そのもの。
 もちろん華倫も真面目にやっている。
 その証拠に、華倫は攻撃の手を緩めない。
 C-203アサルトバルカンをばらまきつつも、好機と見るや否や狡兎の武器をアサルトランスに換装して嗣志とともに突撃した。
 華倫の狡兎がチャージを直撃させると、続けて嗣志の走狗のチャージが続きミラージュピラーの装甲とぶつかり合い凄まじい音と衝撃を生んだ。
 周囲のソーディアンシールドが剣群を降り注がせるも、二機は既にその場から離脱している。
 イマジナリードライブの伝達速度を上昇させて機体の反応を引き上げたのだ。
 すかさず走狗の武装をアサルトライフルに換装した嗣志が銃撃を浴びせた。

●戦い続けるために
 ナイトメア側の反撃が苛烈化していく。
 ソーディアンシールドが剣群を次々に射出し、レールワームがひっきりなしにレーザーで砲撃を仕掛けてくる。
 【スイーパーズ】、【メインディッシュ】、【龍猫隊】が各々の指針に従い時間稼ぎを目的とした戦いを展開するものの、物量の差を覆すにはまだ一手が必要だ。
 その一手が今為されようとしている。
「ミラージュピラーでも何でも、撃破したら並べて壁にしなさい! 生身と違ってアサルトコアがシールド修復できないの忘れるんじゃないわよ!」
 鉄仙 -Clematis-から【Lilac】のリーダー、野武士(la0115)の檄が飛ぶ。
 火煉・W・紅露(la0004)、ラスクローネ(la0176)が同調し、それぞれの乗機であるネイトと1Jを操縦して倒したナイトメアの残骸 を積み上げる。
「よっしゃ、任せな!」
「さすが私たちの隊長だ。分かっているね」
 その間にも、士が操縦する鉄仙 -Clematis-はG37アサルトライフルの弾幕をばらまきながら突撃し、アサルトランス「マフルート」でマンティスやロック、レールワームといったナイトメアを次々にぶち抜いた。
 槍を用いて無双するその姿は、ロボットに乗っていながら伝説の戦乙女を彷彿とさせた。
「士ちゃんってば絶好調!」
「楽しそうだねぇ」
「隊長がまた調子に乗ってるよ。止めなくていいのかい?」
 年上の余裕を見せる火煉がネイトのアサルトソード「リーネア」で攻撃を捌きながら豪快に笑い、ラスクローネは1Jのコックピットの中でため息をつく。
「活躍するにはあれくらいでちょうどいいのさ」
「……一理あるね」
 思い切り暴れ回る鉄仙 -Clematis-をフォローするため、ネイトと1Jもスラスターを展開し急加速する。
 ラスクローネの口元にも楽しそうな笑みが浮かんでいた。
 朝霧 穂花(la0528)と龍寓(近衛師団長)の塚井さん(la3514)も、己の機体であるFF-01とMS-01Jを動かしながら士たちから離れず戦う。
「楽しそうね」
「はっはっは! 賑やかでいいことだな!」
 穂花がFF-01を操縦し、飛んでくるソーディアンシールドの剣群をアサルトソード「リーネア」で斬り払う。
 後ろからその隙に塚井さんのMS-01JがG37アサルトライフルを掃射した。
 赤い光に包まれた弾丸が次々ソーディアンシールドに着弾していく。
 武装の関係で、ネイトと1J、FF-01とMS-01Jがそれぞれツーマンセルで前衛後衛を補う形で動き、さらにその周囲を鉄仙 -Clematis-縦横無尽に戦いながら駆け抜けていくという、一種の図式が出来上がっていた。
 他の【Lilac】のメンバーのアサルトコアも、周囲で戦いを続けている。
 そうやってバランスよく戦闘をしつつも、士の鶴の一声で唐突に一斉射が始まるのだから、ナイトメア側としてはたまらない。
「さて、どんどん材料を調達しなくちゃねぇ」
「でも幸いいくらでも探せそうだよ。何しろ至るところにあるからね」
 ネイトがアサルトソードを手に前衛を張り、その後ろから1JがG37アサルトライフルで撃ち抜く形で、火煉とラスクローネは堅実に鉄仙 -Clematis-に同行し、次々に敵を撃破していく。
「それにしても、数が多いねぇ」
「どこに銃口を向けても当たりそうだよ、これは」
 敵の死骸を盾代わりにアサルトランスで突撃を繰り返していた鉄仙 -Clematis- がロックの装甲をぶち抜いて現れた。
「仕方ないわよ! いわばここは、敵本拠地の玄関前なんだから! さあ、派手にぶちかますわよ!」
 号令を出す士に応じ、【Lilac】の面々が動く。
 一斉に行われた銃撃が進軍してくるマンティスやロックなどの足を止め、たたらを踏ませた。
「足が止まった! 今よ、スラスター全開!」
「付き合ってやるさね!」
 激しく推進力を高めまるでビデオを倍速したかのような加速を見せる鉄仙 -Clematis-とネイトだが、そこへ横合いから再び動き出したマンティスが突っ込んできた。
「おっと。そうはさせないよ」
 イマジナリードライブの伝達能力を高め機体の反応を引き上げたラスクローネが、既にアサルトライフルを向けている。
 全弾叩き込んでマンティスを沈黙させると、リロードを行い新しいマガジンで古いマガジンをはね飛ばした。
 1Jを風が激しく揺さぶる。
 凄まじい勢いで鉄仙 -Clematis-とネイトが動き出したことで発生した風だ。
「そらよっ!」
 火煉がネイトでマンティスの残骸 を投げつけると、射線を遮られたソーディアンシールドの剣群が残骸 に次々と突き刺さる。
 その隙にレールワームの残骸 を掴んだネイトが、それをハンマーのようにして殴り掛かった。
 当然、普通なら効かない。
 だがリジェクション・フィールド に防がれる瞬間、飛来した弾丸がそれを中和した。
 士の援護射撃だ。
「か弱い乙女らしくいくわよー!」
 円を描くように回り込みながら全弾叩き込むと、アサルトランスに武装を換装し再度突撃を開始する。
 飛び交うレーザーや剣群を超加速で置き去りにした士が、邪魔なレールワームを貫いていく。
 戦い振りを見ていた穂花と塚井さんは一度戦闘を中断する。
「そろそろ材料を持ち帰った方が良さそうね」
「では私たちで運ぶとしよう」
 ミラージュピラーの残骸 を塚井さんが集め、穂花がそれ以外の残骸 をかき集めて一度後退する。
 多少壁の作成を手伝いつつ、切り上げて戦場に舞い戻った穂花と塚井さんは、再び戦う士に加勢した。
「女の子は集まったら強いのよ!」
 アサルトソードを手に突撃するFF-01を鉄仙 -Clematis-がアサルトライフルで援護する。
 MS-01Jが銃撃姿勢を取ると同時に、鉄仙 -Clematis-はアサルトランスを手にFF-01を追いかけた。
 スラスターを盛大にふかし、猛スピードでFF-01に並ぶ。
「ただの女の子じゃないわ! か弱くて強い女の子よ!」
 士の代わりに援護射撃を引き継いだ塚井さんがコックピットの中で首を傾げた。
「つまりどっちなのだ……?」
「両方よ。だって、私たち女の子だもん!」
 笑いながら穂花が答え、FF-01を操縦してアサルトソードで斬り込み、そこへ士が操る鉄仙 -Clematis-が飛び込んでアサルトランスを合わせた。
「喰らいなさい! 鉄仙版、清天通!!」
 FF-01が斬り裂いたミラージュピラー装甲にアサルトランスを突き刺し、勢いのまま貫いて背後へ抜けていった。

●力を合わせて
 作った即席の壁や盾を上手く使いつつ戦い始めた【Lilac】の他にも、同様の考えに至った者たちはいた。
 【桜華光舞隊】や【D.I.Y.】がそれだ。
 神上・桜(la0412)率いる【桜華光舞隊】が動き始める。
「バリケードを作るのじゃ! キャリアーの突入を邪魔されるのが一番まずい! ナイトメアの攻撃を通してはならぬ!」
 FF-01を動かし、桜自ら作業を行う。
「材料は大量にあるでの。がっつり作ってやるのじゃ!」
「手分けしてやるぞ!」
「じゃあ僕はこっちかな」
 月洸に乗るトーヤ(la0375)がミラージュピラーやソーディアンシールドの残骸を集めに行き、AZ(la0471)の鳳蝶はレールワームの死骸を大量に引きずって戻ってきた。
 作業中も、何体かマンティスなどのナイトメアたちが近寄ってくる。
 気付いた月洸と鳳蝶が迎撃に当たり、桜もそれに参加した。
 FF-01と月洸が同時にG37アサルトライフルを連射する。
 リロードするFF-01と月洸 に代わり、今度は鳳蝶 がG37アサルトライフルの銃口をナイトメアの群れに向け、迎撃を引き継いだ。
「ここは死守するぞ」
「そうだね。露払いをしよう」
 銃身側面のラインに赤い光が走り、そのたびに赤い光を付与された弾丸が銃口を飛び出していく。
「そろそろ接近されるの。作り途中の壁を壊されると面倒じゃ」
「私が前に出る。援護を頼む」
「僕たちは銃しか持ってないし、それが適任かな」
 アサルトランス「マフルート」に武装を換装した月洸からモーターの駆動音が響く。
 次の瞬間、月洸は先頭のマンティスへと肉薄していた。
 マンティス程度の装甲では、月洸の重量と突進力を加えた一撃を耐えることは難しい。
 装甲のひしゃげる音とともに、マンティスが大きく吹っ飛んでいく。
「下がれる時は下がるぞ。囲まれたくはないからな」
「それでいいと思うよ」
 深追いはせず、彼我の距離や敵の種類によってアサルトライフルとアサルトランスを使い分ける月洸を、鳳蝶が銃撃支援する。
 その間にFF-01を下がらせた桜は再び壁建設作業に戻った。
 全体を見渡しつつ、壁が均等な厚さ、高さになるよう指示していく。
「もう少しここに追加するのじゃ!」
 【桜華光舞隊】で手が空いている者が、気付いて桜に言われた通り残骸 を積み上げていく。
「突入部隊を守るための壁じゃ。成功するかは我らの手にかかっているのう。じゃが我は主らを信頼しておる。故に心配はないぞ!」
 そう言われては、奮起せざるを得ない。
 俄然やる気を出す小隊員たちだった。
 脅威を排除し終えたトーヤとAZが戻ってくる。
「ほら、良いガードレールになってくれそうじゃない?」
 鳳蝶 が実際に積み上げると、その壁はガードレールというよりもはや城壁に近かった。
 何せどれもこれもアサルトコアでの対処が前提となる大きさなので、かなり大きいのだ。
 三メートルや四メートルというレベルの話ではない。
 凄まじい数のナイトメアたちは波状に押し寄せてくるので、倒したところで次のおかわりが当然やってくる。
 再びナイトメアが建設途中の壁に近付いてきた。
 HN-01を駆るラムダ・ランバート・ラシュレー(la0557)が、味方がバリケードの作成を滞りなく終わらせられるよう、身を削って盾になっている。
「一秒でも多く時間を稼ぐであります!」
 G37アサルトライフルで牽制射撃を続けていたラムダは、コックピットの中で笑みを浮かべる。
「ふふふ、猪武者! 猪武者であります! 皆さまの支援の為、一歩でも多く前へ!」
 アサルトランス「マフルート」に換装して突っ込むラムダのHN-01に、桜のFF-01が並んだ。
「楽しそうじゃの。我も混ぜるが良い」
「自分を盾に使うでありますよ!」
 HN-01が前衛、FF-01が後衛という形でフォーメーションが組まれる。
「私も同行する」
「僕も行くよ」
 そのフォーメーションに、トーヤの月洸とAZの鳳蝶が加わった。
 四機のアサルトライフルが火を噴き、一斉に放たれた弾丸の雨がミラージュピラーに降り注ぐ。
 幻影で見分けがつかないなら面制圧をすればいいじゃないといわんばかりだ。
 そしてそれは一定の効果を上げている。
 リジェクション・フィールド が発生した個体の位置を掴むと、ラムダはHN-01のコックピット内で身を乗り出した。
「見えました! さあ、突撃するでありますよ!」
「付き合おう」
 凄まじい勢いで疾走を始めるHN-01を、月洸を駆るトーヤが追走する。
 両側からアサルトランスで貫き、そのまますれ違うようにしてお互い背後に抜ける。
「まだ終わりませんとも!」
「このチャンスを生かさない手はない」
 同時にランスの石突きを跳ね上げると、左右対称のような動きでHN-01と月洸は柄による薙ぎ払いからの渾身の刺突へと繋げた。
 その場からラムダとトーヤの機体が飛び退くと、入れ替わりに桜とAZの機体が放った弾丸が直撃する。
 FF-01と鳳蝶がアサルトライフルで追撃したのだ。
 防衛は順調だが、その分人手を割かれるということでもあるので、作業は滞りがちだった。
「こんな時こそ、私が頑張らないと……」
 己の乗機であるMS-01Jを、アイカ(la2204)は瓦礫やナイトメアの残骸 といった防壁作りの材料運搬に専念させていた。
 戦闘と両立させなければならない者たちと違い、これを専門に行うと決めていたアイカは戦闘を味方に任せただひたすら運んで積み上げてを繰り返していく。
「ひゃっ」
 あちこちで響く戦闘音を機体のスピーカーが拾い大きな音を鳴らしたので、コックピットの中でアイカは首を竦めた。
「い、急がないと。時間を無駄にはできないよね」
 迎撃に参加せず専念している分、壁構築におけるアイカの役割は大きい。
 自己判断できるところはあまり時間をかけずに自分の考えで積み上げていき、要所では小隊長である桜を呼ぶ。
「桜さーん! この瓦礫は何処に積もうか!?」
「そうじゃの……そこに頼む!」
 FF-01を操作して器用に指示した桜が戦闘に戻ると、言われた通りアイカは積み上げ作業を再開した。
 瓦礫を中心にしているが、当然材料は瓦礫に留まらない。
 ナイトメアの残骸 でも、文字通り使えるものは何でも使う。
 MS-01Jが一機、作業するアイカ機を守るようにナイトメア群に向かってB02アサルトライフルの引き金を引き続けている。
 ミリート・フォーティア(la3415)の乗機だ。
「私がついてるからね!」
 カメラ越しにアイカへ天真爛漫な笑顔を見せるミリートだが、アイカのいるコックピットへ送られてくる映像の端に移るモニターは、激しい戦いの様子を伝えている。
 ミリートは桜たちへの支援射撃、アイカの護衛など、八面六臂の活躍を見せていた。
 撃墜数こそ少ないが、確実に敵の出鼻を挫いている。
 元々撃破を目的としていないので、今の状況は概ねミリートの思惑通りに進んでいると言っていいだろう。
「隙は私が作るよ!」
 攻撃の気配を見せるソーディアンシールドやレールワームに的確に牽制射撃を撃ち込み、自分への対応を強制させることで一瞬の拘束時間を生み出す。
 または、もっと直接的に弾着の衝撃を重ね攻撃できない僅かな時間を作る。
 この二つに行動の主軸を絞り、アイカの護衛と桜たちへの支援射撃を両立させていた。
 そうして隙を見せたナイトメアに対し、桜が号令し他の【桜華光舞隊】のメンバーで一斉射撃を敢行し、確実に仕留めていく。
 各々が自分にできることを最大限こなした結果の、抜群の連携だった。

●壁を築く
 とはいえ敵の数は多く、攻撃が激しいことに変わりない。
 アイカだけなら到底間に合いそうになかった防壁構築であるが、彼女の負担を【D.I.Y.】のエドワード・M・ヒューイット(la3288)、ルーク・H・スミス(la3305)が補った。
 エドワードの メカムラマサが丸太代わりにミラージュピラーの残骸を組み上げ、これまたソーディアンシールドの残骸で補強する。
「時間がない。どんどん進めるんだ」
 そんなエドワードの メカムラマサを、ルークのクロウ次郎が補佐する。
「まず台を作ろう。それに乗せれば一度にたくさん運べるよ」
 アサルトソード「リーネア」やアサルトランス「マフルート」を器用に使い、ルークはミラージュピラーの残骸を一つ使って運搬台を作り上げた。
 残骸を集める効率が上昇する。
 大部分は倒されるとはいえ、抜けてくるナイトメアも一定数いる。
 それらの退治はエドワードやルーク自身がやらなければならない。
「材料が足りんな……」
 クラフト魂を発揮しまるで芸術のような精巧な防壁を組み上げていたエドワードは、地響きにメカムラマサを振り向かせる。
 そこにはマンティスが一体迫ってきていた。
「どうやら材料の方から来てくれたようだぞ」
「じゃあ早速狩らないとね」
 元々ルーク自身がナイトメアの残骸を素材に扱う彫金師であるため、素材を現地調達する姿勢に淀みはない。
「足はいらんな。強度が足らん」
 コックピットで呟いたエドワードが操縦桿を握った。
 メカムラマサがアサルトソード「リーネア」で斬りかかり、マンティスの足を一本斬り捨てる。
 合わせて突撃してきたクロウ次郎がアサルトランスで足を二本纏めて突き飛ばす。
 貫かれるというより、粉砕される勢いで足がもがれた。
 鎌を振り回して反撃するマンティスだが、当たろうが外れようがどちらにしろそれで止める二人ではない。
 ランスを回収したルークのクロウ次郎がアサルトソードで斬りかかると、エドワードのメカムラマサが同調し対照的な軌道でアサルトソードを振るった。
 両手の鎌でそれぞれの攻撃を受け止めたマンティスだが、エドワードとルークの方が一枚も二枚も上手だった。
 メカムラマサとクロウ次郎のスラスターが全て展開され、爆発的な推進力を得る。
 拮抗は一瞬で、その後マンティスの鎌が二本宙を舞う。
「心配するな。全て芸術の素材として余すことなく使ってやるとも」
「そういうわけだから、もうお別れだね」
 残りの足も全て斬り払われる。
 鎌と足を全て断たれたマンティスが止めの一撃を受けて絶命した。
 どこの小隊にも所属していないブライアン・シュライバー(la1646)が駆るFF-01、【 】の小隊長として参加している坂本 雨龍(la3077)の銀兎、ブライアンと同じく無所属である朝日薙 春都(la3079)のFF-01といったアサルトコアたちも活躍し、キャリアーや自分たちを守る盾代わりの防壁があちこちに着々と作成されていく。
「俺たちの手にかかれば、こんなもの簡単に終わる」
「使えるものは何でも使わないといけません」
「どんどん作っちゃいましょう!」
 話し合いながら作業する彼らに向けて、ソーディアンシールドの剣群が降り注ぐ。
 どうやら生き残りがいるようだ。
 機敏な反応で、三機はその場から離れた。
「先に奴を始末するぞ」
「分かりました」
「行きがけの駄賃発見!」
 同時に走り出したFF-01二機と銀兎のうち、春都のFF-01が道を塞いでいたレールワームをアサルトソード「リーネア」で斬り裂いた。
 そこへすかさず雨龍の銀兎がG37アサルトライフルの引き金を引き、レールワームに叩き込みつつ接近する。
 一方、ブライアンのFF-01は最初からソーディアンシールドのみを狙っている。
 レールワームももちろん倒すべき敵であることに違いはないのだが、ブライアンにとっては標的に到達するまでの障害物以上の存在ではない
 故にレールワームとの戦闘を始めた二機をよそに、ブライアンはG37アサルトライフルでソーディアンシールドを狙った。
「アサルトコアの力、見せてやろう!」
 放たれた弾丸は全弾ソーディアンシールドに命中し、悶えるようにソーディアンシールドが揺らめく。
 反撃とばかりに剣群が降り注いだ。
 致命的な直撃を避け、逃げ回るFF-01 を追うように次々に剣群が地面に突き立っていく。
「狙いが甘いぞ! その程度で倒れるものか!」
 残る剣群を一斉射してくるソーディアンシールドに対し、ブライアンも操縦桿を握りアサルトライフルの発射トリガーを押し込んだ。
 FF-01がアサルトライフルの銃口を向け、最後の一発を発砲する。
 お互いにリロードを始め、そのタイミングでソーディアンシールドへ弾丸が飛ぶ。
 剣が抜けた後の穴を狙ったようだが、そう簡単に当たらない。
 とはいえその一撃はブライアンにとってはこの上ない援護射撃となり、先に再装填を終えてコッキングを済ませることができた。
 そしてレールワームを始末した銀兎ともう一機のFF-01が追いついてくる。
 雨龍と春都だ。
 他のソーディアンシールドの残骸 を、雨龍は己の機体を守る使い捨ての盾として利用していた。
「これより攻撃を開始します」
 死骸 を地面に突き立ててまた一つ簡易防壁を作り上げると、まだリロード中のソーディアンシールドにG37アサルトライフルの弾丸を直撃させる。
 既に知覚攻撃に弱いという弱点は判明しているのだ。
 使わない手はない。
 さらにその銀兎や防壁として積み上げられた残骸の 陰からG37アサルトライフルで春都が銃撃する。
「道を開けさせてもらうよ!」
 ブライアンと春都のFF-01と雨龍の銀兎がアサルトライフルの飽和射撃を行い、ソーディアンシールドに無視できないダメージを叩き込む。
 苦し紛れに再装填したばかりの剣群をソーディアンシールドは再び一斉射する。
 一撃目以上の広い範囲に、剣群が凄まじい勢いで降り注いだ。
 とはいえそれが本当に最後の抵抗で、それ以上次の一撃を放つことはできず、ソーディアンシールドは三機に討ち取られる。
 雨龍は最前線に残って戦いを続け、ブライアンと春都は時と場合に応じて移動しながら防壁作成を行いつつ応戦した。
 シールドが足りなくなってもおかしくない戦闘密度だが、残骸 を上手く使うことで、三機ともかなりシールドを節約できている。
 残量にはまだ余裕があった。
 彼らが安全に戦えているのは、入るはずだった横槍の多くが全くといっていいほど機能していないからだ。
 邪魔な横槍の対処には入れられた本人たちの他にも、【Blitzlicht】が動いていた。
 磐堂 瑛士(la2663)とフェルート・リサイド(la1330)の二名がMS-01JとFF-01でそれぞれ対応に向かってはそこで横槍を排除し、次の場所へと移動を繰り返している。
 本人たちの迎撃もそうだが、【Blitzlicht】のように専門の目的とする小隊の活躍が大きい。
 常に周囲を警戒する瑛士が次の戦場を見定め、フェルートを連れて動く。
 それぞれの機体であるMS-01JとFF-01は戦場中を目まぐるしく動き回っていた。
「これが……僕らの戦争<やり方>だ」
「堅実に、確実に! なんてな!」
 また一体ナイトメアを撃破して味方を助け、颯爽と次の場所に機体を進ませる。
 とはいえ遠距離武器があまり豊富ではないため、瑛士はMS-01JのC-203アサルトバルカンによる援護射撃から、フェルートと一緒に二方面から接近戦を仕掛けて回る方が多かった。
 異なる二方向からの攻撃に同時に対応するということは難しい。
 それはナイトメアも例外ではなく、二機が別の方向からアサルトソード「リーネア」で斬りかかれば、どちらも完璧にいなされるということはほぼないと言っていい。
 いや、結局は敵の強さも影響するのだから一概に決めつけられるものではないが、この戦場に限ったことでいえばあながち間違いでもないだろう。
 また一つ、別の場所に二人が到着した。
「加勢するよ。背後の護りは任せて欲しい。奇襲の警戒もしておこう」
「今が正念場だ、気を引き締めろよ!」
 そして防壁作成作業を行っているという都合上、【Lilac】、【桜華光舞隊】、【D.I.Y.】に所属する者たちがナイトメアにとっては横槍を入れる対象になりやすい。
 特に【桜華光舞隊】のアイカや【D.I.Y.】のエドワードやルークのような、戦闘そのものよりも防壁作成に比重を置き、防壁作成のペースを文字通り握っている三人が狙われるのは当然で、またそれ故に予想もしやすかった。
 故に、彼らが襲われる場に颯爽と瑛士とフェルートの機体が現れるのは、何もおかしくはない。
「こいつらの相手は全部引き受ける」
「代わりに作業は全面的に任せるぜ!」
 イマジナリードライブの伝達状況を高めた瑛士のMS-01Jが忽然と姿を消して間合いを詰め襲い掛かれば、フェルートのFF-01がスラスターを全開にして瞬間的な高機動戦闘を開始し、二人で瞬く間にナイトメアを沈黙させる。
 こうして着実に壁が出来上がっていった。

●送り込め
 壁のお陰で、アサルトコア各機のシールドの持ちはぐっと改善された。
 今まで戦い続けていた【黄道十二宮】の面々は、ヴァルゴ(la3059)のビルゴを中心に陣形を組み、従来の敵であるマンティスとレールワーム、ロックを中心として討伐していた。
 並行してヴァルゴはビルゴを跳躍飛行させ、空からナイトメアたちの配置分布を観察している。
 これで得られる情報は【黄道十二宮】の面々だけでなく、この戦域で戦う全ての味方にとって珠玉の価値を持つ情報であり、ヴァルゴはその都度【黄道十二宮】の小隊長に報告してからインカムで全員に周知させていた。
 そしてまた一度跳躍飛行して地上を観察したヴァルゴは、モニターに映る敵の分布に眉を顰めた。
 今残っているナイトメアたちが、移動を始めている。
 その先にいる味方が誰か確認したヴァルゴは急いで該当する味方機、即ち龍 天華(la0350)に通信を繋いだ。
「生き残っているナイトメアたちが南に集まってきています。大攻勢が来そうです。各自警戒を。一度避難した方がいいかもしれません」
「いや、これで良い」
 ヴァルゴの言葉を天華が遮る。
 この動きは彼女が率いる【黄竜会】が狙ったものだったのだ。
 【黄竜会】の目的は、キャリアーがインソムニア入口に突入し、内部へライセンサーたちを侵入させる道を切り開くことだ。
 それはこの戦域にいる全員の目的でもあるが、天華はもう一歩踏み込みそのためにはどうすればいいかという点に焦点を当てて考えた。
 敵の数は膨大。
 倒し切るなど不可能なほどの数だ。
 そのため求められるのはいかに長く戦うかということで、そのために【Lilac】、【桜華光舞隊】、【D.I.Y.】といった小隊たちが防壁作成に取り組んだ。
 時間稼ぎとしては優秀な手段であるが、とはいえそれも結局はキャリアーを突破させるための直接的な解決にはならない。
 突破を成功させるには、ある程度戦場におけるナイトメアの布陣を偏らせ、空白地帯を作り出しそこにキャリアーを送り込む必要がある。
 流動する戦場の状況において、偶発的に発生する空白地帯をその都度見つけ出し、そこへキャリアーを移動させるのはできても、突破させるのは実質的に不可能に近い。
 当然だ。
 偶発的に発生する以上見つけて連絡し、キャリアーが連絡を受けて動き出すまでにはどうしてもタイムラグが発生する。
 どんなに急いだとしても、到着した頃には状況が変わってしまう。
 空白地帯は無くなっているだろう。
 ならばどうすればいいか?
 天華はそれを知っていた。
「簡単なことじゃ。自ら作り出してしまえば良い。盤上の駒を操るかの如く、神算鬼謀を見せる軍略家のように」
 【黄竜会】の面々を引き連れた天華の肌に、心地良いビリビリとした波動のような何かが突き刺さってくる。
 アサルトコア越しでもなお貫いてくるのは、大量のナイトメアが放つ敵意だ。
 ナイトメアが集まる先には、天華の黄竜を筆頭とするアサルトコアが集結していた。
 東にナイトメアの残存戦力が集まってきているということは、南はその分手薄になっているということに他ならない。
「釣れおる釣れおる。キャリアーに告ぐ。聞こえるか、わしらが引き付けている今のうちに東から突入せい!」
 キャリアーは既に配置に着いている。
 同調して、【クラーク駆逐隊】、【独立機械化歩兵小隊】、【強襲部隊Panzerlicht】といった陽動を目的とする小隊の面々が陽動戦闘を再開させる。
 【フォーサイシア】と【ホワイトダリア】の二小隊が周辺警戒を行う中、一本柳 凛咲(la0214)のMS-01Jがナイトメアの誘導をキャリアーの突入路から逆に、【黄道十二宮】が待つ南の方面へと引き離す形へと変えていく。
「邪魔させるわけにはいかない。お前たちには此方に来てもらおうか」
 詠代 静流(la2992)もMS-01Jを駆りナイトメアの引き付けを開始した。
「地道に縁の下のなんとやらってね」
 二人とも小隊には所属しておらず、個々人で戦闘していたのだが、状況を鑑みここで動くべきだと判断した。
 機を読むことに長けているといえよう。
 何らかの小隊に所属している者以外にもライセンサーは数多くいる。
 大規模作戦においては彼らがどう動くのかというのも大事な要素であり、彼らの行動の中から作戦の成功を決める決定的な行動が出てくることもあるくらいだ。
 今回は、個々の判断で行った凛咲や静流の動きが、天華の作戦をより確実なものへと昇華させた。
 誰か一人が成したのではない。全員の力が合わさった勝利だろう。
 さらに一度【Jokers】から離れた嗣志も誘導を手伝っている。
「念には念を入れて、だ」
 完全に囮に気を取られたナイトメアたちは、引っかかって南に位置するアサルトコア群に総攻撃を開始した。
 そして──ついにキャリアーが動き出す。
 【Jokers】を率いる陸道 空(la0077)が嗣志以外の小隊員を伴い直掩につく。
 華倫、黄泉(la2562)を始めとする面々がそれに続いた。
「さあ、行くぞ!」
 空の煉獄、華倫の狡兎、黄泉のMS-01Jを始め、他にも様々なアサルトコアたちが所属する小隊の垣根を越え、キャリアーとともに一丸となって走り出した。
 そこへ戻ってきた嗣志の走狗が合流する。
 気付いたナイトメアたちが再び迎撃に東へと動き出す気配を見せるが、その大部分は大きく南へ偏っており到底間に合わない。
 そして天華たちがそれを許すはずもない。
 ナイトメアの大攻勢に対し防戦に徹していたアサルトコアたちが一斉に攻勢に転じた。
 猛烈な勢いで放たれる銃弾の雨と、薙ぎ払われ突き刺さる剣と槍の嵐にナイトメアたちの動きはバラバラになり、完全に統制が乱れた。
 迎撃に戻れたナイトメアの数は少なく、それでも実際の数字でいえばかなりの量だが、アサルトコアに護衛されたキャリアーを止められるほどではない。
 故に、駆け抜けることができた。
「一点突破ですわー!」
「正念場だな!」
「絶対に足を止めるでないぞ! 走り続ければ当たらぬ!」
 黄泉の読み通り、散発的に放たれる剣群もレーザーも圧は低く、キャリアーどころか、アサルトコアでさえ捉えることはない。
 それどころか、黄泉のMS-01Jによって銃弾を撃ち込まれ、リジェクション・フィールド を中和されたタイミングで誤射が起きて爆散する個体が出る始末。
 抜けたものがあっても、築いていた防壁がその役目を果たす。
 最悪でも、まだ護衛のアサルトコアがいる。
 何重もの守りで、キャリアーには絶対に届かせない。
 無事キャリアーはアサルトコア内部へライセンサーたちを送り込んだ。
 ここへ来て、【Lilac】や【桜華光舞隊】、【D.I.Y.】や未所属の面々が作り上げた防壁が生きてくる。
 突入のための防壁が、ナイトメアの追撃を防ぎ退路を確保するための防壁にそのままそっくり役割を変えたのだ。
「士ちゃんの冴え渡った読みを見たか!」
「通れるものなら通ってみるがよい」
「うむ。完璧の布陣だな」
 それぞれの小隊長である士、桜、エドワードが小隊員たちと連携し、防衛戦闘の準備に入る。
「よし、あいつらが帰ってくるまでここを守り切るぞ! 防衛戦開始だ!」
「「「「応!!!!!」」」」
 【Jokers】小隊長である空がインカムに向けて叫ぶと、己の小隊員だけでなく、この戦場にいて通信で繋がる全てのライセンサーたちの頼もしい声が返ってきたのだった。
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リプレイ執筆
きりん

リプレイ監修
クラウドゲート

文責
株式会社フロンティアワークス
  1. 突入支援
  2. インソムニア・コア破壊
  3. ライセンサー救出